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失態3

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そうかと思えば寝台を離れ、床に跪いた。
「申し訳ない!」
深々と頭を下げられて、ベアトリーチェは慌てた。
「そんな、謝られる理由なんて……」
「あなたの純潔を無理やり奪ったのだ。こんなことで許されるとは思ってはいないが、それでも謝罪は必要だ」
忸怩として非礼を詫びるレオンハルトに、困ってしまう。
「いいえ、無理やりというなら私の方です。レオンハルト様がお気になさることなんてありません」
ベアトリーチェのとりなしも効果がなく、彼は大きな身体を精一杯縮めるようにして両こぶしを床につけた姿勢から動かない。
「お願いですから、頭を上げてください」
「そういうわけにはいかない」
彼ばかりが悪いわけではないというのに。寝台から見下ろしているのが申し訳なくなり、ベアトリーチェは軋む身体を引きずってシーツの端まで移動する。
「私だってあなたを騙して……きゃあっ」
寝台の縁に手をかけたつもりがシーツが滑ってしまい、バランスを崩しかける。
床に投げ出されるかと思って衝撃に備えたが、いつまで経っても痛みが襲ってこない。不思議に思ってゆっくりと目を開けると――レオンハルトの腕に抱きとめられていた。
「……あまり冷や冷やさせないでくれ」
「も、申し訳ありません」
再び寝台に戻されて、面目なさに目が潤んでくる。
「なんだか、お互い謝ってばかりだな」
そう言って彼は前髪をかき上げ、気の抜けたように眉を下げた。口元をわずかに緩めたその表情は笑顔と呼ぶには固かったが、ベアトリーチェの気持ちは少し和らいだ。
「はい。そうですね」
涙の予感は遠ざかり、落ち着いて応じることができた。
「良かったら、湯を使うか」
「お湯、ですか?」
「身体を清めたいだろう?」
汗やら何やらを流したいという気持ちはある。ただ、満足に身体を動かせない今の状態では難しいということもわかっていた。
「ありがたいのですが、」
「決まりだな」
今は難しい、と言おうとしたが、その前にレオンハルトは寝台を離れて行ってしまった。わざわざ呼び戻すのも悪くて、言葉尻は飲み込んだ。
程なくして戻ってきた彼は、ボウルと手巾を携えてきた。
「すみません、ありがとうございます」
サイドテーブルに置かれたボウルに手を伸ばそうとするが、その前にレオンハルトが手巾を浸し絞る。当然絞り終えたら手巾を渡されるだろうと思い、手を指し伸ばす。
しかしその手は空振りし、レオンハルトは手巾を持った手をベアトリーチェの顔に近づけてきた。
彼は自らベアトリーチェのことを拭き清める気のようだ。そんなこと、一国のあるじがすべきことではない。
「あ、あの、自分でできますから」
「身体がつらいんだろう。無理をさせた詫びとでも思ってくれ」
せめてもの罪滅ぼしとでも言うのだろうか、有無を言わさぬ口ぶりにそれ以上断るのも気が引けて、されるがままになる。
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