三国志英雄伝~呂布奉先伝説

みなと劉

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53話

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俺自身ここまで嫌悪感を感じることがあるのかと思い知らされるほど気分が悪くなり、俺は張飛に早く行こうと言ったのだが、もうそろそろ着いてもおかしくないと彼は言ってる。

その言葉の通り彼は立ち止まり、俺は彼が指を指していた方に視線を向けるが、どう見てもその場所は何もない場所にしか見えないが? いや、良く見ると微かにだが気配があった。
その感覚を頼りに場所の特定を行うがやはりそこであると確信し、俺はその場所に向かったが張飛は俺が向かうとすぐ後ろに隠れるように移動した。

俺がたどり着いたところでは、まさに戦闘が行われたような跡があり、周りは木っ端みじんになってしまっているほどの破壊振りである。

そんな場所で俺の目に入った物は、一人の男が倒れている姿であり、その近くには刀が落ちており、間違いなくその人物の物であると思われるが血の跡が全くないことから死んでないことはわかるが、この男はいったい誰なのかと思うほどである。
とりあえずは、男の傍に落ちている愛槍を拾って、男に駆け寄った。男は、見た目20代後半ほどで白髪の男だった。

俺達が駆け付けた時には、既に息絶えようとしていた。俺達が来たことが分かったようで、弱々しい声で話しかけてきた。

「あ……あなた方は?」
俺達に気付いて問いかけてきた。
おそらく意識を保っているのもつらい状態だろう。それでもこの人は俺に対して話しかけてきたんだから答えるべきだろうと俺は答える。

「俺の名前は呂布奉先といいます」
「そうですか……貴方が……」
そう言うと力尽きたかのように気を失ってしまったのであった。

名前すら聞けないまま気を失うことになってしまったのは残念だったが、命が助かっていればそれでいい。それに俺に話があると言ってたのならおそらく俺に何か伝えに来たということになる。


そしてもう一つ気になる事が俺にはあった。俺達の方を見ている視線があることに気付いたからだ。


俺は魔法を使うことにした。
「『傷つきしかの者に癒しの力を』ヒール」
そう唱えると彼の身体全体が緑色のオーラに包まれていった。

すると徐々にだが彼を苦しめている原因となっていた痛みが消えていくと呼吸も落ち着き始めたのである。
その光景はまさに神秘的なものであった しばらくして完全に痛みもなくなり落ち着いたようだ。
そこで彼のことをもう少しだけ観察することにしたのだ。彼は外見を見る限りだとおそらく黄巾党の一人なんだろうということは分かる。ただ何故この場所にいるかだが分からないところだ。

おそらく彼は戦いで負けてしまったのだろうが、それが原因で負傷したに違いない。それとも何者かの襲撃を受けたとかそんな所だろうな。そんなことを考えているうちに治療を終えた。そこでようやく彼の顔がはっきりと見えるようになるとその整った顔立ちをした好青年といった感じである。

「呂布将軍先程のは……」
「あ、あれかあれは『魔法』だ。だがもう失われて久しいときく」

魔法は失われたというのは間違いではないが俺からすれば使えなくなったと言う方が正解に近いのかもしれない。まぁこの世界から元の世界に帰ることになれば使う機会もなくなるものだ。

それにしても何者なのだろうか……。あの場から逃げて来たということは敵ではなさそうだ。俺のことを見て怯えていなかったことから考えて、敵対勢力ではないということが分かる。

