3 / 3
Episode3 転生
しおりを挟む
気が付くと、俺は草の上に寝転がっていた。起き上がって見渡すと、辺りは広大な緑の草原が広がり、そこから小さな農場が見えた。ここは明らかに日本ではない…本当に西部劇の世界に転生したのだろうか?俺はわが目を疑った。服装も水色のシャツ・革製ベスト・紺色のジーンズ・黒いテンガロンハットと、如何にも西部劇のガンマンそのものだった。
「…まるで夢を見てるようだ」
「夢じゃないわよ」
俺の隣に女神が立っていた。
「あれ?あんたさっきの…」
「マリア・アテーヌ・アフロディータ・ヘレア・メディーアスよ」
「マリオネアフロデタラメンヘラ…」
「マリア・アテーヌ・アフロディータ・ヘレア・メディーアス‼ちゃんと覚えなさいよ全く‼」
彼女には悪いが、とても覚えられそうにない…。
「え、えぇ~と…名前長すぎるからマリアって呼んでもいい?」
「長すぎるってなによ‼それになんでタメ口なのよ!私、女神よ女神!!」
「わ、分かりましたよ女神様…。ところで、なんでここに?」
「私はあなたを魔法でこの世界に転生させたから、あなたの守り神として君臨したのよ」
「へぇ~守り神かぁ!それは心強い!」
俺は立ち上がり、新鮮な空気を胸いっぱいに吸った。実にうまい空気だ。こんなにいい気持ちになったのは何時ぶりだろうかと、心の奥底から爽やかな気分が込み上げてきた。これから俺の新しい人生が始まるんだと思うと、とてもワクワクする。
「よぉし、それじゃぁ早速冒険に出掛けるとしよう!」
「ちょっと待った!」
突然女神は俺を引き留めた。
「どうしたんだい?」
「お腹減った」
「あぁ、そういえば俺も減ったなぁ…そうだ、あそこに行ってみよう」俺は農場を指さし、一先ず彼女とそこへ向かう事にした。運が良ければ食事を恵んでもらえるかもしれない。
「ちょ、ちょっと待って!私、女神だから人間に姿を見られては駄目なのよ」
「なんで?」
「なんでって、それが神の世界の掟なのよ」
「俺は良いのかい?」
「あなたは一度死んでるもの。それ以外の生きた人間に神の存在を知られる事は禁止されてるの」
俺たち人間が神の姿を見た事ないのは、そういう理由からだろうか…。
「じゃぁ姿を消せば良いんじゃないの?」
「そんな高等な魔法はまだ使えないわよ」
「神様なのに?」
「そ、それは…だって・私、そのぉ…み、みな…だもの…」
声が小さくてよく聞こえない。。
「え?なに?」
「だ、だから、私…まだ見習いなの」
「え?見習い⁉」
「な、なによ!み、見習いでも女神なのよ!魔法だってちゃんと使えるし…た、ただまだ修行中の身ってだけよ…」
神々の世界にもそういった階級があるとは知らなかった。話を聞いたところ、彼女のような見習いの神は、上級神から与えられた任に就き、一流の神としてのスキルを高め、身につけていくのだそうだ。つまりその任というのが、転生させた人間の守り神となる事だった。まるでセールス業だ。
「話は分かったよ。それじゃ他に使える能力はないのかい?」
「そうね…変身だったら出来るわ」
透過よりも変身の方が難しそうな気がするが…。
「変身ねぇ…」俺はどうしようか考えながら腰に手を当てた。すると、腰にある物が無い事に気づいた。
「…なんで拳銃が無いの?」
「だって銃が欲しいなんて言ってないじゃないの」
「いや、西部劇に銃は付き物でしょうよ!」
「知らないわよ観た事ないもん」
「衣装は用意出来てるのに⁉」
「この世界に導いたのはシャイリンポスの神々の力によるものであって、私はあなたに転生する力を与えただけよ。それ以外は知らないわよ」
神様なのになんて無責任なんだ…いや、むしろ神だからなのかもしれない…。シャイリンポスの神々は何故拳銃を持たせてくれなかったのだろうか…何かわけでもあるんだろうか…?だとしても、この西部劇の世界に転生出来ても、拳銃がなければ山賊や強盗から身を守る事が出来ない。さてどうしたものか…。
