先生と俺

第31話

次の日、学校に着くと、俺はすぐに先生を見つけた。
先生はいつものように教室で授業の準備をしていた。
俺は昨日調べたことを話すために、先生のところへ歩み寄った。
「先生、昨日、牛乳について色々調べてみました。戦後の日本では、栄養不足を補うために学校給食で牛乳が推奨されたんですね。
それに、牛乳が体に良いか悪いかは、人それぞれの体調や状況によって違うみたいです。」

先生は俺の言葉に耳を傾けながら、微笑んで頷いていた。
そして、俺が話し終えると、先生は柔らかい口調で答えた。
「正彦くん、しっかりと調べてきましたね。確かに、牛乳は栄養価が高い一方で、人によっては消化に問題がある場合もあります。
戦後の日本で牛乳が重要視された背景には、栄養不足という切実な問題がありました。しかし、時代が進むにつれて、食生活も多様化し、牛乳に対する考え方も変わってきました。
だからこそ、今の時代には、個々の体に合った食事が求められるんです。」
先生の説明を聞きながら、俺は自分が調べた内容がただの情報以上のものであることに気づいた。
これが先生の教えなんだ、と心の中で思いながら、さらに話を続けた。
「先生、僕が調べた限りでは、牛乳の摂取量も大事みたいですね。飲みすぎは逆効果になることもあるって。」

先生は頷きながら答えた。

「その通りです。何事もバランスが大切です。正彦くんが調べたことは、今後の食生活にもきっと役立つはずですよ。」
この会話を通じて、俺はまた一つ学びを深めることができた。
先生と話すことで、自分の知識が確かに広がっていると感じられて、心から嬉しかった。
授業が始まり、国語の時間となった。
今日の題材は「春は曙」、『枕草子』の有名な一節だ。
教室が静まり返り、先生が黒板の前に立って説明を始めた。

「『春は曙』は、清少納言が春の朝の美しさを描写した部分ですね。この時代の貴族たちがどのように自然を感じ取っていたのかがよくわかる箇所です。」

先生は、まず冒頭の「春は曙」の一文を黒板に書き、そこから丁寧に意味を解説していった。

「『春は曙』とは、春といえば曙、つまり夜明けが最も美しい時間であるという意味です。
空が次第に明るくなり、山の端が白んでくる様子を、当時の人々は非常に風流だと感じていたんですね。」
先生の話し方は、いつもと同じくとても聞き取りやすく、静かでありながら心に響くものがあった。
俺はその説明を聞きながら、目の前に広がる風景を想像してみた。
先生の言葉が、まるで絵画を描くかのように、頭の中に鮮やかな朝の景色を浮かび上がらせた。
「清少納言は、この時代の自然の美しさや四季の移ろいを敏感に感じ取っていました。
『枕草子』には、彼女がその感性を文章に落とし込んだ素晴らしい描写が多く含まれています。」
先生は続けて、曙以外にも、春の花や草木の様子を清少納言がどのように捉えていたかについても話してくれた。
その話を聞くうちに、俺は国語の授業が単なる勉強以上のものに感じられ、心が少しずつ豊かになっていくような気がした。

授業が終わる頃には、春の曙の美しさが鮮やかに心に刻まれていた。
先生の説明のおかげで、俺は『枕草子』という古典文学が、単なる文字の羅列ではなく、生き生きとした風景と感情を描き出す芸術であることを実感した。