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4漲望編
4漲望編-1
しおりを挟む序
特別地域/アトランティア・ウルース
特地アヴィオン海とクンドラン海のほぼ境目辺りに、無数の船を鎖で繋いで作り上げた王国――アトランティア・ウルースが浮かんでいる。
そこは何十万もの海の民が身を寄せ合って暮らす海上のオアシスだ。
その船群の一艘に、中華人民共和国・人民解放軍総参謀部二部・戦略工作部四局十四処に所属する秘密拠点が置かれていた。
彼ら四局十四処はこのウルースの他にも、特地世界のあちこちに活動拠点を設けている。
ある者は商社のサラリーマンに扮し、ある者はジャーナリスト、あるいは学者を装い、またある者は背乗りという方法で日本人の戸籍を獲得するなどして、『門』を越え、アルヌスとその周辺に一つずつ足がかりを築いていった。
しかし、今ではその拠点も減ってしまった。
全てはロゥリィ・マーキュリーをはじめとする亜神達の襲撃のせいだ。
「くそっ! この世界の亜神とやらは、どうして我らばかりを目の敵にして活動を邪魔するんだ⁉」
「神なんて無力であるべきだし、某かの力があるとしても公平中立であるべきだ! なのに日本という国に肩入れし過ぎている! いや、我々のみを狙い撃ちにし過ぎている!」
この特地世界に工作活動の拠点を築いているのは中国共産党だけではない。
日本の仮想敵国であるロシア、大韓民国、北朝鮮はもとより、友好関係にあるアメリカ、イギリス、フランス、イスラエルといった国々までもが、公然と、あるいは非合法的なやり方で、諜報・工作活動を行うための拠点を設けている。
彼らはこれまでアラブの春やシリアの内戦、ウクライナの政変や内乱を演出し加担もしてきた。
民間人を多数乗せた旅客機を撃墜し、散乱した死体から現金や貴金属を略奪した国もある。
独裁者の施政下とはいえとりあえずは安定して平和だった国を、子供や年寄りが次々と死んでいくような内戦状態に追いやり、それでも自由の勝利だと喝采してきた。
余所の国に土足で立ち入り、他国民を力尽くで連れ去るといったことも平然とするし、射殺した兵士の携帯で親に電話をかけ、今あんたの息子が死んだぜ、と告げて悲しみに突き落とすようなこともする。そんな風に、良心など欠片すらも存在していないと思わせる行動を繰り返してきたのである。
当然、この特地世界での彼らの行状も、決してお行儀がよいとは言えない。なのに、それらの国々の拠点が亜神に襲撃されたという話はまったく出てこなかった。狙われるのは、いつも中国の拠点ばかりなのである。
「ってことはさ、自分達のやっていることが原因じゃないかって、気付くべきなんじゃねえの?」
石原莞吾は呆れたように呟く。
しかしアジトの中国人達は、彼の言葉にまったく耳を貸そうとはしなかった。
それは石原が日本人だからということもあるだろう。
教育のせいか、それとも反日ドラマや反日映画でも見過ぎたのか、日本人の言うことなんかに耳を貸してやるものかという頑なさが彼らの中にはあるのだ。
とはいえ、深層意識まで刷り込まれた反日意識だけでそうなる――という理屈もいささか納得し難い話である。
おそらくは、『正常化バイアス』という、自分に不都合な情報を無意識にシャットアウトしてしまう心の働きも影響していると思われた。
そもそも中国人民解放軍総参謀部二部が工作員に下した命令は至極簡単なものであった。
――この『幻奇世界』に混乱を引き起こせ。
そうすれば日本政府と自衛隊は特地に注力せざるを得ない。するとその分、本国第一列島線付近にある日本の海上戦力は減殺される。
そこで彼らは、この特地世界のアルヌスから少しばかり離れた地域に、これまでなかったような武器を生産してばら撒くという作戦を採用した。
技術者が本国から送り込まれ、多くの武器が製作された。
現地で手に入る材料を使った爆発物製造法の手引き書も用意された。
これによって盗賊や海賊といった反社会勢力が力を得て、あちこちの国家が不安定に陥るだろう。
海上交通網は寸断され、治安は低下し、物資の不足が各地の人々を苦しめるようになるはずだ。
特地世界の国々では、この新兵器を持った盗賊や海賊に対応することは不可能。鎮圧するには日本が軍事力を投入するしかないのだ。
作戦は見事に成功した。