「…そうだ、変身は出来るって言ったよね?それじゃぁ、拳銃になれるかい?」
「出来ると思うわ」
「それじゃ頼むよ。欲しいのはガンベルトと、拳銃はコルト・シングル・アクション・アーミーだ」
「…それが女神にお願いする者の態度かしら?」
おっといけない、彼女がプライドの高い女神だという事を忘れていた。俺は両手と両膝を地に押しつけ懇願した。
「お願い致します!お美しい女神様!何卒わたくしめの願いをお聞きくださいませ‼」
「…よろしい」彼女はそう言うと、胸元から手帳のような物を取り出した。
「それは?」
「魔法のミニ大図鑑よ。これがあれば何でも調べられるの。えぇ~とガンベルトと…銃の名前はなんて言ったかしら?」
「コルト・シングル・アクション・アーミー」
「コルトシングルアクション…あった。じゃあいくわよ!」彼女は杖を大きく降ると光に包まれた。そして、杖はガンベルトとなって俺の腰に巻き付き、女神はコルト・シングル・アクション・アーミーに変身した。
俺は女神が変身した拳銃を手にしてまじまじと眺めた。とても美しい銃だ。銀色の鋼が陽光に照らされキラキラと輝き、グリップの左側面には、首輪にあった緑色のジュエルが埋め込まれていた。
銃を手に入れてすっかり嬉しくなった俺は、トリガーとトリガーガードの間に指を入れ、得意げにクルクルと回した。
「ちょちょちょちょっとぉ‼クルクル回すんじゃないわよぉ‼目が回るでしょーが‼」
「おっとごめんごめん!ってあれ?その状態で喋れるの?」
「当たり前でしょ!姿を変えただけで、意識はなくなってないんだから。とにかく、せっかくあなたの要望に応えてあげたんだから、もっと丁寧に扱ってちょうだい」
「ありがとうございます女神様。さてと、それじゃあ行こうかマリア」
「えぇ。…ってぇ!呼び捨てにするんじゃないっつーのぉ‼」
俺は拳銃に変身したマリアをホルスターに収め、農場へと向かった。
「…まるで夢を見てるようだ」
「夢じゃないわよ」
俺の隣に女神が立っていた。
「あれ?あんたさっきの…」
「マリア・アテーヌ・アフロディータ・ヘレア・メディーアスよ」
「マリオネアフロデタラメンヘラ…」
「マリア・アテーヌ・アフロディータ・ヘレア・メディーアス‼ちゃんと覚えなさいよ全く‼」
彼女には悪いが、とても覚えられそうにない…。
「え、えぇ~と…名前長すぎるからマリアって呼んでもいい?」
「長すぎるってなによ‼それになんでタメ口なのよ!私、女神よ女神!!」
「わ、分かりましたよ女神様…。ところで、なんでここに?」
「私はあなたを魔法でこの世界に転生させたから、あなたの守り神として君臨したのよ」
「へぇ~守り神かぁ!それは心強い!」
俺は立ち上がり、新鮮な空気を胸いっぱいに吸った。実にうまい空気だ。こんなにいい気持ちになったのは何時ぶりだろうかと、心の奥底から爽やかな気分が込み上げてきた。これから俺の新しい人生が始まるんだと思うと、とてもワクワクする。
「よぉし、それじゃぁ早速冒険に出掛けるとしよう!」
「ちょっと待った!」
突然女神は俺を引き留めた。
「どうしたんだい?」
「お腹減った」
「あぁ、そういえば俺も減ったなぁ…そうだ、あそこに行ってみよう」俺は農場を指さし、一先ず彼女とそこへ向かう事にした。運が良ければ食事を恵んでもらえるかもしれない。
「ちょ、ちょっと待って!私、女神だから人間に姿を見られては駄目なのよ」
「なんで?」
「なんでって、それが神の世界の掟なのよ」
「俺は良いのかい?」
「あなたは一度死んでるもの。それ以外の生きた人間に神の存在を知られる事は禁止されてるの」
俺たち人間が神の姿を見た事ないのは、そういう理由からだろうか…。
