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第2章 少年達は武器を取る
魔物―マリスティア―
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玲士朗達はアミューネ村に程近い雑木林の開けた一隅に辿り着いた。辺りを警戒しながら、弓矢で武装したエルフの男性達が玲士朗達の前に躍り出る。
後方にはシエラとロザリーが控え、背後のアミューネ村を守る防衛線を構築している。さらに、上空からは巨鳥ヨウカハイネンが旋回し、その眼を借りてアニーが広域の監視網を敷いていた。マリスティア出没の混乱に乗じたゴブリンや盗賊達の急襲を警戒しての布陣だった。
シエラが緊張した面持ちで玲二朗達に告げる。
「現状、確認できたマリスティアは一体、前方からやってきます。何としても、ここで食い止めなければなりません」
詩音は狼狽えた。
「そんなこと言われても、私達だってまだ心の準備ができているわけじゃないのに……」
「とにかく、まずは襲われている人達を助けなきゃ!」
柚希の檄に、誰もが息を吞む。戦うことにはそれぞれ戸惑いがあり、恐怖もあった。だがそれ以上に、命の危険に晒される人々は助けなければならないという共通認識が彼らの行動規範の根底にはある。故に、彼らは逃げ帰りたくなる衝動をなんとか押し留め、震える身体を押さえつけ、主戦場となるであろうその場を動かなかった。
「エルフの力で簡単に撃退できたりしないのか?」
相変わらず飄々とした態度の鷹介に対して、戦慄の震えを何とか押し留めるロザリーが頭を振った。
「そんな甘い相手じゃないわ。でも、剣臣ならマリスティアに真っ向から太刀打ちできるって伝えられてる。姉さまもあんた達に期待してるんだから、心して掛かりなさいよね」
過度の重圧に蒼褪めた悟志が嘆く。
「そ、そんな……」
メーネは強張った声で玲士朗達に呼びかける。
「皆さん、マリスティアは人類を殺戮する本能を持った凶悪な魔物、油断は禁物です――」
メーネの言葉を遮って不気味な咆哮が遠くから響く。ギシギシと、異様な音を立てて林全体が軋み始める。動物達は一目散に逃げ惑い、周辺一帯はこの世の終わりのように騒然としていた。
あらかたの動物が雑木林から逃げ去り、重苦しい静寂が訪れる。未だ経験したことのない重圧と不安のあまり、玲士朗達の心臓が早鐘を鳴らし続け、身体は血の気が引くあまり狂ったように震え続けていた。生唾を飲み込む嚥下音がやけに大きく響いた。
雑木林から数人の男女が一心不乱に駆け出してくる。恐怖に慄き、足を縺れさせながらも、助けを求めて玲士朗達のもとへ走り込んでくる。その内の一人の女性が涼風に縋り寄って崩れ落ちた。
「マ、マリスティアが……子ども達がまだ」
慄然として身体の痙攣がおさまらず、息を切らせて満足に言葉を紡げない中、何とか絞り出された言葉に涼風は不吉な予感を抱いた。
異様な気配を感じる薄暗い林の奥に目を凝らす。生い茂る草木が視界を遮っていたが、集中して五感が研ぎ澄まされた涼風には、息も絶え絶えになって懸命に走り続ける子ども達の息遣いや恐怖に怯える泣き顔が眼に浮かぶようだった。剣臣となって得た鋭敏な感覚に戸惑いながらも、涼風は子ども達の安否を確かめたいとの一心で林の先を見つめ続ける。
数人の足音と気配が近づいてくる。もうすぐだ、頑張れ、と大人の叫び声が響き、二人の子どもが林から飛び出してくる。涼風は驚愕のあまり眼を疑った。得体の知れない何かから逃げ惑う幼子達は、彼女のよく知る村の幼い兄妹だった。
「ネフェ! ソフィー!」
涼風の声に気づいたネフェとソフィーも、涼風の名を叫びながら、彼女を目指して小さな身体を全速力で酷使する。
涼風もまた二人に向かって駆け出そうとする――が、その瞬間。背筋を縦横無尽に這い回るおぞましい悪寒に襲われて、身体が金縛りに遭ったように硬直してしまう。
呼吸すら阻害せんとする目に見えない猛毒、その正体を涼風はテルマテルに来て初めて知った。生きとし生ける生物の中で、人だけが呪いのように受け継ぐ負の感情――悪意、殺意だと。
自己防衛の本能に従う眼球は、涼風の意志とは無関係に、林の奥の脅威を視認せんとする。彼女が目にしたものは、果てしなく黒い塊だった。雑木林の薄暗闇を塗り潰す異形――『マリスティア』と呼ばれる魔物は、大きく膨れ上がった上半身から細長い首が突き出している。地獄の穴のような不気味な眼窩も闇が底深く、何かを喰らおうとするように大きく開かれた口腔に禍々しい輝きを放つ光が収束し始めていた。
