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萌えるバスケ大会
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トヨカ社恒例の『新入社員歓迎バスケットボール大会』
福利厚生の一環で従業員同士の交流を図るためトヨカ社内の恒例行事として定着している新歓バスケットボール大会は、各部署の威信もかけて大いに盛り上がる。
ただ海外戦略室に限っては出張で出払っていることが多く、近年ほとんどこの大会にエントリーできていない。
残っている人員で他部署と合流して混合チームとして参加するのが関の山だ。
今年は珍しくマリスが選手登録されていた。
副社長率いる事業部チームとマリスが一緒にコートに現れると応援団や観客席がざわついた。
「あれが『チーム雲の上』だよ」
「「「なるほどー」」」
マリスのバスケ仕様の膝下丈の短パン姿は目に毒だ。
嫌でもスタイルの良さが際立つ。
バランスの取れた筋肉、細い足首に白い手足がスラリと長い。
見惚れているのは優だけではない。
スーツ姿のマリスは華奢に見えるから意外な細マッチョぶりに釘付けになっている人多数。まさに視線が集中。
「「脱いだらスゴイ」って言うやつ!!マリス室長の事じゃないの?」
「生足披露もかなりレアだよね」
そんな下世話な会話が聞こえてきて優はイラついた。
マリスのことを良く知らなかった新入社員達の話題にもなっている。
「あの、めちゃくちゃカッコイイ人って誰なの??」
「えぇ知らないの?あれが鬼だと噂の海外戦略室の室長だよ」
「マジか、、」
「あれで鬼なの?神々しいわ」
「鬼カッコイイ」
優はその姿を遠くにとらえて、ときめき過ぎて倒れそうだ。
試合になると応援する女子社員達はさらに大騒ぎだ。
誰かがマリスに声援を送ると堰をきったかのようにが方々からキャアキャアと黄色い声援が飛び交った。
そして試合は期待通りマリスが活躍を見せる。
バスケが不得意なチームメイトがいてもフォローが上手く、どんなボールでも扱って俊敏な動きに相手がついてこれない。トリッキーなシュートを自在にそして華麗に決めて会場を沸かせた。
学生の時、強豪バスケ部の部長を務めていたことは伊達ではないらしい。
チームメイト達はマリスのそばに行き、嬉々として声をかけ、グータッチやハイタッチ、ハグをして盛り上がっている。
遠目でそんな彼らを羨ましそうに見ている応援団。
「イケメン同士のハグって萌えハゲるよね」
「うん萌えるわ」
優も夢にまで見たマリスの姿を見て感激し、瑞々しく躍動する姿にどうしようもなく恋心が萌え上がる。
気持ちに蓋をするつもりが、あんなに魅力的な姿を見せられたら蓋するなんて無理だ。
マリスは決勝戦では選手交代して残念ながらチームは敗退した。
ただ海外事業部の面目は十分に保てたし、決勝試合は副社長の采配で大いに盛り上がった。
そうして新入社員歓迎のバスケ大会は無事に大盛況で終了した。
…
複雑な表情で黙りこくっている優を無理矢理引っ張って、マリオとジュンは居酒屋の個室へとやってきた。
新歓バスケ大会は普段関わることのない部署の従業員と交流も出来て有意義だった。
一色率いるマリオ達の製造部チームは2回戦止まりで結果が残せず目標だった女の子に騒がれる夢は叶わなかったが、今はその事よりも優の暗い顔の理由を問いただしたい。
居酒屋ではビールが次々と運ばれてくる。
「さあ同期の3人組で乾杯だ!」
マリオは明るくその場を和ませる。そしてお酒が進むとジュンが興奮気味でマリスのことを話し始める。
「マリス室長はバスケの活躍も凄かったけど、普段はケン先輩のことを立てるところとかイイよな」
「一番驚いたのは年齢じゃない?どう見ても30過ぎには見えないし、年齢不詳感が半端ない」
優がその話題に大きく反応した。
「僕もひとまわりも年上だって聞いた時はびっくり仰天したよ」
「だからさ優、なんであの場にいなかった優が室長の年とか知ってんの?そろそろ教えてくれよ、室長と優はどういう知り合いなんだ?」
優はとうとう二人にカミングアウトした。
「実は僕は事故の加害者なんだ。被害相手がマリス室長で」
「「何だって?」」
マリオとジュンが声を揃えて叫んだ。
「大学3年の時自転車でマリス室長にぶつかって腕を傷つけて怪我させた」
「それで?それからどうなったんだ!」
「どうもなってない。ただそれだけ。保険会社が全部やってくれたから、事故後は会ってない。マリス室長は気に病まなくていいって言ってくれたし。でも忘れられないんだ。あの日からずっと。事故の日の事が胸に焼きついて離れない。ここに就職したのもマリスさんを追いかけてきた」
マリオとジュンは驚愕な内容にどう返せばいいのか分からなくなった。
「マリス室長が好きでどうしたらいいのか分からない」
優の思わぬ告白に二人は黙り込むしかなかった。
優はマリスへの恋心を忘れられないでいる。
恋人になんてなれるはずがないと理解しつつ諦められない。
もし思いを伝えて玉砕でもしたら気持ちにけりをつけれるだろうか?