まぁ警戒は解かないほうがいいな。それに劉備たちの元へ帰らなければいけないが、この人を置いておくわけにもいかないよな・・ とりあえず俺は劉備たちが戻ってくるまでの間だけ看病しておくことにしようと思ったのだった。
その頃劉備たちはというと 劉備達は、街の方へ探しに行ったが愁眉も見つからないということで、街に戻ると曹操軍の兵士を見つけその兵士を連れて郊外へ向かった。そこには呂布の姿が見当たらなかったので、城の方まで戻り張飛と合流する。その後陳宮の死体が見つかった場所に向かい死体を確認するのだが、酷い有様でとてもじゃないほど見せられるものではなかった。特に劉備はそれを見てその場で吐きそうになったが必死に耐えていた。
劉備はその凄惨な状況を見てしまい、気分が悪くなってしまったためその場に座り込むが、関羽と張飛は特に変わった様子もなかったためそのままその場の調査を続けるのだった。
俊盛との激戦を控えていたのだが突然現れた賊に襲撃されることになったのだった。襲ってきたのはまだ若い男女で、男は手に剣を持っており、女は薙刀を持っていた。その姿を見ていると以前見た事のある武器に似ていた。それは、董卓軍四天王のうちの一人李儒と同じものだった。まさかと思ってはいたが予想通りの結果となってしまった。この二人は董卓の部下なのだ。ここで足止めを食らうことになるとはな。まずい展開になったなと思うほかなかった。
ここで戦うにしても正直厳しい。向こうのほうが圧倒的に有利だからである。ここで無理に突っ込んでもこちらに損害が出るので得策とは言い難いがやむを得ないな。張飛に任せよう。張飛と関羽にはここで残ってもらう。
正直この2人がここにいてくれると助かる。俺は劉備に一緒に来てもらうように頼んだ。
俺と一緒に行けば被害は最小限に抑えられることになるだろうし。俺達はすぐに戦闘を開始することにする。俺も戦わないと怪しまれる恐れがあるからだ。俺達はこの賊に対して攻撃を行った。しかし思ったよりも手ごわく苦戦を強いられていた。この二人の連携は見事だったからである。隙を見せた瞬間に必ず反撃を行ってくる。
しかも、そのコンビネーションが非常に厄介であり。どちらか1人に攻撃をするともう一人からの攻撃を受けてしまうという非常に面倒くさい相手であった。俺は少し距離を取って攻撃を仕掛けることにしてみた。さすがにこれだけ間合いを取り続ければ安全圏を確保できる。俺は弓を構え矢を放つ。その動きに合わせてか賊は回避を行うがそこにすかさず劉備が切り込んだ。これで勝負ありと思いたい。だがまだ甘いようである。なんと賊の一人がもう片方の女を盾代わりに使い防御してきたのである。これだといくら斬っても死なないということになってしまうじゃないか。どうなっているのか分からず混乱した。すると男は何か呪文のような言葉を呟いたのであるその時、女の傷が塞がっていったのだった。その行動に驚いたのはもちろんだがそれよりもその回復力の高さの方が問題である。そんな馬鹿げた芸当が出来るとなるとこいつは間違いなくあの時会ったあいつということになるはずだが・・・今はそんなことを言っている場合ではないようだ。とにかく目の前にある危機を乗り越えなければならないな。
そのあと何度か劉備とともに斬りこんだりしたが、まったく効果が見られなかった。そしてしばらく時間が経過して分かったことが、おそらくこいつらは何らかの方法で身体を治癒させることが出来るのだろう。これはおそらく魔法を使ったか、魔導書を手に入れたのどちらかに違いないだろう。そう思っていると後ろから何かが飛んできたのだ。
それは矢だった。その矢に反応できなかったようで、見事に肩に命中した。それによって賊の片割れは地面に倒れた。おそらく死んでしまったようだ。だがそんなことを気にしている暇はない。さらに追撃を行うためその賊に向けて走り出すとその奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「兄上!!今のうちに急いで逃げてください!!」
