異世界転移した俺は万能スキルでスローライフを謳歌する

365 朝起きて朝食の支度を

朝の静寂を壊さぬよう、慎重にベッドを抜け出した。リッカが柔らかい呼吸を続けているのを確認し、俺はそっと部屋を後にする。彼女は寝顔も美しい、まさに麗人という言葉がぴったりの女性だ。リッカはいつも俺のことを“麗人さん”と呼ぶ。その言葉を思い出すたび、胸の中に暖かさが広がる。

廊下を抜け、リビングダイニングへと足を運ぶ。キッチンに近づくと、何やら微笑ましい気配を感じた。扉を開けると、そこにはエプロンを身に着けたエリクスとチャリオットが待っていた。

エリクスは俺を見るなりにこりと笑い、「おはよう、兄貴」と声をかけてきた。彼の短い金髪は朝日を受けて輝き、まだ少年の面影を残す表情には頼もしさが漂う。

「おはようございます、女神さま」とチャリオットが続けた。彼はエリクスと対照的に落ち着いた雰囲気を持ち、深い青の瞳はどこか神秘的だ。俺を女神と呼ぶのは相変わらずだが、その敬意が込められた言葉に少しだけ苦笑を浮かべる。

「おはよう、二人とも。準備はどうだ？」

今日は特別な朝食を作る日だ。サワークリームを使ったシチューを作ることになっている。濃厚で滑らかな味わいのシチューは、リッカのお気に入りだ。エリクスは手際よく野菜を切り分け、チャリオットはサワークリームを器に移している。

「兄貴、材料は全部揃ってるぜ。あとは火にかけるだけだ」とエリクスが言い、俺に鍋を手渡す。

「ありがとう、エリクス。手伝ってくれて助かるよ」

俺はガスコンロに火をつけ、丁寧に具材を加えていく。香ばしい匂いが漂い始め、キッチンはすぐに温かな雰囲気に包まれた。チャリオットはそっと俺の横に立ち、鍋を見守っている。

「女神さまの作る料理は、いつも特別ですから」と彼が静かに言った。

リッカが目を覚ましたとき、リビングに広がるこの香りでどんな顔をするのか想像しながら、俺は朝のひとときを楽しんだ。