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7.エロスの下ごしらえ
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待ちに待った土曜日が来た。
午前中の仕事先から大夢の部屋へ直行した市井は、勢いで取り付けたデートの今日も、当然ながら大夢と契約している家政夫のお仕事はしっかり勤める。
大夢は今夜と明日の休み確保のために、朝から休日出勤して頑張ってくれているので、市井だって負けていられない。
恒例の、部屋に散らばる洗濯物集めからスタートして、二日分の料理の作り置きを済ませてしまうと、いつもより掃除に若干の手間をかけて部屋をピカピカにしていく。
(ベッドは勿論だけど、リビングで寛いでるうちに出来るかな……)
そう考えるとベッドメイキングに力は入るし、リビングだって手は抜けない。
(ひょっとしたら風呂場で出来るかもしれない)
だとしたらと、バスタブは勿論、鏡は特に拘った。
(あっ、ひょっとしてひょっとしたら、玄関でいきなり出来る!?)
もう家中全てに油断できない。
因みに、出来る、と書いて、ヤレる、と読む。
市井の頭の中は、一泊二日の間に実行したい、スケベな妄想が大渋滞だった。
どこで急に求められても問題なく出来るように、ありとあらゆるところをピカピカにして、準備万端で大夢をたっぷり可愛がってやるのだ。
市井は、掃除をしながらキラキラの笑みを――真っ黒に浮かべた。
(楽しみだなぁ、……乳首)
そう、大夢は結局、乳首の画像をくれなかった。
市井はちょっと、――いや、かなり拗ねていた。
きっと、昨日の夜の電話を切ってから、大夢は画像を送信するかどうしようかと、乳首の事でいっぱいいっぱい考えただろう。そう思うと、微笑ましすぎて笑みしか浮かんでこない。
(でも、ソレとコレとは別ですっ)
市井は大夢の為に、心を鬼にして、天国へ導くことを、部屋でひとり誓うのだった。
二人の初めてのデートは水族館になった。
仕事漬けの気分転換に、絶叫系のアトラクションも捨て難く、遊園地もプランの候補にはあったが、大夢が仕事上がりでスーツ姿のため、駅近の定番デートスポットで決定したのだ。
夕方になってようやく仕事を終える事ができた大夢と、水族館の最寄り駅で待ち合わせをして、並んで歩いて向かう。その五分ほどの道中に、お互いが手を繋ごうかとソワソワして相手の様子を伺い合っているのが分かって、不意に目が合ってしまうと、照れ臭くて笑い合った。
「やっぱりこんな時間にこんな場所じゃ、男同士で手を繋ぐのはハードル高いですよね。……うん、今は我慢します」
市井がちょっと悔しそうにそう言ってくれたから、大夢の胸はデート開始早々キュンキュンして苦しい。
(我慢しなかったら、市井さんは俺と外で手を繋げれるんだ)
直ぐそばにある市井の長い指を見つめながら、大夢は改めて自分が市井とデートをしているのだと自覚して、水族館のゲートを潜るのだった。
本社に転勤してきて、仕事ばかりだった大夢にとって、近隣のどの観光地もほぼ未踏であり、勿論、この場所もそうである。初めて来た水族館は、とても楽しかった。
小さな水槽で種類ごとに分けて展示されているカラフルな魚を目で追ったり、真っ暗な部屋の近未来的な照明で演出された水柱の中に浮かぶクラゲを、市井と顔を寄せ合って眺めた。
そして、本日最終となるイルカショー開始の館内放送が流れると、客足がそちらに向かい、館内のメイン水槽となる巨大な水槽前がにわかに貸し切り状態で独占できた。魚群の渦の横で悠然と泳ぐサメ科の最大種を見上げ、その迫力に大夢は口を開けて立ちつくす。
「――すごい……」
上を向いてぽかんと惚け、そのまま暫く黙って眺め続けていた大夢の目に、思いがけず涙が溢れた。
「あ……こういう、大きなものを前にすると、……なんか自分がちっぽけだなって、思います……。すみません……なんか、感動しちゃって……泣くつもりなかったのに……」
慌てて手の甲で目を擦る大夢に、つい先日聞いた佐藤の話を思い出してしまった市井は、その姿を目に入れてやらないように顔を水槽に向けたまま、柔和な声で教えてあげる。
「……我慢しなくて、いいと思います。見て、感じて、それで溢れるものなら、その涙は必要なんです。なら、出してあげないと。……だから、我慢しなくて、俺はいいと思います」
市井の優しい言葉に、更に溢れて零れ出した涙をそれでも止めようと闘う大夢の健気さに、市井の心が揺さぶられる。
薄暗いフロアの、水槽から降り注ぐ青い水面の揺らめき漂う空間で、市井はそっと、大夢と手を繋いだ。
「ね、俺も我慢しないことにします。これなら、おあいこでしょ?」
悪戯っぽい笑顔を浮かべた市井が、大夢のほうを見て空いてる方の手を伸ばすと、髪を優しく撫で、その手でそっと涙を掬う。
鼻をすすって、大夢がギュッと瞼と唇を強く閉じると、観念したように、大夢はやっと細い肩を震えさせた。
後ろから他の客がやって来るのが分かると、市井は大夢を壁に寄せて、コートを羽織った長身で隠してしまう。
二人は暫くの間、ただ黙って、水中をゆったりと舞う、黒い影を見て過ごした。
佐藤へのお土産を買ってから水族館を出たあと向かった、ちょっと奮発して予約した鉄板焼のお店は、高級感あるカウンターの雰囲気もさることながら、柔らかく分厚いジューシーな肉に、二人は味もボリュームも大満足で、会話も弾んだ。
大夢が「今度はイルカショーを見に、また行きましょうね」と言えば、市井が嬉しそうに頷き、今度は市井が「鯛やサンマを見た時、献立が浮かぶんですよね」と言って大夢を笑わせる。
コースの最後に出てきたコーヒーを飲みながら、大夢は幸せいっぱいでお腹をさすった。
「久々に肉食ったーっ、て感じしました! ――あっ、いえ、いつも美味しい肉料理も作っていただいてるんですけど……あのっ」
失言だったと慌てる大夢に市井は苦笑する。
「大丈夫です、分かりますよ。家で食べる肉料理とはまた違う、肉の塊が口の中いっぱいになる感覚ですよね」
「そうそうっ。それですっ」
「俺も思いました。美味しかったですね」
「はいっ」
満面の笑みで返事する大夢の無邪気さに、市井は大夢のお肉にかぶり付きたい。
(頬もお腹もお尻も、全部食べたいですっ)