海上自衛隊は日本海に配備していたミサイル艇や人員を特地に移動させた。結果、日本海の守りは手薄になったのだ。
これは費用対効果の著しく高い作戦だった。
実際に動いたのは、数十名から百名足らずの工作員でしかない。しかしそれにより目障りな艦艇が二隻も姿を消したのだ。更に武器をばら撒けばもっと多くの艦艇が、もっと多くの人員が最前線から姿を消すに違いあるまい。
作戦の立案者は総参謀部二部から賞賛され、党本部からも高く評価された。
しかもこの作戦は思わぬ副産物をも生じさせていた。単刀直入にいえば、工作員達の懐に莫大な収入をもたらしたのだ。
引き渡した武器の対価として金貨銀貨が続々と集まってくる。まさにぼろ儲けであった。
もちろんこれらは全て党のもの、国のもの、人民のもの。しかしその一部――否、せめて半分、いやいや、出来ることならもう少し多めに――が、苦労をした自分達の取り分となってもよいのではないかと考えたとして誰が責められよう。
元より中国は『上有政策、下有対策』というお国柄だ。急速な発展の追い風の中で、抜け目ない人間は巨万の富を得て富豪の称号を獲得している。
貧富や格差のない平等な共産主義だったのに、格差が広がる一方のこの状況には凄まじい不公平感と嫉妬心が渦巻いているのだ。
誰もが我も我もと豊かになることを祈り、願い、期待する。
この発展の勢いもいつかは停まるだろう。それは自然の摂理で致し方ないことだ。しかし自分が豊かになるまでは保つはず、いや保ってくれと願っている。
そんな中で工作員達の前にその機会が回ってきた。濡れ手で粟で儲けられるのに、それをしない理由などどこにある?
いろいろとお目こぼしを貰うための賄賂を上司に贈り、また更にその上の管理者にも贈る必要はあったが、そんなものでは尽きない利益で彼らの懐は潤っていったのである。
しかし、異常なはずの状況を、常態化した当たり前のことと考え始めた時、人間は陥穽に嵌まる。
彼らはもはやこの立場、この作戦を手放すことが出来なくなっていたのである。
ある日を境に、特地内にある拠点と連絡が取れなくなっていく。
何が起きたのかと様子を見に行けば、地下や船底に設けられたアジトには、鉄が錆びたような臭いと、肉の腐敗した酸っぱい異臭が充満し、床を見れば死体の山が出来ていた。
たちまち胃液の混じった嘔吐の臭いがそこに加わる。
一体、何が起きたのか? 他国の工作員の襲撃か。日本政府か⁉
厳戒態勢が敷かれ、警備体制の強化が求められ、本国からは急遽警備兵が増派された。
しかしその効果は薄かった。
次々と拠点が失陥していく。
死体は積み重なり、貴重な人材が更に失われていった。
この現象が、特地に実在する亜神とやらの襲撃だと分かったのは、その後しばらくしてからであった。
四局十四処が迷彩組織として乗っ取った『カウカーソス・ギルド』の所属員が、これまで自分達が何と戦ってきたのかを意気揚々と語ってくれた。
それによると相手は、そんじょそこらの敵よりもタチが悪いらしい。何しろ撃っても叩いても切っても死なないのだから。
そして不可思議な力で彼らの居場所を暴いて襲ってくるのだ。
連絡の取れなくなる拠点は日増しに増えていった。
しかも折悪しくアトランティア政府の方針転換によって、ギルドの人材や資材が接収されてしまった。
一時はアトランティアとその女王に影響力を持つまでになったのに、その権威も失われ、関わっていた人材が行方不明になってしまったのだ。
結果として彼ら四局十四処のアジトは壊滅状態となった。
さすがに分かった。理解した。自分達の活動が原因なのだと。
特地にない技術や知識、武器の製造方法をばら撒いていること……それがこの世界におわす神々の逆鱗に触れたのだ。
しかしそれを理解してもなお、この作戦を止めようとは誰も言わなかった。
代わりに彼らが口にしたのは次のような怨嗟だ。
「どうして自分達だけがこんな目に遭う? もっと他に罰せられるべき人間は大勢いるだろうに!」
自分達に原因があるなら、原因となる行為をやめればいい。
しかし誰もそうは言わなかった。多分、きっと、無意識に考えないようにしていたのだろう。
そのことに気付いてしまったら、巨万の富を約束するそれを手放さなければならないからである。
そう、これこそが『正常化バイアス』と呼ばれる心の仕組みなのだ。
「イシハラ、水と食料の買い出しに行ってこい!」
