上 下
14 / 21

14話

しおりを挟む
次の日、俺が目を覚ますと、グルドラが早速声をかけてきた。

「おう、目が覚めたか!今日は大事な日だぞ。」

「大事な日?何だよ、それ。」

「『異世界大運動会』だ!」

「……は?」

俺が寝ぼけた目をこすりながら言うと、グルドラが興奮気味に説明を始めた。

「この異世界では年に一度、すべての騎士と魔物が集まって、運動会をするんだ!もちろん、参加するのは俺たちだけじゃないぞ。魔物、精霊、神々まで…みんなが参加する超盛大なイベントだ!」

「え、神々も?」

「おう!でも、あの神様は来るかどうか分からないな。最近、また寝てるから。」

そう、あのめんどくさがり神様が、また寝ているというのだ。それでも、どうしても参加しなければならないらしい。もちろん、俺のことはお構いなしに、グルドラは俺を連れて行くことを決めた。

「お前、運動は得意か?」

「全然…いや、むしろ嫌いだ。」

「なら、心配するな!競技は楽しくやるものだ。競争なんて気にするな!」

そう言われて、俺は運動会に連れて行かれた。しかし、着いた先で見た光景に驚愕することになる。まず、会場は異常に広く、あらゆる魔物たちや騎士たちが準備をしていた。中には、巨大なトロルが軽やかに縄跳びをしていたり、サイクロプスが綱引きの縄を持ち上げていたりと、何とも言えない光景が広がっていた。

「うわ、何これ…」

「さあ、参加者全員集合だ!競技はたくさんあるぞ!」

運動会の司会をしていたのは、なんとあの神様だった。やはり寝ぼけた顔をしていたが、それでも一応仕切っているようだ。

「まずは、障害物競走から始まる!この競技はちょっと特殊で、途中で魔法を使ったり、魔物の力を借りたりするからな!それじゃあ、みんな準備はいいか?」

その瞬間、グルドラが俺に目を輝かせて言った。

「お前、障害物競走に出るぞ!」

「ええぇぇぇ!?俺、絶対無理だろ!」

「大丈夫だ、俺がサポートしてやるから!」

結果的に、俺はグルドラに押される形で障害物競走に出場することになった。そして競技が始まると、もう何もかもが予想外だった。

まず、目の前に現れたのは巨大なロープの壁。だがそれを登ろうとした瞬間、ロープが突然生き物のように動き出して、俺を捕まえようとする。あわてて引き寄せられそうになったが、すぐにグルドラが翼を広げて俺を助けてくれた。

「さすがグルドラ!助かった!」

「いいから次行くぞ!」

次に現れたのは、巨大なボールが転がってくる障害物だった。俺がそれを避けようとする間に、後ろから巨大なドラゴンがボールを蹴り飛ばしてきて、俺がそのボールにぶつかり、吹っ飛んでいく。

「うわ、なんだこれ!?」

気がつけば、障害物競走の最中に他の参加者もバラバラに巻き込まれていく。ミノタウロスのガルムが他の選手を投げ飛ばしたり、サキュバスが魔法で障害物を変形させてみたりと、まるでカオス状態だ。

「これ、もはや競技じゃないだろ…」

「でも面白いだろ?」

「面白くはないよ!」

ようやく障害物競走を終えたが、俺の服は泥だらけ、顔は砂だらけで、完全にやり切った感が漂っていた。

「やったぞ!お前、よくやったな!」

グルドラが俺の肩を叩くが、俺は全く嬉しくない。

「俺、二度とこんなことやらない。」

その後、さまざまな競技をこなし、最終的に運動会は終了。結果発表となり、見事、グルドラが優勝した。もちろん、グルドラの競技での活躍は、他の参加者たちからも注目され、英雄扱いだ。

「お前、すごかったな!次は何かまた挑戦しようぜ!」

「勘弁してくれ…」

運動会が終わり、俺は完全にぐったりしていたが、帰り道でまたアルトが笑いながら言った。

「来年も一緒に出ような!」

「いや、来年なんて来ない。」

それでも、妙に楽しかった運動会。異世界の騎士と魔物のフレンドリーさと、何でもありな競技に、少しだけこの世界に馴染んできたような気がした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...