そんな事を考えて、肉食獣の目で大夢の一つの部位をジッと見つめると、大夢が恥ずかしそうに片腕でシャツとネクタイの上から胸を押さえて恥ずかしがった。
「市……煌人さん……あの……胸ばっか、見過ぎ、です……」
こんな場所で、そこだけあからさまに強くしたロックオンは、大夢にもそろそろそういう雰囲気になってきて欲しかったから。
「だって、……分かってますよね? 俺の今日のメインは、胸肉ですよ」
「む、胸肉って……っ」
肉が美味しかった話の筈だったのに、市井の視線はどう考えても大夢の胸を食べたがっていて、昨夜の写真の件を持ち出してきている。
「大夢の期待には応えます」
「ち、違っ、あれは――」
「期待には、応えます」
「…………っ」
もう、どう言い訳しても逃げられないのだと、市井の笑顔を浴びながら、大夢はゴクリと、コーヒーの最後の一口を飲み干した。
真っ暗な玄関に入り、大夢が明かりのスイッチを押すと、後から入った市井がドアを施錠してくれた。その音を聞いて、大夢は苦しいくらい、ドキドキと胸を高鳴らせる。
(家に、着いたしッ)
家に着いたらどうなってしまうのか想像も出来なくて、帰り道の間中、少ない知識と経験値で、頑張ってエロエロな市井を想像したら、ちょっと勃ってきてしまって、エロエロなのは市井ではなく自分の方なのではないかと反省しては、また妄想に耽ってしまった。横を歩いていた市井はと言えば、大夢が一人で赤くなったり青くなったりニヤけたりの百面相を延々繰り返していて、それを非常に楽しく眺めていた。
そんな大夢が、靴を脱いでさっさとリビングへ行こうとしているのが分かって、その薄い身体を市井が後ろから抱きしめる。
「すみません、今すぐ補給したいです。もー、限界」
水族館で手を繋ぐくらいしか接触しなかったデートに、市井の本音が溢れた。
「やっと堂々と大夢に触れる。すっごいイチャイチャしたい」
ギュウっと市井の腕に力がこもって、大夢は緊張も忘れてクスクス笑う。揺れる肩越しに、拗ねた市井が口を尖らせた。
「だって、こんなにも好きな人と初めてのデートだったのに、ハグもチューも我慢なんて拷問ですよ。だから、我慢のご褒美もらいます」
そう言って、背中から抱きついたまま、大夢の右頬へ冷たい唇をチュッチュと吸い付けて振り向かせると、距離が近くなった大夢の唇をあっという間に貰ってしまう。
「んっ、――ンンっ」
最初から舌を絡ませて攻めてくる市井に、大夢は求められる熱の高さに嬉しくなった。
ちゅくちゅくと唇の隙間から漏れる音がしばらく続き、その甘さと背中の温かさに大夢の頬が上気していく。
幸福感に目をトロンとさせていたら、市井の抱きしめる手がそっとコートの中に差し込まれ、大夢の身体をスーツの上から撫でさすってきた。
「んっ、ゥン……」
まだ靴も脱いでいない玄関で仕掛けられ、戸惑う大夢の小さな抵抗を無視して、コートの中の市井の手は、やがて大夢の胸を優しく揉み始める。
指と指の間に乳首が来るように、ワザと弱い場所を外され、まるで女性の乳房を鷲掴んでいるみたいな動きでモミモミされて、ものすごく恥ずかしい。
「そんな揉みかた……ッン、しないでッ」
身体を捩る大夢と、弄る手を止めない市井。その攻防で、大夢のコートが肩からずり落ちると、もう邪魔なだけになってしまったと、市井が上着を二人分まとめて廊下に投げてしまった。もちろんそれで市井の手が止まるわけもなく、そのままキスが再開されると、背後から回った市井の手に、大夢はジャケットのボタンを外され、ワイシャツの裾がズボンから引き出されて、更にそこから冷たい片手が臍へ直に触れてきて、腹を躊躇なく撫で上がって侵入してくる。
その手際の良さに、大夢の防衛線は後退の一途を辿った。
「あ、煌人さん、ここッ、玄関……ンっ」
左手はワイシャツの上から、右手は肌に直接触れて……。
そのちぐはぐな感触に疼いて腰を捩らせると、お尻に市井の膨らみだした熱が当たって、温かい吐息が大夢の首筋にかかった。
「それ、すごくいい……。そのまま大夢のお尻で、俺のを擦って……?」
抱きしめられて、甘えた声で、背後からスリスリと頭を首元へ寄せられたら、拒否なんて出来るわけがない。
恥ずかしくてたまらないのに、市井のお願いを叶えてあげたくて、大夢は小ぶりな丸い尻を市井のズボンの上に当てると、その膨らみをなぞる様に腰を動かし始めた。
言われたとおりに動く、従順な大夢の腰つきに刺激されて、市井の目に淫靡な光が浮かぶ。
「んっ……イイ。……大夢がお願いを聞いてくれたから、俺もちゃんとお返ししてあげる」
耳元で優しく囁き、大夢の耳朶にキスすると、市井の指先が大夢の胸の粒をゆっくり左右同時に掻いてきた。
「アァッ! ア……ッ、アッ」
小さな先端の痺れるような快感が、大夢を簡単に虜にしてしまう。
「もう、痛みは無いですか?」
確認する様に優しく触れてくる市井の指先に、大夢は腰をひくつかせて背中を反らせる。
「ああ、その姿勢だと俺は胸を触りやすいし、可愛いお尻は俺のをグリグリしてくれて、とてもいいです。背中、反っちゃうくらい気持ちいいなら、痛みはもう大丈夫みたいですね。俺との約束をちゃんと守って、一人では触らなかったんだ?」
穏やかな声の調子とは真逆に、どんどんリズムを上げ、もう語尾の方では残像が見える速さで指先を動かして掻いてくる市井に、大夢は手で口を押さえてコクコクと一生懸命頷いた。
「アァンッ! ――ハァンッ、ンーっ、んーッ」
「気持ちいいね。おっぱい好きなのに、何日も我慢して。いっぱい、いい子いい子してあげます。直に弄られるのと、シャツの上から触られるの、大夢はどっちが、好き? どっちが、気持ちいい?」
右手で小さな粒を捏ねてやり、左手は布地の上から小刻みに掻いてやる。
「アーッ、ゃ……ッ、分からな……ッ」
どっちも気持ち良くて、答えられない。
お尻の割れ目にある市井の硬いものも気になり、大夢の腰が媚を売るように誘う動きをしてしまう。
口の端から涎を零す大夢を見て、喉を上下させた市井は、両手を一旦大夢から離した。
「やっ……もっと……」
左右をちゃんと答えないから手を離されたと思った大夢が、振り返って市井の胸にすがる。
「ひ、左ッ、左が気持ち良かったですッ。もっとして? いっぱいして?」
ね? と上目遣いで見上げてくる、そんな大夢の可愛い反応に眩暈しながら、市井はギュンッと昂ぶった己の下半身に待てをする。
(くぅッ、このエッチで可愛い小悪魔めっ!)
