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観覧車、揺れるゴンドラ1
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もう一度、彼の手に力が込められる。そうして片手が外され、残った手がつなぎ直された。その状態で、歩き出す。ふと彼が口を開いた。
「手、冷たい」
「あっゴメン。離__」
指摘されて思い出したが、そういえば末端冷え性なのだった。このままでは彼の手も冷えてしまう。慌てて手を振りほどこうとするが、きつく握られていてかなわない。
「ダメ。離さないで」
「でも、冷たいから」
「平気。俺の手あったかいでしょ」
「ん、そうだけど」
その言葉の通り、彼の手のひらから熱が伝わり熱いと感じるくらいだった。
「ならこのまま」
「……じゃあ、よろしくお願いします」
はっきりと宣言されて、従うしかない。優樹の指先からかじかみが解けていく。穏やかなぬくもりに包まれて、ふっと心が和らぐのを感じた。
みなとみらいを手をつないで歩く、なんてまるでデートみたいだ。
(本当のデートじゃなかったとしても、この思い出だけでも価値があるよね)
寒さを避けて、近くの複合ショッピングエリアに入る。広々としたフロアを見て回っているうちに、すぐにディナーの時間になってしまった。彼に導かれるまま到着したのは、みなとみらいを代表する帆船型のホテルの最上階に位置するチャイニーズレストランだった。
「わあ、すごい……!」
窓一面に広がる夜景に目を奪われる。海の暗闇の中、色とりどりの光がきらめいている。半個室となった一角に案内されると、店員が椅子を引いてくれた。ぎこちなく腰掛けて、彼と目を合わせる。
茶碗蒸しやチリソース、炒飯などなじみのあるメニューにもさりげなく高級食材が使われていて、優樹は説明を聞くたびに次のひと皿への期待を寄せた。前菜の盛り合わせを終えると、トリュフソースのかかった茶碗蒸しとやらがやってくる。
「これがトリュフ? 湿った森のにおい……」
「確かにね。ゆきさん、表現が上手」
薄くスライスされた断片を箸でつまんで鼻を近づける優樹を見て、彼は笑った。子供っぽい反応をしてしまっただろうかと反省しながら箸を口に運ぶ。
(珍味って言うけど、味は全然しないな……)
それとも自分の舌が鈍いのだろうか。せっかく良い物を食べているのにもったいない。味覚を呼び覚まそうとして目を伏せて咀嚼していると、彼が耐えきれないというように笑い声を上げた。
「そんな難しい顔しないで。ゆきさんって本当、表情豊かだよね」
「え、そうかな……」
苦笑を向けられて、優樹は反省しきりだ。いい年して落ち着きがないという自覚がある。
「見てるだけで楽しい。誘ってよかった」
さっきから味わうことに忙しくて、もてなすような会話もできていないというのに、そんなふうに優しい言葉をかけてくれるのだから困ってしまう。
「でも、せっかくステキなレストランに連れてきてもらったのに、おいしい以外言えなくて」
「別にグルメレポーターみたいなのは求めてないから。そんなの落ち着かないでしょ。自然体が一番」
「そうなのかなあ」
「そう、ただおいしそうに食べてくれるだけで十分」
あまりにも聖人過ぎる。
(私には太刀打ちできない……こんな徳の高い人を好きになるなんて、どう考えても無謀すぎる)
今この時はすごく幸せなのに、自分のスペックと比べて後ろ向きな気持ちが顔を出す。とはいえ、こんなにおいしい食事を前に落ち込むなんてもったいない。
今度こそごちそうさせてもらおうと握りしめた伝票は、いともたやすく奪い返されてしまう。せめて割り勘にしたかったのに花を持たせてくれと黒いカードを出されれば引き下がるしかなかった。
レストランを出ると、もういい時間だった。ライトアップされたプロムナードを歩いて駅に向かう途中、遊園地に差し掛かる。雪の結晶のような電飾をほどこされた観覧車をなんの気なしに見上げていると、彼が寄っていく? と指差した。
「横浜って言ったらこれかなって。乗ったことある?」
「ううん」
県内に住んで久しいが、実は一度も乗ったことはない。優樹にとって、この観覧車は背景だった。
(乗ってみたいかも)
そう思うのは、横浜デートといえばこの観覧車というイメージもあってのことだ。デートなんておこがましいと思いながらも、一夜の夢を見るくらいは許されたい。かくして人生初の横浜のシンボル大観覧車に乗る運びとなった。
閉店まではまだ1時間以上あるけれど、寒さが厳しいせいか園内の客足はさほどふるってはいない。乗り場につながる階段を上がるとすぐにゴンドラに乗り込むこととなった。
狭い箱に向かい合って座り、左右の窓を見下ろす。最初は足元の遊園地のアトラクションのきらびやかな光が目を楽しませてくれる。徐々に高度を上げてくと、ホテル群の統一感のある窓明かりやもっと遠くの町並みが見渡せるようになった。
そしてもう少しで頂上に届くかという頃、ぐらりと一度ゴンドラが揺れて止まった。
「え?」
何が起きたかわからなくて、お互い目を合わせる。すぐに動き出すだろうと思ったが、観覧車は沈黙したままだ。
「故障……?」
