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98話
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俺は諦めるつもりはなかった。
「どうして戦ってくれないのですか?」
俺はそう聞いた。すると
「俺は武人では無い」
と言ってきた。確かに、この人は戦いを好まない印象があるなと思ってはいたが、まさか本当にそうなのだろうか?俺はそれが気になっていた。だからもう一度質問をした。
「じゃあ、あなたはどんな時に戦いたくなるのです?」
と聞くと、「戦っている最中」と答えた。
えっ、それだけ?そんな理由で俺と戦いたがらないのかこの人は!?まぁ俺だって、戦いが好きというわけでも無いが、どうしても戦いたいという理由があるから戦いを申し込んでいるのにな。それに、俺はまだ戦い足りないんだよな。だから、俺は言った。
「俺は戦いたい。お願いです、戦いましょう」
と言った。そうすると、やっとOKをしてくれた。俺は、すごく嬉しかったがそれと同時に少し残念に感じた。
「では早速、勝負を始めましょう」
と言うと、趙雲がこんなことを言ってきた。
「俺は武器を持たない」
と、は?どういう事だよ?俺はそう思っていると趙雲が続けて喋る。
「俺に勝つことができたら、一つだけなんでも望みを聞いてやろう。ただし、俺は素手で戦うがな」
おい、嘘だろ!?こいつ、どんだけの自信を持ってるんだ?この俺と本気でやりあうってか。面白い。受けて立とうじゃないか。
「分かりました。あなたのその挑発、後悔させてあげますよ」
と言った。
俺は趙雲に攻撃を仕掛けるが、全く当たらない。どうなっているんだこの人、速すぎるだろ……。俺はなんとか隙を突いて攻撃しようとした。だが、なかなか出来ない。
「どうした、まだ始まったばかりだぞ」
くそぉ、舐めるなよこの野郎!! だが俺は、その後何度も挑んでも勝てなかった。俺も頑張っているんだが……。
俺の攻撃を全て避けられた後、
「降参するなら今のうちだ。だが、次も挑むと言うなら俺は容赦はしない。たとえ命が尽きようが、必ず殺す。覚えておくといい。これが武人が相手と戦うということだ。俺がお前の命を刈り取る日は遠くないだろう。その日まで強くなれ」
と最後に言われた。
そして俺はその言葉を最後に意識を失った。目が覚めた時には、劉備軍が用意してくれた部屋で寝ていた。周りを見渡しても、そこには誰もいなかった。
そして、その日の夜、関羽が部屋に入ってきた。
俺が起きた事に気づいた彼女はすぐに謝った。そして俺は、彼女が何故謝る必要があるのかわからなかったので、その理由を聞くと、
「私があの男を止められなかったせいだ」
と言う。詳しく話を聞いてみると……どうやら、劉備軍の中で最強の男である趙雲は、劉備軍のトップにいる劉備よりも強いらしく、その強さは圧倒的だという。そして趙雲と、劉備軍の中で最強の男が戦うことになってしまって、止めようにもその男にはかなわなかったのだという。さらに趙雲が負けた場合……つまり死ぬことがあれば、趙雲の部下が暴走して、この国は崩壊してしまうだろうと言っていたらしい。俺はそれを関羽から聞いた時、怒りを感じた。なぜ俺がそんな感情になったのかはよくわからない。しかし、何故か許せなかった。
俺は、絶対にこの国を守りたいとそう思った。その次の日の朝から俺は特訓を始めた。毎日毎日。朝昼晩関係なくずっと。
趙雲に勝った後も俺は訓練を続けていた。そのせいなのか、最近よく体調が悪くなることが多い気がする。今日も俺は倒れたらしい。目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしている龐統がいた。龐統はすぐに医者を呼んできた。すると龐統がこんな事を言ってきた。
「呂布様!私のせいですいません。どうか無理だけはなさらないでください……」
と。龐統が言った通り、俺は無理をしていたのかもしれない。最近、あまり眠れていない。だからこんなことになったのだろうな。でも俺は後悔はしていない。俺は強くなりたいと思っている。だからこうやって自分の限界を超えようとしているのだ。俺はそう思っていた。だから