それは紛れもなく関羽の声であった。劉備はすぐに振り返り逃亡しようとするのだが、倒れている仲間を担いで行こうとしているので逃げるのが遅れて結局敵に見つかってしまったのである。仕方がない俺達も加勢して敵と戦うことになった。劉備達の実力はなかなかのものでかなりの活躍を見せてくれているのだが、それに比べて敵の方は全く疲れている様子もない。一方的な戦いになってしまいそうな感じだったが、このままだといずれ劉備達がやられてしまうかもしれないと考えた俺はとっさに魔法を使うことを決意した。
ただ魔法と言っても詠唱をして魔法を使うわけではない。魔法を使用するのは自分の意識の中で行う。
つまり心の中から魔法名を唱えればいいだけのことである。
そこで俺の心の中に浮かんできたのは無難ともいえるものだった。魔法名はこうだ『雷刃乱舞』俺はこの言葉を思い浮かべただけで発動する。その直後俺の右手からは青白い光が発生しそこから無数の光の帯が出てきたのである。それと同時に雷も発生していくそれがものすごい速さで賊に向かっていくそして命中しそのまま感電してしまったようだ。その結果2人ともその場で動けなくなりそのまま息絶えてしまった。ようやく倒せたようだこれで何とか一安心することができたわけだと思ったのだが・・ なんとまた別の男がこちらにやってきた。
どうやらそっちの仲間らしい。それによく見るとこの男はあの時に襲ってきた盗賊団の一員であることが判明した。こんなところで再会するとは思ってもいなかったな。ここで戦わなければならなくなるが今の俺では絶対に勝てる気はしないなと思うのであった。
呂布VS謎の賊たちとの戦闘 俺達4人は呂布たちと再び出くわすことになってしまった。その数は全部で3人である。劉備たちに呂布たちを頼むと伝え俺と関羽、張飛は呂布たちの方へと向かうのだった。俺が呂布たちと戦いたいと申し出たので張飛と関羽は俺の意見を聞き入れてくれた。呂布と対峙していた賊たちは突然俺が現れたことにかなり動揺していた様子ではあったがすぐに気持ちを立て直す。呂布もその男たちの様子を見た後構え始めた。
張飛と呂布との戦いが始まったのであるが、やはりお互いの力の差はかなりあったようであっけなく敗れてしまいその場に倒れることになってしまったがなんとか間に合ったのでよかったとほっとしていたのも束の間次の攻撃に備える必要があると感じた俺は警戒を強めていたが突然張飛の方を見てみるとそこには何も残っていなかった。まるで先ほどの戦いなどなかったかのように跡形もなくなっていた。どうなっているのか不思議に思っていた。俺にはとてもじゃないが不可能だと思うが、何か理由があるような気がした。だが考えても答えが出なかった。
その光景を見てしまっていたせいもあり呂布に俺の存在を知られてしまい攻撃されてしまった。俺もそれに対抗するべく攻撃を行い応戦するがやはり俺にはほとんど効かないため苦戦することなく勝利を収めることができたのだった。
賊の一人が何か言っていたがそれはよくわからない言語だった。言葉として成り立っていないように思えた。何と喋っていたのか理解できないのであった。その瞬間に男は何かを発動させたのだろうか。
いきなり姿が消えていなくなった。その光景を目の当たりにしてさすがにこれはまずいと思いすぐに行動に移ることにした。関羽に劉備に指示を出すように言って俺一人で追跡を開始したのだ。すぐに見失ってしまったがそれでも追いかけるしかないと思い俺はその賊を探すことにする。
すぐに見つけることが出来ればいいなと思っているとあっさりと見つかることが出来た。そこは小さな村になっておりその中にその賊はいたのだ。しかも村の入口付近で武器などを村人から取り上げ金目の物を奪おうとし始めた。それをすぐに止めると賊と戦闘を行うことになり、俺は剣を抜いて戦った。しかしやはり俺に歯が立つはずがなく逆に追い詰められることになってしまうが、そこに運が味方をしてくれたのかそこにちょうど巡回中の衛兵が来たのである。これでとりあえず命の危機を逃れることだけはできたようである。