勢いで廊下に押し倒したりしないように、大夢の額や目蓋、目の横のほくろや頬にキスを次々落とすと、欲望が落ち着ついてくるし、大夢には、止めたりしないから、と安心させる効果となる。
そうやって大夢にチュッチュしながら市井の手は、大夢の後ろにある下駄箱の扉をそっと開けた。その中からボトルを取り出すと、キャップを外して手のひらにローションを垂らす。
「――ひゃ!?」
市井が胸に手を再び伸ばしてくれた事に喜んだ大夢の声が、驚きにひっくり返った。
「な、何っ? 市井さんッ、何コレ!?」
「驚かせてすみません。温感タイプのローションだから、冷たくはないですよね?」
「つ……冷たくはない、ですけど……、え? どこから……?」
突然、シャツの上から左胸にローションを付けられて、ヌルヌルと塗り広げられ、左の乳首を浮き上がらせる。驚いたままの大夢に、市井は質問には答えず、くすりと笑って行為を続けた。
「左の方が好きなら、シャツの上からしてあげます」
突起に、濡れたシャツが張り付き、分かりやすく飛び出した粒を市井の親指が円を描くように動いて押しつぶしてくる。
乾いた生地とは違う、滑りのある動きに大夢はゾクゾクさせられた。
「あっ……、さっきと……違……ッ」
腰にくる快感に立っているのが辛くて、背中を下駄箱にもたれさせてなんとか身体を支えているのに、それでも欲しがる身体が市井に胸を突き出してしまう。
「さっきと同じが良かったです? それなら、右はまだ濡らしてないから、右で楽しんでください」
「んっ、あぅッ、ァア……! ふっ……ゥッ、アァッ」
気持ち良さそうに口を開けて声を漏らし、ズボンの前合わせを窮屈そうにさせて恍惚の表情を浮かべる大夢に、市井は次の欲望が溢れてきた。
「……ひょっとして、乳首だけでイケそうですか……?」
「ッ……! む、むりッ、ですっ、ハァッ……ン! やッ……アーッ、……激しく、しないでッ」
「イケそうですよ?」
「ムリ……っ、ですッ、こ……怖い」
そんなところを弄られて達する程の快感なんて、想像出来ない。それなのに、市井は諦めてはくれないようだ。
「じゃあ、シャツを肌蹴て、直接、指先と舌で、いっぱいしてあげたら、どうです?」
「指と……舌で……」
指の動きを止めないで誘う市井に、大夢の視線が市井の口元を見つめる。市井は大夢の視線を感じながら舌を少しだけ出すと、形のいい自身の唇をねっとりと舐めた。
「舐められるの、好きですよね」
市井の舌が、どれほど気持ちよくしてくれるのかなんて、そんなことは大夢が一番知っている。たとえこの後、市井の望むとおりに達する事が出来なかったとしても、舐めて貰えるなら、正直なんだっていいと思った。
「す……好き、です」
認めたから、もう早くその舌で舐めて欲しい。
「好き……ですから、舐め……て」
恥ずかしいけれど、お願いだってした。
そうしたら、市井が舐めてくれるから。
「じゃあ、シャツのボタンを外して、日曜の夜に一人でどう触ってたのか、俺に見せてください」
「…………え?」
直ぐに優しくお願いを聞いてくれると思ったのに、とんでもない要求をされた。
「そんなの……ッ」
出来ない、と力なく首を横に振る大夢に、市井は大夢の手をそっと掴むと、シャツのボタンへ誘導してやる。
「俺のお願い聞いてくれたら、大夢のお願いも、ちゃんと聞きます」
低い声でそっと囁かれて、不安な目で市井を見つめたら、「信じて」と言われて、優しくキスされた。
「ンッ、――んっ、ん」
唇を何度も啄まれる間、市井がシャツのボタンに指を引っ掛けて催促してきて、大夢は手探りで上から一つ一つボタンを外していく。
「あ……」
大夢の口から、市井の舌が抜かれ、唾液の糸が伸びて切れると、薄い胸を晒した大夢が、市井の視線に促されて、ゆっくりと自分の両の粒を摘んで、クリクリと弄り始めた。
その姿を市井にジッと見つめられ、余計に興奮してしまう。
左の突起に付いていたローションの滑りが気持ち良くて、そちらの指が止まらない。
「右にも付けてあげないと、また痛くなっちゃいますよ」
教えられて、左のヌルヌルを右の指に付け、右の乳輪に沿うように円を描いて塗り付けると、両方を舐められてるような感覚になって、堪らなく悦かった。
「そうやって、一人で弄ってたの?」
両の突起を摘んで親指と人差し指の腹で擦って息を荒げる大夢は、切ない目で市井を見てコクンと頷く。
「ずっと、黙って弄るの? 俺の事、思い出して触ったりしなかった? それだけじゃ、シーツもスーツもあんなにドロドロにできませんよね?」
詳細な状況を再現させようとする市井に、大夢の目元が羞恥に赤くなる。
「やだ……、は……恥ずかしい……」
「もっと恥ずかしいこと、この後するのに?」
涼しい目元に穏やかな声で言われると、この後への期待が恥ずかしさを霞ませて、大夢の喉を震わせた。
ヌルヌルの付いた指先で硬い粒を弾きながら、大夢が淫らな声を上げる。
「ん……、あぁ、ッ……ァンンッ」
確か、日曜の夜は、まだ市井の下の名前を、大夢は知らなかった。
「……い――、市井さん……、好き……。アッ、触って……もっと俺の乳首、いっぱい触って……ッ」
目の前にいる市井ではない彼に呼びかけて、大夢が指先を動かして甘ったるい吐息を零す。
「市井さんっ。ココ、気持ちいい、よぉッ。ハアっン」
市井の目の前で大夢の股間が大きくなっていくのが分かって、市井も同じように興奮していく。
大夢の指先に虐められ、薄桃色だったものが赤く色づき、ぷっくりと丸く腫れ上がる。だが、自慰では同じ動きを繰り返す自分の指に、大夢自身が焦れてしまうのだ。
「な、んで、やっぱり、俺の手じゃダメなの……っ。もっと気持ちよくなりたいのに、俺の触り方だと、市井さんみたいに、上手く出来ないッ」
目を瞑り、あの日を思い出して、もどかしそうに市井を求めて記憶を辿る。市井がしてくれた動きを思い出して、優しく撫でたり、強く摘んだりを何度繰り返しても、あの日と同じで、今日も自分の愛撫では全然足りないのだ。
だから、あの日を再現するなら、大夢はベルトに手をかけ、ズボンを脱がなければいけなかった。
もうどうにでもなれの勢いで、大夢の足首までストンとズボンが落ちて、布が溜まる。
目を閉じていたから、ギョッとした市井に気付かないまま、大夢は右手の中指に胸のローションを付けると、手を後ろへ回してパンツの腰側から手を入れ、ゆっくりと息を吐きながらつぷりと、小さな蕾の中へ沈めた。
「ふぅっ、アッ……」
大夢の背後で、パンツに隠れてどうなっているのか見えない場所で、とんでもないことが起こったと市井は興奮に目の前をクラクラさせる。
(初めてのエッチのとき、お尻を解す時から柔らかかったワケだ!)
ギンギンに目を見開き、瞬きも忘れて夢中で視姦してしまう。
「あ……市井さん……指、やぁ……、乳首……が、気持ち、イイよぉ」
恋人の名を呼んで、お尻に指をいれながら左の乳首を弄る大夢の姿に、今更市井は悔やんでも悔やみきれなかった。
(あの日、ホント帰らなければよかったぁぁ!!)
可愛い恋人の、一人で慰める姿は想像以上にエッチで、眼福だった。
大興奮の市井の気も知らず、大夢は疼きに耐えられず再び目を開けると、乳首を摘んで肌を震わせ、大夢を食い入るように見つめていた市井に、状況も忘れて切ない目で誘った。
「アッ、あ……煌人さんっ、好きッ、好きなのっ、こんな俺、嫌? ねぇ、触って……? 俺の乳首、ごめんなさいしても、許してくれなくて、気持ちよくしてくれるんでしょ? クゥッ……ンッ、も、やだ……煌人さぁん」
(――ッ、我慢……出来るかぁぁー!!)
追い込んだつもりが、崖っ淵に追い込まれていた。
「俺が目の前にいるのに、俺じゃない俺を呼ぶの、もう禁止ですッ!」
エロかったけれど、焼きもちの方が勝ってしまって許せない。コリコリに勃った右の突起を、伸ばして出した舌でコレでもかとしつこくペンペン舐め叩いた。
「ァッ、アァン、それ好きっ。煌人さんにッ、舐められるの、俺の指と全然違うのっ、あぁ、イイよぅ……ッ!」
左胸を弄っていた大夢の指が市井の髪に差し込まれて、ギュウっと頭を抱きしめられる。
大夢は男に胸なんて無いと思っているかもしれないが、ジムにも通わず、市井の作る栄養満点の食事を半年近く食べ、ほぼ毎月乳首を開発されていれば、程よい膨らみが仕上がっているワケで。
そこに顔を埋めて、お留守になった左の突起に手を添え、ふよふよと揉みしだけば、市井はそれなりに至福の感触を味わえる。
(ぷにぷにしてて、気持ちいいです……最高!)