「大丈夫だ。気にするな」
と俺は言って、医務室を後にした。
そのあと俺は、劉備と趙雲を呼び出した。二人には昨日の事についてお礼を言いたかったからだ。俺は、劉備と趙雲には特に感謝した。二人がいなければ、俺はまだここにはいなかったかもしれないのだから。そして、二人に何かして欲しい事はないか?と聞かれたので俺は、「この国の人たちを守って欲しい」と頼んだ。
二人は俺の言葉を聞き入れてくれたようだ。俺は嬉しかった。この国にはまだこの人が必要だと感じたから、これからもこの国のために働いて欲しかった。だが、趙雲には何も無いと言われた。
だが、俺はまだ諦めていなかった。
それからというもの、俺はいつものように訓練を続けている。すると突然、諸葛亮さんが話しかけてきた。
「あなたは、どうしてそこまで強くなる必要があるのですか?」
俺は正直驚いた。なぜなら俺のことを見下してくる奴が多い中で、こんなにも俺に真剣に質問してきたのはこの人が初めてだったからだ。俺はその質問に対して答える。
「守りたい人がいるんです。だからそのために頑張らないとダメなんです」
と俺は答えた。すると、
「あなたは本当に変わった方ですね。ですが、嫌いではありませんよ」
と言われてしまった。
それからというものの、なぜか諸葛亮さんに色々と相談に乗ってもらっている。最初は、嫌だったが今ではとてもいい人だと思っている。それにしても、あの人の考えていることが未だによくわからない。俺に相談なんかをして一体何を企んでいるのか? まぁ今は深く考えないようにしよう……。
俺は毎日の訓練を終え、風呂に入りに行く。その時に劉備軍の人達から
「呂布将軍ばんざーい!!」
と大声で言われるのですごく照れくさい……。まぁ悪い気はしないがな。そんな感じで俺は充実した日々を送っているのだが、やはりまだ満足はできないな。
俺はこの生活がいつまでも続く事を願っていた……。……あれから2年が経とうとしていた。相変わらず、劉備軍は平和だ。俺はこの2年間、鍛錬を積んできた。その成果が出たのだろうか?ついに趙雲を倒すことに成功した。これでこの国は安心できると思ったその時、劉備と関羽、張飛、諸葛亮は劉備軍と関羽軍を総動員させ、曹操の元へと向かった。その道中、劉備軍のみんなが劉備達を必死に説得したそうだ。俺はそれが無駄なことだと分かっていても劉備達に一緒に行かせて欲しいと懇願した。だが、聞き入れてもらえなかった。俺は何も出来なかった。悔しかった。俺はこの時初めて自分が無力だということを思い知らされた。俺は、関羽が出発前に残した言葉を思い出す。
(もし、私がお前の元に帰ってくることが出来なかった時は……)
その続きは何だ?まさか関羽に限ってそんなことあるはずがない!!と思いつつも、俺の中に不安が残っていた。それからしばらくして関羽達は出発した。俺はただ祈ることしかできなかった。関羽達の無事を。俺は、俺なりに強くなったつもりだし、今のままなら負けることはないと思う。
だが相手が相手なのでどうなるかは分からない……。俺が今出来ることは関羽達が無事に帰ってきてくれることを願うだけだ。
その頃、劉備と関羽、張飛、諸葛亮はある城に向かっていた。
そして、劉備達は曹操と面会をした。
「劉備よ、貴様のところにいる呂布とかいうやつは中々の強さのようだな。その呂布を俺によこせ。そして俺の配下になれ」
と曹操は劉備を挑発する。劉備はそれに対し、
「断る!呂布殿は、我が友であり家族のようなものだ!誰にも渡すものか!」
と反論する。すると曹操は
「なら、その呂布は死んでもいいということなのだな?」
と聞くと、劉備は一瞬黙り込んでしまった。
「ふっ、どうやらそのようだな」
と言って曹操は高笑いをする。それを聞いた劉備は、怒りが爆発して、劉備軍の武将達とともに突撃した。しかし劉備と関羽、そして他の武将達は、曹操の圧倒的な強さによって打ちのめされてしまう。それでも、なんとかして立ち上がろうとする劉備を見て、曹操は自分の部下として働かないか?と言う。劉備は迷った。しかし関羽が「行くな!私には構わず逃げろ!!」と叫ぶ。その言葉に迷いを振り切った劉備はその場から逃げ出す。しかし、曹操は追ってくる気配はなかった。劉備は一息ついて、すぐに呂布の元へ急いだ。するとそこには関羽がいた。
