先生と俺

みなと劉

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第62話

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家に帰ると、いつものように母さんがキッチンで夕飯の準備をしていた。
俺は、制服を脱ぎながら「ただいま」と声をかけると、母さんが振り返って「おかえり」と返してくれた。
「今日、体育の授業でね」と話しかけると、母さんは興味津々な表情で耳を傾けてくれた。
「ストレッチとか柔軟の授業だったんだけど、先生が『正しい方法でやらないと筋を痛める』って教えてくれたんだ。だから、今日はいつも以上に慎重にやってみたんだよ。」
「そうだったのね」と母さんがにっこり笑いながら
「ちゃんと先生の言うことを聞いてやってるなんて偉いわ。ストレッチは大事だからね」
と褒めてくれた。
俺は少し照れくさくなって、笑いながら
「そうだね。なんだか体が軽くなった気がするよ」
と言った。

母さんは
「それは良かったね。体をしっかり動かして、怪我しないようにするのが一番大事だものね」
と優しく言ってくれた。
その言葉に、俺はまた頷き、今日の授業がいかに大事だったかを改めて実感した。
「夕飯の準備、手伝うよ」
と言うと、母さんが
「ありがとう。でも、今日はもうほとんどできてるから、あとはお皿を並べてくれる?」と言った。
俺は「了解!」と元気よく返事をして、テーブルの準備を始めた。
こうして、俺たちの日常がいつもと変わらず、穏やかに過ぎていった。

明日は土曜日で休み。
今回は先生と約束などはしていないので
図書館で読書をしてみようと思う。
土曜日の朝
自転車で図書館に向かう。
図書館の静かな空間で、俺は手に取った本をじっくりと眺めた。
『現代読書で学ぶ化学と錬金術』というタイトルは、まるで現代科学と古代の神秘が交差する場所へ俺を誘っているようだった。
俺は本を持って、近くの座席に腰を下ろし、ページをめくり始めた。
序章には錬金術の歴史が簡単に説明されていた。錬金術は、中世ヨーロッパで生まれた、物質を変換し、貴金属を作り出そうとする試みだという。
化学の基礎がまだ発展していなかった時代、人々は魔法や神秘的な力で物質を操ることができると信じていた。

読み進めていくうちに、錬金術師たちがどのように実験を行い、どのような成果や失敗を重ねていったかが詳しく書かれていた。
驚くべきことに、錬金術のいくつかの技術が、現代の化学の基礎となっているという事実が書かれていた。
たとえば、金属の精製や蒸留技術、さらには薬草の抽出方法など、錬金術の実践が現代科学に少なからず影響を与えたのだ。
俺はその本に引き込まれ、時間が経つのを忘れるほど集中して読んでいた。
化学と錬金術がどのように結びついているのか、そしてその背後にある人々の探求心や信念が、俺の心に深く響いた。
途中、錬金術師たちが「賢者の石」という伝説の物質を求めていたことを知った。
それはすべての物質を黄金に変え、さらに不老不死の力を持つとされていたが、現代科学から見れば、それは到底実現不可能な夢物語だ。
しかし、錬金術師たちはその夢を追い求め、何世代にもわたって研究を続けていたという話に、俺は不思議な感動を覚えた。

そんなことを考えながら、俺はふと先生のことを思い出した。
先生なら、この本について何を思うだろうか? 錬金術と化学の関係について、先生と話してみたいという気持ちが芽生えた。
結局、その本を借りることに決めた俺は、図書館の静かな空間を後にした。
自転車にまたがり、風を感じながら家に帰る途中、頭の中にはさまざまな思いが巡っていた。次に先生と会うとき、この本について話してみよう。
そして、化学と錬金術の不思議な関係について、さらに深く知ることができたらいいなと思いながら、家路を急いだ。
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