感度の良い可愛い雄っぱいにむしゃぶりついて乳輪を舐め回し、口の中に閉じ込めた粒を今度は大事に大事に舌で虐める。
「ンンー! ンッ、ンッ……アーッ」
胸の愛撫だけでパンツを先走り汁で濡らして押し上げ、大夢の茎がググっと反りかえっていく。
蕾に差し込んだ右手の中指が、市井に胸を舐められるたびに締められ、自分のお尻がこうやって市井を離さないのだと知った。
「煌人さんッ、もっと強くして……っ、痛いくらい、で……いいから……ッ」
「……ッ、でも、そうしたら、また大夢が痛くなるから……」
いつもの抓ったり、捻ったりがされないことに焦れていたが、身体を気遣ってのことだと気づいて言葉を呑む。
「そ……れは嬉し、けど……」
何度もしてくれた痛い程の刺激を身体は欲しがっていて、それを貰えないのならこの中途半端な状態をどうか助けて欲しい。
堪らず揺れた大夢の腰に気付いて、市井は口での愛撫を続けながら、片手で自分のズボンのファスナーを下ろすと、窮屈な場所から中身を出してやる。乳首を舐められて悶える大夢の顔を見ながら何度か扱しごくと、あっと言う間にそれは芯を持った。
重く熱い竿から手を離し、その手を市井は大夢のパンツに伸ばすと指を掛け、彼のズボンと同じように下へ落としてしまう。
パンツと一緒に引っ張り下げられた大夢の茎が、パンツから離れると同時に弾かれるように元の場所に戻って、大夢の腹をペチっと打った。
その開放感と刺激に、大夢は乳首よりも強い快感が貰えるのだと、肌を粟立てて身震いした。
「寒い、ですよね……?」
大夢の震えを、冬の玄関で下半身を露出させ過ぎたからだと、ここでの続行に躊躇いを見せた市井に大夢がイヤイヤと腰を市井に擦りつける。そして、大夢の気づかないうちに出した、カチカチに勃起した市井のそれと大夢の熱がぶつかった。
「煌人さんだって、こんなになってるじゃないですかっ……! やだ……やだッ。寒さなんてもう分かんないからっ。それより疼いて苦しいの……ッ。お願い、イかせて……ッ」
「――ッ!」
大夢のお願い事には本当に弱い。
もう、乳首で達する目標は今後のライフワークにしよう、と長期戦にさっさと決めて、今目の前で発情している大夢の救助に全力を注ぐことにした。
「アーッ、あっあっ、すご……っ、それっ」
「大夢は乳首もココも、先端が大好きなの、知ってます」
パンパンに腫れ上がった鈴口を指先で優しく掻いて悶えさせると、互いの括れ同士を擦り合わせて体液を塗り付け合う。立っていられない大夢がズルズルと下駄箱に預けた背中を下げ始め、市井が慌てて支えると、さっき廊下に投げて落としたコートに上に大夢を座らせ、邪魔な靴、それからズボンと下着を取ってしまうと、そのまま押し倒した。
充血して熱く腫れ上がる二本の棒を、市井の両手で作った狭い輪の中で、本能が突き合いぶつかり合う。
お尻にあった大夢の指は体勢を変えたときに抜けていて、それには気づいていないのか、茎を競り上がってくる射精感に没頭している。
市井はそこに目ざとく気づいて、大夢のお尻に長い指を差し込んだ。
「んァンっ!?」
流石にすぐにバレてしまったが、そこに構う暇が今はないのか、涙ぼくろの目を細めただけで見逃してくれた。そのお礼に、市井は大夢の唇にチュッと吸い付き舌を差し込むと、お尻に入れた指と同じ動きで、上からと下から同時にヌルヌルと責め立てる。さっきまで大夢の指を咥えていた小さな蕾は、市井の指を覚えていたように受け入れてゆっくり解れていった。
「ヒッ……ンッ、煌人さ……もぅ、俺……イっちゃ……あっ、あっ、イクイクイク……ッ――!!」
互いに吐く息を吸い合う近さで呼吸を荒げて唾液を混ぜ合い、大夢の茎の弱くて好きな場所ばかりを責め続けると、市井の狙いどおりに先に大夢がピュっと腹に向かって白濁を飛ばす。
白い放物線の着地点となった腹をぴくぴくと痙攣させて、酸素を求めて肩で息をする大夢の姿に満足すると、市井はズボンのポケットからゴムを出して手早く装着し、大夢の出した体液をそこへ塗り付け潤わせる。そして、大夢の足をグイッと天井に向かって上げさせると、蕾に宛がった先端をグッと押し込んで大夢を鳴かせた。
「アアアッ――!! ……ふっ、ふぁっ、待ッ……、――ああんッ!」
吐精後の脱力感でぼんやりしているところを襲った、大好きな人の熱欲の塊は、その大きさで大夢の身体の中をいっぱいにした。
一気に奥まで挿れた市井は、快感に首の後ろをぶるりと震わせ、大夢の細い腰を掴むと、市井の竿を必死に受け入れて締めてくるお尻の中を小刻みに前後に揺すって貪り始める。
「ふっ……、あぁ……あ。ハッ、ハァ、ハァ……、くっゥン! あんっ、アーッ……っ。ソコだ……めぇっ」
「あぁ……ッ、すご……い……。前のこと、ちゃんと……身体が……覚えてる、ン、ですね……ッ」
「も……これ……ァ、声が勝手に……出るからッ、あぁん……! も、やぁ……ンっ」
ずぶずぶと市井の太いそれを呑みこみ、空気が入る度に卑猥な濁音を立てる肉の壺。そのぬちゃぬちゃと絡みついて蕩けて締める大夢の身体に、市井は夢中になって腰を振り続けた。
「大夢……、何かエッチなこと言って……っ」
パンパンと大夢のお尻に腰を打ち付け、無茶ぶりをしてみた市井だが、この前見つけられた前立腺ばかりを先程からずっと擦られている大夢は、射精ではない別の込み上げてくる何かと戦っていて、そんなの急に浮かんでこない。
「ああっ、大夢のお尻、気持ちイイ……っ!」
市井がお尻を突くたびに、口の端から涎が零れるほど大夢だって気持ちいい。
「は、激しいっ、ソレ、へん、なるぅ……や、やぁ……! ――むね……、胸触っていいからッ、お尻はちょっと止まって……っ」
お尻の快感に負けそうになって、思わず胸へ誘導したが、赤黒くパンパンに充血した肉棒の状態で、市井が大人しく胸だけで済ませるはずがない。
「うァンッ! あぁ、あっ、アッアッ……アーッ!」
大夢の胸に吸い付いて片方を舐め回し、もう片方を痛くならない絶妙なソフトタッチでクニクニと擦って可愛がり始めるのと同時に、市井の腰が波打つように動いて大夢のお尻を猛然と突き上げる。
「あああ゛っ、やぁッ! あ゛、あ゛、あン゛ッ……お尻ッ……めくれちゃうっ! 今、お尻ズボズボされたらッ、あぁんッ、胸も気持ち、イイから、だめぇっ」
「うん、……ハッ、気持ちいいね。……ッ、あと、おっぱいって言って」
「アァンっ、おっぱいッ、おっぱいぃッ」
「あー……もう、可愛い。気持ち良すぎて、分かんなくなっちゃってるね。――俺も、もうイキそう……ッ」
夜はまだ始まったばかりなのに、すでに玄関でぐずぐずになっている恋人を抱きしめながら、市井は大夢の締め付けに抗うように腰を一番深くまで差し込む動きを繰り返して昇りつめると、一気に吐精した。
ズン、と奥まで届いた市井の肉棒に、大夢は射精していないのに頭が真っ白になってしまう。そんな大夢の体内で、市井は二度三度と背中を震えさせると、満足してゆっくりと竿を引き抜く。その気持ちよくしてくれた市井を離すまいと襞が市井の竿を追いかけてキュゥっと閉じると、付けていたゴムだけが大夢のお尻に残って、ゴム口を出した状態でお尻にぶら下がり、しばらくするとそこから市井の出した精液がドロリと垂れて落ちた。
(いや、エッロ――!!)
