ハズレ合コン救世主〜理系男子の溺愛は不言実行

＊夜はこれから・その３

　熱い手のひらに素肌を暴かれる。胸の輪郭を起伏に沿ってなぞりあげる指先が頂《いただき》にたどり着くと、自然とため息が漏れた。

「……あっ、あぁ……」

　指の腹で軽く引っかかれ、背筋がしなる。控えめな刺激なのに、ぞくぞくと甘い痺れが身体中に広がっていった。胸の先端を指で挟まれてすり合わせるようにされると、下腹をきゅうっと締め付けられるような感覚が走り抜けた。
　首筋を生温かい舌が這う。鎖骨のあたりから耳下までを焦らすような動きで舐められると、頼りなくて高い悲鳴が漏れるのを抑えられない。
　もう一度鎖骨まで戻っていった唇がさらに下へ移動していく。つんと尖った乳首がぬめる口内に迎え入れられた。器用な舌先にもてあそばれて、愉悦のあまり首をのけぞらせる。恥ずかしい、でも気持ちいい。
　ちゅう、と吸われたり舌先で細かに刺激されたりしているうちに、下腹部に熱が溜まっていく。胸だけしか触れられていないというのに、すでに下着の中はぐっしょりと濡れてしまっているだろう。膝をすり合わせていると、涙に潤む視界の向こうで彼と目が合った。

「ゆきさん、足、開いて」

　かすれた声に催促され、胸がひときわ大きく鳴った。

「は、い……」

　内股に置かれた手のひらにそっと力が込められる。押し開かれるまま片膝を外側に倒していくと、広くて熱い手のひらが足の付根までのぼってきた。

「ふ、ぁ……っ」

　ためらいもなく下着の上から触れられて、思わず息を詰める。覆いかぶさる彼がふっと小さく笑い声をこぼした。

「感じてくれたんだ」

　耳元でささやかれた瞬間、かっと耳が熱くなる。わざわざそんなこと、言わなくても。羞恥のあまり、目に涙がにじむ。すると彼は目尻にそうっと唇を寄せた。柔らかな感触が触れ、慈しむように幾度もキスを送られる。
　目元、頬、唇と徐々に移動して、首筋にまで到達した時、それまでの柔らかな触れ方が一変した。血脈に沿って、ぬるりと熱い舌で肌をなぶられる。同時に足の間に刺激を受けて、びくりと背中がシーツから浮いた。
　下着の中に指が侵入して、濡れそぼる秘裂に沿ってなで上げる。それだけで腰が震えてしまうのに、さらに蜜を塗り込めるように指を往復されれば喉の奥から耐えきれずに悲鳴が漏れた。
　声をこらえるために口元に手をあてがうけれど、手のひらの覆いでも荒くなる吐息は隠せない。優樹の反応を見て大丈夫だと思ったのだろう、ついに入り口を彼の一指が割り開いた。ぬめる蜜の助けでほとんど抵抗なく、隘路は指を飲み込んだ。わずかな圧迫感があるものの、難なく受け入れてしまう。
　胎内に侵入した指がもどかしいくらいの動きで抜き差しされる。中を行き来する動きが異物感を生んだのはほんのわずかで、すぐに得も言われぬような快楽が取って代わる。内壁を指先で掻かれて、不随意に中を締め付けてしまう。そのせいでますます指の存在感を意識することになる。優しく丁寧な動きに体がとろけてしまいそうだった。
　指が動かされるたびにあられもない水音がして、自分の体がすっかり受け入れる状態になっていることがわかる。

「も、やぁ……！」

　このまま中を刺激され続けたら、果ててしまう。そう思った時、優樹はとっさに懇願の声を上げた。足の間にある腕に両手を絡ませて止めて欲しいと意思表示すると、黒目がちの瞳が気遣わしげに見下ろしてくる。

「痛い？」
「いたく、ないけど……っ
「待つ？　それともやめる？」
　指を胎内に浅く埋め込まれたまま、そう問われる。
「え、と……」

　急に決定権を渡されて、どう伝えたものか考えあぐねて言いよどむと、ぐずぐずにとけた隘路から指が引き出される。

「ひ、ぁ……っ」

　わずかな刺激にも中がきゅんと切なくなって、高い声がこぼれ落ちた。思わず足が閉じて、間にある腕を挟み込んでしまう。抜け落ちかけた指は浅い場所で止まった。
　けれど一度火をつけられた身体の奥から熱を帯びたうねりがせり上がってくる。短い呼吸を繰り返してなんとか平静を取り戻そうとしていると、低くこもった声が囁きこまれる。

