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第八話 ロッカー
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息苦しさ、そして身動きがとれないことの窮屈さを感じている。
息すらも吸うことに意識してしまい、体が密着した暑さを感じる。
一体…なぜこうなったのだろう…。
俺と祖岩君は今、ロッカーに隠れている。
ーーー数分前ーーー
学校の校舎が静まり返り、談笑や足音が聞こえない静かな教室に、俺と祖岩君が二人、席に座っている。
俺の前の席に祖岩君が座っている。
俺は目の前の問題集に頭を悩ませていた。
俺と祖岩君は勉強会をしている。
……もうすぐ夏休みなのに、ワークが終わってないんだよな…。
いつもなら、一人でやっていた。
けど、今年はいつもと違い、人とやっている。
すこしの緊張感を持ちながら、俺は取り組んでいた。
俺は成績はそんなに悪い方でもない。
教科によっては平均以上だ。
でも…苦手な教科は…本当に苦手だ。
赤点回避はできるけど…なかなか点数がとれない。
にしても…。
「そう、それでいいよ。ここまではわかった?」
「う、うん…わかった…。ありがとう」
…教えるのがうまいなぁ…。
祖岩君は成績がかなり優秀なほうだ。
ワークも終わってるだろうし、仮に終わってなくてもすぐ終えることは可能だろう。
…。
祖岩君といるのも、すこし慣れてきた気がするな…。
そんなことを考えながら、ワークに集中し、時々祖岩君の声に耳を傾けてたときだった。
足音が聞こえてくる。
それはだんだん大きくなり、こちらに向かってきているのを感じた。
なんの予兆もなく、ガタッと大きな音をたて祖岩君は席を立つ。
驚いて俺の肩は跳ねた。
どうしたのときく間もなく、祖岩君はこちらに近づき、腕を強くつかんで俺を立たせた。
「そ、祖岩く…」
「いいから。ここにはいって。隠れるよ」
ロッカーの戸を開き、誘導する。
いつもとは違う真剣なその声のトーンと動作に俺は逆らうことはせずに、ロッカーにはいった。
祖岩君も僕のはいってるロッカーにはいる。
すぐに視界は暗くになり、息苦しさと窮屈さを覚えた。
そんなことをしていると、近づいた足音はこの教室の戸を開けた。
ガラガラっという音に俺の肩はまた跳ねる。
「ここが私が担当しているクラスです」
「なるほど…」
聞こえてきた声は、俺のクラスの担任の声と女性の声。
その声は話し出す。
男性の声も聞こえてきた。
おそらく、担任と生徒の保護者の親が話してるのだろう。
にしても、親がくるなんて…それに父と母がくるなんて珍しい。
俺は聞き耳をたてた。
「どうですか?うちの息子は…」
「えぇ、成績優秀ですよ」
「あら、それはよかったわ」
「最近は…清水君と一緒にいますね」
「そうなのですね…」
…ん?え?
これって…。
俺と一緒にいる人間に心当たりがあるのはただ一人。
…。
祖岩君…だよな。
と、いうことは…。
祖岩君の両親なのか…。
その後も軽い雑談が続いている。
「でも残念…夢味(ゆめみ)にいおうと思ってることがあって…あったらはなそうと思ってたのに…」
「どっかにいるんだろ」
聞こえてくる会話。
もしかして、これが祖岩君の隠れた理由なのかな?
