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第1章

46話 村を助けてくれ。

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「改めて謝罪をさせてくれ……。メテオノール、本当にすまなかった……。そして、どうか……うちの村を助けてはくれないだろうか……」

 諸々が終わり、ひとまず落ち着いた後、ボンドはそう言って改めて頭を下げてきた。

 さっきのことは、別にもう構わない。
 それよりも、今は彼がこの村に来た経緯の方が重要だ。

 とりあえず詳しい話を聞くために、俺たちはテーブルへと移動する。
 それから聞いた話によると、あの村は今、魔物の襲撃を受けていて、大変な状況にあるとのことだった。

「ああ、お前が村を追放されてから、大変なことが起きたんだ。魔物が村にやってきて襲ってくる……。それが一向に止む気配がないんだ」

 どうにもならず、苦しい状況が続いているから、それの救援を呼ぶために、彼はあの村からこの街までやってきたとのことだった。

「……それじゃあまだ村は壊滅していないんだ」

「ああ、しかし、時間の問題だがな……」

 俯いてボンドが言う。
 それでも、最悪の事態は、回避できているそうだった。

「皆、甘く見ていたのだ。お前に甘えて、平和に浸りすぎていたのだ。それに、実際に使ってみて分かった。お前が作った魔法の武器は、かなり使いやすい。しかし使いやすいからこそ、それに頼りっきりで、消費量も多い。お前は余分に作っていってくれていたが、じきにそれも尽きてしまう……」

「……だから、そうなる前に、村を襲う魔物をどうにかする必要がある、と」

 しかし、それも難しいのだと言う。

「騎士団でも、ギルドでも、救援を求めてもいい顔はされなかった。しかし、それも真っ当な理由だった。距離が遠すぎるせいで、村まで助けに来てくれる者はいなかったのだ……」

 ……距離の問題。
 それは俺も実際に痛感したことだ。
 あの村は……とにかく遠い所にある。
 だから、誰も依頼を引き受けてはくれないし、もし手助けをしてくれる人が見つかったとしても、村に戻ることにはすでに手遅れになっている可能性もある。

「……しかし、希望はあるのだ! 聞くところによると、この街にはオークの群れを殲滅した冒険者がいるそうじゃないか!」

「…………」

 ……そ、それは……。

 その言葉に、ヒヤリとした。

「俺はその戦士に協力を仰ごうと思う! 予想ではその方は、まっすぐな心の持ち主なのだろう! 男なら憧れる存在だ……!!」

 ボンドが目を輝かせて、声高に自慢するように言う。

 俺は彼のことを見れず、顔を逸らした。

「おい、メテオノール! こっちを見てくれ! 一緒にその戦士の姿を予想しよう……!」

 彼はその戦士の存在に、憧れを抱いているみたいだった。

 しかし……彼の顔はすぐに曇ることになり、

「……だが、その戦士の姿を見た者は誰もいないそうだ……。本当にいるかも分からないそうだ……。だから、もう、頼れる者はいない……。俺は無力だ……」

 そして彼は、改めて俺に向き直る。

「だから……もう、頼れる者はお前しかいない。このようなことを言える立場ではないのは分かっている。しかし、メテオノール……。どうか、あの村を救うために力を貸してはくれないだろうか……」

「分かった」

「いいのか……!?」

 苦々しい顔をしていたボンドの顔が、一気に驚いたものへと変わる。

 それは構わない。
 どうにかできる方法ならある。

「しかし、そんなに即答してもいいのか……? 俺はずっとお前を見下していたのに……。先ほどだってそうだった。ギルドでお前のことを『聖女殺し』と呼んだりしていた。もっと恨みつらみを言う権利がお前にはあるのだぞ……」

 ……確かにさっきは、そうだった。
 でも、『聖女殺し』と俺が呼ばれても、今のところは大きな問題にはならなかった。
 だからと言って安心できるわけじゃないが、別に恨み言を言おうとまでは思わない。

 それに『聖女殺し』というのは本当のことだ。
 だからそれを一生背負って行く覚悟はすでにできている。

「もう言わないと約束してくれるのなら、別に構わないよ」

「お前……。…………くそ、自分の醜さに嫌になる」

 ボンドが歯を食いしばり、拳を握っていた。

 とにかく、そういうのを抜きにしても、あの村が危険な状態にあるのなら、俺も安心はできない。
 あの村には、アイリスさんがいる。
 アイリスさんにはいつもお世話になっていた。

 村を出ようとした時も、アイリスさんは力を貸してくれた。

 だから、そんなアイリスさんの生活を守るためにも、どうにかしたいと思った。

「一応確認だけど、俺はあの村に近づいてもいいのかな」

「ああ、追放の件は村長代理の俺の権限で撤回だ。本当にすまない……。協力感謝する」

 ボンドが再び頭を下げる。
 俺は立ち上がり、ギルドを出る。

 それからの俺たちは互いに別行動をすることにして、俺は街の外へと向かうのだった。
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