「関羽、生きていたのか!よかった……」
と劉備は安堵の声をあげる。
「私は大丈夫ですが、呂布様がいないのです。どうか探していただきたい」
と劉備に頼み込む。
劉備は快く引き受けた。
その後二人は、曹操のいない間に、呂布を探すことにした。呂布を見つけると二人は呂布を劉備の所に連れて行こうとするが呂布はそれを拒んで一人でどこかへ消えてしまう。劉備はそれを追いかけるが途中で見失ってしまう。呂布を探しながら旅をしている劉備の前に、張飛が立ち塞がる。
張飛と戦う劉備と関羽。
そして張飛に劉備と関羽の攻撃が届く直前、 突然張飛が地面に崩れ落ちた。何が起きたのかわからずにいる二人に、張飛は、
「すまねぇな兄ちゃん、あんたたちの命は助けてくれ」と言い残し張飛は死んだ。それを見ていた張飛の弟の張超は、「なぜお二人がこんなことを?」と尋ねる。すると関羽は、劉備を守る為に仕方がなかったんだと答えた。すると、そこに曹操が現れる。曹操を見た瞬間、関羽は、「貴様に殺されるくらいなら自ら死を選ぶ」と言って短刀を取り出す。劉備は関羽を止めようとするが、 関羽はその手を拒んだ。関羽は、
「お前のせいだ。全て貴様のせいなんだ。許さない。必ず、殺す」
と言い放ち、曹操の首を斬り落とそうとするが、曹操は間一髪のところで避けた。すると曹操は、「劉備と関羽を殺すのは諦めるとしよう。だが、その代わりにその男には犠牲になってもらおう」
と言って、俺を指差す。俺はこの時、何かとてつもない恐怖に襲われた。
それからというものの、俺は毎日拷問を受けていた。まずは火炙り、続いて石抱き、水責めなど様々な拷問を受けた。俺は、痛みに耐えられず、何度も死にたいと思った。だが俺はまだ死ぬわけにはいかない。ここで死んだら劉備達が危ないから。俺はどんなことがあっても絶対に諦めなかった。それからというもの俺は毎日血反吐を吐くまで訓練を続けた。だが、曹操を倒すことなど到底不可能だろう。そこで俺は、劉備達が来るのを待つことに決めた。あいつらはきっと来ると信じているからだ。
その頃、劉備達はというと……。
曹操から逃げる途中、劉備と関羽はある場所に来ていた。そこは、呂布が住んでいる屋敷だった。劉備は扉を開けるが中には誰もいなかった。劉備は中に入ると、床に落ちていた手紙を読む。それは、俺に宛てたものらしく劉備宛の封筒に入っていた。内容は、曹操を倒すことができた。あと少しで帰ってくると書かれていた。俺は、嬉しかった。ついに待ち望んだ知らせが届いたのだ。だがそれと同時に、呂布が心配になった。早く探しに行きたかったが今はそんな状況ではない。俺が今すべきことは関羽と張飛を説得して曹操の元へ向かうことだ。
その頃、俺はひたすら耐え続けていた。だがそれも限界に達しようとしていた。俺はこのままだと死んでしまうと思い自害しようとしたその時、劉備が俺の元に駆けつけてきた。そして俺のことを優しく抱きしめてくれた。その時の劉備の目からは涙が溢れ出していた。俺はそんな優しい劉備の姿を見て、生きる気力を取り戻した。
そして劉備は、俺に言った。
「一緒に戦ってくれないか?」
俺はその問いに対して、即答で
「もちろんだ!一緒に戦うぜ!」
と返事をした。そして俺は、改めて決意を固めた。
今こそ、俺がみんなを守ってみせると!!こうして、俺、呂布奉先は、再び戦場に立つことを決意した。
俺達は、曹操軍の城へ向かっていた。道中、劉備と張飛が話をしていた。俺が、
「なぁ?あの二人ってなんかあったのか?」
と尋ねると、
「あぁ、まぁな。詳しくは本人達に聞いてくれ」と劉備は答えた。俺達は城に到着した。曹操の城に着くと、俺達は、曹操の元へ案内された。曹操の部屋の中は、いかにも悪者の親玉がいるような雰囲気を漂わせていた。部屋の中には、俺達三人と曹操だけしか居ない。すると曹操は、
「貴様らがここに来たということは……もうわかっているとは思うが……」
と言ってきたので、俺は、