ジュン達に、マリスへの想いを打ち明けたことは後悔していない。
かえって知ってもらえて良かったと思っている。
打ち明けた後も二人は何も無かったかのように普段通りに接してくれている。
マリオはとにかく驚いた。
優はひとまわりも年の離れたマリスさんに恋をしている。
しかもきっと叶うはずが無い恋だ。
事故を起こして怪我をさせた相手を好きになるなんてことあるかフツー?
しかも相手は同性。
異性愛者がいきなり同性愛者になるなんて本来ならあり得ないのでは。
自分の恋愛観では思いもよらないこと…男に恋するなんて。
想像してみた…もしマリスさんと恋人になったら?
マリスさんと二人きりで過ごす休日?映画を見たり、食事をしたり、買い物したり、エッチもしたり??
ピャー。
嫌悪感はないけど想像つかない!アリかもなんてちょっとだけ思ってしまったけども。
でもやっぱりどう考えても無理がある。
優に諦めた方がいいぞと言うのは簡単だが、結局何も言えなかった。
ジュンもそうだ。
魅力的なマリスが大学の先輩という事が本当に誇らしい。
でも優の話には驚愕したし、マリス先輩に怪我をさせて好きになるなんて自分的には絶対ダメなことだと思った。
ただ一瞬で恋に落ちてマリスを追いかけてこの会社に入ったというならちょっと怖すぎる。他人がどう反対しようと無駄な気もする。
……
ケンは試合後に社内の駐車場でマリスに会った。
マリスは誰かを待っている様だった。
「おぅ、お疲れさん」
挨拶を交わした後、おもむろにマリスに話しかけた。
「俺が教育担当してる新入社員だけど、この間紹介した奴らの他に、もう一人いるんだがマリスの知り合いみたいなんだ。なんかお前に借りがあるとか言ってたし。やけに意味深な言い方するから気になってな…うちの優ってやつなんだけど知り合いか?」
「優?優、、!?知ってます。多分ですが」「今年の新入社員なんですか?」
かなり戸惑っている。
「マリス?なんだか歯切れが悪いな、優とはどういう知り合いなんだよ?」
「すいません。ケン先輩、今日はこの後、待ち合わせの約束があるので時間が無くて。また後日お話ししますから。教えていただいてありがとうございました」
ケンはマリスの少し苦いような複雑な表情が気になった。
福利厚生の一環で従業員同士の交流を図るためトヨカ社内の恒例行事として定着している新歓バスケットボール大会は、各部署の威信もかけて大いに盛り上がる。
ただ海外戦略室に限っては出張で出払っていることが多く、近年ほとんどこの大会にエントリーできていない。
残っている人員で他部署と合流して混合チームとして参加するのが関の山だ。
今年は珍しくマリスが選手登録されていた。
副社長率いる事業部チームとマリスが一緒にコートに現れると応援団や観客席がざわついた。
「あれが『チーム雲の上』だよ」
「「「なるほどー」」」
マリスのバスケ仕様の膝下丈の短パン姿は目に毒だ。
嫌でもスタイルの良さが際立つ。
バランスの取れた筋肉、細い足首に白い手足がスラリと長い。
見惚れているのは優だけではない。
スーツ姿のマリスは華奢に見えるから意外な細マッチョぶりに釘付けになっている人多数。まさに視線が集中。
「「脱いだらスゴイ」って言うやつ!!マリス室長の事じゃないの?」
「生足披露もかなりレアだよね」
そんな下世話な会話が聞こえてきて優はイラついた。
マリスのことを良く知らなかった新入社員達の話題にもなっている。
「あの、めちゃくちゃカッコイイ人って誰なの??」
「えぇ知らないの?あれが鬼だと噂の海外戦略室の室長だよ」
「マジか、、」
「あれで鬼なの?神々しいわ」
「鬼カッコイイ」
優はその姿を遠くにとらえて、ときめき過ぎて倒れそうだ。
試合になると応援する女子社員達はさらに大騒ぎだ。
誰かがマリスに声援を送ると堰をきったかのようにが方々からキャアキャアと黄色い声援が飛び交った。
そして試合は期待通りマリスが活躍を見せる。
バスケが不得意なチームメイトがいてもフォローが上手く、どんなボールでも扱って俊敏な動きに相手がついてこれない。トリッキーなシュートを自在にそして華麗に決めて会場を沸かせた。
学生の時、強豪バスケ部の部長を務めていたことは伊達ではないらしい。
チームメイト達はマリスのそばに行き、嬉々として声をかけ、グータッチやハイタッチ、ハグをして盛り上がっている。
遠目でそんな彼らを羨ましそうに見ている応援団。
「イケメン同士のハグって萌えハゲるよね」
「うん萌えるわ」
優も夢にまで見たマリスの姿を見て感激し、瑞々しく躍動する姿にどうしようもなく恋心が萌え上がる。
気持ちに蓋をするつもりが、あんなに魅力的な姿を見せられたら蓋するなんて無理だ。
