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再出発
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優の父親の経営する会社は、知名度のある中堅企業。
「トヨカ」を退社し、父親の会社に中途入社した優に、周りも全面的にバックアップしてくれて仕事は順調だ。
優の実家は資産家にありがちな権力争いや相続争いとも無縁で家族仲がとても良い。
しかも優の家族は皆「愛に性別は関係ない」とジェンダーレスの考えを持っている。
優が努力して入社した「トヨカ」を辞めて実家に戻り、「僕は同性が好きだ」といきなりカミングアウトした時はさすがに驚かれたが、受け入れられている。
優は幼い頃から父親の会社に全く興味などなかった。
むしろ父とは別の土壌で自立したいと考えていた。
そんな優がその思いを翻して父親の会社に入ったのは、最短で高い地位や権力を手に入れるために他ならない。
無視できない地位と名声を手に入れて、マリスを振り向かせるためでもある。
恐るべし執着心(なんとでも言ってくれ!)
真剣に恋人になりたい!!その想いはブレない。マリスの全てに魅入られているのだ。
そんなマリスの恋人は大企業の「トヨカ」の副社長「豊川 獅子人」
優は相手にもされなかった。
人生初の大失恋を経験した。
恋に破れ会社を辞めマリスから離れた。
会えなくても心の中に彼は住み続けている。
幸か不幸か一生自分の全てが囚われる人に出会ってしまった。
完全無欠の美しい容姿に胸を打ち抜かれ優は性格も含めて考え方まで変わってしまった。
彼のおかげで仕事への意識も高くなり、人との関わり方も変わった。
上昇志向になり意欲が増し何事にも気を抜かず懸命に取り組むようになった。
マリスに失恋してから誰にも魅力を感じず、別の誰かと恋愛するという興味もなくなった。
人に興味を失ったかわりに優は仕事に没頭しどんどんと成功させ、大きな成果を上げ異例のスピードで昇進していった。
マリスには常務になるまで一度も会わなかった。
そしてマリスとの偶然の再会は、会った瞬間に自分の世界が動き出した気がした…
…マリス・獅子人cp side…
マリスは「トヨカ」のトップである社長から呼び出されていた。
社長はマリスの恋人「獅子人」の父親だ。
とうとう来るべき時が来てしまったようだ。
社長がこれから自分に何を言おうとしているのかわかっている。
「トヨカ」の後継者である獅子人とは、いつかは終わりが来ると理解していた。
獅子人は将来は然るべき伴侶を得ないといけないと。
大学時代、後輩だった獅子人から愛を告白された。
当然男性である獅子人を受け入れられなかった。
マリスは戸惑い一時は獅子人を避け遠ざけた。
しかしマリスは心の深いところで獅子人に惹かれていた。
獅子人の揺るぎない想いと情熱、魅力的な容姿や誠実さにも触れ、マリスは獅子人を受け入れた。
獅子人は頭脳明晰、スポーツ万能、学祭で大学のミスターに選ばれる超イケメンでもある。
女子生徒にも人気の的だった。
けれど長い年月付き合っても獅子人はマリスに夢中で脇目も振らず一筋だ。
マリスの方は将来のことを考えて憂いもあったが、獅子人はマリスを盲目的に愛し一生共に過ごしていける道を模索し続けていた。
そんな獅子人の父親が息子の恋人が男性であることを知ってしまった。
跡継ぎの出来ない同性愛など許すはずもなかった。
そして内密にマリスに会った。
類い希な美しい容姿と謙虚な姿勢に彼を人間的には認めたものの息子の恋人となれば話は別で、交際は決して認めなかった。
獅子人の後継者としての立場や責任を説き婚約話が持ち上がっていると伝えマリスに身を引く約束をさせた。
獅子人には問い正さず交際相手のマリスだけに約束させる事は身勝手な事だ。
マリスはそう遠くなく別れの日が訪れることを忘れないようにしていた。
獅子人はそんなマリスの気持ちを察する事など出来なかった。
別れる気などさらさらなく、自分が後継者であることを意識させないようマリスにいつも甘え愛情表現をやめなかった。お互いを想うゆえのすれ違いが大きくなっていた。
獅子人に本格的な縁談が持ち上がる。
相手は大手の家電量販店の令嬢で中学の同級生。