「俺達の命を助けてくれるっていうのか?」
と聞き返すと、曹操は無言のままうなずき、
「そうだ。私はこの手で殺してしまった者達の為に、自分の過ちに気づくまでは人を殺さないと誓った。だから私の命を貴様らにやるかわりに呂布を渡せと言った。しかし奴は断った!それどころか、自分を殺そうとした相手を助けると言う。おかしな男だよ全く」
と呆れた様子で言う。
劉備と関羽が、
「それでどうするんだ?私達の首を跳ねるか、それともこの場で斬られるか」
と関羽が尋ねると、曹操はしばらく考えた後、口を開いた。
「劉備よ、貴様にはこの国の王になってもらいたい」
そう言って、懐から何かを取り出したと思うと、突然、劉備の足元に落としやがった。すると、その落とした物が突如爆発を起こし、劉備は吹き飛ばされてしまった。
劉備は、
「何がしたい?一体どういう意味だ」
と尋ねると、曹操は、
「簡単なことだ。その首輪を付ければ、その男と戦わなくてすむ」
と劉備に言う。すると劉備はすぐに理解した。劉備は、俺に目を向ける。
「悪いが、俺は外させてもらう」
と俺が呟くと、曹操は、
「ふっ。貴様には無理なことだ。さぁ、付けるがよい」
と言い、俺に近づいてくる。すると、劉備は必死の表情を浮かべながら俺の腕を掴む。
「呂布殿、付けてくれぬか?これは、貴殿にしかできないことなのだ」
劉備は俺に頼み込む。劉備は本気で言っているんだろうが、俺はそんな劉備の姿を見たくないと思った。すると、俺の心を読み取ったかのように関羽が、
「お前さんが劉備の首を斬らないとでも思っているのか?」
と冷たく言い放つ。すると劉備は、関羽の言葉に反応し、
「頼む、呂布殿。貴公しかいないのだ」
と涙を流した。俺は、心の底から迷っていた。劉備を殺すことなど俺にはできなかった。俺が、躊躇している間に曹操の手が伸びてくる。だがその時だった。俺達の間に一人の女性が割って入り、俺に抱きついた。その女性の正体はなんと、張飛だった。張飛は俺を抱きしめたまま、
「兄ちゃん、頼む。劉備を楽にしてやってくれないかい?」張飛は涙を流す。そんな姿を見た俺は決心した。俺は張飛を抱きしめ返し、劉備の方を向いて、一言告げた。
「すまない」
それからすぐに張飛の首に手刀を当てて気絶させた。張飛をそっと寝かせた俺は、曹操の方に振り返る。
「覚悟を決めました」
そう言った瞬間、首元にあった違和感がなくなった。「お主が選んだ選択を私は受け入れよう。これで貴様は、自由の身だ。これからは自分の意思に従って生きるが良い」と曹操は言った。そして曹操は部屋から出て行った。俺が、張飛を背負っていると、関羽が、
「呂布、よく決断してくれた。礼を言うぞ」と言ってくれた。劉備はというと、少し悲しそうな顔をしていた。俺が、どうしてそんな悲しい顔をしていのかを聞くと、劉備は、俺に対してこう答えた。
「私は貴公に、とんでもない事を頼んでしまったと思っている。張飛が何故、あんな行動を取ったのか。それはきっと私が憎かったからだろう。だから貴公が、あの時私を殺していれば張飛も死ぬことはなかったはずだ。私はなんて酷い人間なのだろうか。貴公の手を汚させるような真似をしてしまった」
劉備の話を聞いた俺の口から言葉がこぼれた。
「本当にすまなかった」と。俺の言葉を聞いた劉備と関羽は驚いた様子でこちらを見る。
「なぜ謝る必要がある?お主には感謝こそすれど、恨む気持ちなど毛頭無い。それよりも呂布よ、早く張飛の元へ行くべきだ。彼女はお前が来ることを待っているはずだ」
と劉備は言った。俺達は急いで張飛の元へ向かう。張飛は城の前にいた。そして俺の顔を見ると、嬉しさを隠せないような顔で、
「おっ!やっと来てくれたか!遅いじゃないか!待ってたぜ!!」
と満面の笑みで答える。俺は、
「遅くなってごめんな。今すぐ終わらせてやるから」
と言って、劉備の元へ連れて行く。
劉備の元へ着いた俺は、劉備に向かって話しかけた。
「この人が、あなたの妹です」
すると劉備は、涙目になりながら、
「こんな私に家族を与えてくれていたのか……私はなんと幸せ者なのだ……」
