僕と真一郎

みなと劉

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夏の夜、神社の境内に響く賑やかな音が、僕の心をそわそわとさせた。毎年この季節になると開かれる夏祭りは、町の人々にとって一大イベントだ。今年も例外ではなく、境内は提灯の灯りに包まれ、屋台が並び、楽しげな声がそこかしこに溢れていた。焼きそばや金魚すくい、ヨーヨー釣りといったお馴染みの屋台に混じって、どこか懐かしい飴細工やお面屋も姿を見せている。

僕は友人の真一郎と共に、その喧騒の中を歩いていた。彼とは幼馴染で、何度もこの祭りに一緒に来ているけれど、今年は何かが違う気がした。年々忙しさが増す中で、こうしてじっくり話せる時間も減っていたせいかもしれない。

「今年は花火、どこから見るつもりだ?」
真一郎が笑いながら問いかけてきた。彼は背が高くて、どこか余裕のある雰囲気を纏っている。僕とは正反対で、その自信満々な態度が少し羨ましかった。

「やっぱり例年通り、神社の裏手かな。あそこ、意外と人が少ないし、花火がよく見えるんだよ。」
僕が答えると、真一郎は小さく頷きながら屋台の方に目を向けた。焼きとうもろこしの匂いが漂ってきて、僕たちは足を止めた。彼が買ったとうもろこしを二人で分け合いながら、境内の端を目指して歩く。

やがて、神社の裏手に到着した。そこは鬱蒼とした木々に囲まれた静かな場所で、境内の喧騒からは少し離れている。僕たちは地面に腰を下ろし、夜空を仰いだ。

「お前、最近どうなんだ?」
真一郎がふいに尋ねた。僕は一瞬言葉に詰まりながらも、正直に話し始めた。大学の勉強が忙しいことや、将来に対する漠然とした不安。真一郎はただ頷きながら僕の話を聞いていた。

「まあ、何とかなるさ。」
彼が笑顔で言ったその時、夜空に一発目の花火が上がった。大きな音と共に、鮮やかな光が空を彩った。僕たちはしばらく言葉を失い、ただその美しさに見入っていた。

花火は次々と打ち上げられ、その度に真一郎は「すげぇな」と感嘆の声を上げていた。僕もその感動を共有しながら、ふと彼の横顔を見た。提灯の灯りと花火の光が交互に彼の表情を照らし、少しだけ大人びて見えた。

「お前が心配してることも、結局こうやって時間が解決するんだよ。」
彼の言葉に、僕は自然と頷いていた。彼の言う通りかもしれない。花火が消えていく儚さと、次々と上がる新しい光。すべてが一瞬で、でもその一瞬に全てが詰まっている気がした。

夏の夜風が少し冷たくなり、祭りの喧騒が徐々に遠のいていく頃、僕たちは静かに立ち上がった。この時間も、僕たちの中で大切な一瞬として残り続けるだろう。

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