三国志英雄伝~呂布奉先伝説

みなと劉

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21話

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その為に呂布は全身全霊をかけて呂布軍を率い、自らの肉体を駆使して曹操軍を蹴散らして道を作るのだった。
だが、それは無謀でしかなかった。
呂布軍の精鋭達であっても多勢に無勢であり、まして曹操軍の精鋭十万の前には為す術も無く敗走するしか無かった。
いかに武勲を誇る豪傑達でも十倍の兵を相手に戦うのは難しく、それが天下無双の呂布であっても変わりは無かった。呂布軍は曹操軍の包囲網を突破し、呂布自身も重傷を負いながらもかろうじて曹操の本拠地である許都まで辿り着く事に成功したものの、それ以上は進む事が出来なくなっていた。
傷を負いながら戦場に立っていた呂布だったが、ついに限界を迎えてしまい落馬してしまったのだ。
その後の記憶が定かではなかった。おそらく気を失ってしまい、その間に呂布の治療を行ったのだろうと思われる。
呂布が目を覚ました時には、既に戦いが終わっていた。
曹操は追撃戦を行う余裕があるにもかかわらず、それを行わなかった。
それは何故なのか。呂布にはその理由が分かる。
呂布の身体の怪我は酷いものだったが、致命傷を負っているわけではない。治療を受けて数日安静にしていれば回復するようなものであるにも関わらず、曹操が攻め込んで来ないという事は、曹操軍にとってこれ以上の戦闘は無駄であると判断しているのかもしれない。だとしたら、それは呂布にとっては好都合である。曹操軍との戦いを避ける為にも、呂布は無理をして起き上がる事はしない方が良いのだ。
曹操が何を考えているのかは分からないが、少なくとも呂布に攻撃を仕掛けてくる事はなかった。曹操が呂布と一騎打ちを行いたいと思っている事や、その勝敗の結果によっては曹操軍が敗北する事まで考えていたかどうかは定かではないが、呂布軍にとっても曹操軍にとっても大きな損失が無い状況を作り出す事には成功したのである。
陳宮と張遼にとって曹操軍の陣中に留まる事が最大の安全策であり、また張遼が呂布と共にいる事も重要であり、張遼も曹操軍に投降する事になった。陳宮の言う通り曹操軍と戦うよりも逃げる事を選んだ張遼ではあるが、陳宮としては不満であった。
呂布や張遼のような武将であればそう簡単に討ち取られる事もなければ人質として利用される事も考えにくい事であり、さらに言えば今の曹操軍は袁紹の軍として参戦しているのだから、もし呂布や張遼を討ち取ったとしてもその責任は袁紹にあると言う事も出来る。陳宮は曹操の弱気と慎重さを甘く見ていたのだが、袁紹はもっと強気に出て曹操と呂布の両方を捕らえてしまうべきだったと後悔していた。
この二人は共に徐州攻略において名を挙げた人物なのだから、曹操軍の士気低下にも影響したであろうし、場合によっては呂布の子供達の命が脅かされる事もあったのだから。
もちろん袁紹はこの二人が討たれる様な事があれば、この二人に勝てる者はいないのだから仕方ないのだが、その事を言い訳にしても始まらない。袁紹と曹操は共に袁紹軍の諸将と顔を合わせていたのだが、その中で唯一人曹操だけが顔を青ざめさせていた。張遼は呂布の妻を盾に取られ、仕方なく降伏している。その張遼を捕虜にせず解放するとあれば、人質を取る事が前提となっている曹操軍の士気が崩壊する。
いや、崩壊しなかったにせよ人質を取っている曹操軍に対して警戒心を持ってしまう。その隙に曹操軍が呂布の妻を人質に取り、それでようやく呂布が降伏したというのがこれまでの展開だ。その事を忘れたわけでは無いが、呂布軍の行動には驚かされる。
「さすがにこれは曹操も驚いた事でしょう」