ウルースに置かれた秘密拠点――といっても古ぼけた木造船でしかないが――で書類を読んでいた石原莞吾は、陳音繰上尉からお買い物メモと金・銀・銅貨のずっしり詰まった革袋を投げられると、素早く中身を確認しながらOKと応じた。
石原がここにいるのは、まさにそういった雑用を引き受けるためだからだ。
「ちょっと待て。お前、今何を読んでいた?」
陳音繰上尉は、石原が机に投げ捨てた書類を見るなり言った。
「報告書だよ。学者さんの書いた、こっちの世界の植物とか海藻とか動物とかの調査報告だな。それとこっちは……資源の分布状況の書類。他には……えっと、いろいろだ」
「なんでお前が機密指定の書類に目を通してる⁉」
「だってしょうがねえじゃねえか。俺が一番こっちの言葉に詳しいんだから。学者さん達が作った書類を訳してるのも俺なんだぜ。こっちの文書の翻訳部分が間違ってないか確認してくれって言われたらするしかないだろう? それに、この書類はまだ機密指定されてないし」
「機密指定される予定だ。現地採用の補助員たるお前に触れる権限はない」
「それは正式に提出してからの話だろ? 提出前なんだから問題なしだな」
「くそっ、ああ言えばこう言う。口先ばっかり達者な輩がいい気になるな!」
「口先ばっかりって言ったって、それこそが俺の役割じゃん?」
石原は威張るように胸を張る。
そう面と向かって言われると返す言葉もない。陳は肩を落とし深々と溜息を吐いた。
「上尉。そう力を落としなさんな。人間、ストレス溜め込むといいことないよ」
「ストレスの張本人がそれを言うのか?」
「言うな言うな。皆まで言うな。あんたの苦労はみんな分かってるから」
どうして人民解放軍は、こんな男を下働きに使わなくてはならないのか。
それは、特地には日本人が多いため、たとえ専門教育を受けた優秀な工作員といえども、その存在がバレてしまう可能性が高かったからだ。
これは特地だけの話ではない。人民解放軍総参謀部二部・戦略工作部は、対日秘密工作をする際、同郷人に対する仲間意識を持たない日本人を探してきて雇い入れることが多い。
実際、日本には日本人として生まれながらも「日本が嫌い」「日本人が嫌い」と公言して憚らない人間が一定数いるため、そうした人材の獲得に苦労することはないのだ。
ちなみに石原の場合は、日本を嫌っている訳ではない。
好き嫌いは、出自云々ではなく、会った時の印象で決める人間なのだ。
会ったこともない人間は好きでも嫌いでもない。故に中国や中国人も、そうという理由だけで好く訳でも嫌う訳でもないのだ。
「ところで上尉、この買い物俺だけで行けっての? 水の樽八個なんて一人じゃ運べねえよ?」
そんな石原は、彼らのリクルートに応じた。
特地語が堪能だった彼は、まずアルヌスでの拠点開設に携わることを求められた。
そこで信用できるかをある程度試された上で、このアトランティア・ウルースでの拠点開設と運営に従事するようになったのである。
「黎紫萱二級軍士長、部下を何人か連れて付き添ってやれ!」
「私にあの馬鹿と出かけろとおっしゃるのですか?」
石原に付き添えと上官から指示された女軍人の黎紫萱は、抗議の声を上げる。
丸眼鏡のそばかす顔をいきり立たせて抗議する様子を見ると、石原のことを快く思ってないことは明らかだった。
黎二級軍士長――中国軍の階級制度に詳しくない石原は、『軍曹』くらいに相当するのだろうなと理解していた。陳の『上尉』という階級は、『大尉』くらいだろうか。
「あの日本狗をうまく使うのがお前の仕事だ」
陳はこの拠点のリーダー。
本来ならば拠点のトップにはもっと位の高い軍人が就くものだ。実際、これまでは少佐とか中佐といった階級の者が担当していた。しかし度重なる亜神の襲撃によって人員が減って、今では陳がこの世界に残る工作員の最上位者だったのだ。
「私の任務はこの拠点の警備と部下の指揮ですっ!」
「なら、命令を言い換えよう。石原とともに、買い物に偽装して周辺の警戒パトロールをしてこい!」
この拠点には、黎以外にも下士官級の兵士達が数名、警備要員として所属している。それ以外はほとんどが技術者か学者だ。
技術者はもっぱら武器を製作したり製造方法を手引き書にまとめている。
一方学者は、この地に埋蔵されている資源や動植物の資料を収集する。
