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僕の顛末
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マリスに強烈に魅せられ、身動きが出来ない様な恋に落てしまった。
偽物の恋人関係を解消したいと告げられる不安を常に抱えながらも二人の時間を大切にしたいと思っていた。
つい心配をしては自己嫌悪になる。
以前は声を聞くだけで嬉かったのに、今はそれでは満たされない。
彼を自分のものにしたいと望んでしまう。
マリスと関わった人達はみんなこんな気持ちになるに違いない。
…………
だんだんと外が薄明るくなってきている気がした。
まだ起きるには早すぎる時間だ。
優はそっと起き出した。
そんな時「優眠れなかったのか?」
マリスがかすれた声で話しかけてきた。
優は驚いて「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
「ううん」
マリスはまだ眠そうだ。まどろむ感じが強烈に色っぽい。
もちろん優は一睡もできなかった。
「まだ寝ててくださいね」
ドギマギして言いながらもマリスに触れてみたくてたまらない。
何の反応もなく、気にもせずマリスは眠っている。
獅子人さんとは夜どんなふうに過ごしていたの?
また余計な想像して嫉妬してしまう。
嫉妬をしては苦しい思いをしてばかりの自分に呆れる。
マリスが自分に求めるのはきっと安心感。
弟のような気楽な存在でいてほしいのだ。
でも優は、あのエレベーターでのキスが忘れられない。
求められてないことはわかっている。
自分ばかり悶々としている。
優は昨晩、いつもの居酒屋にマリスを誘い、かなりお酒を呑んで終電を逃しマリスのマンションに泊めてもらった。
もちろん終電の時間を間違えて逃したのは、わざとだ。
おまけに酔っ払いの演技をして無理矢理押しかけた。
「色々お世話になりました。家に帰って支度するので帰ります」
メモを残して帰ろうと支度しているとマリスが目を覚ました。
「帰るのか?簡単な朝食準備するよ。コーヒーでいいか?」
少しでも一緒にいたい優はマリスの言う通りにした。
シャワーを借り浴び終えて出てくるとコーヒーのいい香りとバタートーストと卵があった。
マリスと向かいあって朝食をとる。
二人きりの夢の様な至福のひととき。時間が止まればいいのにと思う。
「食器を片付けますので、マリスさんもシャワー浴びてきてください」
「片付けは、俺がするからもう帰れ、遅刻するぞ」
「僕は重役出勤オッケーですから、嘘です、時間はまだありますから片付けて帰ります。マリスさんも支度をしてください」
マリスがシャツを着替える時、滑らかで白い肩と綺麗な背中がチラリと見えて、ドキドキするしかなかった。
服越しではなくて、もっと全部見たいし、素肌に触れてみたい。
こうしてマリスと一緒にいられるだけでも贅沢なことなのに、自分がこんなにもマリスに触れたいと切実に思っている事がばれてしまったら引かれてしまうかもしれない。
…
酔っ払ったふりして泊めてもらった日から会えなくて二週間が過ぎた。
マリスさんは不必要に電話やメールをしない。
声が聞きたくて用もないのに電話したくなる自分とは違う。
会えない日々はとてつもなく長く感じる。
負担になりたくなくて極力我慢している。
来週は3週間ぶりにいつもの場所で食事する約束を取り付けた。
嬉しくてわくわくしている。
そうしてマリスさんと食事をするためにやってきたいつもの場所に獅子人がいきなり現れた。
どうやってこの場所や時間を知ったのか?
