始まりの恋

第2章 友情の軌跡

第144話: 新たな挑戦と小さな成長

翌朝、合宿の3日目が始まった。日差しが徐々に強くなる中、演劇部は今日も朝から全体練習に取り組んでいた。昨日の夜、千秋と交わした話を胸に、美咲は少し自信を取り戻し、積極的に練習に参加することを決意していた。

今日の練習は、劇中での動きやジェスチャーを磨くことに焦点が当てられていた。台詞を覚えるだけでなく、キャラクターとして自然に振る舞うことが求められる。美咲も、これまで少し躊躇していた身振り手振りに挑戦する決意をした。

「大丈夫、美咲。自分の動きや感情に正直になればいいんだ」と心の中で自分に言い聞かせ、舞台の中心で自らの役になりきって動き始めた。手を大きく広げたり、足を踏みしめたり、心の底から湧き上がる感情を表現しようと意識しながら演技を続けた。

練習が進む中、顧問の先生が美咲の方に近づき、「美咲、今の動き、とても良かったよ。昨日と違って、しっかりと感情が伝わってきた」とほめてくれた。美咲は思わず照れながらも、「ありがとうございます」と笑顔で応えた。

千秋や仲間たちも、その様子を温かい眼差しで見守っていた。「美咲、なんか今日いつもより輝いてるよ！」と声をかけてくれた千秋に、美咲は照れくさそうに「昨日、ちょっと相談に乗ってくれたおかげかな」と感謝の気持ちを伝えた。

午後の練習では、全員での通し稽古が行われた。チーム全体が一つになってシーンを進めていくと、メンバーたちも徐々に息が合い、スムーズに場面が展開されていった。美咲も、少しずつ自分の役に馴染んでいくのを感じていた。

練習が終わり、夕食の時間。みんなで集まり、楽しい食事の時間を過ごしながら、美咲は仲間たちとの絆がさらに深まっていることを実感していた。この合宿での経験が、彼女にとって大きな成長の一歩になっていることを感じつつ、心の中で感謝の気持ちをかみしめた。

「明日も、今日以上に頑張ろう」と静かに決意を新たにする美咲。その思いは、確かな自信へと変わりつつあった。