彼らも小遣いが欲しいから、暇を見てはこちらの技術環境でも作れそうな爆発物や化学薬品の製造法をまとめているが、本来は資料集めがメインの仕事だった。
「ちょっと来てください」
黎は陳の手を取ると、奥まったところにある台所へと引っ張っていった。
黎は周囲に誰もいないことを確認して告げた。
「あの男は、私の胸をじろじろと見るのです。そればかりか手をワキワキとさせて、隙あらば襲いかかってきそうな怪しい気配を全身から発しています。陳上尉はそれにお気付きにならないのですか?」
黎はよっぽど石原と一緒に行動したくないらしい。
「これだけ魅力的な胸だ。男なら誰だって触りたがる。触りたいという奴には触らせてやればいいじゃないか?」
陳は無造作に手を伸ばすと、黎の豊満な胸を揉みしだいた。
「実際、俺にはこうして触ることを許しているだろう?」
「わ、私は貴方以外、触れられるのも見られるのも嫌なんです。貴方は私があの男に身体を触れさせても平気なんですか?」
「そういった私情は捨てろ。必要となれば手段を選ばず行うんだ。俺に可愛がってもらいたければ、まずは任務を果たせ。分かったな、黎?」
ゴム鞠のような弾力に満ちたそれは、陳の指を強く押し返し、指の間から溢れそうになっている。その感触を堪能した陳は、尖端部の硬結を指で弾くように刺激した。
「りょ、了解。同志」
黎はびくっと身を捩らせる。そして自分の好意を弄ぶだけの陳に対し、恨めしそうな目を向けたのであった。
「くそ、どうして私がこんな奴と買い物に出かけねばならんのだ?」
石原莞吾は、黎紫萱二級軍士長と数人の兵士とともに拠点を出ると、ウルースで食料品などを取り扱う船へ向かった。
「そういう愚痴は聞こえないように零してくれよ、黎。俺のデリケートな心がずたずたに傷付いたらどうしてくれる?」
「ふん、ヤスリをかけても傷付かんほど面の皮が分厚いくせに」
「そういうあんたはどうなんだ? 上尉に弄ばれてるの、分かってるくせに健気じゃん。心臓に毛でも生えてそうだ」
「言うな! 私だって自分がどう扱われているかぐらい分かっている。でも仕方ないだろう。それでも彼が好きなんだから! 大体、私が上尉にいじめられるのはお前のせいなんだぞ! 彼が私に当たるのは、大抵はお前が上尉をからかったりしたあとなんだ!」
狭い秘密拠点の中では、誰もがストレスを溜め込みやすい。
臨界点を超えた誰かが誰かに当たり散らす。当たられた誰かは、そのストレスを更にまた別の誰かにぶつけて解消しようとする。
まるで『ストレスの玉突き』とでも表現したほうが良さそうな状況が出来ているのだ。
「だとしたら俺に感謝するべきだよな、黎」
だが、一人だけストレスとは無縁そうな石原は嘯いた。
「なんだと?」
「上尉からいじめられても、お前さんが嫌がってるようには見えないからさ」
「……」
「上尉からいじめられるのが大好きなんだろう? きっと今夜もストレスを溜め込んだ陳の奴が、お前の部屋を訪ねていくんだ。そしてお前自身も、奴を喜んで迎え入れるんだ」
「し、知ってるのか⁉」
「バレてないと思ってるのか? 上尉と黎の関係を知ってる奴、挙手!」
石原の呼びかけに応じて、後ろにいた四人の兵士達が揃って手を挙げた。
みんな楽しそうに笑っている。黎はお前ら仲いいなとつい突っ込みたくなった。
「なんてことだ。隊内の規律が……」
黎は頭を抱えた。
「今更言うかねえ、風紀を乱している張本人が。大体、船の個室の壁って薄いんだぜ。あれもこれもみーんな丸聞こえ。先週の夜も壮絶なハードコア・アダルト動画の音声だけを聞かされてる気分だったぜ」
「い、言うな! 喋るな! 口を噤め! 今後この話題を口にした奴は、殺してやるからな!」
黎は真っ赤を超えていささか黒みがかった顔を俯かせながら、石原達を脅したのだった。
ウルースでは船と船が鎖で繋がれ、相互に行き来できるよう渡橋が据えられている。
海の民達はこれを渡って隣の船へ、更に隣の船群へと渡って、様々な品を商う店へと赴くのである。
石原達は、まず水商人の船へと赴いた。
「いつもみたいに水を頼むよ」
ウルースの周囲は海水で満ち溢れている。しかし塩水は飲料に適さない。そのため真水を陸から汲んでくるか、雨水を溜めるかしなければならない。
海水を蒸留して真水にする方法もあるが、貴重な燃料を使うので非常に高価になってしまうのだ。
「いらっしゃい。どの水になさいますか?」
