三国志英雄伝~呂布奉先伝説

みなと劉

文字の大きさ
上 下
37 / 100

37話

しおりを挟む
「……ああ、そういうことか」
張遼の言葉を聞いて、呂布は納得する。
確かに張遼は若い武将の中では一番と言っても良いくらい頼りないところがあり、また面倒臭い性格をしているので、呂布としても張遼の事は気になっていた。
張遼の母親は張遼が小さい頃に亡くなっているらしく、父親である張超は張遼を男手一つで育ててきた。
張遼は小さい頃から武芸の才に恵まれていて、剣の腕前も相当なものだったらしい。
しかし、張遼は自分が強いと言う自覚があまりなく、何かある度にすぐに呂布を頼ってきた。
張遼の父親は張遼が呂布に仕えるようになってからは、張遼を呂布に任せっきりにしている。
張遼の父親が言うには『呂布将軍がおられる限り、張遼の身は安全だ』との事だった。張遼の父親としては、張遼を自分の手元に置いておきたかったようだが、張遼が嫌がった為、呂布の元に行く事になった。
そして張遼は呂布の元で成長し、今では一軍を率いている。
「じゃあ、一緒に行こうか」
「はい!」
呂布は張遼を伴って、高順を探す。
「そう言えば、呂布将軍。ご結婚されたとか」
「え?あ、うん」
「どんな方なんですか?」
「えっと、優しい子かな」
呂布は少し照れながら答える。
「呂布将軍にも、そんな顔をさせる女性がいたのですね」
「いや、別に俺だっていつも仏頂面してる訳じゃないぞ」
「そうでしたか?私から見た呂布将軍は、いつでも笑顔でしたけどね」
「そうか?自分では分からないもんだなぁ」
呂布は苦笑する。
「ところで、呂布将軍。私からも聞きたい事があるのですが」
「ん?何だ?」
「呂布将軍の奥様についてです」
「え?俺の奥さんに興味があるのか?」
「興味というか、奥様はどんな方なのかと思っていました。噂ではもの凄く美人だと聞いていますが、本当でしょうか?」
「うーん、どうだろうな。でも、少なくともお前よりは綺麗だと思うな」
「それは酷い!私はこれでも女顔で悩んでいるんですよ?」
「まあ、そうかもな」
呂布は張遼の顔を見ながら笑う。
「もう!笑い過ぎです!」
張遼は頬を膨らませて怒っている。
「悪い、悪かったよ。そういえば、張遼はどうしてこんな所にいたんだよ?」
「あ!そうだった!高順を探してたんだった!」
「忘れるなよ」
呂布と張遼が高順を探している頃、高順の方も呂布を探していた。
「奉先!どこ行った!?」
高順は辺りを見回す。
「いた!」
高順は呂布の姿を見つける。
「あれは……張遼と呂布将軍か?」
高順は二人に近づいていく。
「おい、呂布将軍。何やってるんだ?」
「あ、高順。良かった、探したよ」
「俺も今、探してる最中なんだ。ところで、張遼も一緒とは珍しい組み合わせだな」
「実はかくかくしかじかで」
「ふむふむ、なるほど」
「高順、分かってる?」
「もちろんだ。それで、張遼は何でここに?」
「高順が行方不明になったから、探しに来たんじゃないか」
「何だよ、心配してくれたのか?」
「当たり前だろ。何年付き合ってると思っているんだよ」
「そうだな。じゃあ、帰ろうぜ」
「高順、どこに行こうとしてたんだ?」
「いや、ちょっとな。奉先に話があったんだけど」
「そうなの?」
「いや、いいや。また日を改めるよ」
「そうか?なら良いけど」
張遼と呂布は高順と別れ、戦場へと向かうのであった。
曹操軍との戦いが始まった。
今回は曹操軍の兵力が少ない事もあり、呂布軍は優位に立って戦を進めている。
しかし、ここで問題が発生した。
呂布軍と袁紹軍が対峙している時、そこに劉備が兵を連れて現れたのだ。
劉備は呂布の事を知っていた。
その為、呂布と話をしようとやって来たのだが、その時の呂布は曹操と戦っており、そちらの対応をしている余裕がなかった。