呂布の陣営にて、呂布と陳宮が話をしていた。
陳宮が驚くのも当然と言えば当然で、今回の戦はあまりにも予想外な事が多い。
まず最初に呂布の妻達が曹操軍の手に渡ったのも想定外だが、その直後に呂布本人が包囲されていながら突破してきた。その呂布自身が重傷を負うと言う予想外の事ではあったが、それでも妻達の身の安全を確保する事に成功して呂布本人はここまで辿り着いた。
そして、曹操軍を前にして降伏し、こうして曹操の客将として扱われているのも想定外でしかない。
曹操は袁紹からの命令を受けていて、呂布達を迎え入れたのは曹操の意思ではない。曹操自身は袁術の元に援軍に向かっていたのだが、その途中袁紹から呂布討伐の命令を受けていたのだが、袁紹はそれを断って引き返して曹操の援軍に来たのである。袁紹としては最初から曹操ではなく袁紹の方こそが主力であって、それを悟られないためにわざわざ呂布と戦ってまで呂布を挑発して呼び寄せていたのだ。
この事実を知っているからこそ、曹操は自分の判断だけで動いていいのか迷っているらしいのだ。
いくらなんでもここで曹操軍まで敵に回してしまえば勝ち目はないのは明らかだし、そもそも曹操は呂布を憎んでなどいない。むしろ逆で尊敬しており、是非とも味方にしたいと思ってもいる。呂布の率いる軍勢を蹴散らすだけなら簡単だが、曹操軍を相手にしても呂布軍は決して弱く無い。それに何より呂布自身がいる。いかに曹操が大軍を預かっているとは言え、正面切って戦うには危険すぎる相手だった。
呂布軍との決戦を避けたかった理由は他にもあり、それを理由に曹操軍を動かさないで欲しいと袁紹からも言われている。曹操軍が動かない限り、呂布は敵になる事も無く、むしろこちらに好意的になっているので曹操軍に対する攻撃は行わないと約束してくれた。
そんな風に呂布と話しながら、陳宮は思う。
これが呂布奉先という男なのだと。
これまで陳宮は曹操と呂布の対決については曹操の勝利に軍配を上げていたが、それは呂布と直接対決していない事が大きかった。だが、いざ直接対決すればこれほど恐ろしい男はそうはいないだろう。
今の時点での呂布と互角かそれ以上の実力を持っていると思われる猛者は呂布の義弟である劉備か、あるいは公孫賛あたりだろうか。しかし呂布の場合、天賦の才と言うより地道な努力によって身に付けたものだと思う。だからこそ、その強さは本物であるのだ。
ただでさえ強い上に、それをさらに上回る武威を持つ存在がいないからこそ呂布の恐ろしさは際立つのだ。もしもこの場に関羽か張飛のどちらかでも居たらと思うと、それだけで震え上がりそうになる。あの二人の豪傑であっても、呂布の足下にも及ばない。
もっとも陳宮は、呂布よりも遥かに優れた武将を一人知っている。その人物にさえ、呂布と張遼では対抗出来ないのではないかと思っていた。
もし曹操が徐州侵攻の際に呂布の妻の身柄を要求せずにいれば、この徐州攻めは呂布の敗北に終わっていたはずだ。いやそれ以前に張遼が曹操軍に投降する事もなく、呂布は単身袁紹の元へ向かい袁紹を討つ事も出来たかもしれない。
呂布がここまでやってこれた最大の要因が、妻の身にあったと言える。呂布軍は曹操軍を目の前にして曹操軍と戦う事無く逃げ去ったので、曹操軍も深追いしなかった。
張遼に関しては、呂布の妻や子供達の身を案じてくれた事もあり投降したが、曹操軍も捕虜にした張遼の妻や子供を人質として確保するくらいの事は行っている。
張遼は妻と子を見捨てる事が出来ず、やむなく曹操軍に降った。もし呂布が妻や子供を守る事なく徐州攻めを行っていたら、今の状況は無かったかもしれない。陳宮としても自分の策が全て失敗に終わる事を考えればゾッとするのだが、だからと言って徐州を攻めずに済んだとは思えない。