マリスは決勝戦では選手交代して残念ながらチームは敗退した。
ただ海外事業部の面目は十分に保てたし、決勝試合は副社長の采配で大いに盛り上がった。
そうして新入社員歓迎のバスケ大会は無事に大盛況で終了した。
…
複雑な表情で黙りこくっている優を無理矢理引っ張って、マリオとジュンは居酒屋の個室へとやってきた。
新歓バスケ大会は普段関わることのない部署の従業員と交流も出来て有意義だった。
一色率いるマリオ達の製造部チームは2回戦止まりで結果が残せず目標だった女の子に騒がれる夢は叶わなかったが、今はその事よりも優の暗い顔の理由を問いただしたい。
居酒屋ではビールが次々と運ばれてくる。
「さあ同期の3人組で乾杯だ!」
マリオは明るくその場を和ませる。そしてお酒が進むとジュンが興奮気味でマリスのことを話し始める。
「マリス室長はバスケの活躍も凄かったけど、普段はケン先輩のことを立てるところとかイイよな」
「一番驚いたのは年齢じゃない?どう見ても30過ぎには見えないし、年齢不詳感が半端ない」
優がその話題に大きく反応した。
「僕もひとまわりも年上だって聞いた時はびっくり仰天したよ」
「だからさ優、なんであの場にいなかった優が室長の年とか知ってんの?そろそろ教えてくれよ、室長と優はどういう知り合いなんだ?」
優はとうとう二人にカミングアウトした。
「実は僕は事故の加害者なんだ。被害相手がマリス室長で」
「「何だって?」」
マリオとジュンが声を揃えて叫んだ。
「大学3年の時自転車でマリス室長にぶつかって腕を傷つけて怪我させた」
「それで?それからどうなったんだ!」
「どうもなってない。ただそれだけ。保険会社が全部やってくれたから、事故後は会ってない。マリス室長は気に病まなくていいって言ってくれたし。でも忘れられないんだ。あの日からずっと。事故の日の事が胸に焼きついて離れない。ここに就職したのもマリスさんを追いかけてきた」
マリオとジュンは驚愕な内容にどう返せばいいのか分からなくなった。
「マリス室長が好きでどうしたらいいのか分からない」
優の思わぬ告白に二人は黙り込むしかなかった。
優はマリスへの恋心を忘れられないでいる。
恋人になんてなれるはずがないと理解しつつ諦められない。
もし思いを伝えて玉砕でもしたら気持ちにけりをつけれるだろうか?
ジュン達に、マリスへの想いを打ち明けたことは後悔していない。
かえって知ってもらえて良かったと思っている。
打ち明けた後も二人は何も無かったかのように普段通りに接してくれている。
マリオはとにかく驚いた。
優はひとまわりも年の離れたマリスさんに恋をしている。
しかもきっと叶うはずが無い恋だ。
事故を起こして怪我をさせた相手を好きになるなんてことあるかフツー?
しかも相手は同性。
異性愛者がいきなり同性愛者になるなんて本来ならあり得ないのでは。
自分の恋愛観では思いもよらないこと…男に恋するなんて。
想像してみた…もしマリスさんと恋人になったら?
マリスさんと二人きりで過ごす休日?映画を見たり、食事をしたり、買い物したり、エッチもしたり??
ピャー。
嫌悪感はないけど想像つかない!アリかもなんてちょっとだけ思ってしまったけども。
でもやっぱりどう考えても無理がある。
優に諦めた方がいいぞと言うのは簡単だが、結局何も言えなかった。
ジュンもそうだ。
魅力的なマリスが大学の先輩という事が本当に誇らしい。
でも優の話には驚愕したし、マリス先輩に怪我をさせて好きになるなんて自分的には絶対ダメなことだと思った。
ただ一瞬で恋に落ちてマリスを追いかけてこの会社に入ったというならちょっと怖すぎる。他人がどう反対しようと無駄な気もする。
……
ケンは試合後に社内の駐車場でマリスに会った。
マリスは誰かを待っている様だった。
「おぅ、お疲れさん」
挨拶を交わした後、おもむろにマリスに話しかけた。
「俺が教育担当してる新入社員だけど、この間紹介した奴らの他に、もう一人いるんだがマリスの知り合いみたいなんだ。なんかお前に借りがあるとか言ってたし。やけに意味深な言い方するから気になってな…うちの優ってやつなんだけど知り合いか?」
「優?優、、!?知ってます。多分ですが」「今年の新入社員なんですか?」
かなり戸惑っている。
「マリス?なんだか歯切れが悪いな、優とはどういう知り合いなんだよ?」
「すいません。ケン先輩、今日はこの後、待ち合わせの約束があるので時間が無くて。また後日お話ししますから。教えていただいてありがとうございました」
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