そこで呂布に代わって、関羽が対応する事にした。
呂布は劉備の事は知らないが、関羽は知っている。
関羽は呂布の義兄であり、その武勇も名声も天下一品である。
呂布はその勇名を耳にしていたし、実際に呂布が戦った時もその強さは身に染みて分かっている。
呂布は関羽に劉備の相手をさせる事ことにした。
「劉備殿とお見受けします。私が呂布将軍の右腕である関羽雲長です。お初に御目にかかります」
「貴公が呂布将軍のおっしゃっていた、あの有名な関羽将軍ですか。私は劉備玄徳と言います。以後、よろしくお願い致します」
「こちらこそ」
お互いに礼をする。
「ところで、呂布将軍はどちらに?」
「今は曹操軍との戦に臨まれています。劉備殿がお見えになっている事を伝えましたので、すぐにいらっしゃるかと思います」
「そうですか。それならば、私も待たせて頂きましょう」
「いえ、しかし……」
「私は呂布将軍に会いに来たのです。待つくらいどうってことはありません。それに、ここは敵地と言っても良い場所なのですから、私を一人にしておいた方が危険ですよ」
「確かにそうかもしれませんが、さすがに私一人で貴方を守る自信はないので」「それもそうですね。では、一緒に待ちましょうか」
二人は呂布を待つ。
「しかし、劉備殿はどうしてこの様な場所に?」
「私も武人として、一旗揚げようと思いまして」
「一旗ですか」
「ええ、そうです。曹操と言えば、漢の忠臣ではないですか。そんな武将と手合わせする事が出来れば、私も何かしらの収穫を得られるのではないかと思ったのです」
「そうでしたか。しかし、私も奉先も曹操と戦うのはこれが二度目になります。一度目は引き分けに終わり、再戦を約束して別れた間柄です」
「そうなんですか?それは面白いですね」
劉備は嬉しそうに言う。
「私達も奉先も負けず嫌いですからね。次に戦う時はお互い万全の状態で戦いたいと思っています」
「呂布将軍は素晴らしい方ですからね。噂を聞いていますよ」
「ええ、自慢の弟です」
関羽は微笑んで答える。
「関羽将軍には弟さんがいらしたのですか?」
「はい、呂布将軍とは義兄弟の関係となっています。ただ、私の方が年上なので兄のような存在でもありました」
「そうでしたか。それは羨ましい」
「そう言えば、劉備殿にもご兄弟は?」
「いますよ。私の可愛い義弟達が」
劉備は誇らしげに答える。
「ほう、そうですか」
「でも、みんな離れて暮らしていて、会う事も出来なくて。だから、こうして旅に出た訳です」
「そうでしたか」
関羽は深く聞かない方が良いと判断したのか、話題を変える。
「劉備殿は、これからどうするおつもりですか?」
「呂布将軍とは会えたので、今度は曹操軍の武将と手合わせをしようかと」
「曹操軍と言うより、呂布将軍と戦う為に来られたのでは?」
「まあ、そうなりますかね。でも、曹操軍の将とも戦ってみたいんですよ」
「呂布将軍と戦った後だと、曹操軍相手ではかなり物足りないのではありませんか?」
「そうかもしれないですね」
劉備は苦笑して言う。
「関羽将軍は曹操軍と戦いたくはないのですか?」
「正直なところ、あまり気が乗りません。奉先は曹操軍の捕虜となり、酷い扱いを受けていたので」
「ああ、そうでしたね」
劉備は思い出した様にうなずく。
「もし劉備殿さえ良ければ、我が軍に仕官されてはいかがでしょうか?呂布将軍と共に戦えば、きっと得るものは大きいはずです」
「ありがとうございます。ですが、私はまだ自分のやりたい事がはっきりしていないので、もう少し考えてみます」
「そうですか。分かりました」
関羽は劉備に頭を下げる。
「関羽将軍は、この戦場を離れないのですか?」
「私も呂布将軍と同じく、曹操軍と決着をつけたいと思っていましたので」