陳宮にとって最も避けなければならないのは、呂布を失う事だ。呂布を失ってしまうと袁紹と戦う理由が無くなってしまうばかりか、下手をすると呂布を頼って呂布と共に天下統一を目指した事さえも無意味なものになってしまう。そうなると袁術との戦いにおいて呂布に頼り切りになって袁紹軍の二の舞を演じてしまう事になるのだから。
その点においてだけは、この徐州攻囲戦の中で曹操と意見が一致していた。呂布は袁紹に捕らえられるのが最も危険なのだが、だからといって袁紹の元へ向かわせる訳にもいかない。曹操にとっても、この徐州における最重要人物は呂布なのだ。
この徐州において最強の存在は呂布である。呂布がいなくなった場合、この国に存在する呂布以外の最強の人物を呼んで来ない限り呂布は止められない。その呂布を止める事が出来る唯一の方法は、呂布を上回る武勇の持ち主を用意する以外に無いのだ。
「曹操殿」
呂布が曹操に声をかける。
「おお、呂布将軍。お体の方は?」
曹操は笑顔で迎えたものの、やはり不安は隠せない様子で尋ねる。
曹操は内心、いつ呂布の攻撃を受けるのか気が気ではなかったらしく、こうして対面するまで生きた心地のしない時間を過ごしたらしい。それでも表情に出すまいとしているところが実に曹操らしいところだと、呂布は思っていた。
実際、曹操自身も驚いているのだ。今まで自分が仕えてきた主君は袁紹であり、その袁紹は呂布と直接敵対していた訳ではない。
それどころか呂布には何度も煮え湯を飲まされているにも関わらず、袁紹はこの徐州への侵攻に際して呂布討伐の号令を出す事を渋っていた。それもこれも呂布の武勇を恐れていたからなのであるが、同時にそれ故にこそ自分なら呂布に勝てると思い込んでいたらしい。
そんな自信など一瞬で消し飛んでしまったのが、この呂布との会見であった。実際に戦った曹操だからこそ分かる事だが、今の呂布に正面切って戦うのは非常に危険だった。少なくともこの徐州攻めにおいては無理だろう。曹操軍といえども全軍でかかっていったところで、とても敵う相手ではないのだ。まして呂布が率いている軍師は曹操もよく知る陳宮なのだから、いかに曹操でも勝利は難しい戦いになるだろう。しかも今回はその陳宮までも同行している。万全の状態ならまだしも、怪我をした状態の呂布であれば十分に勝ち目があると言えた。
そんな呂布がわざわざ声をかけに来たので、曹操の緊張はさらに高まる。「まず、ご報告しなければならない事があります。俺の妻達ですが……残念ながら、この中に居る者はおりません」
陳宮は呂布の言葉を聞くなり舌打ちをする。
おそらくは呂布が何か企んでいるのだろうと思っていて予想通りではあったのだが、あまりにも想像通りの答えだった事に失望したのだ。
さすがにそれを聞いて動揺したのは陳宮だけでは無く、曹操も顔色を変えて絶句してしまっている。陳宮の思惑は外れて曹操の期待通りに話は進んだと言えるが、これはあくまで作戦上必要であって曹操と協力するつもりは全く無かった。
そんな事とは知らない呂布は、曹操に続ける。
「妻は、曹操軍の手に落ちました。我が妻だけでなく他の妻子も同様に囚われています。俺は、袁紹と決着をつけねばならぬ理由が出来てしまいました。その事を伝えておくためにも、曹操殿のお力を借りたくお願い申し上げます。妻達の奪還には、必ず曹操殿の力が必要になりましょう。是非とも、力を貸すと言っていただきたいのです。どうか、よろしくお願いします!」
呂布は深く頭を下げる。
「あ、いや、呂布将軍! 頭を上げられよ。分かり申した。私の名にかけて妻と子の救出に協力いたそう。それでよろしいかな? 陳宮殿、いかがか?」
曹操も呂布の申し出は意外だったが、妻の身と聞いて黙ってはいられなかったようだ。そして、陳宮に対しても確認を取る。