「まぁ、荷物があるのでまだこの学校にはいるでしょう」
そう先生が言ったら、安堵の声が聞こえた。
声や足音は遠ざかる。
どうやら他のところにいったみたいだ。
誰もいないことを聴覚で確認して、俺と祖岩君はロッカーをでた。
「ね、ねぇ祖岩く…」
ふと見せた…みたことのない表情に、俺の声は消えた。
…なんだか、怒ってるようで…悲しそうで…。
とても複雑そうな、そんな表情。
話しかけるのを俺はやめる。
どう声をかけていいか…わからない…。
考えていると、ふ、と表情をいつもに戻して、祖岩君は口を開いた。
「今日はここまでにして、帰ろうか」
ニコッと。
いつもの感情がわからない…読めない笑顔をつくって、そういった。
その後、俺はまっすぐ帰った。
…きっと、いろいろあるんだろうなぁ。
きかなくて正解だったかも…。
帰り道はいつもより静かだった。
息すらも吸うことに意識してしまい、体が密着した暑さを感じる。
一体…なぜこうなったのだろう…。
俺と祖岩君は今、ロッカーに隠れている。
ーーー数分前ーーー
学校の校舎が静まり返り、談笑や足音が聞こえない静かな教室に、俺と祖岩君が二人、席に座っている。
俺の前の席に祖岩君が座っている。
俺は目の前の問題集に頭を悩ませていた。
俺と祖岩君は勉強会をしている。
……もうすぐ夏休みなのに、ワークが終わってないんだよな…。
いつもなら、一人でやっていた。
けど、今年はいつもと違い、人とやっている。
すこしの緊張感を持ちながら、俺は取り組んでいた。
俺は成績はそんなに悪い方でもない。
教科によっては平均以上だ。
でも…苦手な教科は…本当に苦手だ。
赤点回避はできるけど…なかなか点数がとれない。
にしても…。
「そう、それでいいよ。ここまではわかった?」
「う、うん…わかった…。ありがとう」
…教えるのがうまいなぁ…。
祖岩君は成績がかなり優秀なほうだ。
ワークも終わってるだろうし、仮に終わってなくてもすぐ終えることは可能だろう。
…。
祖岩君といるのも、すこし慣れてきた気がするな…。
そんなことを考えながら、ワークに集中し、時々祖岩君の声に耳を傾けてたときだった。
足音が聞こえてくる。
それはだんだん大きくなり、こちらに向かってきているのを感じた。
なんの予兆もなく、ガタッと大きな音をたて祖岩君は席を立つ。
驚いて俺の肩は跳ねた。
どうしたのときく間もなく、祖岩君はこちらに近づき、腕を強くつかんで俺を立たせた。
「そ、祖岩く…」
「いいから。ここにはいって。隠れるよ」
ロッカーの戸を開き、誘導する。
いつもとは違う真剣なその声のトーンと動作に俺は逆らうことはせずに、ロッカーにはいった。
祖岩君も僕のはいってるロッカーにはいる。
すぐに視界は暗くになり、息苦しさと窮屈さを覚えた。
そんなことをしていると、近づいた足音はこの教室の戸を開けた。
ガラガラっという音に俺の肩はまた跳ねる。
「ここが私が担当しているクラスです」
「なるほど…」
聞こえてきた声は、俺のクラスの担任の声と女性の声。
その声は話し出す。
男性の声も聞こえてきた。
おそらく、担任と生徒の保護者の親が話してるのだろう。
にしても、親がくるなんて…それに父と母がくるなんて珍しい。
俺は聞き耳をたてた。
「どうですか?うちの息子は…」
「えぇ、成績優秀ですよ」
「あら、それはよかったわ」
「最近は…清水君と一緒にいますね」
「そうなのですね…」
…ん?え?
これって…。
俺と一緒にいる人間に心当たりがあるのはただ一人。
…。
祖岩君…だよな。
と、いうことは…。
祖岩君の両親なのか…。
その後も軽い雑談が続いている。
「でも残念…夢味(ゆめみ)にいおうと思ってることがあって…あったらはなそうと思ってたのに…」
「どっかにいるんだろ」
聞こえてくる会話。
もしかして、これが祖岩君の隠れた理由なのかな?
「まぁ、荷物があるのでまだこの学校にはいるでしょう」
そう先生が言ったら、安堵の声が聞こえた。
声や足音は遠ざかる。
どうやら他のところにいったみたいだ。
誰もいないことを聴覚で確認して、俺と祖岩君はロッカーをでた。
「ね、ねぇ祖岩く…」
ふと見せた…みたことのない表情に、俺の声は消えた。
…なんだか、怒ってるようで…悲しそうで…。
とても複雑そうな、そんな表情。
話しかけるのを俺はやめる。
どう声をかけていいか…わからない…。
考えていると、ふ、と表情をいつもに戻して、祖岩君は口を開いた。
「今日はここまでにして、帰ろうか」
ニコッと。
いつもの感情がわからない…読めない笑顔をつくって、そういった。
その後、俺はまっすぐ帰った。
…きっと、いろいろあるんだろうなぁ。
きかなくて正解だったかも…。
帰り道はいつもより静かだった。
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