「呂布将軍と一緒なら心強いでしょうね」
「いえいえ、私などまだまだ未熟者ですから」
関羽が謙遜していると、そこに呂布がやって来る。
「おお、関羽ではないか!」
呂布は関羽を見つけると駆け寄ってくる。
「久しぶりだな!元気だったか!?」
「当然だろう、俺はいつだって絶好調さ。お前こそどうなんだ?」
「俺の方も問題ないぞ。それで、そっちは誰だい?」
呂布は劉備に気がつく。
「初めまして。私は劉備玄徳と言います。よろしくお願いします」
「こちらこそ、宜しく頼む。呂布奉先だ。呂布と呼んでくれ」
「劉備玄徳です。劉備とお呼び下さい」
劉備は呂布に挨拶をする。
「劉備殿は呂布将軍と知り合われたばかりで、まだお互いの事をよく知らないらしい。そこで、これから一緒に食事をしようと思うのだが、劉備殿も一緒にどうだろうか?」
「良いのですか?」
「もちろんです。一緒に食事をしながら、お互いの事をもっと良く知ろうではありませんか」
「関羽将軍は?」
「私は遠慮しておく。今のうちに休んでおくよ」
「そうですか。では、お言葉に甘えて」
呂布、劉備、関羽の三人は曹操軍と袁紹軍が対峙している場所から離れ、近くの村へと向かった。
「どうしたんだ、関羽?疲れているのか?」
呂布が関羽を心配するが、関羽は首を横に振る。
「いや、何でも無い。ちょっと考え事をしていただけだ」
「そうか。じゃあ、飯にするか」
呂布達は適当な店を見つけて、席に着く。
「劉備殿は何を食べる?」
呂布は劉備に尋ねる。
「私は肉まんを頂きましょう」
「では、私もそれにしよう。関羽は?」
「そうだな、私も同じものでいい」
「分かった。すみませーん」
呂布が店員を呼ぶと、すぐに注文を取りに来る。
「はい、何にいたしましょう?」
「ええっと、肉まんを二つ。それと、酒は?」
「そうですね、とりあえず果実酒を一杯ずつ頂きましょう」
「畏まりました」
「関羽はどうする?」
「私も劉備殿と同じものを」
「では、同じ物を」
「はい、少々お待ちください」
店員は去っていく。
「呂布将軍って、本当に人望があるんですね」
「どうしてそう思いますか?」
「だってほら、あの店員さんとか呂布将軍の事を見てたじゃないですか」
「そうかな?」
「ええ。呂布将軍って、凄く目立ってるんですよ。私達みたいな普通の格好をしている人は呂布将軍と一緒にいるだけで目立つんですけど、呂布将軍はその上を行っていますから」
「そうかぁ?」
「そうなんですって。私達の様な普通の姿の人からすると、呂布将軍は雲の上の存在ですよ」
「そんな大袈裟な。劉備殿の方がよっぽど英雄っぽいと思うぞ」
「そうですか?私なんてただの小物ですから。関羽将軍の方がよほど英雄っぽいと思います」
「関羽の方が小物だよ」
呂布は関羽を見ながら言う。
「そうか?私にはそう思えないな」
「いや、間違いなく関羽の方が小物だよ。なっ?」
呂布は関羽に向かって同意を求める。
「ああ、確かにその通りだ。呂布将軍の方がよほど漢を代表する英傑に相応しい方だと思うぞ」
関羽も劉備に同意して言う。
「二人とも、それは言い過ぎだ。俺はただの田舎者で、たまたま運に恵まれていただけなんだ」
呂布は謙遜して言うが、劉備と関羽は揃って首を振る。
「そうか?」
「そうですよ」
劉備と関羽の言葉に呂布は照れ笑いを浮かべる。そこへ料理が運ばれてくる。
まずは果実酒で乾杯する。
一口飲んだ後、呂布はすぐに盃を置く。
「どうした?」
「ああ、この酒は苦手でな」
「奉先は酒に弱いんだよ。だから、あんまり飲み過ぎるなっていつも言ってるんだけどな」
「呂布将軍って、お酒がダメなんですか?」
「はい。奉先はすぐ酔ってしまうんですよ。今日は少し控え目にした方が良いかもしれません」
関羽が忠告すると、呂布は素直に従う。
