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後日譚:好きの理由1
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神谷友紀は根っからの理系だ。中高一環の男子校では文句なしの理系特進クラスに通い、大学では理工学部。その後新卒でエンジニアとして就職した。
大学の時から付き合っていた彼女とは社会人一年目破局。
その後も知り合いから紹介してもらった相手と付き合ったりもしたが、いずれも順風満帆とはいかなかった。
自分が女性の心の機微に疎い上、言葉足らずなことがいけなかったのだと今ならわかる。でも当時は「仕事と私、どっちが大切?」などという難題をつきつけられて、仕事が安定しないとプライベートは考えられないと馬鹿正直に答えて不興を買った。
不満があるなら別れるかと聞くと大泣きされ、元通りの関係を続けることになる。それで納得してもらえたかと思っていたがその後も何度か同じやり取りが繰り返され、感情的に責められると口では勝てない。
度々相手の矛盾を突いて考え直すように諭そうとしたこともあるが、失敗を繰り返してそれは火に油だということを知った。
別れを切り出すのは相手であればほっとして了承し、そうでなければ自分から引導を渡す時もあった。
しばらくは恋愛はいいかなと思っていた時に出会ったのが『ゆきさん』だった。学生時代の友人の付き合いで行ったフットサルサークルは、フットサルよりもその後の飲み会の出会いを期待して参加する人間が多かったような気がする。
その中では彼女は異質で、練習にも片付けにも思いのほか真剣だった。
半ば合コンじみた飲み会で、友紀のスペックを知るなり目の色が変わる女性に疲れていた時に、ただ「名前似てますねえ」と愛想笑いを(ここははっきりとわかった)してみせた不器用な彼女にほっとしたのを覚えている。
よく観察すればさりげなく周囲に気を配り空いた皿やグラスを集めたり細々と働いている。
これ見よがしに酒を注いだり料理を取り分けるよりもよほど好感が持てた。と言ってもその時点では、そこまでの感情だった。
フットサルで何度か会い、そのうちもっと小規模な飲み会で一緒になり、少しずつ距離を詰めていくとその良さがしみじみと感じられた。
けして人を貶めるようなことを言わない。自分では話下手だからと言っていたが、相槌と軽い質問で相手に気持ちよく話させることに長けていた。
ランチやお茶、映画など二人で出かける時もあったがそれも数ヶ月ごと。進展なんて考えもしなかったのが、三年越しの関係に終止符を打つことを決心させた思わぬターニングポイントがあったのだ。
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けして人を貶めるようなことを言わない。自分では話下手だからと言っていたが、相槌と軽い質問で相手に気持ちよく話させることに長けていた。
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