先生と俺

みなと劉

文字の大きさ
上 下
50 / 89

第50話

しおりを挟む
観覧車のゴンドラに乗り込み、ゆっくりと動き出す景色を眺めながら、俺はさっき先生が話していた「コニーアイランド」について、もう少し詳しく知りたくなった。

「先生、さっきの『コニーアイランド』って、どんな場所なんですか?」
俺はそう尋ねた。
先生は窓の外に目をやりながら、懐かしそうに語り始めた。
「コニーアイランドは、ニューヨークのブルックリンにある半島で、19世紀後半から20世紀前半にかけて、アメリカで最も有名なリゾート地の一つでした。もともとは静かなビーチだったんですが、1870年代頃から遊園地やリゾート施設が建設され始め、大勢の人々が訪れるようになりました。特に、20世紀初頭には多くの画期的なアトラクションが登場し、コニーアイランドは『世界の遊び場』とも呼ばれるほどに成長したんです。」

俺は、そんな歴史ある場所が今でもニューヨークに存在することに驚いた。

「コニーアイランドでは、初めてのループ型のジェットコースターや、世界初の観覧車などが作られました。
まさに遊園地の歴史を象徴する場所ですね。
ただ、第二次世界大戦後は次第に衰退していき、今では当時の栄華を知る人は少なくなってしまいましたが、それでもなお、多くのアメリカ人にとっては特別な思い出の地なんです。」
先生の話を聞いていると、コニーアイランドがただの遊園地ではなく、アメリカの歴史の一部を担っている場所だと感じた。

「すごいですね…そんな歴史がある場所なら、行ってみたくなります。」
と俺が言うと、先生は微笑んで頷いた。
「もし機会があれば、ぜひ訪れてみるといいですね。コニーアイランドのビーチや遊園地は、歴史的な場所としても、今なお多くの人々に愛され続けていますから。」

その時、ゴンドラが観覧車の頂上に差し掛かり、俺たちの目の前には遊園地全体が見渡せる絶景が広がった。
俺は、少しだけ高所のスリルを感じながらも、先生との会話に夢中だった。
先生が俺の隣にそっと移動してきて、優しく手を握ってきた瞬間、心臓が一気に跳ね上がった。

「先生…?」と小さくつぶやく声が自然に出てしまった。

先生の手のぬくもりが伝わってきて、どうしようもなくドキドキしてしまう。
先生は微笑んでいるけれど、その笑顔がいつも以上に優しく感じられて、余計に俺の心をざわつかせる。
(先生は男だし、俺だって男だ。それなのに、どうしてこんなに意識してしまうんだろう…?)
自分の感情が理解できなくて、戸惑う。先生の手の温かさに心が安らぐ一方で、どうしようもなく胸が高鳴ってしまう。
観覧車がゆっくりと頂上から下り始め、外の景色が少しずつ変わっていくけれど、俺の心は先生の存在だけでいっぱいだった。

(この気持ちは一体なんなんだろう…?)

その問いの答えを探そうとするが、結局見つからないまま、俺はただ先生の手を感じ続けていた。
観覧車を降りた後も、胸のドキドキする感覚と、先生の手の温もりが頭から離れなかった。
自分でもどうしてこんなに意識してしまうのか理解できないまま、俺は何事もなかったかのように振る舞おうと決めた。
「先生、日本の遊園地や有名なジェットコースターって、どんな歴史があるんですか?」
と、少し気持ちを落ち着かせるために質問を投げかける。

先生はいつものように微笑みながら、俺の問いに応えてくれた。
「日本の遊園地の歴史は、江戸時代の見世物小屋や庶民の遊び場にルーツがあります。
現代の形に近い遊園地ができたのは明治時代で、外国から取り入れた要素が多いんですよ。
そして、ジェットコースターについてですが…」
先生の説明は、やはり分かりやすく、興味深い。話を聞くうちに、少しずつ胸の高鳴りが収まっていくような気がした。
「日本初のジェットコースターは、戦後に建てられたもので、その後、どんどん新しい技術が取り入れられ、世界でも有数のコースターが登場するようになりました。
例えば、富士急ハイランドの『FUJIYAMA』や、ナガシマスパーランドの『スチールドラゴン2000』などは、世界的にも有名です。」

先生の話を聞きながら、俺は徐々に元の自分を取り戻していく。
先生の知識に触れるたびに、やはりこの時間がかけがえのないものだと感じる。
「ありがとうございます、先生。やっぱり先生に聞いてよかったです。」
そう言いながら、俺は少しだけ笑顔を見せた。先生の知識と優しさに触れたことで、また一つ、貴重な思い出が増えた気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

処理中です...