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第七話: 忘れられた記憶
しおりを挟む秋山たちは田中の話を元に、神田教授が行っていた実験の真相を解明するため、さらなる調査を進めることにした。教授が関わった他の参加者や、実験の記録を探し出すことが急務だった。
「次は、教授が実験に使っていた施設を探りましょう。」桜井が提案した。「彼がどんな場所で実験を行っていたのか、何が行われていたのかを知ることができれば、より多くの手がかりが得られるかもしれません。」
「それなら、大学の内部文書を調べる必要がありますね。」秋山は頷いた。「教授の研究室のアーカイブがあれば、実験の記録や参加者のデータが見つかるかもしれません。」
彼らは大学に戻り、教授の研究室を訪れることにした。研究室のドアを開けると、薄暗い室内には古い本や資料が散乱しており、かつての活気は感じられなかった。教授の姿が消えた後、すべてが静まりかえっているかのようだった。
「どこから手をつけるべきか……。」長谷川が周囲を見渡しながら呟いた。
「まずは机の上の書類を確認してみましょう。」秋山が提案し、教授のデスクに近づいた。書類の束を引き寄せ、目を通す。中には実験の計画書や参加者の情報が含まれていた。
「これだ。」秋山が一枚の書類を取り上げた。「ここに、実験参加者の名前と、それぞれの実験内容が記されている。」
山田が覗き込むと、数名の名前が書かれていた。その中に田中の名前もあった。さらに、他の参加者の名前を確認し、知っている顔を見つける。
「この中に、田中の友人もいますね。彼とも連絡を取ってみるべきです。」長谷川が言った。
資料をもとに、彼らは他の参加者に連絡を試みることにした。時間をかけて一人ひとりに連絡をし、最終的に三人の参加者が彼らの話を聞くことに応じてくれた。
数日後、指定したカフェで彼らと会うことになった。緊張した面持ちで集まった参加者たちの中には、疲れた顔をした女性、和田と、落ち着いた雰囲気の男性、森田がいた。田中も同行し、彼らは互いに紹介し合った。
「私たちは神田教授の実験について調査をしています。」秋山が切り出すと、和田が目を丸くした。
「私たちのことを話しているのですか?」彼女は驚いた様子で聞いた。
「そうです。私たちは、教授の実験がどのように行われていたのか、何が問題だったのかを知りたいのです。」桜井が補足した。
森田はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。「私たちの実験は、ただの心理実験ではありませんでした。実際には、教授は私たちを通じて何かを学ぼうとしていた。私たちの行動を観察し、特定の条件下での反応を記録していたのです。」
「何か特別な目的があったのですか?」秋山が質問すると、森田は頷いた。
「教授は『人間の限界』についての研究をしていたと聞きました。私たちがどれだけのストレスに耐えられるのか、意識を操作できるのかを探っていたのです。最初はその意図を理解できませんでしたが、実験が進むにつれて、私たちの行動が変わっていくのがわかりました。」
和田は顔をしかめながら言った。「私も、実験が終わった後、しばらく普通に戻れませんでした。何度も同じ夢を見たり、妙な気分に襲われたりしました。誰かが私たちを見ているかのような、不安な感覚が抜けませんでした。」
田中も頷いた。「私たちが何を感じていたのか、教授は理解していたはずです。だからこそ、実験を続けたのでしょう。」
一行は、実験が与えた影響の深さにショックを受けていた。彼らの話から、教授の実験が単なる心理学の枠を超えたものであり、参加者たちに深刻な影響を与えていたことが明らかになった。
「私たちはもう、その実験のことを忘れたかったのです。」和田が声を震わせた。「でも、何かを知りたい気持ちもあります。私たちが体験したことを明らかにしなければならないという気持ちが、胸の奥にあります。」
秋山は決意を新たにし、彼らに頼んだ。「私たちがこの事実を掘り下げて、教授がなぜそんなことをしたのかを明らかにしよう。あなたたちの力が必要です。」
彼らは頷き、互いに協力することを約束した。この新たな結束は、彼らが直面するさらなる真実の探求を支える力となるだろう。
秋山たちは、教授の実験の真相に迫るため、次のステップに進む決意を固めた。彼らの行動が、忘れられた記憶の扉を開くことにつながるのだと信じて。
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