嫌な汗が出た。
しかもまるで僕のことなど眼中にない。
存在をまる無視され腹が立つというより、僕が獅子人の存在感に圧倒されて、放心状態。
気がついたら何もできず、何も言えなかった自分のあまりの不甲斐なさに涙が込み上げた。
何よりショックだったのはマリスさんはすんなり僕のことより獅子人さんを優先させて僕にはまた連絡すると言い残して二人は一緒に消えた。
目の前でマリスさんを掻っ攫われたのに、また今回もただぼうせんと見送った。
僕の足は自然にマリスのマンションに向かっていた。
どうすることも出来ないことは分かっている。
もしかしたら獅子人とやり直すことになったかもしれない。
二人が抱き合う姿を想像して胸が苦しくなる。
複雑な思いで、マンションを挟んだ向かいの歩道で優は何時間も佇んでいた。
獅子人がマリスのマンションから出てくる事はなかった。
二人きりになった部屋で獅子人がマリスに何をするかくらいは自分にもわかる。
優はマリスが恋しくて、涙が溢れた。
その日の夜はマリスを想って眠れなかった。
自分はこれからどうしたいのか考える。とにかく彼のそばにいたい。マリスに必要とされたい。
次の日優は、いてもたってもいられず再びマリスのマンションに向かった。
震える指でマリスの携帯に電話をかけた。
とにかく会いたかった。電話がつながる。
「優、昨日はいきなり帰ってごめん、一人にして悪かった」
「あの……」
マリスの声を聞いた途端動揺して何も言えない。
「どこにいるんだ?」
電話の背景の音に違和感を感じる。マリスは電話は切らずにマンションの外に出てみた。
マンションのエントランスの端に優が立ち尽くしていた。
「ここで何してる?」
「すいません。いきなり来てしまって、僕はすぐ帰ります、ただ確認したかったんです」
マリスの顔を近くで見ると嘘のように言葉が出てこない。やっとのことで出てきた言葉…
「マリスさん、獅子人さんとはやり直すんですか?」
言葉が震えて涙が出そうになるところを必死で堪えた。
マリスは話し始めた。
「やっぱり優にはちゃんと話さなきゃいけないな」
「俺は、俺の意思で獅子人と寝た」
「………」
「俺を好きだと言ってくれた優を傷つけることだって自覚してる。そもそも獅子人とヨリを戻せない様にするために付き合うだなんて甘えてるとしか言いようがない。本当にすまない、俺は情けなくて弱い人間だ」
「俺達は…ここまでにしないか」
そこで優が遮った。
「それ以上言わないで、、僕は本当にマリスさんが好きなんです。あなたしか見えなくなってしまった。獅子人さんとは何をしようとかまいません。僕と離れることはもう少し猶予をください。マリスさんが僕から離れたいと思った時は、黙って従うつもりでした。でも今の僕には出来ません。どうかもう会わないなんて言わないでください」
泣きながら優は必死にマリスにすがりつき訴えた。
「優、こんなことになってごめん」
優の切なる思いが伝わってきてマリスも胸が痛くなる。
「ごめんな、やっぱりだめだ。俺達もうやめよう」
「マリスさんはもう僕の思い出になってしまうんですね」
マリスは何も言わずに優を柔らかく抱きしめた。
抱きしめてもらった優は、涙が溢れる。
最後の抱擁だと確信した優は胸がしめつけられていた。
偽物の恋人関係を解消したいと告げられる不安を常に抱えながらも二人の時間を大切にしたいと思っていた。
つい心配をしては自己嫌悪になる。
以前は声を聞くだけで嬉かったのに、今はそれでは満たされない。
彼を自分のものにしたいと望んでしまう。
マリスと関わった人達はみんなこんな気持ちになるに違いない。
…………
だんだんと外が薄明るくなってきている気がした。
まだ起きるには早すぎる時間だ。
優はそっと起き出した。
そんな時「優眠れなかったのか?」
マリスがかすれた声で話しかけてきた。
優は驚いて「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
「ううん」
マリスはまだ眠そうだ。まどろむ感じが強烈に色っぽい。
もちろん優は一睡もできなかった。
「まだ寝ててくださいね」
ドギマギして言いながらもマリスに触れてみたくてたまらない。
何の反応もなく、気にもせずマリスは眠っている。
獅子人さんとは夜どんなふうに過ごしていたの?
また余計な想像して嫉妬してしまう。
嫉妬をしては苦しい思いをしてばかりの自分に呆れる。
マリスが自分に求めるのはきっと安心感。
弟のような気楽な存在でいてほしいのだ。
でも優は、あのエレベーターでのキスが忘れられない。
求められてないことはわかっている。
自分ばかり悶々としている。
優は昨晩、いつもの居酒屋にマリスを誘い、かなりお酒を呑んで終電を逃しマリスのマンションに泊めてもらった。
もちろん終電の時間を間違えて逃したのは、わざとだ。
おまけに酔っ払いの演技をして無理矢理押しかけた。
「色々お世話になりました。家に帰って支度するので帰ります」
メモを残して帰ろうと支度しているとマリスが目を覚ました。
「帰るのか?簡単な朝食準備するよ。コーヒーでいいか?」
少しでも一緒にいたい優はマリスの言う通りにした。
シャワーを借り浴び終えて出てくるとコーヒーのいい香りとバタートーストと卵があった。
マリスと向かいあって朝食をとる。
二人きりの夢の様な至福のひととき。時間が止まればいいのにと思う。
「食器を片付けますので、マリスさんもシャワー浴びてきてください」
「片付けは、俺がするからもう帰れ、遅刻するぞ」
「僕は重役出勤オッケーですから、嘘です、時間はまだありますから片付けて帰ります。マリスさんも支度をしてください」
マリスがシャツを着替える時、滑らかで白い肩と綺麗な背中がチラリと見えて、ドキドキするしかなかった。
服越しではなくて、もっと全部見たいし、素肌に触れてみたい。
こうしてマリスと一緒にいられるだけでも贅沢なことなのに、自分がこんなにもマリスに触れたいと切実に思っている事がばれてしまったら引かれてしまうかもしれない。
…
酔っ払ったふりして泊めてもらった日から会えなくて二週間が過ぎた。
マリスさんは不必要に電話やメールをしない。
声が聞きたくて用もないのに電話したくなる自分とは違う。
会えない日々はとてつもなく長く感じる。
負担になりたくなくて極力我慢している。
来週は3週間ぶりにいつもの場所で食事する約束を取り付けた。
嬉しくてわくわくしている。
そうしてマリスさんと食事をするためにやってきたいつもの場所に獅子人がいきなり現れた。
どうやってこの場所や時間を知ったのか?