店――要するに船だが――の船倉には大小様々な樽が並んでいる。
石原の目には、それらが造り酒屋やワイナリーにある樽に似て見えた。
水が商品になるという場所柄もあるのだろう、それぞれ一級、二級、普通などの等級が付き、しかも産地別に分類されて非常に高価な値札を付けた水まであった。
特に高いのは、大陸奥地にある氷雪山脈の雪解け水、あるいは極地の氷を溶かした水だ。その中には信じられないことに、一オンス(約三十ミリリットル)銀貨一枚(約八千円)という馬鹿高いものまであった。
「普通等級の真水を樽で八個くれ」
その時、黎が囁いた。
「イシハラ。最近、飲み水に塩気を感じるんだが?」
石原は黎の囁きに頷く。そして商人に警告を発した。
「おい、店主。最近、真水に海水を混ぜて嵩増ししたりしてないか?」
更に睨むように立っている黎を指差しながら、念入りに続けた。
「そういう馬鹿な真似をしていると、この姐ちゃんが店にやってきて暴れるかもしれないぞ。その結果、痛い目に遭うだけならいいが、下手をすると誰かが――主にあんただと思うんだが――海に浮かぶことになる。ぷかぷかーってな。俺としてはそういう結果は避けたいんだ。顔なじみの水商人がこの世からいなくなるのは寂しいからな。そういう俺の気持ち、分かってくれるだろ?」
「え、ええ。分かります」
黎の冷たい眼光を浴びて水商人は身を震わせた。
「本当だよな? 信じてもいいんだよな?」
「も、もちろんですとも」
「なら結構だ。飲み水と呼ぶに相応しい商品を出してくれ。そうすれば、お互いに平和でいられる。みんな幸せで丸く収まる。あんたも、あんたの家族も安全でいられる。俺が何を言いたいか分かるよな?」
店主は表情を強張らせながら頷くと、慌てて樽を用意しに引っ込んでいった。
石原の後ろを、真水の詰まった樽を両肩に載せた兵士達が続く。
「よくやった、イシハラ。褒めてやるぞ」
黎がとりあえずという感じで褒めてきた。
石原を上手く使えという陳の指示に従い、成果を出してみせたつもりなのだろう。
「ガキの使い走りじゃないんだ。買い物が上手に出来た程度で褒めるなよ、まったく。そんなことで俺が喜ぶとでも思ってるのか? 本気で俺を喜ばせたかったら――その乳を揉ませろ!」
すると黎は刺すような視線を石原に浴びせた。
おかげで彼の差し出しかけた両手は、中空で停まってしまう。代わりに黎の手が石原の胸元に向かって伸びてきて襟首を掴んで捻り上げた。
「調子に乗るな日本人! 褒められた程度で喜んでおくんだ。そうすれば怪我もしないし痛い思いもしないで済む」
「暴力はんた~い! 大体、黎は陳の奴に触らせてやれと言われてたろう? お前、上官の命令を無視するのか?」
「上尉が私におっしゃったのは、手段を選ぶなってことだ! つまり貴様に言うことを聞かせるためなら、胸以外に拳を使っても脚を使ってもいいってことだ!」
「えっと次は、肉と野菜、塩に、香辛料か……」
すると石原はお買い物メモに目を走らせながら背を向けた。そして黎をその場に放置してさっさと歩き出したのである。
「え、ええ⁉ ちょっと待て、イシハラ!」
黎の手には石原の着ていたシャツだけが残っていた。
シャツや上着を、すり抜けるように脱いでしまうのは石原の得意技だ。
「何してる、黎。ぼやぼやしていると置いていくぞ」
今までのやりとりは何だったんだと言いたくなるほどの豹変に戸惑いすら覚える。要するに、黎はおちょくられているのだ。
付き従っている兵士達もこみ上げる笑いを堪えていた。
「くそっ、貴様って奴は、愚蠢! 笨蛋! 混蛋! 坏蛋! 日本鬼子! ……○×、■△! ☆◇●※!」
黎は思いつく限りの中国語罵倒表現を、片っ端から並べ立てた。
差別用語、侮蔑用語、日本語には該当する単語どころか概念すら存在しないようなありとあらゆる悪口だ。
周りにいるアトランティアの住民達にはもちろん意味は分からない。ただ、激高していることだけは伝わっているようで、一体何だろうかと皆が振り返っていた。
「はっはー、何を言ってるのかさっぱり分かりませーん」
しかし石原と部下達がどんどん先に行ってしまうため、黎一人だけが注目を浴びることになる。そのため悪口すら最後まで続けられなかったのである。
そもそも石原とはどういう男なのだろうか。
名前は石原莞吾。三十一歳。東京都出身。