大夢が見せる奇跡の連続には、飽きも終わりもないのではないかと、市井は戦慄しながら、とりあえず風邪をひく前に大夢を抱き上げて、寝室へ運び、目を覚ますまでの間、大夢の乳首を眺めて過ごした。
午前中の仕事先から大夢の部屋へ直行した市井は、勢いで取り付けたデートの今日も、当然ながら大夢と契約している家政夫のお仕事はしっかり勤める。
大夢は今夜と明日の休み確保のために、朝から休日出勤して頑張ってくれているので、市井だって負けていられない。
恒例の、部屋に散らばる洗濯物集めからスタートして、二日分の料理の作り置きを済ませてしまうと、いつもより掃除に若干の手間をかけて部屋をピカピカにしていく。
(ベッドは勿論だけど、リビングで寛いでるうちに出来るかな……)
そう考えるとベッドメイキングに力は入るし、リビングだって手は抜けない。
(ひょっとしたら風呂場で出来るかもしれない)
だとしたらと、バスタブは勿論、鏡は特に拘った。
(あっ、ひょっとしてひょっとしたら、玄関でいきなり出来る!?)
もう家中全てに油断できない。
因みに、出来る、と書いて、ヤレる、と読む。
市井の頭の中は、一泊二日の間に実行したい、スケベな妄想が大渋滞だった。
どこで急に求められても問題なく出来るように、ありとあらゆるところをピカピカにして、準備万端で大夢をたっぷり可愛がってやるのだ。
市井は、掃除をしながらキラキラの笑みを――真っ黒に浮かべた。
(楽しみだなぁ、……乳首)
そう、大夢は結局、乳首の画像をくれなかった。
市井はちょっと、――いや、かなり拗ねていた。
きっと、昨日の夜の電話を切ってから、大夢は画像を送信するかどうしようかと、乳首の事でいっぱいいっぱい考えただろう。そう思うと、微笑ましすぎて笑みしか浮かんでこない。
(でも、ソレとコレとは別ですっ)
市井は大夢の為に、心を鬼にして、天国へ導くことを、部屋でひとり誓うのだった。
二人の初めてのデートは水族館になった。
仕事漬けの気分転換に、絶叫系のアトラクションも捨て難く、遊園地もプランの候補にはあったが、大夢が仕事上がりでスーツ姿のため、駅近の定番デートスポットで決定したのだ。
夕方になってようやく仕事を終える事ができた大夢と、水族館の最寄り駅で待ち合わせをして、並んで歩いて向かう。その五分ほどの道中に、お互いが手を繋ごうかとソワソワして相手の様子を伺い合っているのが分かって、不意に目が合ってしまうと、照れ臭くて笑い合った。
「やっぱりこんな時間にこんな場所じゃ、男同士で手を繋ぐのはハードル高いですよね。……うん、今は我慢します」
市井がちょっと悔しそうにそう言ってくれたから、大夢の胸はデート開始早々キュンキュンして苦しい。
(我慢しなかったら、市井さんは俺と外で手を繋げれるんだ)
直ぐそばにある市井の長い指を見つめながら、大夢は改めて自分が市井とデートをしているのだと自覚して、水族館のゲートを潜るのだった。
本社に転勤してきて、仕事ばかりだった大夢にとって、近隣のどの観光地もほぼ未踏であり、勿論、この場所もそうである。初めて来た水族館は、とても楽しかった。
小さな水槽で種類ごとに分けて展示されているカラフルな魚を目で追ったり、真っ暗な部屋の近未来的な照明で演出された水柱の中に浮かぶクラゲを、市井と顔を寄せ合って眺めた。
そして、本日最終となるイルカショー開始の館内放送が流れると、客足がそちらに向かい、館内のメイン水槽となる巨大な水槽前がにわかに貸し切り状態で独占できた。魚群の渦の横で悠然と泳ぐサメ科の最大種を見上げ、その迫力に大夢は口を開けて立ちつくす。
「――すごい……」
上を向いてぽかんと惚け、そのまま暫く黙って眺め続けていた大夢の目に、思いがけず涙が溢れた。
「あ……こういう、大きなものを前にすると、……なんか自分がちっぽけだなって、思います……。すみません……なんか、感動しちゃって……泣くつもりなかったのに……」
慌てて手の甲で目を擦る大夢に、つい先日聞いた佐藤の話を思い出してしまった市井は、その姿を目に入れてやらないように顔を水槽に向けたまま、柔和な声で教えてあげる。
「……我慢しなくて、いいと思います。見て、感じて、それで溢れるものなら、その涙は必要なんです。なら、出してあげないと。……だから、我慢しなくて、俺はいいと思います」
市井の優しい言葉に、更に溢れて零れ出した涙をそれでも止めようと闘う大夢の健気さに、市井の心が揺さぶられる。
薄暗いフロアの、水槽から降り注ぐ青い水面の揺らめき漂う空間で、市井はそっと、大夢と手を繋いだ。
「ね、俺も我慢しないことにします。これなら、おあいこでしょ?」
悪戯っぽい笑顔を浮かべた市井が、大夢のほうを見て空いてる方の手を伸ばすと、髪を優しく撫で、その手でそっと涙を掬う。
鼻をすすって、大夢がギュッと瞼と唇を強く閉じると、観念したように、大夢はやっと細い肩を震えさせた。
後ろから他の客がやって来るのが分かると、市井は大夢を壁に寄せて、コートを羽織った長身で隠してしまう。
二人は暫くの間、ただ黙って、水中をゆったりと舞う、黒い影を見て過ごした。
佐藤へのお土産を買ってから水族館を出たあと向かった、ちょっと奮発して予約した鉄板焼のお店は、高級感あるカウンターの雰囲気もさることながら、柔らかく分厚いジューシーな肉に、二人は味もボリュームも大満足で、会話も弾んだ。
大夢が「今度はイルカショーを見に、また行きましょうね」と言えば、市井が嬉しそうに頷き、今度は市井が「鯛やサンマを見た時、献立が浮かぶんですよね」と言って大夢を笑わせる。
コースの最後に出てきたコーヒーを飲みながら、大夢は幸せいっぱいでお腹をさすった。
「久々に肉食ったーっ、て感じしました! ――あっ、いえ、いつも美味しい肉料理も作っていただいてるんですけど……あのっ」
失言だったと慌てる大夢に市井は苦笑する。
「大丈夫です、分かりますよ。家で食べる肉料理とはまた違う、肉の塊が口の中いっぱいになる感覚ですよね」
「そうそうっ。それですっ」
「俺も思いました。美味しかったですね」
「はいっ」
満面の笑みで返事する大夢の無邪気さに、市井は大夢のお肉にかぶり付きたい。
(頬もお腹もお尻も、全部食べたいですっ)
そんな事を考えて、肉食獣の目で大夢の一つの部位をジッと見つめると、大夢が恥ずかしそうに片腕でシャツとネクタイの上から胸を押さえて恥ずかしがった。