「ね、ゆきさん。それってどっち？」

　艷めいた声と共に熱い息が耳にかかり、うなじがぞくりと震えた。

「や、それダメ……」
「ダメっていうのは、」

　一度言葉を切られ、さらに耳元に唇が近づく。

「声？　それとも指？」

　吐息を絡めた声が鼓膜を揺らすと同時に中に埋まった指をわずかに動かされる。

「あ、あ……っ」

　きゅんと下腹が疼き、煩悶しながら小さく頭を左右に振る。何も考えられない。

「やめるなら足、開いてくれないと」

　とがめるような煽るような、どっちつかずの声色に耳をくすぐられ、熱が上がっていく。太ももで挟み込んでいる彼の腕を解放するどころか、気づけば両手で筋張った手首にすがっていた。
　そのことに気づき、恥ずかしさでかっと頬が熱くなる。これではこの先をねだっているみたいだ。みたい、では済まないかもしれない。
　自分でも、やめてほしくないと思う気持ちに気づいている。はしたない、なんて思われるだろうか？
　弁護したくても、口から漏れるのは熱い吐息だけだった。すがるような視線を受け止めて、一旦は引き出されかけた指が探るようにゆっくりと、奥を目指して動き始める。
　中が擦れて、下腹がきゅんと疼く。内壁がきゅっと狭まり指を締め付ける。それで余計に身体が熱くなる。奥で止められて、早くなった呼吸三回分の時間の後、囁きが耳を打つ。

「痛くない？」

　短く告げられた言葉を鈍った頭が理解するまで数秒擁したものの、なんとかうなずいてみせる。すると軽くつり上げられた唇が軽く頬に押し当てられた。
　その直後、胎内に埋められた指が波打つような動きを始める。内壁をかすめる力加減はごく弱いものだった。いっそのことひどくしてくれたなら、羞恥心も忘れてしまえるのに。
　じれったいほど丁寧なやり方で、弱いところを暴かれる。手加減された愛撫にじわじわと快楽の縁に追い上げられて、優樹は目をうるませた。
（きもちいい、きもちいい……）
　頭の中はそればかりで、他のことは何も考えられなかった。
　奥まで侵入していた指が、ほとんど入り口に引っかかっているだけの位置まで抜け出てくる。浅い縁に関節を引っ掛けられるようにされて、異物感に喉を鳴らす。

「ぃ、あぁ……っ」

　中をかき混ぜられて、空気を含んだ粘液がくぷりと音を立てた。重たげな水音が断続的に耳を侵す。

「んっ、それ、だめぇ」
「だめ？　本当に？」

　いつもよりワントーン抑えた声が囁きこまれる。答えられないのは、さっき口に出した言葉がそのままの意味ではないからだ。
　秘部への直接的な刺激とともに、濡れた音や彼の息遣いで耳でも感じてしまう。自分がこんなに快感に弱いなんて知らなかった。
　自嘲しながらも指を受け入れている場所が収縮して愉悦を伝え、熱をくすぶらせていく。こんなの耐えられない。さっきから重点的にこすられている一点は、優樹の泣き所だった。
　高ぶりが極限を迎え、目の裏側に白い光の筋がちらつく。引き絞られた隘路がしなやかな指の輪郭をくっきりと浮かび上がらせる。

「やっ、んく、ぅ……っ」

　目の縁にじわっと涙が浮き、下肢に強い痙攣が起こった。明らかに絶頂を示す兆候だ。涙の膜にぼやける視界の向こうで、彼がこちらをじっと見ているのがわかる。恥ずかしくてたまらない。

「みないで……」

　足先を丸めながら弱々しく懇願すると、彼は不思議そうに首を傾げた。

「どうして？　かわいいのに」
「かっ……？」

　てらいもなく告げられた言葉に、さらなる羞恥が襲う。ありえないと思うのに、まっすぐな視線が冗談のつもりで言っているわけではないと伝えてくる。
　そうこうしているうちにようやく足の震えが収まって、シーツの上にくたりと投げ出す。その間、彼はベッドサイドからティッシュを取った。惜しげもなく引き抜かれた柔らかな束を差し出されて、無心で受け取る。
　もう一度ティッシュを出すと、彼はかるく指先を拭った。それで自分の手元の束の使い道に思い至る。今更ながらに足の間にあふれたぬめりの存在を自覚して、頬が燃えるように熱くなった。
　彼の前でその部分に手を伸ばすのもはばかられて固まっていると、膝に温かい手が触れる。かと思えば横に膝を倒されて、目をみはる。

「まっ……、ひぁっ」

　待って、という言葉は悲鳴に飲み込まれた。手のひらの中で持て余していたティッシュがいつの間にか彼の手に移っていて、それで足の間を拭われる。
　再び触れた手は、先ほどと違って色めいた意図は欠片もなかった。ただの後始末だとしても、居たたまれない。歯を噛み締めて、以降はどうにか声を出さずに済んだ。
　その後、足元にたぐまっていた布団で身体を覆われる。