陳宮は小さく鼻を鳴らす。曹操は袁紹と戦う大義を得たが、それはあくまでも曹操にとって都合の良い話だ。呂布の妻の救出は曹操にとって大きな利があるが、それが全て曹操の物になったと言うわけではない。そもそも曹操は呂布の妻を欲していた訳ではなく、徐州攻めの際に保護しようとしただけだ。それを呂布の妻を救出する為に徐州を攻めるなど、曹操にしてみれば迷惑極まりない。それにいくら呂布の妻の身柄を確保するのは、曹操の目的と一致していたとしてもだ。呂布が曹操に協力する事で曹操軍が勝利したとしたら、曹操の狙いは大きく逸れてしまう。そうなると、妻を救出しようと考える曹操は妻を人質にしてまで呂布を袁紹の元へ向かわせようとするはず。妻の身が危ないのは同じ事である。むしろ今以上に妻の命が危ぶまれる。その点については、曹操よりも陳宮の方が分かっているはずだ。
陳宮はその辺りの事情は理解した上で、あえて口を開く。どうせこのまま何も言わなくても、曹操は呂布の妻を人質として利用しようと考えるのは目に見えていたからだ。
「その件は了解しました。呂布将軍、お礼を申し上げるのはこちらの方。これで私の目的は達成されましたので、後は妻達を解放してもらえれば文句は無いでしょう」
この発言には曹操だけではなく、呂布と張遼と李典以外の全員が驚いた顔をする。
確かに陳宮としては最初からこの程度の事しか考えていなかった訳で、それこそ問題無いと言えばそれまでなのだが、それでもここまであっさりと受け入れられる事になるとは思ってはいなかったらしい。
「ちょっと待ってくれないか? まさか、本気で言っているのか?」
思わず声を上げたのは曹操だった。
「私は冗談を好まないもので」
陳宮が澄まし顔で答える。
「それこそ正気の沙汰とは思えないのだが」
曹操の疑問に、陳宮が返す。
「何事も無ければ、それでも良かったのですがね。今はそういう訳にもいかないんですよ。この呂布は徐州の民の為に曹操軍へ立ち向かうと言いましたが、その言葉が虚言でなければ妻を助けに行く必要があります。呂布将軍の言葉に偽りがないのでしたら、妻を助けるのに協力してください。その為の手段を選ばず邪魔をする者は排除する事を認めてもらいますからな」
この提案に対し、曹操はすぐに答えが出せなかった。
もし本当に陳宮の言う通りだとすると、陳宮の言い分は極めて危険な思想を持つ人物を野放しにしたまま、天下取りに参加させるようなものである。しかも呂布と行動を共にしているのだから、いつ寝首をかくか分からない相手と一緒に行動しているのと同じ事になる。曹操にとっても許せる話では無かった。
しかし、それを認めるのであれば陳宮の策に乗るのが一番手っ取り早い事は事実でもある。曹操が認めたくなかったのは、自分の意思を無視して曹操の思惑だけで事が運ぶと言う事だった。
「陳宮よ、その条件は俺に対する侮辱ではないか。我が妻は貴様ごときにくれてやるつもりはないぞ。我が妻は妻であると同時に呂布軍の軍師、その軍師が敵に捕らえられている以上は、我が自ら助け出すのは当然の事であろう。まして呂布将軍の妻なれば、その救出の為であれば我が全力で助力するのは至極当然の事」
夏侯惇が怒りの表情で、声を上げる。
「いや、俺からも頼む。曹操殿の妻とあれば俺の妻も同然、見捨ててはおけない」
荀イクがそれに続く。
その反応を見て、陳宮も少しだけ笑みを浮かべる。陳宮はこの瞬間を待っていたのだ。
本来なら曹操軍に寝返った呂布軍の武将や兵士も、曹操軍の手で救出しなければいけないのだが、それはあまりに危険過ぎる事なので陳宮自身がそれを認める訳にいかなかった。だが、呂布と陳宮の個人的な関係に頼んでも無理だろうと思っていたので、この夏侯惇の反応はかなり予想外ではあった。曹操も、この場で呂布を袁紹の元へ送り出すような発言をしてしまった事を悔やんでいた。呂布が袁紹の陣営に居る事自体は予想していたが、袁紹がそこまでの暴挙に出ているとは思っていなかったのだ。袁紹なら妻の一人くらい、いくらでも好き勝手に出来る立場ではある。