「市……煌人さん……あの……胸ばっか、見過ぎ、です……」
こんな場所で、そこだけあからさまに強くしたロックオンは、大夢にもそろそろそういう雰囲気になってきて欲しかったから。
「だって、……分かってますよね? 俺の今日のメインは、胸肉ですよ」
「む、胸肉って……っ」
肉が美味しかった話の筈だったのに、市井の視線はどう考えても大夢の胸を食べたがっていて、昨夜の写真の件を持ち出してきている。
「大夢の期待には応えます」
「ち、違っ、あれは――」
「期待には、応えます」
「…………っ」
もう、どう言い訳しても逃げられないのだと、市井の笑顔を浴びながら、大夢はゴクリと、コーヒーの最後の一口を飲み干した。
真っ暗な玄関に入り、大夢が明かりのスイッチを押すと、後から入った市井がドアを施錠してくれた。その音を聞いて、大夢は苦しいくらい、ドキドキと胸を高鳴らせる。
(家に、着いたしッ)
家に着いたらどうなってしまうのか想像も出来なくて、帰り道の間中、少ない知識と経験値で、頑張ってエロエロな市井を想像したら、ちょっと勃ってきてしまって、エロエロなのは市井ではなく自分の方なのではないかと反省しては、また妄想に耽ってしまった。横を歩いていた市井はと言えば、大夢が一人で赤くなったり青くなったりニヤけたりの百面相を延々繰り返していて、それを非常に楽しく眺めていた。
そんな大夢が、靴を脱いでさっさとリビングへ行こうとしているのが分かって、その薄い身体を市井が後ろから抱きしめる。
「すみません、今すぐ補給したいです。もー、限界」
水族館で手を繋ぐくらいしか接触しなかったデートに、市井の本音が溢れた。
「やっと堂々と大夢に触れる。すっごいイチャイチャしたい」
ギュウっと市井の腕に力がこもって、大夢は緊張も忘れてクスクス笑う。揺れる肩越しに、拗ねた市井が口を尖らせた。
「だって、こんなにも好きな人と初めてのデートだったのに、ハグもチューも我慢なんて拷問ですよ。だから、我慢のご褒美もらいます」
そう言って、背中から抱きついたまま、大夢の右頬へ冷たい唇をチュッチュと吸い付けて振り向かせると、距離が近くなった大夢の唇をあっという間に貰ってしまう。
「んっ、――ンンっ」
最初から舌を絡ませて攻めてくる市井に、大夢は求められる熱の高さに嬉しくなった。
ちゅくちゅくと唇の隙間から漏れる音がしばらく続き、その甘さと背中の温かさに大夢の頬が上気していく。
幸福感に目をトロンとさせていたら、市井の抱きしめる手がそっとコートの中に差し込まれ、大夢の身体をスーツの上から撫でさすってきた。
「んっ、ゥン……」
まだ靴も脱いでいない玄関で仕掛けられ、戸惑う大夢の小さな抵抗を無視して、コートの中の市井の手は、やがて大夢の胸を優しく揉み始める。
指と指の間に乳首が来るように、ワザと弱い場所を外され、まるで女性の乳房を鷲掴んでいるみたいな動きでモミモミされて、ものすごく恥ずかしい。
「そんな揉みかた……ッン、しないでッ」
身体を捩る大夢と、弄る手を止めない市井。その攻防で、大夢のコートが肩からずり落ちると、もう邪魔なだけになってしまったと、市井が上着を二人分まとめて廊下に投げてしまった。もちろんそれで市井の手が止まるわけもなく、そのままキスが再開されると、背後から回った市井の手に、大夢はジャケットのボタンを外され、ワイシャツの裾がズボンから引き出されて、更にそこから冷たい片手が臍へ直に触れてきて、腹を躊躇なく撫で上がって侵入してくる。
その手際の良さに、大夢の防衛線は後退の一途を辿った。
「あ、煌人さん、ここッ、玄関……ンっ」
左手はワイシャツの上から、右手は肌に直接触れて……。
そのちぐはぐな感触に疼いて腰を捩らせると、お尻に市井の膨らみだした熱が当たって、温かい吐息が大夢の首筋にかかった。
「それ、すごくいい……。そのまま大夢のお尻で、俺のを擦って……?」
抱きしめられて、甘えた声で、背後からスリスリと頭を首元へ寄せられたら、拒否なんて出来るわけがない。
恥ずかしくてたまらないのに、市井のお願いを叶えてあげたくて、大夢は小ぶりな丸い尻を市井のズボンの上に当てると、その膨らみをなぞる様に腰を動かし始めた。
言われたとおりに動く、従順な大夢の腰つきに刺激されて、市井の目に淫靡な光が浮かぶ。
「んっ……イイ。……大夢がお願いを聞いてくれたから、俺もちゃんとお返ししてあげる」
耳元で優しく囁き、大夢の耳朶にキスすると、市井の指先が大夢の胸の粒をゆっくり左右同時に掻いてきた。
「アァッ! ア……ッ、アッ」
小さな先端の痺れるような快感が、大夢を簡単に虜にしてしまう。
「もう、痛みは無いですか?」
確認する様に優しく触れてくる市井の指先に、大夢は腰をひくつかせて背中を反らせる。
「ああ、その姿勢だと俺は胸を触りやすいし、可愛いお尻は俺のをグリグリしてくれて、とてもいいです。背中、反っちゃうくらい気持ちいいなら、痛みはもう大丈夫みたいですね。俺との約束をちゃんと守って、一人では触らなかったんだ?」
穏やかな声の調子とは真逆に、どんどんリズムを上げ、もう語尾の方では残像が見える速さで指先を動かして掻いてくる市井に、大夢は手で口を押さえてコクコクと一生懸命頷いた。
「アァンッ! ――ハァンッ、ンーっ、んーッ」
「気持ちいいね。おっぱい好きなのに、何日も我慢して。いっぱい、いい子いい子してあげます。直に弄られるのと、シャツの上から触られるの、大夢はどっちが、好き? どっちが、気持ちいい?」
右手で小さな粒を捏ねてやり、左手は布地の上から小刻みに掻いてやる。
「アーッ、ゃ……ッ、分からな……ッ」
どっちも気持ち良くて、答えられない。
お尻の割れ目にある市井の硬いものも気になり、大夢の腰が媚を売るように誘う動きをしてしまう。
口の端から涎を零す大夢を見て、喉を上下させた市井は、両手を一旦大夢から離した。
「やっ……もっと……」
左右をちゃんと答えないから手を離されたと思った大夢が、振り返って市井の胸にすがる。
「ひ、左ッ、左が気持ち良かったですッ。もっとして? いっぱいして?」
ね? と上目遣いで見上げてくる、そんな大夢の可愛い反応に眩暈しながら、市井はギュンッと昂ぶった己の下半身に待てをする。
(くぅッ、このエッチで可愛い小悪魔めっ!)