「じゃぁ姿を消せば良いんじゃないの?」
「そんな高等な魔法はまだ使えないわよ」
「神様なのに?」
「そ、それは…だって・私、そのぉ…み、みな…だもの…」
声が小さくてよく聞こえない。。
「え?なに?」
「だ、だから、私…まだ見習いなの」
「え?見習い⁉」
「な、なによ!み、見習いでも女神なのよ!魔法だってちゃんと使えるし…た、ただまだ修行中の身ってだけよ…」
神々の世界にもそういった階級があるとは知らなかった。話を聞いたところ、彼女のような見習いの神は、上級神から与えられた任に就き、一流の神としてのスキルを高め、身につけていくのだそうだ。つまりその任というのが、転生させた人間の守り神となる事だった。まるでセールス業だ。
「話は分かったよ。それじゃ他に使える能力はないのかい?」
「そうね…変身だったら出来るわ」
透過よりも変身の方が難しそうな気がするが…。
「変身ねぇ…」俺はどうしようか考えながら腰に手を当てた。すると、腰にある物が無い事に気づいた。
「…なんで拳銃が無いの?」
「だって銃が欲しいなんて言ってないじゃないの」
「いや、西部劇に銃は付き物でしょうよ!」
「知らないわよ観た事ないもん」
「衣装は用意出来てるのに⁉」
「この世界に導いたのはシャイリンポスの神々の力によるものであって、私はあなたに転生する力を与えただけよ。それ以外は知らないわよ」
神様なのになんて無責任なんだ…いや、むしろ神だからなのかもしれない…。シャイリンポスの神々は何故拳銃を持たせてくれなかったのだろうか…何かわけでもあるんだろうか…?だとしても、この西部劇の世界に転生出来ても、拳銃がなければ山賊や強盗から身を守る事が出来ない。さてどうしたものか…。
「…そうだ、変身は出来るって言ったよね?それじゃぁ、拳銃になれるかい?」
「出来ると思うわ」
「それじゃ頼むよ。欲しいのはガンベルトと、拳銃はコルト・シングル・アクション・アーミーだ」
「…それが女神にお願いする者の態度かしら?」
おっといけない、彼女がプライドの高い女神だという事を忘れていた。俺は両手と両膝を地に押しつけ懇願した。
「お願い致します!お美しい女神様!何卒わたくしめの願いをお聞きくださいませ‼」
「…よろしい」彼女はそう言うと、胸元から手帳のような物を取り出した。
「それは?」
「魔法のミニ大図鑑よ。これがあれば何でも調べられるの。えぇ~とガンベルトと…銃の名前はなんて言ったかしら?」
「コルト・シングル・アクション・アーミー」
「コルトシングルアクション…あった。じゃあいくわよ!」彼女は杖を大きく降ると光に包まれた。そして、杖はガンベルトとなって俺の腰に巻き付き、女神はコルト・シングル・アクション・アーミーに変身した。
俺は女神が変身した拳銃を手にしてまじまじと眺めた。とても美しい銃だ。銀色の鋼が陽光に照らされキラキラと輝き、グリップの左側面には、首輪にあった緑色のジュエルが埋め込まれていた。
銃を手に入れてすっかり嬉しくなった俺は、トリガーとトリガーガードの間に指を入れ、得意げにクルクルと回した。
「ちょちょちょちょっとぉ‼クルクル回すんじゃないわよぉ‼目が回るでしょーが‼」
「おっとごめんごめん!ってあれ?その状態で喋れるの?」
「当たり前でしょ!姿を変えただけで、意識はなくなってないんだから。とにかく、せっかくあなたの要望に応えてあげたんだから、もっと丁寧に扱ってちょうだい」
「ありがとうございます女神様。さてと、それじゃあ行こうかマリア」
「えぇ。…ってぇ!呼び捨てにするんじゃないっつーのぉ‼」
俺は拳銃に変身したマリアをホルスターに収め、農場へと向かった。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる