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9話
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真一郎と二人きりで歩く帰り道は、どこか特別な静けさに包まれていた。神社で過ごした時間の余韻がまだ心の中に残っていて、言葉を交わさなくても、僕たちはそれぞれが考えていることをなんとなく察しているようだった。
「なあ。」
ふいに真一郎が声を出した。夜道に響くその声は低く、少しだけ緊張が混じっているように聞こえた。
「何?」
僕が答えると、彼は一瞬言葉を詰まらせたようだったけど、やがて視線を前に向けたまま言った。
「俺、ちゃんと考えたよ。お前がいてくれるから、俺はどこに行っても平気だって思えた。でも……。」
その「でも」に、僕は立ち止まってしまった。真一郎も歩みを止めて、振り返る。その顔には、迷いと、それを振り切ろうとする決意が同居していた。
「でも、お前がいるこの町を離れるのが怖い。」
その言葉に、僕の胸が締め付けられる。彼がこんなふうに感情を露わにするのは珍しい。真一郎は強くて、いつも堂々としているから、こんな弱音を聞いたのは初めてかもしれない。
「俺も、怖いよ。」
僕は正直に答えた。
「お前がいなくなるなんて考えられない。でも、だからって、お前の夢を止めたくない。」
自分の声が震えているのが分かった。真一郎にどう思われるかなんて考える余裕はなかった。ただ、自分の気持ちを伝えることだけに集中していた。
真一郎は驚いたように僕を見つめ、それから少しだけ笑った。その笑顔には、これまで見たことのない優しさがあった。
「お前、本当に優しいよな。」
彼はそう言うと、ふいに僕の手を取った。
「えっ……?」
突然のことに驚いて声が出たけれど、彼は手を離さなかった。温かくて、少し力強いその感触に、僕はどうしていいか分からなくなった。
「こうしてると、何とかなる気がする。」
真一郎は少し照れくさそうに言いながら、僕の手を握る力を強めた。
僕は何も言えなかった。言葉が見つからない。けれど、不思議とその沈黙が心地よかった。真一郎の手の温もりが、僕の心をそっと包み込んでくれるようだった。
そのまましばらく歩き続けた後、真一郎がふいに立ち止まり、僕を振り返った。
「なあ、俺……。」
彼の声が低くなり、視線が少しだけ揺れている。僕はじっと彼を見つめた。
「どうした?」
少し緊張して尋ねると、真一郎は小さく息を吸い込み、それから真剣な表情で言った。
「お前のこと、ずっと特別だと思ってた。俺にとって、ただの幼馴染以上の存在だって。」
その言葉に、僕の心臓が大きく跳ねた。彼の真っ直ぐな目が僕を捕らえ、逃げ場を失った気分になる。でも、不思議と嫌じゃなかった。
「俺、こんなこと言っていいのか分からないけど……お前が好きだ。」
真一郎の告白は、夜の静けさに溶け込むように響いた。一瞬、時間が止まったように感じた。頭の中が真っ白になる。だけど、次の瞬間には自分の口から言葉が零れていた。
「……俺も。」
それだけしか言えなかった。でも、それで十分だったみたいで、真一郎は少しだけ笑った。そして、ふいに顔を近づけてきた。
「いい?」
彼が静かに尋ねる。その声に含まれる優しさと少しの不安に、僕は静かにうなずいた。
次の瞬間、彼の唇がそっと僕に触れた。それは驚くほど柔らかくて、温かくて、短いけれど永遠のようにも感じられる時間だった。頭の中はぐるぐると混乱していたけれど、心は静かに満たされていくのを感じた。
唇が離れると、真一郎は少し照れくさそうに目をそらした。でも、手だけはしっかりと僕の手を握ったままだった。
「これから、どうなるんだろうな。」
真一郎がぽつりとつぶやいた。
「分からない。でも、どこに行っても、お前と一緒なら大丈夫だと思う。」