生粋の日本人で、かの有名な石原莞爾(帝国陸軍中将。柳条湖事件と満州事変を起こした参謀)の子孫を自称しているが、もちろん嘘だ。
彼は、対外諜報活動という危険な匂いのするダークな仕事にある種の憧れを抱いていた。要するに、テレビや映画によく出てくるタイプのスパイになりたかったのだ。
仕える国は別に中国である必要はない。スパイとして雇ってくれる国があったらどの国でもよかった。
「もし先にCIAと接触できていたらアメリカ合衆国のために働いていただろうし、もしСВРと接触していたらロシアのために働いていただろうし、MI6だったら女王陛下のために働いただろうよ。日本に対外諜報活動をしている機関があったら、もちろん日本のために働いていたさ。あ、外務省の情報官ってのはなしね。俺的にはあれ、スパイじゃないから。国際テロ情報収集ユニットは出来て日が浅いから様子見かな?」
彼にとって忠誠心とは、給料と興味深い仕事をくれる相手に対して感じるものであり、何の見返りもない愛国心なんてものはまったく理解できないのだ。
中華人民共和国の代理人と接触して、特地で拠点構築の手伝いをすることになった時、石原は年甲斐もなくわくわくどきどきして眠れないほど興奮した。
「これから自分は日本の外事警察や自衛隊の情報機関と渡り合うのだと思って、彼らをどう出し抜くかを真剣に考えていたほどだぜ」
ところが実際に彼に求められる役回りはお買い物係であった。
あるいは現地人との交渉役だった。
商人相手に値引きを求め、配慮を要求し、時には脅しつけて彼らの義務にはないことを強要する。
そうした役目もまた工作員達が活躍するためには必要だろう。
それが理解できるから不平不満は胸に秘めて仕事に従事している。しかし内心ではすごくがっかりもしていた。
というのも彼が苦心惨憺してこの特地で作り上げた拠点に集まったのは、彼の理想を思い描いたような工作員ではなかったからである。
秘密工作員というのは、語学に堪能で、潜入する土地の言葉にもすぐに慣れるのが常識だ。
といっても、そんな常識はテレビや映画で描かれ形成されたものでしかない。
一人で百人の敵と渡り合える特殊部隊員超人伝説と同じく、印象操作によって作り上げられた虚像なのである。
しかしながら石原はその虚妄を信じていた。
このアジトにやってくるのも、そうした超人的な連中だろうと期待していたのである。
そして彼らがやってきたら、石原が特地の文化や言葉をレクチャーする。
注意事項を説明し、当面は石原が彼らの活動を先導、あるいはサポートする。
そんな日々の中で、石原は秘密工作活動のコツやテクニックを見習い、盗み取るのである。
自身の抜け目のなさ、有能なところをアピールしていれば、必然的に彼らの仕事を手伝うようになっていくだろう。
きっと充実感溢れる日々が到来するに違いないだろうと思っていた。
「ところがだぜ、実際にやってきたのは、本当に工作員? と尋ねたくなるほどイメージの異なる連中ばかりだったんだよ。ホントがっかり。もちろん見た目と実質がイコールじゃないのはこの世界じゃ当然のことだろ? だから俺もこれこそが本職のあるべき姿で、一目でそれと分かるような奴はいないってことだなって気を取り直したんだ」
石原はこの世界で活動するのに必要なことを彼らに説明していった。
しかし工作員達はそれらには興味がないと言った。
特地の生活に進んで馴染もうとせず、言葉すら覚えようとしない。引きこもりのごとく拠点に籠もって己の業務に専念しているのだ。
石原に求められたのは現地に馴染む方法ではなく、観光ガイドのような道案内。
土産物、生活品の購入方法、あるいは女の買い方の説明、時には値引き交渉の肩代わりであった。
「あんたら、本当に工作員?」
「もちろん工作員だ」
一体どういうことなのかと思って陳に問えば、その多くが学者か技術者であるという答えが返ってきた。
「工作員ってそっちの工作かよ……ひでえ間違いだ」
彼らが工作員であるのは間違いではない。しかし彼らはひたすらアジト船に籠もって、火薬の製造方法の解説書を作ったり、木材や鉄材で武器や道具を作ったりしていた。
つまり、この世界には存在しない道具の製作活動のためにやってきた。その意味での工作員だったのだ。
当然、彼らをサポートする者が必要だ。だからこそ石原が雇われたのだ。
陳上尉は石原を慰めるように肩を叩いた。
