上 下
40 / 100

40話

しおりを挟む
それが気持ち良いのか目を細めてとても心地良さそうにしていた。
それを微笑ましく見ていたアゼルレッド達だったが俺がずっとこのままというわけにもいかないため離れることにした。
だがクロエちゃんはすぐには泣き止んでくれずしばらくの間そのままの状態が続いた。

***

それからしばらくしてやっと落ち着いたようなので再び話し始めることにしよう。
ちなみにクロエがここまで落ち着いていられる理由としては、彼女が元々人よりも感情の起伏が激しくないということもあるのだろうがそれよりも、彼女の母親がかなりの実力者でありさらに母親の方が遥かに強くその上彼女に対して愛情を持って接していたという理由があった。
そんな母親の教育方針として彼女は常に物事に対して客観的に見ることを徹底的に学ばされていたのだ。
なのでこの状況であっても焦ることなく落ち着くことができたのである。
そんなことは拓海はもちろん知る由もない。
だが拓海にとっては幸運なことであった。
もしもそのことが無ければ拓海の頭は大パニックに陥っていただろうからである。何故ならクロエは美少女と言って差し支えのないほどの見た目をしているのだから。
そして今はその容姿端麗のクロエが自分の膝の上に座っているという状況が彼を緊張させていたのであった。
そのおかげでいつも通りに振舞うことができていたとも言える。
ただしクロエは拓海のことを好意的に見ている為でこのような行動をとってしまったのであるが。
とはいえ流石に慣れて来たようで会話が出来るまでには回復したのだが。「それでそろそろいいかしら?あなたたちのことについて教えて欲しいのだけど」
リーシャ王妃様はようやく話が聞けるとばかりな口調で言ってきた。
ただそれを受けて答えるのは難しい質問でもあった。
というのも今の状況を説明しようにもその方法がないし仮に説明ができたとしても信じることなどできないだろうと思う。
なにせ今この世界には勇者と呼ばれる人間がいるのだから。
そして彼らは魔王を倒しにいったはずなのだから。
そして何より俺達が生きているということはありえないことであるし。
「そうですね。信じてもらえないでしょうがまず私たちは異世界からやってきたんです」
そこで俺はとりあえず嘘をつくことにすることに決めた。
別に本当であることを正直に言う必要はどこにも無いと判断したのだ。
むしろその話をすると確実に警戒されてしまい最悪殺される可能性もあると思ったのだ。
ただでさえ俺の力が異常なのはもう皆がわかってるんだからな。
もちろんそれだけじゃないが。
だから一番簡単な方を選ぶ事にしたのである。
それに今の状況を整理するという意味も込めて一旦頭の中を真っ白にしたかったのだ。
だからこの国についての知識が無いということをうまく使えれば何かぼろを出してくれるのではないかという希望もある。
ただ問題はその知識が全く無いというのがバレた場合だな。
まぁなんとかなると信じたいところではあるがもしそうでなければその時考えればいいか。
今はそれよりも情報を手に入れないといけないし。
「あちらの世界の言葉で言えば召喚されたということになりますね」
さすがにこの一言だけでは足りないと思い、更に追加していく。
そしてここで問題なのはどの単語で話すかということだ。
なるべく俺の世界の言葉に置き換えていきたいがそれもまた難しいものがある。
なんたって言葉自体を知らない可能性があるのだから。
(どうするか・・。そもそも漢字や平仮名なんて存在しないかもしれないんだよな。それにカタカナにしても知らない可能性が高い)
そうなってくると考えられるのは日本という国の固有名詞を使うことである。
つまり俺が住んでいた日本の名前を使ってしまうということ。
そうすれば少なくとも俺たちに敵意がないことぐらいはわかるはずだ。
そう思った俺は日本人ならばほぼ知っているであろう名前を言ってみることにした。
「日本には昔から妖怪や神様といった類の存在がいたとされているんですよ。その中には当然ですが俺たちのような普通の人間もいました。なのでそういう意味で言ったらこっちでいう所の妖精とか精霊と同じ扱いになりますかね」
そう、この世界にもいるとされる空想上の生き物や神などの存在。
だがそれらは全て想像上であるはずだ。
だからこそこの言葉が使えると考えた。
「そういえばそちらのお嬢さん方はお二人とも背中にある羽根のようなものが見えているのですけど」
すると突然後ろを振り向いたかと思ったらこちらを見つめてくる。
もしかして見えるのか?
もしかしたら見えないと思ってたんだけどやっぱり普通に見えるんだな? でもアゼルレッド王の反応をみる限り見えてるというよりは気付いてたという表現が正しいんだろうな。
確かに言われてみればこんな子供にまでその存在を隠したりする意味がないよな。
いやまて、待て!
もしかして、もしかしなくてもアゼルレッド王にはまだばれてないとかいうオチはないよね?
まさか本当に俺にしかみえてなかったりしないかな?
うわーまじですか。
それは結構精神的にきついですよ。
だってまだ小さい女の子にそんなもの見えたら気味悪がられてお嫁にいけないかもしれませんから!
よし、決めたぞ。
この件については絶対に言わないようにしよう。
それがいい!
うん絶対そうした方がいい!
というかこれはある一種の賭けだったりするからな。
「えっとすみません。俺には彼女達の羽は見れていないのでわからないですね」
とぼけることで何とか誤魔化すことに成功したようだ。
ふぅ~良かったぜ。
これで変に怪しまれて殺されなくて済むからな。
いや流石にそんなことは起きないだろうが念のためだ。
ちなみにその後リーシャ王妃様に色々と聞かれたが適当に答えることでやり過ごすことができた。
ただこの世界のことについては何も知らなかったことが露呈してしまったがそれでも大体の情報を手に入れることができた。
その中でも特に重要なことをいくつかピックアップしてまとめていこうと思う。
まず一つ目はこの国はレイリア王国といい。
ここの国の王がアゼルレッド=アースレットという名前だということだ。
そして次に魔法という概念が存在していることだろう。
なんでも魔物と戦うために開発された力なんだそうだ。
そして最後にこれが一番驚いたのだがこの世界では人以外の動物達全てが魔力を持っているのだという。
そして彼らが持つ能力の中には空を飛ぶことができる者もいるのだそうだ。
もちろんただ飛ぶだけではないらしいのだが。
(例えば犬なら匂いをたどることが可能だとか馬なら走る速度が速くなったりとか。鳥は空中での高速移動が可能な他風を読むこともできるのだとか)
ただ中には例外もあって。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...