勢いで廊下に押し倒したりしないように、大夢の額や目蓋、目の横のほくろや頬にキスを次々落とすと、欲望が落ち着ついてくるし、大夢には、止めたりしないから、と安心させる効果となる。
そうやって大夢にチュッチュしながら市井の手は、大夢の後ろにある下駄箱の扉をそっと開けた。その中からボトルを取り出すと、キャップを外して手のひらにローションを垂らす。
「――ひゃ!?」
市井が胸に手を再び伸ばしてくれた事に喜んだ大夢の声が、驚きにひっくり返った。
「な、何っ? 市井さんッ、何コレ!?」
「驚かせてすみません。温感タイプのローションだから、冷たくはないですよね?」
「つ……冷たくはない、ですけど……、え? どこから……?」
突然、シャツの上から左胸にローションを付けられて、ヌルヌルと塗り広げられ、左の乳首を浮き上がらせる。驚いたままの大夢に、市井は質問には答えず、くすりと笑って行為を続けた。
「左の方が好きなら、シャツの上からしてあげます」
突起に、濡れたシャツが張り付き、分かりやすく飛び出した粒を市井の親指が円を描くように動いて押しつぶしてくる。
乾いた生地とは違う、滑りのある動きに大夢はゾクゾクさせられた。
「あっ……、さっきと……違……ッ」
腰にくる快感に立っているのが辛くて、背中を下駄箱にもたれさせてなんとか身体を支えているのに、それでも欲しがる身体が市井に胸を突き出してしまう。
「さっきと同じが良かったです? それなら、右はまだ濡らしてないから、右で楽しんでください」
「んっ、あぅッ、ァア……! ふっ……ゥッ、アァッ」
気持ち良さそうに口を開けて声を漏らし、ズボンの前合わせを窮屈そうにさせて恍惚の表情を浮かべる大夢に、市井は次の欲望が溢れてきた。
「……ひょっとして、乳首だけでイケそうですか……?」
「ッ……! む、むりッ、ですっ、ハァッ……ン! やッ……アーッ、……激しく、しないでッ」
「イケそうですよ?」
「ムリ……っ、ですッ、こ……怖い」
そんなところを弄られて達する程の快感なんて、想像出来ない。それなのに、市井は諦めてはくれないようだ。
「じゃあ、シャツを肌蹴て、直接、指先と舌で、いっぱいしてあげたら、どうです?」
「指と……舌で……」
指の動きを止めないで誘う市井に、大夢の視線が市井の口元を見つめる。市井は大夢の視線を感じながら舌を少しだけ出すと、形のいい自身の唇をねっとりと舐めた。
「舐められるの、好きですよね」
市井の舌が、どれほど気持ちよくしてくれるのかなんて、そんなことは大夢が一番知っている。たとえこの後、市井の望むとおりに達する事が出来なかったとしても、舐めて貰えるなら、正直なんだっていいと思った。
「す……好き、です」
認めたから、もう早くその舌で舐めて欲しい。
「好き……ですから、舐め……て」
恥ずかしいけれど、お願いだってした。
そうしたら、市井が舐めてくれるから。
「じゃあ、シャツのボタンを外して、日曜の夜に一人でどう触ってたのか、俺に見せてください」
「…………え?」
直ぐに優しくお願いを聞いてくれると思ったのに、とんでもない要求をされた。
「そんなの……ッ」
出来ない、と力なく首を横に振る大夢に、市井は大夢の手をそっと掴むと、シャツのボタンへ誘導してやる。
「俺のお願い聞いてくれたら、大夢のお願いも、ちゃんと聞きます」
低い声でそっと囁かれて、不安な目で市井を見つめたら、「信じて」と言われて、優しくキスされた。
「ンッ、――んっ、ん」
唇を何度も啄まれる間、市井がシャツのボタンに指を引っ掛けて催促してきて、大夢は手探りで上から一つ一つボタンを外していく。
「あ……」
大夢の口から、市井の舌が抜かれ、唾液の糸が伸びて切れると、薄い胸を晒した大夢が、市井の視線に促されて、ゆっくりと自分の両の粒を摘んで、クリクリと弄り始めた。
その姿を市井にジッと見つめられ、余計に興奮してしまう。
左の突起に付いていたローションの滑りが気持ち良くて、そちらの指が止まらない。
「右にも付けてあげないと、また痛くなっちゃいますよ」
教えられて、左のヌルヌルを右の指に付け、右の乳輪に沿うように円を描いて塗り付けると、両方を舐められてるような感覚になって、堪らなく悦かった。
「そうやって、一人で弄ってたの?」
両の突起を摘んで親指と人差し指の腹で擦って息を荒げる大夢は、切ない目で市井を見てコクンと頷く。
「ずっと、黙って弄るの? 俺の事、思い出して触ったりしなかった? それだけじゃ、シーツもスーツもあんなにドロドロにできませんよね?」
詳細な状況を再現させようとする市井に、大夢の目元が羞恥に赤くなる。
「やだ……、は……恥ずかしい……」
「もっと恥ずかしいこと、この後するのに?」
涼しい目元に穏やかな声で言われると、この後への期待が恥ずかしさを霞ませて、大夢の喉を震わせた。
ヌルヌルの付いた指先で硬い粒を弾きながら、大夢が淫らな声を上げる。
「ん……、あぁ、ッ……ァンンッ」
確か、日曜の夜は、まだ市井の下の名前を、大夢は知らなかった。
「……い――、市井さん……、好き……。アッ、触って……もっと俺の乳首、いっぱい触って……ッ」
目の前にいる市井ではない彼に呼びかけて、大夢が指先を動かして甘ったるい吐息を零す。
「市井さんっ。ココ、気持ちいい、よぉッ。ハアっン」
市井の目の前で大夢の股間が大きくなっていくのが分かって、市井も同じように興奮していく。
大夢の指先に虐められ、薄桃色だったものが赤く色づき、ぷっくりと丸く腫れ上がる。だが、自慰では同じ動きを繰り返す自分の指に、大夢自身が焦れてしまうのだ。
「な、んで、やっぱり、俺の手じゃダメなの……っ。もっと気持ちよくなりたいのに、俺の触り方だと、市井さんみたいに、上手く出来ないッ」
目を瞑り、あの日を思い出して、もどかしそうに市井を求めて記憶を辿る。市井がしてくれた動きを思い出して、優しく撫でたり、強く摘んだりを何度繰り返しても、あの日と同じで、今日も自分の愛撫では全然足りないのだ。
だから、あの日を再現するなら、大夢はベルトに手をかけ、ズボンを脱がなければいけなかった。
もうどうにでもなれの勢いで、大夢の足首までストンとズボンが落ちて、布が溜まる。
目を閉じていたから、ギョッとした市井に気付かないまま、大夢は右手の中指に胸のローションを付けると、手を後ろへ回してパンツの腰側から手を入れ、ゆっくりと息を吐きながらつぷりと、小さな蕾の中へ沈めた。
「ふぅっ、アッ……」
大夢の背後で、パンツに隠れてどうなっているのか見えない場所で、とんでもないことが起こったと市井は興奮に目の前をクラクラさせる。
(初めてのエッチのとき、お尻を解す時から柔らかかったワケだ!)
ギンギンに目を見開き、瞬きも忘れて夢中で視姦してしまう。
「あ……市井さん……指、やぁ……、乳首……が、気持ち、イイよぉ」
恋人の名を呼んで、お尻に指をいれながら左の乳首を弄る大夢の姿に、今更市井は悔やんでも悔やみきれなかった。
(あの日、ホント帰らなければよかったぁぁ!!)
可愛い恋人の、一人で慰める姿は想像以上にエッチで、眼福だった。
大興奮の市井の気も知らず、大夢は疼きに耐えられず再び目を開けると、乳首を摘んで肌を震わせ、大夢を食い入るように見つめていた市井に、状況も忘れて切ない目で誘った。
「アッ、あ……煌人さんっ、好きッ、好きなのっ、こんな俺、嫌? ねぇ、触って……? 俺の乳首、ごめんなさいしても、許してくれなくて、気持ちよくしてくれるんでしょ? クゥッ……ンッ、も、やだ……煌人さぁん」
(――ッ、我慢……出来るかぁぁー!!)
追い込んだつもりが、崖っ淵に追い込まれていた。
「俺が目の前にいるのに、俺じゃない俺を呼ぶの、もう禁止ですッ!」
エロかったけれど、焼きもちの方が勝ってしまって許せない。コリコリに勃った右の突起を、伸ばして出した舌でコレでもかとしつこくペンペン舐め叩いた。
「ァッ、アァン、それ好きっ。煌人さんにッ、舐められるの、俺の指と全然違うのっ、あぁ、イイよぅ……ッ!」
左胸を弄っていた大夢の指が市井の髪に差し込まれて、ギュウっと頭を抱きしめられる。
大夢は男に胸なんて無いと思っているかもしれないが、ジムにも通わず、市井の作る栄養満点の食事を半年近く食べ、ほぼ毎月乳首を開発されていれば、程よい膨らみが仕上がっているワケで。
そこに顔を埋めて、お留守になった左の突起に手を添え、ふよふよと揉みしだけば、市井はそれなりに至福の感触を味わえる。
(ぷにぷにしてて、気持ちいいです……最高!)