「そうがっかりするな。そもそもこっちの言葉がすぐに使えるようになった連中は、ギルドに潜入しているんだよ。お前が想像しているような能力を持つ奴らだっている。けど、そういう優秀なのは、そもそもこんな拠点なんぞに居つくこともなく、一人静かに潜伏するもんなんだ。だから滅多に会えないのさ」
「ほんとかねえ」
この頃には石原にも多少現実が見えるようになっていたため、陳上尉の言葉もかなり怪しく感じられた。しかしその言葉に悪意はないようだから騙されてやることにした。
自分は今でこそ不遇な境遇に置かれているが、待っていればいずれ優秀な連中とともに血湧き肉躍るようなスパイ活動に携われるはずだ、と思い直したのだ。
それまでは、ひたすら我慢である。しかし、この拠点にいる限り、その時は来ないだろうなあとも気付いていた。
石原に見える範囲では、正規の訓練を受けた工作員は陳上尉しかいなかったからだ。
彼は軍人で、しかも特殊部隊出身らしい。
日本語も堪能で、特地の言葉もすぐに覚えていた。それだけに敬意を表すことに何の躊躇いもないのだが、彼の部下達となるとからっきし駄目であった。
秘密工作活動はバイオレンスとも無縁ではないから、もちろん荒事もこなす。しかし彼らはただの兵士だった。刺々しく禍々しい部分を隠すということを知らない、ただの暴力馬鹿達なのだ。
聞けば、香港デモに地元警察の制服を着て赴いたことがあるとか。
犯罪人容疑者引き渡しに関する条例改正反対の抗議活動をする市民相手に、容赦なくビーンバッグ弾を放ち、倒れた者は取り囲んで警棒で乱打し、催涙ガスを噴射する。そういう活動に従事していたという。
黎なんかはその代表格みたいな女だったので、思わずげんなりした。
陳に習ったのか、特地の言葉を片言でも操れるようになったことは評価できるが、それとて一目惚れした陳の気を惹くために努力しただけだ。
「まるでヤクザの情婦だな」
映画なんかでは、こういうキャラはやられ役かお色気要員だ。
その手のAVだったら、敵に捕らわれて延々と拷問を受ける役回りだ。
「貴様、何をジロジロと私の身体を見てるんだ?」
そんなことを思い巡らしていたら、無意識に彼女の肢体に目を向けていた。
これだけは全世界の男が認めるだろうと思われる形のよい乳房。衣服の下に隠しても隠しきれないその隆起に見入ってしまっていたらしい。
これでもう少し顔が良かったらなあ……と、いささか残念に思う気持ちをポロリと口にしてしまう。
「き、貴様!」
おかげで石原は、黎の憎々しげな視線と罵倒を再び浴びることになったのである。
石原達は買い物を終えてアジトに戻った。
だが帰ってみると、アジト船――それほど大きくはないが、それでも全長二十五メートルくらいはある木造船――が傾いていた。
何があったのか、船体が破損して後部甲板が既に海面下に沈んでいたのである。
未だに沈没していないのは、前後左右の船と鎖で繋がれているからに他ならない。
周囲の船の甲板には、何があったのかと様子を見に来る野次馬が集まっていた。
「なっ⁉」
黎達は荷物を放り出すと、野次馬をかき分けて駆け寄った。
少し遅れて石原もその後を追った。
傾いて後ろ半分が波に洗われている甲板に飛び移り、梯子段を下り薄暗い船内へと入る。
するとそこに見えたのは、累々と横たわる死体だった。噎せ返るほどに充満した、錆びた鉄の臭い。血だ。それは血液の臭いだった。
「陳上尉!」
黎が叫ぶ。すると死体の山から声がした。
「れ、黎……来るな! 止まれ!」
思わず駆け寄ろうとする。しかし陳の警告に無意識に従って立ち止まったのが幸いした。黎の鼻先を掠めるように、何かが空を切ったのだ。
黎はようやく気が付いた。暗い船倉の中に屹立する、黒い人影に。
「だ、誰だ、貴様?」
暗さに目が慣れてくるとその姿も見えてくる。
それはフリルたっぷりの黒ゴス衣装に身を包んだ少女だった。
その小さな身体でどうやって持ち運んだのかと心配になるほどの巨大なハルバートを手にしている。
真っ黒な唇が艶めかしく蠢いて言葉を発した。
「わたしぃはロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神エムロイの使徒にしてぇ、陞神後は愛を統べる神となる存在よぉ」
薄闇の中で爛々と輝く瞳を見た瞬間、思わず石原は口走った。