その光は、見る者に等しく絶望を与える凶兆。純然たる悪意と殺意の放つ邪悪な輝きだった。
ネフェもまた、子どもながらにその異形の発する悪意と殺意を感じ取っていた。勘の良い彼は、マリスティアの標的が自分達であることを理解してしまっていた。体力の限界故に遅れ始めたソフィーが追い着くのを待てば、あの悪意と殺意から逃れることはできない。ほんの少しでいい。あと数秒早く涼風の許に辿り着けたのなら助かるのだ。
だが間に合わない。幼いネフェには残酷な二者択一だった。兄妹揃って犠牲になるか、どちらかを切り捨てるか。
ネフェは絶望と悔しさに涙した。取るべき道は一つしかない。
泣き腫らした眼でソフィーを振り返る。牧歌的な慈愛と協調に満ちた幸せな村であっても、追いつけぬ者は切り捨てられ、より生存確率の高い者を生かすことが暗黙の了解であった。限られた資源を有効に分配し、一人でも多くの者を生かすための生存戦略。ネフェもソフィーも、誰に教わるでもなく、物心ついた時から弁えていた。
ネフェは嗚咽を漏らす。恐怖で声が上擦る。これから行おうとする行為を父母と兄弟姉妹に詫び続けながら、ネフェは涙を呑んで、決然と前を向いて涼風を見据えた。
そして彼は、身を翻した。
走り遅れるソフィーの手を掴み、力一杯引き寄せ、遠心力を乗せて涼風の許へ放り投げる。子どもの矮躯からは想像もできない力強さは、彼の決死の覚悟から漲るものであった。
マリスティアの殺気に当てられ、反応が遅れた涼風は、悲鳴を上げて宙を飛ぶソフィーを受け止めるのが精一杯だった。
ソフィーの安否を確かめ、ネフェは穏やかに呟く。
「スズカなら、きっと、こうすると思って」
「ダメよネフェ! ネフェ―――!」
ソフィーを投げ飛ばした反動で遠ざかっていくネフェを引き寄せようと、涼風は懸命な叫びとともに駆け寄り、腕を伸ばす。
「いけないスズカ!」
無防備な涼風を庇うように、メーネが躍り出る。
寸暇、マリスティアの口腔に収束した光が強く煌めき、一条の光線となって放たれる。射線上を蹂躙しながら迸る猛々しい光芒はネフェの身体を容易く貫き、轟音はネフェの断末魔と涼風の悲鳴をかき消した。ネフェの身体は外側から亀裂が入り、遂に光の粒子となって弾け飛ぶ。ネフェという存在は、文字通りこの世のどこにも“いなくなってしまった”のだった。
マリスティアの放った死の光は、ネフェの延長線上にいたメーネと、失神したソフィーを抱き抱える涼風にも襲い掛かる。メーネは咄嗟に光の帯による防壁を展開し、その光の波動を受け止めたが、衝突による閃光と衝撃波が辺り一帯に炸裂し、木々は千切れ、大気は焼かれ、大地は深く抉られていく。
淡い光の防壁は赤黒く邪な光線に侵食される。それは、凶悪な悪意と殺意に濁り切った奔流である。辛うじて直撃を免れているものの、際限なく叩きつけられる呪い――「死ね」、「消えろ」、「憎い」、「殺してやる」、「償え」、「罰を受けろ」……ありとあらゆる負の感情を宿す言葉――がじわじわとメーネの心を凌辱する。
延々と繰り返され、脳と鼓膜に反響し続ける呪詛の言葉。まるで世界中の誰もがメーネの敵であるかのように、入れ代わり立ち代わり、顔も名前も知らぬ誰かが呪いを吐き捨てていく。底知れぬ悪意と殺意による精神の呪殺こそ、マリスティアの持つ恐るべき人類殺戮の手段であった。
マリスティアの攻撃を何とか防ぎ切ったメーネであったが、その代償は大きすぎた。繰り返し叩きつけられた呪いに心身を蝕まれ、苦悶に表情を歪ませながら、その場に崩れ落ちてしまう。ネフェの最期を目撃してしまった涼風も、ショックのあまり気を失って地面に倒れ込んだ。
「メーネ! 涼風!」
動転しながらも、柚希と詩音がメーネ達に駆け寄る。他の者達はネフェの死にショックが隠せず、呆然として、未だ全貌の見えぬマリスティアの存在に怖れ慄くしかなかった。
「……あんなの、反則よ」
ロザリーは驚愕と絶望に喘いだ。
たった一撃で戦意を喪失させるほどの惨状が眼前に広がっていた。そして、この惨状を生み出したマリスティアという存在の全ては、ロザリーが苦しげに絞り出した一言によって物語られていた。
自然の摂理にまつろわぬ者、この世の理を破却する者。本能と欲望のままに、人類を殺戮せんとする魔物ーーマリスティア。
