嘘つきの君と弱い俺

勾玉

文字の大きさ
上 下
6 / 15

第六話 嘘つきの君

しおりを挟む
そういえば、次の時間は音楽だな…。
学校のチャイムと共に、人が動き出すのを遠くから眺めていた。
教室移動のため廊下を出て歩いていると、祖岩君がいた。
近づきすぎたら話の邪魔になりそうなので近づかないようにする。
にしても…。
女子と祖岩君が話してるのは珍しいな。
女子はかなり楽しそうに話している。
しばらくみていると、その女子はどこかに行ってしまった。
その後祖岩君はこちらに直行してきた。
…あぁ、うん。どうして俺、早く行かなかったんだろうなぁ。
心に若干の後悔が芽生えた。
「次の時間は音楽だね。一緒に行こうか」
「…うん」
…もしかしたら、彼と別行動するのは不可能なのでは?
なぜかそう思えてしまった。

廊下を移動していると、嬉々とした楽しげな声が聞こえた。
ふと気になりそちらに視線を移すと、そこには先程話した女子がいた。
二人で歩いている。
声が大きいため、すこし離れた距離の俺に聞こえている。
「ねぇ、ヤバい!話できたんだけど!!」
「やったじゃん!ね?私が言った通り、話してきてよかったでしょ?」
「うん!かっこいいよね…ほんと。今度誘おっかな~…」
その会話で俺は察した。
…祖岩君のことが好きなのか。彼女は。
「でもさでもさ!今日はダメって言われたんだよね~…」
「あー…また今度なら誘えるよ!」
「だといいなぁ~!」
…今日誘ったらしいけど、用事があって断られたのか…。
俺はそのまま通りすぎた。

チャイムがなり、人がぞろぞろと教室を出ていく。
学校が終わり、教科書をまとめていた。
全てしまい、教室を出ようとしたときに、ふと、最近聞き慣れた声が俺を呼ぶ。
背後を振り向くと、祖岩君がいた。
「一緒に帰らない?」
「あ、えーっと…」
できることなら、嫌すぎるわけではないけど、すこしまだ苦手だから一緒に帰りたくはない。
頭を回転させ、記憶をたどると、あることを思い出した。
「…祖岩君さ。今日用事あるんじゃないの?」
女子との会話。
用事があって断られたといっていた。
だから、俺とは帰れないはず。
すると祖岩君は、首をこてんとかしげた。
「?なんのこと?」
「え…?」
予想外の回答に俺は思考が停止する。
…ん?
用事があるって…あれ?
「まぁ一緒に帰ろうよ。特になにもないからさ」
「あ、えっと…」
混乱する俺の裾を軽く引っ張る祖岩君。
「あ…わ、わかったよ」
どうしていいかわからず、承諾してしまった。


その日の帰り道、祖岩君はすこし饒舌だった。
俺はずっと、その日ベットに入るとき、ずっと疑問に思いながら、瞼を閉じる。
…一体彼は、何を考えているのだろうか。
俺には微塵もわからなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私立明進学園

おまめ
BL
私立明進学園(メイシン)。 そこは初等部から大学部まで存在し 中等部と高等部は全寮制なひとつの学園都市。 そんな世間とは少し隔絶された学園の中の 姿を見守る短編小説。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学園での彼らの恋愛を短編で描きます! 王道学園設定に近いけど 生徒たち、特に生徒会は王道生徒会とは離れてる人もいます 平和が好きなので転校生も良い子で書きたいと思ってます 1組目¦副会長×可愛いふわふわ男子 2組目¦構想中…

強面男子だって恋をする。

BL
高校二年生の宮脇 大樹(みやわき だいき)は、自他ともに認める強面を持つ。 そのため不良のレッテルを貼られ、今まで彼女どころか友達と呼べる存在すらいなかった。 ある日、そんな自分を唯一良くしてくれている姉の頼みで、姉が好きなBLゲームのグッズを一緒に買いに行くことに。 目当てのものを買えた二人だが、その帰り道に事故にあってしまい、姉が好きなBLゲームの世界に転生してしまった!? 姉は大樹にそのゲームの舞台である男子校に通ってほしいと頼み込む。 前世と同じく強面を携えた彼と、曲者揃いの男子たちの恋路はいかに…!? (主人公総受け/学パロ/転生もの/キャラ多(メインキャラだけで23人)) とにかくキャラクターが多いです 全年齢です。 本編(総受けルート)が終わった後にそれぞれのキャラクターとのストーリーを書いていこうと考えています。 自分のために作った作品なので、少しそうはならんやろ、的な表現もあるとは思いますが暖かい目でお願いします。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

彼者誰時に溺れる

あこ
BL
外れない指輪。消えない所有印。買われた一生。 けれどもそのかわり、彼は男の唯一無二の愛を手に入れた。 ✔︎ 四十路手前×ちょっと我儘未成年愛人 ✔︎ 振り回され気味攻と実は健気な受 ✔︎ 職業反社会的な攻めですが、BL作品で見かける?ようなヤクザです。(私はそう思って書いています) ✔︎ 攻めは個人サイトの読者様に『ツンギレ』と言われました。 ✔︎ タグの『溺愛』や『甘々』はこの攻めを思えば『受けをとっても溺愛して甘々』という意味で、人によっては「え?溺愛?これ甘々?」かもしれません。 🔺ATTENTION🔺 攻めは女性に対する扱いが酷いキャラクターです。そうしたキャラクターに対して、不快になる可能性がある場合はご遠慮ください。 暴力的表現(いじめ描写も)が作中に登場しますが、それを推奨しているわけでは決してありません。しかし設定上所々にそうした描写がありますので、苦手な方はご留意ください。 性描写は匂わせる程度や触れ合っている程度です。いたしちゃったシーン(苦笑)はありません。 タイトル前に『!』がある場合、アルファポリスさんの『投稿ガイドライン』に当てはまるR指定(暴力/性表現)描写や、程度に関わらずイジメ描写が入ります。ご注意ください。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 作品は『時系列順』ではなく『更新した順番』で並んでいます。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。 次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。 どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。 って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

処理中です...