と言い、 張飛を抱きしめると、「張飛、今までありがとう」と言い、涙を流した。俺は、劉備達から離れようとしたが、その前に張飛に袖を引っ張られ止められてしまった。
「どうして戦ってくれないのですか?」
俺はそう聞いた。すると
「俺は武人では無い」
と言ってきた。確かに、この人は戦いを好まない印象があるなと思ってはいたが、まさか本当にそうなのだろうか?俺はそれが気になっていた。だからもう一度質問をした。
「じゃあ、あなたはどんな時に戦いたくなるのです?」
と聞くと、「戦っている最中」と答えた。
えっ、それだけ?そんな理由で俺と戦いたがらないのかこの人は!?まぁ俺だって、戦いが好きというわけでも無いが、どうしても戦いたいという理由があるから戦いを申し込んでいるのにな。それに、俺はまだ戦い足りないんだよな。だから、俺は言った。
「俺は戦いたい。お願いです、戦いましょう」
と言った。そうすると、やっとOKをしてくれた。俺は、すごく嬉しかったがそれと同時に少し残念に感じた。
「では早速、勝負を始めましょう」
と言うと、趙雲がこんなことを言ってきた。
「俺は武器を持たない」
と、は?どういう事だよ?俺はそう思っていると趙雲が続けて喋る。
「俺に勝つことができたら、一つだけなんでも望みを聞いてやろう。ただし、俺は素手で戦うがな」
おい、嘘だろ!?こいつ、どんだけの自信を持ってるんだ?この俺と本気でやりあうってか。面白い。受けて立とうじゃないか。
「分かりました。あなたのその挑発、後悔させてあげますよ」
と言った。
俺は趙雲に攻撃を仕掛けるが、全く当たらない。どうなっているんだこの人、速すぎるだろ……。俺はなんとか隙を突いて攻撃しようとした。だが、なかなか出来ない。
「どうした、まだ始まったばかりだぞ」
くそぉ、舐めるなよこの野郎!! だが俺は、その後何度も挑んでも勝てなかった。俺も頑張っているんだが……。
俺の攻撃を全て避けられた後、
「降参するなら今のうちだ。だが、次も挑むと言うなら俺は容赦はしない。たとえ命が尽きようが、必ず殺す。覚えておくといい。これが武人が相手と戦うということだ。俺がお前の命を刈り取る日は遠くないだろう。その日まで強くなれ」
と最後に言われた。
そして俺はその言葉を最後に意識を失った。目が覚めた時には、劉備軍が用意してくれた部屋で寝ていた。周りを見渡しても、そこには誰もいなかった。
そして、その日の夜、関羽が部屋に入ってきた。
俺が起きた事に気づいた彼女はすぐに謝った。そして俺は、彼女が何故謝る必要があるのかわからなかったので、その理由を聞くと、
「私があの男を止められなかったせいだ」
と言う。詳しく話を聞いてみると……どうやら、劉備軍の中で最強の男である趙雲は、劉備軍のトップにいる劉備よりも強いらしく、その強さは圧倒的だという。そして趙雲と、劉備軍の中で最強の男が戦うことになってしまって、止めようにもその男にはかなわなかったのだという。さらに趙雲が負けた場合……つまり死ぬことがあれば、趙雲の部下が暴走して、この国は崩壊してしまうだろうと言っていたらしい。俺はそれを関羽から聞いた時、怒りを感じた。なぜ俺がそんな感情になったのかはよくわからない。しかし、何故か許せなかった。
俺は、絶対にこの国を守りたいとそう思った。その次の日の朝から俺は特訓を始めた。毎日毎日。朝昼晩関係なくずっと。
趙雲に勝った後も俺は訓練を続けていた。そのせいなのか、最近よく体調が悪くなることが多い気がする。今日も俺は倒れたらしい。目を覚ますと、目の前には心配そうな顔をしている龐統がいた。龐統はすぐに医者を呼んできた。すると龐統がこんな事を言ってきた。
「呂布様!私のせいですいません。どうか無理だけはなさらないでください……」
と。龐統が言った通り、俺は無理をしていたのかもしれない。最近、あまり眠れていない。だからこんなことになったのだろうな。でも俺は後悔はしていない。俺は強くなりたいと思っている。だからこうやって自分の限界を超えようとしているのだ。俺はそう思っていた。だから
「大丈夫だ。気にするな」
と俺は言って、医務室を後にした。