「嘘だろ? あんたみたいな愛の神がいるもんか‼ そんな禍々しい気配を発してるんだ、暗黒の神のなんちゃらってのは納得できる。だがな、その凹凸に欠けたスタイルで、愛の神だなんて言われたって理解できねえんだよ!」
「何ですってぇ?」
「ちったあ、ギリシャの愛の女神像を見習えっての! アフロディーテ像なんかボンッキュッボンのすげえいい女で……あっ」
「……」
背筋が凍り付くほどに冷たい視線を浴びた瞬間、石原は悟った。どうやら自分は死刑執行の命令書に自らサインしてしまったらしい。
次の瞬間、黎配下の兵士達が少女に向かって飛び出した。船倉に満ち溢れていく殺気に、耐えられなくなってしまったのだ。
「撃て撃て撃て!」
「待て、お前達……」
黎が止める間もなかった。四人とも拳銃を構えたと思ったら、それぞれ三発の弾丸を自称愛の神に向けて放っていた。
都合十二発の弾丸がロゥリィに襲いかかる。
しかし分厚い鉄の塊がそれを阻んだ。ハルバートだ。
小柄な体躯に一体どれほどの臂力を有しているのか、少女は巨大な鉄斧をひょいと引き起こし、その側面を盾にして弾丸を払いのけたのである。
甲高い音とともに跳弾が船体に食い込む。
「くっ」
兵士達は続けて銃弾を放つ。しかし次の三連射は空を切った。
既にそこに少女の姿はなかったのだ。
「ぐはっ!」
声のした方向を見れば、黎の部下の一人が縦二つに切り裂かれている。噴出する血液を煙幕とした少女がすぐさま次の兵士に肉迫する。
慌てた兵士は拳銃を乱射するが、射線を掻い潜った少女が横殴りに振った戦斧によってあえなく腰斬されてしまった。
「ひい!」
ハルバートのピックが三人目の犠牲者の胸部を貫いた。
「さ、下がれ!」
この狭い場所での近接戦は敵にとって不利。長大なハルバートをこんなところで振り回せるはずがない。
どうせ梁や船体にぶつかって動きが止まるはずだ、と高を括ったのが失敗だった。
あの黒い悪魔は、斧槍が梁にぶつかればそのままへし折り、船体に食い込めばそのまま引き裂いてぶん回してくるのだ。
それを悟った黎は、一人残った部下に後退を指示する。
「黎同志こそ下がっていてください」
しかし兵士は手榴弾のピンを抜きながら叫んだ。そしてそれを抱えたまま、自称愛の神に向かって突き進んでいった。
「馬鹿!」
止める間もなかった。
このままでは爆発に巻き込まれてしまうと、石原が黎の腕を握って梯子段を駆け上る。
すると手榴弾は数秒後に炸裂した。
「や、やったのか……」
外で爆風をやり過ごした石原と黎は、再び船倉を覗き込んだ。
しかしニヤリと嗤う死神がそこにいた。兵士の勇敢な自爆特攻もこの相手にはまったく通用しなかったのだ。
「く……」
黎が銃を向けようとする。しかし石原が背後から止めた。
「待て待て、そんなもの通用する相手かよ!」
「だが、私は戦わねば、部下達に……」
「馬鹿、部下達のことを思えばこそ、ここは逃げの一手だろ! 奴らの犠牲を無駄にするな!」
相手が悪いと石原は説得する。戦えば必ず負けると。
「奴らが無駄死にだと⁉」
「お前が死ねば無駄死にだ!」
その時だった。二人のいた甲板が床下から炸裂する。
直下からハルバートを一閃させたロゥリィの一撃が、アジト船の甲板を引き裂いたのだ。その衝撃と破片が余すところなく石原の身体を直撃する。
「ぐはっ」
二転、三転、床を弾んでごろごろと転がり倒れた。
「い、イシハラ」
咄嗟に突き飛ばされたのが幸いしたのか、黎はダメージから逃れられた。彼女は吹っ飛ばされた石原に駆け寄る。
そうしている間にも船倉から死神ロゥリィが姿を現す。
黎が銃を構えようとするも、石原は再び銃口を下ろさせた。
「待て、黎、銃をしまえ」
「イシハラ、何故だ?」
「こうなったら俺に任せろ。この相手は、こっちから挑んでいかない限り何もしてこないはずなんだ」
「なんだと、どうして分かる?」
「俺に言わせりゃ、分からねぇほうがどうかしてるぜ」
石原は黎に武器を置かせると、何とか脚に力を入れヨロヨロと立ち上がる。そしてロゥリィと向かい合うように前に出た。
「お前ぇ、いい度胸しているわねぇ」
「ほんと、俺もそう思うぜえ」
「覚悟は出来てる訳ねぇ」
その時だった。石原は身を投じるようにして甲板に伏せた。
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