圧倒的な力を前にして、いまだ剣臣としての自覚を持ち切れない玲士朗達は、立ち向かおうとする気概すら持ち得ようはずがなかった。
後方にはシエラとロザリーが控え、背後のアミューネ村を守る防衛線を構築している。さらに、上空からは巨鳥ヨウカハイネンが旋回し、その眼を借りてアニーが広域の監視網を敷いていた。マリスティア出没の混乱に乗じたゴブリンや盗賊達の急襲を警戒しての布陣だった。
シエラが緊張した面持ちで玲二朗達に告げる。
「現状、確認できたマリスティアは一体、前方からやってきます。何としても、ここで食い止めなければなりません」
詩音は狼狽えた。
「そんなこと言われても、私達だってまだ心の準備ができているわけじゃないのに……」
「とにかく、まずは襲われている人達を助けなきゃ!」
柚希の檄に、誰もが息を吞む。戦うことにはそれぞれ戸惑いがあり、恐怖もあった。だがそれ以上に、命の危険に晒される人々は助けなければならないという共通認識が彼らの行動規範の根底にはある。故に、彼らは逃げ帰りたくなる衝動をなんとか押し留め、震える身体を押さえつけ、主戦場となるであろうその場を動かなかった。
「エルフの力で簡単に撃退できたりしないのか?」
相変わらず飄々とした態度の鷹介に対して、戦慄の震えを何とか押し留めるロザリーが頭を振った。
「そんな甘い相手じゃないわ。でも、剣臣ならマリスティアに真っ向から太刀打ちできるって伝えられてる。姉さまもあんた達に期待してるんだから、心して掛かりなさいよね」
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「皆さん、マリスティアは人類を殺戮する本能を持った凶悪な魔物、油断は禁物です――」
メーネの言葉を遮って不気味な咆哮が遠くから響く。ギシギシと、異様な音を立てて林全体が軋み始める。動物達は一目散に逃げ惑い、周辺一帯はこの世の終わりのように騒然としていた。
あらかたの動物が雑木林から逃げ去り、重苦しい静寂が訪れる。未だ経験したことのない重圧と不安のあまり、玲士朗達の心臓が早鐘を鳴らし続け、身体は血の気が引くあまり狂ったように震え続けていた。生唾を飲み込む嚥下音がやけに大きく響いた。
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「マ、マリスティアが……子ども達がまだ」
慄然として身体の痙攣がおさまらず、息を切らせて満足に言葉を紡げない中、何とか絞り出された言葉に涼風は不吉な予感を抱いた。
異様な気配を感じる薄暗い林の奥に目を凝らす。生い茂る草木が視界を遮っていたが、集中して五感が研ぎ澄まされた涼風には、息も絶え絶えになって懸命に走り続ける子ども達の息遣いや恐怖に怯える泣き顔が眼に浮かぶようだった。剣臣となって得た鋭敏な感覚に戸惑いながらも、涼風は子ども達の安否を確かめたいとの一心で林の先を見つめ続ける。
数人の足音と気配が近づいてくる。もうすぐだ、頑張れ、と大人の叫び声が響き、二人の子どもが林から飛び出してくる。涼風は驚愕のあまり眼を疑った。得体の知れない何かから逃げ惑う幼子達は、彼女のよく知る村の幼い兄妹だった。
「ネフェ! ソフィー!」
涼風の声に気づいたネフェとソフィーも、涼風の名を叫びながら、彼女を目指して小さな身体を全速力で酷使する。
涼風もまた二人に向かって駆け出そうとする――が、その瞬間。背筋を縦横無尽に這い回るおぞましい悪寒に襲われて、身体が金縛りに遭ったように硬直してしまう。
呼吸すら阻害せんとする目に見えない猛毒、その正体を涼風はテルマテルに来て初めて知った。生きとし生ける生物の中で、人だけが呪いのように受け継ぐ負の感情――悪意、殺意だと。
自己防衛の本能に従う眼球は、涼風の意志とは無関係に、林の奥の脅威を視認せんとする。彼女が目にしたものは、果てしなく黒い塊だった。雑木林の薄暗闇を塗り潰す異形――『マリスティア』と呼ばれる魔物は、大きく膨れ上がった上半身から細長い首が突き出している。地獄の穴のような不気味な眼窩も闇が底深く、何かを喰らおうとするように大きく開かれた口腔に禍々しい輝きを放つ光が収束し始めていた。
その光は、見る者に等しく絶望を与える凶兆。純然たる悪意と殺意の放つ邪悪な輝きだった。