そのあと俺は、劉備と趙雲を呼び出した。二人には昨日の事についてお礼を言いたかったからだ。俺は、劉備と趙雲には特に感謝した。二人がいなければ、俺はまだここにはいなかったかもしれないのだから。そして、二人に何かして欲しい事はないか?と聞かれたので俺は、「この国の人たちを守って欲しい」と頼んだ。
二人は俺の言葉を聞き入れてくれたようだ。俺は嬉しかった。この国にはまだこの人が必要だと感じたから、これからもこの国のために働いて欲しかった。だが、趙雲には何も無いと言われた。
だが、俺はまだ諦めていなかった。
それからというもの、俺はいつものように訓練を続けている。すると突然、諸葛亮さんが話しかけてきた。
「あなたは、どうしてそこまで強くなる必要があるのですか?」
俺は正直驚いた。なぜなら俺のことを見下してくる奴が多い中で、こんなにも俺に真剣に質問してきたのはこの人が初めてだったからだ。俺はその質問に対して答える。
「守りたい人がいるんです。だからそのために頑張らないとダメなんです」
と俺は答えた。すると、
「あなたは本当に変わった方ですね。ですが、嫌いではありませんよ」
と言われてしまった。
それからというものの、なぜか諸葛亮さんに色々と相談に乗ってもらっている。最初は、嫌だったが今ではとてもいい人だと思っている。それにしても、あの人の考えていることが未だによくわからない。俺に相談なんかをして一体何を企んでいるのか? まぁ今は深く考えないようにしよう……。
俺は毎日の訓練を終え、風呂に入りに行く。その時に劉備軍の人達から
「呂布将軍ばんざーい!!」
と大声で言われるのですごく照れくさい……。まぁ悪い気はしないがな。そんな感じで俺は充実した日々を送っているのだが、やはりまだ満足はできないな。
俺はこの生活がいつまでも続く事を願っていた……。……あれから2年が経とうとしていた。相変わらず、劉備軍は平和だ。俺はこの2年間、鍛錬を積んできた。その成果が出たのだろうか?ついに趙雲を倒すことに成功した。これでこの国は安心できると思ったその時、劉備と関羽、張飛、諸葛亮は劉備軍と関羽軍を総動員させ、曹操の元へと向かった。その道中、劉備軍のみんなが劉備達を必死に説得したそうだ。俺はそれが無駄なことだと分かっていても劉備達に一緒に行かせて欲しいと懇願した。だが、聞き入れてもらえなかった。俺は何も出来なかった。悔しかった。俺はこの時初めて自分が無力だということを思い知らされた。俺は、関羽が出発前に残した言葉を思い出す。
(もし、私がお前の元に帰ってくることが出来なかった時は……)
その続きは何だ?まさか関羽に限ってそんなことあるはずがない!!と思いつつも、俺の中に不安が残っていた。それからしばらくして関羽達は出発した。俺はただ祈ることしかできなかった。関羽達の無事を。俺は、俺なりに強くなったつもりだし、今のままなら負けることはないと思う。
だが相手が相手なのでどうなるかは分からない……。俺が今出来ることは関羽達が無事に帰ってきてくれることを願うだけだ。
その頃、劉備と関羽、張飛、諸葛亮はある城に向かっていた。
そして、劉備達は曹操と面会をした。
「劉備よ、貴様のところにいる呂布とかいうやつは中々の強さのようだな。その呂布を俺によこせ。そして俺の配下になれ」
と曹操は劉備を挑発する。劉備はそれに対し、
「断る!呂布殿は、我が友であり家族のようなものだ!誰にも渡すものか!」
と反論する。すると曹操は
「なら、その呂布は死んでもいいということなのだな?」
と聞くと、劉備は一瞬黙り込んでしまった。
「ふっ、どうやらそのようだな」
と言って曹操は高笑いをする。それを聞いた劉備は、怒りが爆発して、劉備軍の武将達とともに突撃した。しかし劉備と関羽、そして他の武将達は、曹操の圧倒的な強さによって打ちのめされてしまう。それでも、なんとかして立ち上がろうとする劉備を見て、曹操は自分の部下として働かないか?と言う。劉備は迷った。しかし関羽が「行くな!私には構わず逃げろ!!」と叫ぶ。その言葉に迷いを振り切った劉備はその場から逃げ出す。しかし、曹操は追ってくる気配はなかった。劉備は一息ついて、すぐに呂布の元へ急いだ。するとそこには関羽がいた。