獅子人とは気心も知れており、相手が大変乗り気であるとのこと。
それを伝えられたマリスの苦悩は計り知れない。
獅子人が簡単に別れを受け入れるとは思えないが父親や家族の思いを獅子人も無視出来ないはずだ。
そして覚悟を決めたマリスは獅子人に会いに行った。
獅子人はマリスから別れを切り出され、地獄に落ちるとは思いもしていなかった。
珍しくマリスが獅子人の自宅を訪ねた。
いつもより格段に口数が少なくマリスの曇った表情に獅子人は心配になる。
「どうかしましたか?今日は少し元気がないみたい。疲れてます?少しベッドで横になって」
そう言って後ろからマリスを抱きしめた。
抱きしめるとマリスの魅惑的な香りがふんわりとして獅子人の欲望が顔を出す。
獅子人はマリスの滑らかな首筋に顔をうずめて息を吸い込んだ。
マリスは静かに獅子人に語りかけた。
「今日はお前と真剣な話がしたい。もうずいぶん前から話そうと思ってた」
獅子人の顔色がサッと変わる。さっきまでの甘い雰囲気が激変した。
マリスが何を言い出そうとしているのか察したのだ。
「獅子人、先日社長に会ったよ……。」
獅子人に結婚話が持ち上がっていることを知っていると話し始めた。
「俺はお前のこれから歩む道を一緒に歩くことは出来ない。お前の家族の思いを尊重したい。俺はもう隣にはいれないんだ。」
獅子人は平静を保てるはずもなく
「父に何を言われたかは知りませんが、そんなあっさりきれいごとを言わないでください。結婚話?そんな事知りませんよ。先輩は本当に俺と別れたいんですか?そうならはっきり言ってください」と声を荒げた。
マリスは獅子人の目を見てはっきりと言った。
「獅子人、俺達別れよう」
獅子人は青ざめて唇を噛む。
わなわなと怒りに震えながら目を見開いて言った。
「わかりました先輩、いとも簡単に別れを切り出すんですね。俺の気持ちなんて考えようともしてくれない。父のことを相談もしてくれないなんて酷すぎる。身勝手だ、簡単に答えなんて出せるはずないのに失望しました」
マリスは苦しく切なそうに
「獅子人、ごめん」
小さく呟き静かに獅子人の部屋を出て行った。
獅子人はマリスがいとも簡単に別れを切り出したと怒り心頭だった。
ショックで頭の中がしばらく真っ白になった。
獅子人はマリスからの別れ話に、激昂し心にもないことを口走ってしまった。
正気に戻った獅子人は慌てふためきマリスを追いかけた。
後悔しているマリスがきっと自分を待っているはず。
自分が追いかけてくるのを待っていて抱きしめてくれるはず、獅子人はそう信じていた。
しかしマリスの姿はどこにもなかった。
立ち尽くしたまま涙がとめどもなく流れていた。
獅子人は父親に連絡を取った。
「父さん、マリス先輩に何を言ったんですか。僕が結婚するなんていつ決めたんですか?僕がそれで幸せになれると本気で思っているんですか?」
「お前一人の幸せだけを考えることは出来ない。後継者としての立場や責任もある。お前を心から愛している母さんや姉さん達の気持ちは考えられないのか?マリス君がどんな思いでお前に別れを切り出したのかお前は理解出来ないのか?」
「マリス君とは距離を置きなさい」父親の有無を言わさぬ威厳ある一言だった。
今、獅子人はマリスに会いたくて気が狂いそうだ。
諦めることが出来ず何度も何度も電話した。
掛け直されることもないのに。
……
そんな最中で、優とマリスの再会は偶然だった。
「トヨカ」を退社し、父親の会社に中途入社した優に、周りも全面的にバックアップしてくれて仕事は順調だ。
優の実家は資産家にありがちな権力争いや相続争いとも無縁で家族仲がとても良い。
しかも優の家族は皆「愛に性別は関係ない」とジェンダーレスの考えを持っている。
優が努力して入社した「トヨカ」を辞めて実家に戻り、「僕は同性が好きだ」といきなりカミングアウトした時はさすがに驚かれたが、受け入れられている。
優は幼い頃から父親の会社に全く興味などなかった。
むしろ父とは別の土壌で自立したいと考えていた。
そんな優がその思いを翻して父親の会社に入ったのは、最短で高い地位や権力を手に入れるために他ならない。
無視できない地位と名声を手に入れて、マリスを振り向かせるためでもある。
恐るべし執着心(なんとでも言ってくれ!)