だがまだ賊を捕らえることは出来ておらず油断はできない状態が続くのであった。それからしばらくは戦闘を続けどうにか捕まえようとしたのだが、まったく効果が無かったために俺は仕方なく逃げるようにしてその場を立ち去ることとなった。するとそこで俺は誰かに声をかけられたのである。それはあの時の商人の男であった。あの時は特に話をすることもなかったが今となってみれば助けてもらってばかりだった。あの状況でよくぞ来れたものだと思っていた。
それからは色々と話すようになり次第に仲良くなっていった。この男からは何か不思議な魅力を感じた。だがそれはおそらく見た目だけでは判断出来ないということだろうと自分で納得することにした。こうして話しているだけでも結構面白い人だったのだと感じながら俺は別れることにした。これからどうするのかを聞いたところ彼はこのまま西へ進んでいくというのでそこまで同行させてもらうことになるのであった。そして俺達はついに徐州へとたどり着いたのである。道中は特に危険を感じることもなかったので無事にたどり着くことができたのだ。俺も少し休んだ後彼と一緒に行動することを決めてから別れたのであった。
曹操との会談 俺と呂布たちは曹操の元に辿り着いた。その後すぐ城に向かうように指示を受けてその通りに動いた。劉備たちも同じことを頼まれたようだ。それからしばらくして謁見の間に案内されてそこで待っていた。しばらくすると豪華な衣装をまとった若い男が入ってきた。彼が噂の曹嵩らしい。かなりの美人だというのがすぐにわかった。劉備たちはその姿を見るととても緊張してしまっているようだった。
ただそんな彼らとは正反対に呂布は何ともなさそうにしている様子だった。それを見た俺はこいつはやっぱり只者ではないと改めて感じるのだった。
俺達の姿を見てきた後にすぐに質問を行ってきた。俺達がどこから来た人間なのかを聞いてきていたので素直にはい、と答えておく。それで大体理解したのか今度は俺達の目的を尋ねてきた。俺達は袁紹に会いに行きたいので、そのために協力して欲しいと言う旨を彼に言ったら快く引き受けてくれた。その後は簡単な食事を摂ったあと部屋に戻った。その時も呂布は平然としていて、この余裕はいったいいかなるものなんだろうと思ってしまうのである。
次の日になっていよいよ出発の時間になり城を出発した。途中で袁術に出くわしてしまったがそのおかげで俺達にも協力すると言ってくれたことで、何とか助かった。それから曹操の元へ辿り着くと早速曹操と話し合うことにしたのだった。内容は俺達にどこまで力を貸してくれるかという話だ。それに俺が応える形になった。正直にいうなら曹操が持っている兵力がどれくらいのものかわからない以上、こちらとしてはある程度協力してくれないと、かなり不利な状態での戦いになる可能性があったからである。だからあえて曹操がどこまでなら動いてくれるかというのを確認することにした。まず一つ目に荊州の劉表と連絡を取る方法を考える必要がある。これは呂布に任せてみることにするのだが問題はここからだ。二つ目にある場所に行くための伝令を走らせておきたいと頼んでおくのも重要なことだ。これは徐州にいる武将の李典を使うつもりである。この二つは必須事項として伝えていく。
延岑の話を聞く限りかなり厳しい戦いになると予測されているからだ。もしここで失敗してしまえば一気に情勢が悪化する可能性だってある。そのことを理解した上で行動するべきだと考えている。だがそのことに関して俺の考えに対して誰も反対することなく同意してくれていた。
曹操軍との共同作戦 翌日になってから呂布と共に兵を連れて出発する準備をした。ただ予想以上に人手が不足していたようで、呂布軍の兵士は一部残しつつ俺達の兵を足す必要があったためそちらに人員を向けることに決定してから出発したのである。さらにそこから南下していくと張繍軍と遭遇することになった。張遼将軍が率いる一隊と激突することになるがなんとか撃退に成功した。だが張遼は討ち取れずに逃げられてしまった。そのまま北上を続けている時についに劉備たちの軍がやってきた。そこには劉備と諸葛亮がいた。
そして他にも趙雲などもいたのでこれで劉備は四人の将が集まったということになるわけである。
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