僕がそう言うと、真一郎は嬉しそうに笑った。その笑顔を見た瞬間、僕は確信した。これからどんな未来が待っていようと、真一郎となら乗り越えていけると。夏の夜風が二人を包み込み、どこか遠くで虫たちの声が響いていた。
「なあ。」
ふいに真一郎が声を出した。夜道に響くその声は低く、少しだけ緊張が混じっているように聞こえた。
「何?」
僕が答えると、彼は一瞬言葉を詰まらせたようだったけど、やがて視線を前に向けたまま言った。
「俺、ちゃんと考えたよ。お前がいてくれるから、俺はどこに行っても平気だって思えた。でも……。」
その「でも」に、僕は立ち止まってしまった。真一郎も歩みを止めて、振り返る。その顔には、迷いと、それを振り切ろうとする決意が同居していた。
「でも、お前がいるこの町を離れるのが怖い。」
その言葉に、僕の胸が締め付けられる。彼がこんなふうに感情を露わにするのは珍しい。真一郎は強くて、いつも堂々としているから、こんな弱音を聞いたのは初めてかもしれない。
「俺も、怖いよ。」
僕は正直に答えた。
「お前がいなくなるなんて考えられない。でも、だからって、お前の夢を止めたくない。」
自分の声が震えているのが分かった。真一郎にどう思われるかなんて考える余裕はなかった。ただ、自分の気持ちを伝えることだけに集中していた。
真一郎は驚いたように僕を見つめ、それから少しだけ笑った。その笑顔には、これまで見たことのない優しさがあった。
「お前、本当に優しいよな。」
彼はそう言うと、ふいに僕の手を取った。
「えっ……?」
突然のことに驚いて声が出たけれど、彼は手を離さなかった。温かくて、少し力強いその感触に、僕はどうしていいか分からなくなった。
「こうしてると、何とかなる気がする。」
真一郎は少し照れくさそうに言いながら、僕の手を握る力を強めた。
僕は何も言えなかった。言葉が見つからない。けれど、不思議とその沈黙が心地よかった。真一郎の手の温もりが、僕の心をそっと包み込んでくれるようだった。
そのまましばらく歩き続けた後、真一郎がふいに立ち止まり、僕を振り返った。
「なあ、俺……。」
彼の声が低くなり、視線が少しだけ揺れている。僕はじっと彼を見つめた。
「どうした?」
少し緊張して尋ねると、真一郎は小さく息を吸い込み、それから真剣な表情で言った。
「お前のこと、ずっと特別だと思ってた。俺にとって、ただの幼馴染以上の存在だって。」
その言葉に、僕の心臓が大きく跳ねた。彼の真っ直ぐな目が僕を捕らえ、逃げ場を失った気分になる。でも、不思議と嫌じゃなかった。
「俺、こんなこと言っていいのか分からないけど……お前が好きだ。」
真一郎の告白は、夜の静けさに溶け込むように響いた。一瞬、時間が止まったように感じた。頭の中が真っ白になる。だけど、次の瞬間には自分の口から言葉が零れていた。
「……俺も。」
それだけしか言えなかった。でも、それで十分だったみたいで、真一郎は少しだけ笑った。そして、ふいに顔を近づけてきた。
「いい?」
彼が静かに尋ねる。その声に含まれる優しさと少しの不安に、僕は静かにうなずいた。
次の瞬間、彼の唇がそっと僕に触れた。それは驚くほど柔らかくて、温かくて、短いけれど永遠のようにも感じられる時間だった。頭の中はぐるぐると混乱していたけれど、心は静かに満たされていくのを感じた。
唇が離れると、真一郎は少し照れくさそうに目をそらした。でも、手だけはしっかりと僕の手を握ったままだった。
「これから、どうなるんだろうな。」
真一郎がぽつりとつぶやいた。
「分からない。でも、どこに行っても、お前と一緒なら大丈夫だと思う。」
僕がそう言うと、真一郎は嬉しそうに笑った。その笑顔を見た瞬間、僕は確信した。これからどんな未来が待っていようと、真一郎となら乗り越えていけると。夏の夜風が二人を包み込み、どこか遠くで虫たちの声が響いていた。
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