嫌な汗が出た。
しかもまるで僕のことなど眼中にない。
存在をまる無視され腹が立つというより、僕が獅子人の存在感に圧倒されて、放心状態。
気がついたら何もできず、何も言えなかった自分のあまりの不甲斐なさに涙が込み上げた。
何よりショックだったのはマリスさんはすんなり僕のことより獅子人さんを優先させて僕にはまた連絡すると言い残して二人は一緒に消えた。
目の前でマリスさんを掻っ攫われたのに、また今回もただぼうせんと見送った。
僕の足は自然にマリスのマンションに向かっていた。
どうすることも出来ないことは分かっている。
もしかしたら獅子人とやり直すことになったかもしれない。
二人が抱き合う姿を想像して胸が苦しくなる。
複雑な思いで、マンションを挟んだ向かいの歩道で優は何時間も佇んでいた。
獅子人がマリスのマンションから出てくる事はなかった。
二人きりになった部屋で獅子人がマリスに何をするかくらいは自分にもわかる。
優はマリスが恋しくて、涙が溢れた。
その日の夜はマリスを想って眠れなかった。
自分はこれからどうしたいのか考える。とにかく彼のそばにいたい。マリスに必要とされたい。
次の日優は、いてもたってもいられず再びマリスのマンションに向かった。
震える指でマリスの携帯に電話をかけた。
とにかく会いたかった。電話がつながる。
「優、昨日はいきなり帰ってごめん、一人にして悪かった」
「あの……」
マリスの声を聞いた途端動揺して何も言えない。
「どこにいるんだ?」
電話の背景の音に違和感を感じる。マリスは電話は切らずにマンションの外に出てみた。
マンションのエントランスの端に優が立ち尽くしていた。
「ここで何してる?」
「すいません。いきなり来てしまって、僕はすぐ帰ります、ただ確認したかったんです」
マリスの顔を近くで見ると嘘のように言葉が出てこない。やっとのことで出てきた言葉…
「マリスさん、獅子人さんとはやり直すんですか?」
言葉が震えて涙が出そうになるところを必死で堪えた。
マリスは話し始めた。
「やっぱり優にはちゃんと話さなきゃいけないな」
「俺は、俺の意思で獅子人と寝た」
「………」
「俺を好きだと言ってくれた優を傷つけることだって自覚してる。そもそも獅子人とヨリを戻せない様にするために付き合うだなんて甘えてるとしか言いようがない。本当にすまない、俺は情けなくて弱い人間だ」
「俺達は…ここまでにしないか」
そこで優が遮った。
「それ以上言わないで、、僕は本当にマリスさんが好きなんです。あなたしか見えなくなってしまった。獅子人さんとは何をしようとかまいません。僕と離れることはもう少し猶予をください。マリスさんが僕から離れたいと思った時は、黙って従うつもりでした。でも今の僕には出来ません。どうかもう会わないなんて言わないでください」
泣きながら優は必死にマリスにすがりつき訴えた。
「優、こんなことになってごめん」
優の切なる思いが伝わってきてマリスも胸が痛くなる。
「ごめんな、やっぱりだめだ。俺達もうやめよう」
「マリスさんはもう僕の思い出になってしまうんですね」
マリスは何も言わずに優を柔らかく抱きしめた。
抱きしめてもらった優は、涙が溢れる。
最後の抱擁だと確信した優は胸がしめつけられていた。
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