そんな曹操の思考を読んでいた陳宮は、曹操に向けて挑発的な視線を向ける。曹操は陳宮がこんな大胆な作戦を考えるとは想像もしていなかったので、内心では相当動揺していたりする。
曹操としてもこのまま黙っていると、呂布の妻と子を救う為に袁紹の元へ赴こうと考えている事が周囲に知れ渡ってしまう。それではもはや後戻りは出来ない。そう考えると、ここは呂布と共闘して袁紹の暴走を止める方が得策だと言える。
曹操としても、ここで引く訳には行かない理由が出来てしまったのだった。
曹操軍が呂布軍との協力を受け入れる事になった頃、袁紹は曹操と敵対すると決断した。
これは、呂布が曹操の所に居た時から予測されていた事態でもあった。呂布軍は徐州防衛に失敗し、結果として呂布は家族を失いかけた。それはつまり呂布は徐州の人々を守る為に戦ったが失敗したと言う事であり、徐州の人々の恨みを買ったのである。それは徐州だけでなく、袁術の徐州攻略の妨げになるばかりか曹操の狙いを阻む結果となり、曹操に付け入る隙を与えてしまう。
徐州の人達にとっては、自分達を守ってくれた英雄の家族を見殺しにしたと言う事になる。これに関しては呂布は弁解の余地は無く、また徐州の人であっても弁護できる様な話ではないので仕方が無い事ではあるが、呂布の妻子を救出する事に協力すると言う名目で曹操が兵を出す事で徐州の人々の溜飲を下げる事が出来る。
曹操は呂布の妻の身柄を確保するのを建前にして、妻達を救出する事で劉備への牽制を行う。その目論見は成功していた。
一方、張飛は自らの妻である劉氏と、その弟の娘である劉協を連れて脱出を試みていた。
劉氏は張飛の妻ではあるものの、同時に皇帝の血を引く者である為、劉氏を連れて行く事は人質として有効であった。
そして、張飛と呂布は関羽と共にその脱出の手助けを行っていた。
ただ、呂布としては曹操に協力を求められた事で迷いが生じていた。
曹操が信用できないと言うよりは、曹操が協力を求めた方法が引っかかっていたのである。
陳宮の策によって、呂布と曹操の間に微妙な空気が流れてしまっているのは確かだったが、それでも曹操には大きな利がある事は呂布にも分かっていた。
そもそも呂布は徐州攻めに反対した張本人であって、本来であればその身内に手をかけると言うのであれば真っ先に狙われてもおかしくない。曹操にしても、その事は十分理解しているはずである。
しかし、曹操はその事について一切言及していない。
陳宮は呂布と曹操の二人から話を聞いて、曹操は自分一人だけで呂布の妻子の奪還に成功し、曹操は陳宮の提案に乗る事が出来た、と言う状況を作り出したいのではないかと考えていた。その提案に乗らなければ、この一件は単なる言い争いで済む。
しかし、その提案に乗ってしまえばどう考えても陳宮の思う壺なのである。
その陳宮の考えを読めば読むほど、陳宮と曹操の思惑が一致する。
曹操からすると、この一戦の勝利のために必要な人材の確保に曹操は成功した事になる。しかも曹操自身が動くと大々的に喧伝する事が出来るので、これによって曹操の名は高まる。
対して呂布にしてみれば自分の手で妻を取り戻せる事は確かなのだが、そのために大勢の兵を死なせる事になりかねない事は問題と言えなくもない。だがそれこそが陳宮の策なのであって、それを分かった上で引き受ければ陳宮に利用される事を意味するのだが、それに気付かずに了承すれば陳宮の思惑通りとなる。
これが陳宮の目論みかと、ようやく気付いた。
曹操はあえて、呂布の妻と子を救うのを条件に呂布を引き入れるのではなく、あくまで協力者の立場に留める事によって呂布の行動を制限して自分の意図通りになるようにしている。
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