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9女子会

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二次会に合流して小一時間、合コンはお開きになった。
解散後、家の方向が同じ麻衣と一緒に電車に乗り込む。
「優樹も隅に置けないなあ」
にまにまと肘でつっつかれて目を瞬かせる。
「友紀くんのことなら、期待しているようなのじゃないからね」
「優樹はそうでも、向こうはわかんないじゃん」
「いやいや、数年来友人のポジションを確立しているのに、いきなり好きになったりしないよ」
「友達から恋人にスライドなんて良くある話だよ」
「我々に限ってはないって」
どうしても私たちを付き合うことにしたいみたい。ちょっと居心地が悪い。
「それより、麻衣は今日、どうだった?」
話を変えたくて水を向けると、麻衣はがっちり食いついてきた。
「連絡先は交換したよ。で、今度二人で会おうって話にもなってる」
さすがだ。鮮やかな手口に感心する。しばらく麻衣の話に耳を傾けていると、そういえば、という感じで話が移った。
「来月の結婚パーティー、優樹も行くでしょ?」
「ああ、……」
つい口が重くなる。来月、友紀くんと出会ったきっかけでもある社会人フットサルチームの主要メンバーの結婚をお祝いするパーティーが予定されているというのは、数週間前にグループトークで知った。
「お世話になった人たちだからお祝いしたいんだけど、年末はちょっと仕事も忙しくなりそうで……」
「土曜日仕事休みでしょ? ねえ、もしかして、あのことまだ引きずってる?」
ひそめた声で聞かれて、ぎくりと心臓が嫌な音を立てる。
「そんなわけないでしょ。何年前のことだと思ってるの」
笑い飛ばしてみせるけれど、ちゃんとごまかせただろうか。
麻衣の言う通り、参加に後ろ向きなのは仕事が忙しいからじゃない。
「ならいいけど……参加できるなら、優樹には受付を一緒にやってほしいんだ。あと、余興できる人も探してて。確か楽器できるんだったよね」
「ああ、うん。ピアノとフルートを昔」
ピアノは子供の頃の習い事、フルートは学生時代の部活。ピアノは引っ越しを機に人に譲ったけれど、フルートの方は社会人になってからもしばらくは音楽教室に通っていた。
「無理にとは言わないけど、考えといてよ。会費制だから一応、飛び入り参加もOKってことだし」
主役の二人を祝福する気持ちも、長年の親友の麻衣の力になりたいっていう気持ちもある。でも、顔を合わせづらい相手がいて、どうしても逃げ腰になってしまう。
もう何年も前のことなのに、いまだにその人のことを思い出すと居たたまれない。でも、気にしてる自分も嫌だし、いい加減乗り越えたいという思いもあった。
「前向きに考えるよ。ちゃんと行けるってわかったら連絡するね」
「よろしく! でもさ、結婚式関係の集まりって出会いの場としてすごいいいらしいよ」
「そうなんだ。新郎新婦に触発されるってことかな」
「そうそう、嫌でも結婚を意識するから、もしかしたら私たちも電撃結婚のチャンスかも」
目を輝かせる麻衣に、つい笑みが漏れる。
「今日合コンで成果あったって言ってなかったっけ?」
「それはそれ、これはこれよ。アラサーにはチャンスがいくつあっても足りないんだから」
アラサー、か。結婚を意識するような年齢だっていうのはわかる。同級生だって何人かは結婚してる。
でも、私にとっては全然現実的じゃない。
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