演者

すずめ。

文字の大きさ
上 下
1 / 1

ある朝の日。

しおりを挟む

朝目が覚めると、私はまずため息をつく。細目で時計を見て、進み続ける針を睨みつける。部屋にはただ、時計のカチッという音だけが響いていた。窓の外の燦々とした太陽の光が窓から差し込んでくる。まるで私を突き刺しているようだ。頭が痛くて体が重い。体に鎖が繋がれているようで、ベッドから起き上がるのが億劫だ。体温を測ってもやっぱり平熱。ただ、学校を休む理由がほしいだけなのに。また1つ、溜息をついて体に力を込めて起き上がる。部屋から出てリビングのある1階に降りれば、ニュースが流れていた。皆笑顔で楽しい、嬉しいを強調しているみたいな。そんなテレビ。だんだん卑屈になっていく私に嫌気がさす。洗面台の鏡に映った私は、酷く醜い。眠れなくてどんどんはっきりとしていく目のクマ。今日はうまく隠せないかもしれない。トースターの音が鳴ってハッとする。朝ごはんを食べながら、時計を見る。時間が迫ってきていた。秒針が音を立てて進んでいた。乱雑に置かれてしわのついた制服を掴む。冷たい制服に袖を通して、靴を履く。
(今日も演じなくちゃ。)
家を出て、走りながら学校に向かう。信号で待っていると同級生が見え始める。学校に近づくほど、生徒の数も増えていく。
「凛月おはよ~!」
友達に大声で呼びかけられて振り向くと、友達が2人並んできた。私は口角をぐいっと引き上げて、大きな声で挨拶をする。
「おはよ~!」
私は凛月を演じるために、貼り付けの笑顔で今日も笑う。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

幼馴染みに告白されたけど断ったって話

家紋武範
青春
失恋したイケメン柊斗は失意の中だったが、彼を幼い頃より思い続けていたものがいた。 幼馴染みのニコル。いつもニコニコしている彼女だが、柊斗は面食いのため、恋人にはできなかった。 ※この作品は「大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話」の続編ですが単独でもお楽しみ頂けます。

月夜の理科部

嶌田あき
青春
 優柔不断の女子高生・キョウカは、親友・カサネとクラスメイト理系男子・ユキとともに夜の理科室を訪れる。待っていたのは、〈星の王子さま〉と呼ばれる憧れの先輩・スバルと、天文部の望遠鏡を売り払おうとする理科部長・アヤ。理科室を夜に使うために必要となる5人目の部員として、キョウカは入部の誘いを受ける。  そんなある日、知人の研究者・竹戸瀬レネから研究手伝いのバイトの誘いを受ける。月面ローバーを使って地下の量子コンピューターから、あるデータを地球に持ち帰ってきて欲しいという。ユキは二つ返事でOKするも、相変わらず優柔不断のキョウカ。先輩に贈る月面望遠鏡の観測時間を条件に、バイトへの協力を決める。  理科部「夜隊」として入部したキョウカは、夜な夜な理科室に来てはユキとともに課題に取り組んだ。他のメンバー3人はそれぞれに忙しく、ユキと2人きりになることも多くなる。親との喧嘩、スバルの誕生日会、1学期の打ち上げ、夏休みの合宿などなど、絆を深めてゆく夜隊5人。  競うように訓練したAIプログラムが研究所に正式採用され大喜びする頃には、キョウカは数ヶ月のあいだ苦楽をともにしてきたユキを、とても大切に思うようになっていた。打算で始めた関係もこれで終わり、と9月最後の日曜日にデートに出かける。泣きながら別れた2人は、月にあるデータを地球に持ち帰る方法をそれぞれ模索しはじめた。  5年前の事故と月に取り残された脳情報。迫りくるデータ削除のタイムリミット。望遠鏡、月面ローバー、量子コンピューター。必要なものはきっと全部ある――。レネの過去を知ったキョウカは迷いを捨て、走り出す。  皆既月食の夜に集まったメンバーを信じ、理科部5人は月からのデータ回収に挑んだ――。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

足跡

冬生まれ
青春
気付けばいつも、その足跡は隣にあった…。

私の守護者

安東門々
青春
 大小併せると二十を超える企業を運営する三春グループ。  そこの高校生で一人娘の 五色 愛(ごしき めぐ)は常に災難に見舞われている。  ついに命を狙う犯行予告まで届いてしまった。  困り果てた両親は、青年 蒲生 盛矢(がもう もりや) に娘の命を護るように命じた。  二人が織りなすドタバタ・ハッピーで同居な日常。  「私がいつも安心して暮らせているのは、あなたがいるからです」    今日も彼女たちに災難が降りかかる!    ※表紙絵 もみじこ様  ※本編完結しております。エタりません!  ※ドリーム大賞応募作品!   

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

風俗初体験物語

根本外三郎
青春
二十四歳になったにも関わらず、江本耕一郎は未だ女と付き合った事はおろか、性交渉をした事すらなかった。ガラケーからスマホに機種変更した事がきっかけでSNSを始めた彼は、同級生の多くが結婚し始めている事を知り、悔しさと焦りから童貞だけは卒業しようと生まれて初めて風俗店に行く事にした。インターネットで調べた結果、「二十代の女の子が揃っている」、「指名が出来る」というレビューを信じて吉祥寺のソープランドに入店する事になったが、指名させてもらえず部屋に入らされる事となってしまった。指名は出来ずともせめて初体験は二十代の女子とやりたいと願う彼だったが・・・・・。

処理中です...