「関羽、生きていたのか!よかった……」
と劉備は安堵の声をあげる。
「私は大丈夫ですが、呂布様がいないのです。どうか探していただきたい」
と劉備に頼み込む。
劉備は快く引き受けた。
その後二人は、曹操のいない間に、呂布を探すことにした。呂布を見つけると二人は呂布を劉備の所に連れて行こうとするが呂布はそれを拒んで一人でどこかへ消えてしまう。劉備はそれを追いかけるが途中で見失ってしまう。呂布を探しながら旅をしている劉備の前に、張飛が立ち塞がる。
張飛と戦う劉備と関羽。
そして張飛に劉備と関羽の攻撃が届く直前、 突然張飛が地面に崩れ落ちた。何が起きたのかわからずにいる二人に、張飛は、
「すまねぇな兄ちゃん、あんたたちの命は助けてくれ」と言い残し張飛は死んだ。それを見ていた張飛の弟の張超は、「なぜお二人がこんなことを?」と尋ねる。すると関羽は、劉備を守る為に仕方がなかったんだと答えた。すると、そこに曹操が現れる。曹操を見た瞬間、関羽は、「貴様に殺されるくらいなら自ら死を選ぶ」と言って短刀を取り出す。劉備は関羽を止めようとするが、 関羽はその手を拒んだ。関羽は、
「お前のせいだ。全て貴様のせいなんだ。許さない。必ず、殺す」
と言い放ち、曹操の首を斬り落とそうとするが、曹操は間一髪のところで避けた。すると曹操は、「劉備と関羽を殺すのは諦めるとしよう。だが、その代わりにその男には犠牲になってもらおう」
と言って、俺を指差す。俺はこの時、何かとてつもない恐怖に襲われた。
それからというものの、俺は毎日拷問を受けていた。まずは火炙り、続いて石抱き、水責めなど様々な拷問を受けた。俺は、痛みに耐えられず、何度も死にたいと思った。だが俺はまだ死ぬわけにはいかない。ここで死んだら劉備達が危ないから。俺はどんなことがあっても絶対に諦めなかった。それからというもの俺は毎日血反吐を吐くまで訓練を続けた。だが、曹操を倒すことなど到底不可能だろう。そこで俺は、劉備達が来るのを待つことに決めた。あいつらはきっと来ると信じているからだ。
その頃、劉備達はというと……。
曹操から逃げる途中、劉備と関羽はある場所に来ていた。そこは、呂布が住んでいる屋敷だった。劉備は扉を開けるが中には誰もいなかった。劉備は中に入ると、床に落ちていた手紙を読む。それは、俺に宛てたものらしく劉備宛の封筒に入っていた。内容は、曹操を倒すことができた。あと少しで帰ってくると書かれていた。俺は、嬉しかった。ついに待ち望んだ知らせが届いたのだ。だがそれと同時に、呂布が心配になった。早く探しに行きたかったが今はそんな状況ではない。俺が今すべきことは関羽と張飛を説得して曹操の元へ向かうことだ。
その頃、俺はひたすら耐え続けていた。だがそれも限界に達しようとしていた。俺はこのままだと死んでしまうと思い自害しようとしたその時、劉備が俺の元に駆けつけてきた。そして俺のことを優しく抱きしめてくれた。その時の劉備の目からは涙が溢れ出していた。俺はそんな優しい劉備の姿を見て、生きる気力を取り戻した。
そして劉備は、俺に言った。
「一緒に戦ってくれないか?」
俺はその問いに対して、即答で
「もちろんだ!一緒に戦うぜ!」
と返事をした。そして俺は、改めて決意を固めた。
今こそ、俺がみんなを守ってみせると!!こうして、俺、呂布奉先は、再び戦場に立つことを決意した。
俺達は、曹操軍の城へ向かっていた。道中、劉備と張飛が話をしていた。俺が、
「なぁ?あの二人ってなんかあったのか?」
と尋ねると、
「あぁ、まぁな。詳しくは本人達に聞いてくれ」と劉備は答えた。俺達は城に到着した。曹操の城に着くと、俺達は、曹操の元へ案内された。曹操の部屋の中は、いかにも悪者の親玉がいるような雰囲気を漂わせていた。部屋の中には、俺達三人と曹操だけしか居ない。すると曹操は、
「貴様らがここに来たということは……もうわかっているとは思うが……」
と言ってきたので、俺は、
「俺達の命を助けてくれるっていうのか?」
と聞き返すと、曹操は無言のままうなずき、
「そうだ。私はこの手で殺してしまった者達の為に、自分の過ちに気づくまでは人を殺さないと誓った。だから私の命を貴様らにやるかわりに呂布を渡せと言った。しかし奴は断った!それどころか、自分を殺そうとした相手を助けると言う。おかしな男だよ全く」
と呆れた様子で言う。
劉備と関羽が、
「それでどうするんだ?私達の首を跳ねるか、それともこの場で斬られるか」
と関羽が尋ねると、曹操はしばらく考えた後、口を開いた。
「劉備よ、貴様にはこの国の王になってもらいたい」
そう言って、懐から何かを取り出したと思うと、突然、劉備の足元に落としやがった。すると、その落とした物が突如爆発を起こし、劉備は吹き飛ばされてしまった。
劉備は、
「何がしたい?一体どういう意味だ」
と尋ねると、曹操は、
「簡単なことだ。その首輪を付ければ、その男と戦わなくてすむ」
と劉備に言う。すると劉備はすぐに理解した。劉備は、俺に目を向ける。
「悪いが、俺は外させてもらう」
と俺が呟くと、曹操は、
「ふっ。貴様には無理なことだ。さぁ、付けるがよい」
と言い、俺に近づいてくる。すると、劉備は必死の表情を浮かべながら俺の腕を掴む。
「呂布殿、付けてくれぬか?これは、貴殿にしかできないことなのだ」
劉備は俺に頼み込む。劉備は本気で言っているんだろうが、俺はそんな劉備の姿を見たくないと思った。すると、俺の心を読み取ったかのように関羽が、
「お前さんが劉備の首を斬らないとでも思っているのか?」
と冷たく言い放つ。すると劉備は、関羽の言葉に反応し、
「頼む、呂布殿。貴公しかいないのだ」
と涙を流した。俺は、心の底から迷っていた。劉備を殺すことなど俺にはできなかった。俺が、躊躇している間に曹操の手が伸びてくる。だがその時だった。俺達の間に一人の女性が割って入り、俺に抱きついた。その女性の正体はなんと、張飛だった。張飛は俺を抱きしめたまま、
「兄ちゃん、頼む。劉備を楽にしてやってくれないかい?」張飛は涙を流す。そんな姿を見た俺は決心した。俺は張飛を抱きしめ返し、劉備の方を向いて、一言告げた。
「すまない」
それからすぐに張飛の首に手刀を当てて気絶させた。張飛をそっと寝かせた俺は、曹操の方に振り返る。
「覚悟を決めました」
そう言った瞬間、首元にあった違和感がなくなった。「お主が選んだ選択を私は受け入れよう。これで貴様は、自由の身だ。これからは自分の意思に従って生きるが良い」と曹操は言った。そして曹操は部屋から出て行った。俺が、張飛を背負っていると、関羽が、
「呂布、よく決断してくれた。礼を言うぞ」と言ってくれた。劉備はというと、少し悲しそうな顔をしていた。俺が、どうしてそんな悲しい顔をしていのかを聞くと、劉備は、俺に対してこう答えた。
「私は貴公に、とんでもない事を頼んでしまったと思っている。張飛が何故、あんな行動を取ったのか。それはきっと私が憎かったからだろう。だから貴公が、あの時私を殺していれば張飛も死ぬことはなかったはずだ。私はなんて酷い人間なのだろうか。貴公の手を汚させるような真似をしてしまった」
劉備の話を聞いた俺の口から言葉がこぼれた。
「本当にすまなかった」と。俺の言葉を聞いた劉備と関羽は驚いた様子でこちらを見る。
「なぜ謝る必要がある?お主には感謝こそすれど、恨む気持ちなど毛頭無い。それよりも呂布よ、早く張飛の元へ行くべきだ。彼女はお前が来ることを待っているはずだ」
と劉備は言った。俺達は急いで張飛の元へ向かう。張飛は城の前にいた。そして俺の顔を見ると、嬉しさを隠せないような顔で、
「おっ!やっと来てくれたか!遅いじゃないか!待ってたぜ!!」
と満面の笑みで答える。俺は、
「遅くなってごめんな。今すぐ終わらせてやるから」
と言って、劉備の元へ連れて行く。
劉備の元へ着いた俺は、劉備に向かって話しかけた。
「この人が、あなたの妹です」
すると劉備は、涙目になりながら、
「こんな私に家族を与えてくれていたのか……私はなんと幸せ者なのだ……」
と言い、 張飛を抱きしめると、「張飛、今までありがとう」と言い、涙を流した。俺は、劉備達から離れようとしたが、その前に張飛に袖を引っ張られ止められてしまった。
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