「では、俺の分は関羽に任せよう」
「いや、お前も飲むんだろ?私一人に押し付けるつもりか?」
「あ、そうだった」
「まあまあ、私がお酌しますから」
劉備は二人の盃に酒を注ぐ。
「ありがとうございます」
二人は礼を言うと、再び軽く盃を上げてから口に運ぶ。
「ところで劉備殿、曹操軍の武将と戦うと言っていましたが、どうされるつもりです?」
「そうですね。曹操軍の将と言えば、やはり夏侯惇や曹仁でしょうかね」
「曹操軍は他に誰がいましたかね?」
関羽が劉備に尋ねると、劉備の代わりに呂布が答える。
「張遼だな」
「ほう、よく知っているな」
関羽が感心していると、呂布は自慢げに胸を張る。
「当然だ。俺は曹操軍の誰よりも詳しいぞ」
「それなら、曹操軍に知り合いがいるのか?」
「いる訳ないだろう」
関羽の質問に呂布は即答する。
「なんだ、いないのか。奉先、お前は相変わらず無知なんだな」
「無知じゃない!知らないだけだ!」
「それを世間では無知と言うのだが……」
「違う!知らないのは事実だが、知らない事を恥じたりしないのが俺という男なのだ」
「奉先、自分で自分の事を良く分かってないんじゃないか?」
関羽は呆れた様にため息をつく。
「とにかく、曹操軍と戦える機会があれば戦うさ。それが今の俺の望みでもあるんだから」
「そうか?曹操軍との因縁も深いみたいだし、もっとゆっくり考えても良いと思うんだが」
「いや、むしろ今だからこそ戦いたいのだ。曹操軍と決着をつけるのは今しかないだろうし、今を逃すとまたしばらく会えなくなるかもしれないからな」
「確かにそうかもな。私も曹操軍とは決着をつけたいし、曹操軍を打倒すれば天下は呂布将軍のものだ。曹操軍との戦いで武功を上げれば、一気に将軍への道が開けるはずだ」
「そうだな。その為にも曹操軍とは早めに決着をつけておきたい。そして、その暁には劉備殿を我が軍に迎え入れて、共に天下に号令をかけようではないか」
「そいつはいいな。劉備殿はどう思われます?」
「私は……」
劉備は言葉を詰まらせる。
「劉備殿、無理をなさらずとも結構です。貴方にはもうご家族もいらっしゃるのですから」
「いえ、そういう訳ではないんです。ただ、私は……その、何て言うか、自分が何をしたいのか分からなくて」
「劉備殿、焦る事は無い。これからゆっくりと考えていけば良いではありませんか」
関羽は劉備を諭すが、劉備は首を横に振る。
「いいえ、そうではないんです。私の理想とする道はすでに決まっていて、それは呂布将軍も同じです。私は二人と共に歩んで行きたいと願っているんですけど、私なんかの足手まといになるだけでしょうね」
劉備の言葉を聞いて、呂布は苦笑しながら劉備の肩に手をかける。
「劉備殿、そんな事はありませんよ。劉備殿がいなければ、我々はこうして出会う事も無かったでしょう。劉備殿は我々にとってかけがえの無い方です。劉備殿がいればこそ、私達は互いに支え合う事が出来るのですから」
「そうですよ。劉備殿はもう少し自信を持って下さい。それに私も奉先もまだまだ未熟者です。私達だけでは手に余るほど大きな事を成し得る為にも、劉備殿のお力が必要なんですよ」
関羽の言葉に劉備は深く頭を下げる。
「ありがとうございます」
「劉備殿、そんなにかしこまらないで下さい。それより、呂布将軍はどうなんだ?」
「どうなんだとは?」
「劉備殿の気持ちだよ。呂布将軍の方はどうなんだ?劉備殿の事を大切に思っていないはずが無いだろうが、そこははっきりさせておくべきだぞ」
関羽は呂布に向かって言う。
「奉先、答えてやれ」
劉備からも促され、呂布はうーんと腕を組んで考える。
「まぁ、大切だとは思っている。ただ、劉備殿は曹操軍との戦いにおいて重要な戦力であり、失ってはならない人だからな。劉備殿が望むなら、俺としては全力で協力するつもりだ」