優樹は窓に身を寄せて、下を覗き込んだ。角度のせいで、乗り場がどうなっているかは確認できない。
(まあ、すぐに動き出すでしょ。それよりアナウンスが先か)
「手、冷たい」
「あっゴメン。離__」
指摘されて思い出したが、そういえば末端冷え性なのだった。このままでは彼の手も冷えてしまう。慌てて手を振りほどこうとするが、きつく握られていてかなわない。
「ダメ。離さないで」
「でも、冷たいから」
「平気。俺の手あったかいでしょ」
「ん、そうだけど」
その言葉の通り、彼の手のひらから熱が伝わり熱いと感じるくらいだった。
「ならこのまま」
「……じゃあ、よろしくお願いします」
はっきりと宣言されて、従うしかない。優樹の指先からかじかみが解けていく。穏やかなぬくもりに包まれて、ふっと心が和らぐのを感じた。
みなとみらいを手をつないで歩く、なんてまるでデートみたいだ。
(本当のデートじゃなかったとしても、この思い出だけでも価値があるよね)
寒さを避けて、近くの複合ショッピングエリアに入る。広々としたフロアを見て回っているうちに、すぐにディナーの時間になってしまった。彼に導かれるまま到着したのは、みなとみらいを代表する帆船型のホテルの最上階に位置するチャイニーズレストランだった。
「わあ、すごい……!」
窓一面に広がる夜景に目を奪われる。海の暗闇の中、色とりどりの光がきらめいている。半個室となった一角に案内されると、店員が椅子を引いてくれた。ぎこちなく腰掛けて、彼と目を合わせる。
茶碗蒸しやチリソース、炒飯などなじみのあるメニューにもさりげなく高級食材が使われていて、優樹は説明を聞くたびに次のひと皿への期待を寄せた。前菜の盛り合わせを終えると、トリュフソースのかかった茶碗蒸しとやらがやってくる。
「これがトリュフ? 湿った森のにおい……」
「確かにね。ゆきさん、表現が上手」
薄くスライスされた断片を箸でつまんで鼻を近づける優樹を見て、彼は笑った。子供っぽい反応をしてしまっただろうかと反省しながら箸を口に運ぶ。
(珍味って言うけど、味は全然しないな……)
それとも自分の舌が鈍いのだろうか。せっかく良い物を食べているのにもったいない。味覚を呼び覚まそうとして目を伏せて咀嚼していると、彼が耐えきれないというように笑い声を上げた。
「そんな難しい顔しないで。ゆきさんって本当、表情豊かだよね」
「え、そうかな……」
苦笑を向けられて、優樹は反省しきりだ。いい年して落ち着きがないという自覚がある。
「見てるだけで楽しい。誘ってよかった」
さっきから味わうことに忙しくて、もてなすような会話もできていないというのに、そんなふうに優しい言葉をかけてくれるのだから困ってしまう。
「でも、せっかくステキなレストランに連れてきてもらったのに、おいしい以外言えなくて」
「別にグルメレポーターみたいなのは求めてないから。そんなの落ち着かないでしょ。自然体が一番」
「そうなのかなあ」
「そう、ただおいしそうに食べてくれるだけで十分」
あまりにも聖人過ぎる。
(私には太刀打ちできない……こんな徳の高い人を好きになるなんて、どう考えても無謀すぎる)
今この時はすごく幸せなのに、自分のスペックと比べて後ろ向きな気持ちが顔を出す。とはいえ、こんなにおいしい食事を前に落ち込むなんてもったいない。
今度こそごちそうさせてもらおうと握りしめた伝票は、いともたやすく奪い返されてしまう。せめて割り勘にしたかったのに花を持たせてくれと黒いカードを出されれば引き下がるしかなかった。
レストランを出ると、もういい時間だった。ライトアップされたプロムナードを歩いて駅に向かう途中、遊園地に差し掛かる。雪の結晶のような電飾をほどこされた観覧車をなんの気なしに見上げていると、彼が寄っていく? と指差した。
「横浜って言ったらこれかなって。乗ったことある?」
「ううん」
県内に住んで久しいが、実は一度も乗ったことはない。優樹にとって、この観覧車は背景だった。
(乗ってみたいかも)
そう思うのは、横浜デートといえばこの観覧車というイメージもあってのことだ。デートなんておこがましいと思いながらも、一夜の夢を見るくらいは許されたい。かくして人生初の横浜のシンボル大観覧車に乗る運びとなった。
閉店まではまだ1時間以上あるけれど、寒さが厳しいせいか園内の客足はさほどふるってはいない。乗り場につながる階段を上がるとすぐにゴンドラに乗り込むこととなった。
狭い箱に向かい合って座り、左右の窓を見下ろす。最初は足元の遊園地のアトラクションのきらびやかな光が目を楽しませてくれる。徐々に高度を上げてくと、ホテル群の統一感のある窓明かりやもっと遠くの町並みが見渡せるようになった。
そしてもう少しで頂上に届くかという頃、ぐらりと一度ゴンドラが揺れて止まった。
「え?」
何が起きたかわからなくて、お互い目を合わせる。すぐに動き出すだろうと思ったが、観覧車は沈黙したままだ。
「故障……?」
優樹は窓に身を寄せて、下を覗き込んだ。角度のせいで、乗り場がどうなっているかは確認できない。
(まあ、すぐに動き出すでしょ。それよりアナウンスが先か)
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