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第1章
15話① 魔族のお姫様
しおりを挟むバリィン、と何かが砕ける音がした。
「……貴様、裏切ったな……?」
それは数年前のある日のこと。
とある城の、闇に包まれた部屋の中で、一人の男が腹を貫かれていた。
貫かれた腹から血がとめどなく溢れており、赤色が床を塗りつぶして行く。
彼の目の前にはフードを被った人物がおり、そのフードの人物が魔族の中でも頂点に君臨するその男を、己の手で貫いたのだ。
「ぐぶはぁ……」
手を引き抜くと、魔族の男が口から血を吐きながら、床に倒れる。
フードは用が済んだとばかりにそれを見下し、城ごと破壊するために城の外へと出た。
最後の時。
残る力を振り絞ったその魔族の目には、すぐそばに倒れている幼い自分の娘の姿が映っていた。
すでに死んでいるだろうか。
まだ生きているだろうか。
血を流しながら倒れているその子は動く気配がない。
そして、その城は崩壊し、全てが瓦礫に押しつぶされた。
その最後の瞬間、倒れている幼い少女の姿が光に包まれた気がした。
そして数年後、とある少年が彼女を見つけた。
彼女にはテトラという名前がつけられた。
それがテトラという少女の忘れていた記憶。
聖女であり、魔族のお姫様でもあるテトラの記憶。
そんな彼女は自分を見つけてくれた少年テオと共に、現在、明るく広がる草原の中を歩いているのだった。
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