真剣に恋人になりたい!!その想いはブレない。マリスの全てに魅入られているのだ。
そんなマリスの恋人は大企業の「トヨカ」の副社長「豊川 獅子人」
優は相手にもされなかった。
人生初の大失恋を経験した。
恋に破れ会社を辞めマリスから離れた。
会えなくても心の中に彼は住み続けている。
幸か不幸か一生自分の全てが囚われる人に出会ってしまった。
完全無欠の美しい容姿に胸を打ち抜かれ優は性格も含めて考え方まで変わってしまった。
彼のおかげで仕事への意識も高くなり、人との関わり方も変わった。
上昇志向になり意欲が増し何事にも気を抜かず懸命に取り組むようになった。
マリスに失恋してから誰にも魅力を感じず、別の誰かと恋愛するという興味もなくなった。
人に興味を失ったかわりに優は仕事に没頭しどんどんと成功させ、大きな成果を上げ異例のスピードで昇進していった。
マリスには常務になるまで一度も会わなかった。
そしてマリスとの偶然の再会は、会った瞬間に自分の世界が動き出した気がした…
…マリス・獅子人cp side…
マリスは「トヨカ」のトップである社長から呼び出されていた。
社長はマリスの恋人「獅子人」の父親だ。
とうとう来るべき時が来てしまったようだ。
社長がこれから自分に何を言おうとしているのかわかっている。
「トヨカ」の後継者である獅子人とは、いつかは終わりが来ると理解していた。
獅子人は将来は然るべき伴侶を得ないといけないと。
大学時代、後輩だった獅子人から愛を告白された。
当然男性である獅子人を受け入れられなかった。
マリスは戸惑い一時は獅子人を避け遠ざけた。
しかしマリスは心の深いところで獅子人に惹かれていた。
獅子人の揺るぎない想いと情熱、魅力的な容姿や誠実さにも触れ、マリスは獅子人を受け入れた。
獅子人は頭脳明晰、スポーツ万能、学祭で大学のミスターに選ばれる超イケメンでもある。
女子生徒にも人気の的だった。
けれど長い年月付き合っても獅子人はマリスに夢中で脇目も振らず一筋だ。
マリスの方は将来のことを考えて憂いもあったが、獅子人はマリスを盲目的に愛し一生共に過ごしていける道を模索し続けていた。
そんな獅子人の父親が息子の恋人が男性であることを知ってしまった。
跡継ぎの出来ない同性愛など許すはずもなかった。
そして内密にマリスに会った。
類い希な美しい容姿と謙虚な姿勢に彼を人間的には認めたものの息子の恋人となれば話は別で、交際は決して認めなかった。
獅子人の後継者としての立場や責任を説き婚約話が持ち上がっていると伝えマリスに身を引く約束をさせた。
獅子人には問い正さず交際相手のマリスだけに約束させる事は身勝手な事だ。
マリスはそう遠くなく別れの日が訪れることを忘れないようにしていた。
獅子人はそんなマリスの気持ちを察する事など出来なかった。
別れる気などさらさらなく、自分が後継者であることを意識させないようマリスにいつも甘え愛情表現をやめなかった。お互いを想うゆえのすれ違いが大きくなっていた。
獅子人に本格的な縁談が持ち上がる。
相手は大手の家電量販店の令嬢で中学の同級生。
獅子人とは気心も知れており、相手が大変乗り気であるとのこと。
それを伝えられたマリスの苦悩は計り知れない。
獅子人が簡単に別れを受け入れるとは思えないが父親や家族の思いを獅子人も無視出来ないはずだ。