呂布が答えると、劉備は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「じゃあ、奉先は劉備殿に惚れているんだな」
「それは断じて無い!」
関羽の問いかけに対し、呂布はきっぱりと言い切る。
「俺は女に興味がないんだ。だから、劉備殿に対して特別な感情など抱いていない。そもそも、俺みたいな田舎者には過ぎた美人だと思っているくらいだからな」
「へぇ、奉先は面食いだったんだな」
「いや、違う。別に顔とか容姿にこだわりがある訳じゃないんだ。俺はもっとこう、なんて言うかな、人柄に惹かれるというか……」
「はい、分かりました。奉先は劉備殿にベタぼれなんですね」
関羽は笑いながら呂布の言葉を遮ると、盃を傾けた。
「べ、べつにそういう意味で言ったんじゃないって。だいたい、劉備殿だって俺の様な無骨な男より、関羽や張飛の方が好きに決まっているじゃないか」
「そりゃそうだな。張飛と劉備殿ならお似合いだと思うぞ」
関羽は張飛の方を見ながら言う。
「ちょっと待て、兄者はともかくとして、何故この馬鹿と私がお似合いなんだ!?」
「お前らは似たもの同士だろ。見た目がそっくりだし、性格も考え方も似ている。おまけに、張飛は張遼と仲が良いみたいだしな」
「張遼は嫌いだ!あんな奴、すぐにでも叩きのめしてやる!」
張飛は拳を振り上げる。
「まあまあ、張遼は曹操軍の武将の中でも一番の切れ者と評判ですから、そう簡単には勝てませんよ」
「ふん、そんな事はやってみないと分からない!」
「ところで、お前らの出会いはどんな感じなんだ?」
「いきなり話を変えてきたな」
「いや、お前らがあまりにも噛み合わないから気になってな」
「どういう意味だ!」
張飛が立ち上がって怒鳴るが、呂布や劉備の手前なのか、それ以上は何も言わなかった。
「関羽殿の言う通り、張飛さんとは本当に良く似ていたので驚きました。張飛さんの武勇は天下無双と言う噂を聞いていましたし、実際に見て納得しました」
「そんなに凄かったのか?」
「はい。正直、私は負けると思いました。もし戦っていたら、きっと殺されていたと思います」
「そうか。張飛は確かに強いからな」
呂布はうんうんと満足げにうなずく。「関羽殿はどう思いますか?呂布将軍も張飛将軍も揃っていたんですから、曹操軍はさぞかし大変だったでしょうね」
「確かに強かったですが……まぁ、あの時の我々では敵わなかったでしょうね」
関羽は苦笑しながら言う。
「そんなに強いのか?」
呂布が尋ねると、関羽はため息をつく。
「あれだけの強者が二人もいるのですから、曹操軍の将の強さは推して知るべしというところですよ。特に夏侯惇と曹仁、それに許緒の三人は別格でしたね」
「その三人も凄まじかったが、さらに凄いのがいたんだよ」
「ほう、誰だそれは?」
「夏侯淵将軍だよ」
「ああ、なるほど」
呂布はその人物の事を知らなかったのだが、関羽には心当たりがあったらしい。
「知ってるのか、兄者」
「ああ。弓の名人で、戦場での的中率は百発九十九中の一割と言われている。まさに神業と言える名手だ。曹操軍にもこれだけの射手はいないんじゃないか」
「それほどの腕前なら、その方も我が軍に欲しいな。弓の名手はいくらいても困らない」
「そう思って声を掛けたんだけど、断られてしまったよ」
「それは残念だったな。しかし、関羽殿にそこまで言わせるほどの方ですか。是非一度会ってみたかったものです」
「いや、呂布将軍。あいつだけは止めておいた方が良い」
関羽は真剣な表情で言う。
「そういえば、関羽殿は夏侯惇に斬りかかられていましたよね。その時の事ですか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...