ネフェもまた、子どもながらにその異形の発する悪意と殺意を感じ取っていた。勘の良い彼は、マリスティアの標的が自分達であることを理解してしまっていた。体力の限界故に遅れ始めたソフィーが追い着くのを待てば、あの悪意と殺意から逃れることはできない。ほんの少しでいい。あと数秒早く涼風の許に辿り着けたのなら助かるのだ。
だが間に合わない。幼いネフェには残酷な二者択一だった。兄妹揃って犠牲になるか、どちらかを切り捨てるか。
ネフェは絶望と悔しさに涙した。取るべき道は一つしかない。
泣き腫らした眼でソフィーを振り返る。牧歌的な慈愛と協調に満ちた幸せな村であっても、追いつけぬ者は切り捨てられ、より生存確率の高い者を生かすことが暗黙の了解であった。限られた資源を有効に分配し、一人でも多くの者を生かすための生存戦略。ネフェもソフィーも、誰に教わるでもなく、物心ついた時から弁えていた。
ネフェは嗚咽を漏らす。恐怖で声が上擦る。これから行おうとする行為を父母と兄弟姉妹に詫び続けながら、ネフェは涙を呑んで、決然と前を向いて涼風を見据えた。
そして彼は、身を翻した。
走り遅れるソフィーの手を掴み、力一杯引き寄せ、遠心力を乗せて涼風の許へ放り投げる。子どもの矮躯からは想像もできない力強さは、彼の決死の覚悟から漲るものであった。
マリスティアの殺気に当てられ、反応が遅れた涼風は、悲鳴を上げて宙を飛ぶソフィーを受け止めるのが精一杯だった。
ソフィーの安否を確かめ、ネフェは穏やかに呟く。
「スズカなら、きっと、こうすると思って」
「ダメよネフェ! ネフェ―――!」
ソフィーを投げ飛ばした反動で遠ざかっていくネフェを引き寄せようと、涼風は懸命な叫びとともに駆け寄り、腕を伸ばす。
「いけないスズカ!」
無防備な涼風を庇うように、メーネが躍り出る。
寸暇、マリスティアの口腔に収束した光が強く煌めき、一条の光線となって放たれる。射線上を蹂躙しながら迸る猛々しい光芒はネフェの身体を容易く貫き、轟音はネフェの断末魔と涼風の悲鳴をかき消した。ネフェの身体は外側から亀裂が入り、遂に光の粒子となって弾け飛ぶ。ネフェという存在は、文字通りこの世のどこにも“いなくなってしまった”のだった。
マリスティアの放った死の光は、ネフェの延長線上にいたメーネと、失神したソフィーを抱き抱える涼風にも襲い掛かる。メーネは咄嗟に光の帯による防壁を展開し、その光の波動を受け止めたが、衝突による閃光と衝撃波が辺り一帯に炸裂し、木々は千切れ、大気は焼かれ、大地は深く抉られていく。
淡い光の防壁は赤黒く邪な光線に侵食される。それは、凶悪な悪意と殺意に濁り切った奔流である。辛うじて直撃を免れているものの、際限なく叩きつけられる呪い――「死ね」、「消えろ」、「憎い」、「殺してやる」、「償え」、「罰を受けろ」……ありとあらゆる負の感情を宿す言葉――がじわじわとメーネの心を凌辱する。
延々と繰り返され、脳と鼓膜に反響し続ける呪詛の言葉。まるで世界中の誰もがメーネの敵であるかのように、入れ代わり立ち代わり、顔も名前も知らぬ誰かが呪いを吐き捨てていく。底知れぬ悪意と殺意による精神の呪殺こそ、マリスティアの持つ恐るべき人類殺戮の手段であった。
マリスティアの攻撃を何とか防ぎ切ったメーネであったが、その代償は大きすぎた。繰り返し叩きつけられた呪いに心身を蝕まれ、苦悶に表情を歪ませながら、その場に崩れ落ちてしまう。ネフェの最期を目撃してしまった涼風も、ショックのあまり気を失って地面に倒れ込んだ。
「メーネ! 涼風!」
動転しながらも、柚希と詩音がメーネ達に駆け寄る。他の者達はネフェの死にショックが隠せず、呆然として、未だ全貌の見えぬマリスティアの存在に怖れ慄くしかなかった。
「……あんなの、反則よ」
ロザリーは驚愕と絶望に喘いだ。
たった一撃で戦意を喪失させるほどの惨状が眼前に広がっていた。そして、この惨状を生み出したマリスティアという存在の全ては、ロザリーが苦しげに絞り出した一言によって物語られていた。
自然の摂理にまつろわぬ者、この世の理を破却する者。本能と欲望のままに、人類を殺戮せんとする魔物ーーマリスティア。
圧倒的な力を前にして、いまだ剣臣としての自覚を持ち切れない玲士朗達は、立ち向かおうとする気概すら持ち得ようはずがなかった。
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