そして覚悟を決めたマリスは獅子人に会いに行った。
獅子人はマリスから別れを切り出され、地獄に落ちるとは思いもしていなかった。
珍しくマリスが獅子人の自宅を訪ねた。
いつもより格段に口数が少なくマリスの曇った表情に獅子人は心配になる。
「どうかしましたか?今日は少し元気がないみたい。疲れてます?少しベッドで横になって」
そう言って後ろからマリスを抱きしめた。
抱きしめるとマリスの魅惑的な香りがふんわりとして獅子人の欲望が顔を出す。
獅子人はマリスの滑らかな首筋に顔をうずめて息を吸い込んだ。
マリスは静かに獅子人に語りかけた。
「今日はお前と真剣な話がしたい。もうずいぶん前から話そうと思ってた」
獅子人の顔色がサッと変わる。さっきまでの甘い雰囲気が激変した。
マリスが何を言い出そうとしているのか察したのだ。
「獅子人、先日社長に会ったよ……。」
獅子人に結婚話が持ち上がっていることを知っていると話し始めた。
「俺はお前のこれから歩む道を一緒に歩くことは出来ない。お前の家族の思いを尊重したい。俺はもう隣にはいれないんだ。」
獅子人は平静を保てるはずもなく
「父に何を言われたかは知りませんが、そんなあっさりきれいごとを言わないでください。結婚話?そんな事知りませんよ。先輩は本当に俺と別れたいんですか?そうならはっきり言ってください」と声を荒げた。
マリスは獅子人の目を見てはっきりと言った。
「獅子人、俺達別れよう」
獅子人は青ざめて唇を噛む。
わなわなと怒りに震えながら目を見開いて言った。
「わかりました先輩、いとも簡単に別れを切り出すんですね。俺の気持ちなんて考えようともしてくれない。父のことを相談もしてくれないなんて酷すぎる。身勝手だ、簡単に答えなんて出せるはずないのに失望しました」
マリスは苦しく切なそうに
「獅子人、ごめん」
小さく呟き静かに獅子人の部屋を出て行った。
獅子人はマリスがいとも簡単に別れを切り出したと怒り心頭だった。
ショックで頭の中がしばらく真っ白になった。
獅子人はマリスからの別れ話に、激昂し心にもないことを口走ってしまった。
正気に戻った獅子人は慌てふためきマリスを追いかけた。
後悔しているマリスがきっと自分を待っているはず。
自分が追いかけてくるのを待っていて抱きしめてくれるはず、獅子人はそう信じていた。
しかしマリスの姿はどこにもなかった。
立ち尽くしたまま涙がとめどもなく流れていた。
獅子人は父親に連絡を取った。
「父さん、マリス先輩に何を言ったんですか。僕が結婚するなんていつ決めたんですか?僕がそれで幸せになれると本気で思っているんですか?」
「お前一人の幸せだけを考えることは出来ない。後継者としての立場や責任もある。お前を心から愛している母さんや姉さん達の気持ちは考えられないのか?マリス君がどんな思いでお前に別れを切り出したのかお前は理解出来ないのか?」
「マリス君とは距離を置きなさい」父親の有無を言わさぬ威厳ある一言だった。
今、獅子人はマリスに会いたくて気が狂いそうだ。
諦めることが出来ず何度も何度も電話した。
掛け直されることもないのに。
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