感度の良い可愛い雄っぱいにむしゃぶりついて乳輪を舐め回し、口の中に閉じ込めた粒を今度は大事に大事に舌で虐める。
「ンンー! ンッ、ンッ……アーッ」
胸の愛撫だけでパンツを先走り汁で濡らして押し上げ、大夢の茎がググっと反りかえっていく。
蕾に差し込んだ右手の中指が、市井に胸を舐められるたびに締められ、自分のお尻がこうやって市井を離さないのだと知った。
「煌人さんッ、もっと強くして……っ、痛いくらい、で……いいから……ッ」
「……ッ、でも、そうしたら、また大夢が痛くなるから……」
いつもの抓ったり、捻ったりがされないことに焦れていたが、身体を気遣ってのことだと気づいて言葉を呑む。
「そ……れは嬉し、けど……」
何度もしてくれた痛い程の刺激を身体は欲しがっていて、それを貰えないのならこの中途半端な状態をどうか助けて欲しい。
堪らず揺れた大夢の腰に気付いて、市井は口での愛撫を続けながら、片手で自分のズボンのファスナーを下ろすと、窮屈な場所から中身を出してやる。乳首を舐められて悶える大夢の顔を見ながら何度か扱しごくと、あっと言う間にそれは芯を持った。
重く熱い竿から手を離し、その手を市井は大夢のパンツに伸ばすと指を掛け、彼のズボンと同じように下へ落としてしまう。
パンツと一緒に引っ張り下げられた大夢の茎が、パンツから離れると同時に弾かれるように元の場所に戻って、大夢の腹をペチっと打った。
その開放感と刺激に、大夢は乳首よりも強い快感が貰えるのだと、肌を粟立てて身震いした。
「寒い、ですよね……?」
大夢の震えを、冬の玄関で下半身を露出させ過ぎたからだと、ここでの続行に躊躇いを見せた市井に大夢がイヤイヤと腰を市井に擦りつける。そして、大夢の気づかないうちに出した、カチカチに勃起した市井のそれと大夢の熱がぶつかった。
「煌人さんだって、こんなになってるじゃないですかっ……! やだ……やだッ。寒さなんてもう分かんないからっ。それより疼いて苦しいの……ッ。お願い、イかせて……ッ」
「――ッ!」
大夢のお願い事には本当に弱い。
もう、乳首で達する目標は今後のライフワークにしよう、と長期戦にさっさと決めて、今目の前で発情している大夢の救助に全力を注ぐことにした。
「アーッ、あっあっ、すご……っ、それっ」
「大夢は乳首もココも、先端が大好きなの、知ってます」
パンパンに腫れ上がった鈴口を指先で優しく掻いて悶えさせると、互いの括れ同士を擦り合わせて体液を塗り付け合う。立っていられない大夢がズルズルと下駄箱に預けた背中を下げ始め、市井が慌てて支えると、さっき廊下に投げて落としたコートに上に大夢を座らせ、邪魔な靴、それからズボンと下着を取ってしまうと、そのまま押し倒した。
充血して熱く腫れ上がる二本の棒を、市井の両手で作った狭い輪の中で、本能が突き合いぶつかり合う。
お尻にあった大夢の指は体勢を変えたときに抜けていて、それには気づいていないのか、茎を競り上がってくる射精感に没頭している。
市井はそこに目ざとく気づいて、大夢のお尻に長い指を差し込んだ。
「んァンっ!?」
流石にすぐにバレてしまったが、そこに構う暇が今はないのか、涙ぼくろの目を細めただけで見逃してくれた。そのお礼に、市井は大夢の唇にチュッと吸い付き舌を差し込むと、お尻に入れた指と同じ動きで、上からと下から同時にヌルヌルと責め立てる。さっきまで大夢の指を咥えていた小さな蕾は、市井の指を覚えていたように受け入れてゆっくり解れていった。
「ヒッ……ンッ、煌人さ……もぅ、俺……イっちゃ……あっ、あっ、イクイクイク……ッ――!!」
互いに吐く息を吸い合う近さで呼吸を荒げて唾液を混ぜ合い、大夢の茎の弱くて好きな場所ばかりを責め続けると、市井の狙いどおりに先に大夢がピュっと腹に向かって白濁を飛ばす。
白い放物線の着地点となった腹をぴくぴくと痙攣させて、酸素を求めて肩で息をする大夢の姿に満足すると、市井はズボンのポケットからゴムを出して手早く装着し、大夢の出した体液をそこへ塗り付け潤わせる。そして、大夢の足をグイッと天井に向かって上げさせると、蕾に宛がった先端をグッと押し込んで大夢を鳴かせた。
「アアアッ――!! ……ふっ、ふぁっ、待ッ……、――ああんッ!」
吐精後の脱力感でぼんやりしているところを襲った、大好きな人の熱欲の塊は、その大きさで大夢の身体の中をいっぱいにした。
一気に奥まで挿れた市井は、快感に首の後ろをぶるりと震わせ、大夢の細い腰を掴むと、市井の竿を必死に受け入れて締めてくるお尻の中を小刻みに前後に揺すって貪り始める。
「ふっ……、あぁ……あ。ハッ、ハァ、ハァ……、くっゥン! あんっ、アーッ……っ。ソコだ……めぇっ」
「あぁ……ッ、すご……い……。前のこと、ちゃんと……身体が……覚えてる、ン、ですね……ッ」
「も……これ……ァ、声が勝手に……出るからッ、あぁん……! も、やぁ……ンっ」
ずぶずぶと市井の太いそれを呑みこみ、空気が入る度に卑猥な濁音を立てる肉の壺。そのぬちゃぬちゃと絡みついて蕩けて締める大夢の身体に、市井は夢中になって腰を振り続けた。
「大夢……、何かエッチなこと言って……っ」
パンパンと大夢のお尻に腰を打ち付け、無茶ぶりをしてみた市井だが、この前見つけられた前立腺ばかりを先程からずっと擦られている大夢は、射精ではない別の込み上げてくる何かと戦っていて、そんなの急に浮かんでこない。
「ああっ、大夢のお尻、気持ちイイ……っ!」
市井がお尻を突くたびに、口の端から涎が零れるほど大夢だって気持ちいい。
「は、激しいっ、ソレ、へん、なるぅ……や、やぁ……! ――むね……、胸触っていいからッ、お尻はちょっと止まって……っ」
お尻の快感に負けそうになって、思わず胸へ誘導したが、赤黒くパンパンに充血した肉棒の状態で、市井が大人しく胸だけで済ませるはずがない。
「うァンッ! あぁ、あっ、アッアッ……アーッ!」
大夢の胸に吸い付いて片方を舐め回し、もう片方を痛くならない絶妙なソフトタッチでクニクニと擦って可愛がり始めるのと同時に、市井の腰が波打つように動いて大夢のお尻を猛然と突き上げる。
「あああ゛っ、やぁッ! あ゛、あ゛、あン゛ッ……お尻ッ……めくれちゃうっ! 今、お尻ズボズボされたらッ、あぁんッ、胸も気持ち、イイから、だめぇっ」
「うん、……ハッ、気持ちいいね。……ッ、あと、おっぱいって言って」
「アァンっ、おっぱいッ、おっぱいぃッ」
「あー……もう、可愛い。気持ち良すぎて、分かんなくなっちゃってるね。――俺も、もうイキそう……ッ」
夜はまだ始まったばかりなのに、すでに玄関でぐずぐずになっている恋人を抱きしめながら、市井は大夢の締め付けに抗うように腰を一番深くまで差し込む動きを繰り返して昇りつめると、一気に吐精した。
ズン、と奥まで届いた市井の肉棒に、大夢は射精していないのに頭が真っ白になってしまう。そんな大夢の体内で、市井は二度三度と背中を震えさせると、満足してゆっくりと竿を引き抜く。その気持ちよくしてくれた市井を離すまいと襞が市井の竿を追いかけてキュゥっと閉じると、付けていたゴムだけが大夢のお尻に残って、ゴム口を出した状態でお尻にぶら下がり、しばらくするとそこから市井の出した精液がドロリと垂れて落ちた。
(いや、エッロ――!!)
大夢が見せる奇跡の連続には、飽きも終わりもないのではないかと、市井は戦慄しながら、とりあえず風邪をひく前に大夢を抱き上げて、寝室へ運び、目を覚ますまでの間、大夢の乳首を眺めて過ごした。
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恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
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久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
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