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会談に臨む

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使いはレオンハルトから講和のための会談の申し入れを記した書状を携えて戻った。
そして日を改めた本日、ベアトリーチェはレオンハルトの到着を待っていた。
敗戦国の代表らしく、服装は派手にならないように、灰色のクレープ地を使ったシンプルなドレスを纏う。露出も最低限で、襟ぐりの控えめなレース以外は装飾はなし。それに艶消しの真珠の耳飾りを合わせた。
自室の窓から数名の兵士を連れたレオンハルトの姿をみとめると、ベアトリーチェは部屋を出て階下へ向かった。
「ベアトリーチェ様。私たち、どうなるのでしょう」
お付きのメイドが不安そうな顔をするので、ベアトリーチェはいったん足を止め、彼女を振り返った。
「ローゼンハイトの王はひどく冷酷だと……」
「冷酷? 冷静、ではなかったかしら」
ベアトリーチェの耳にもレオンハルト・クリューガーが冷酷な君主だという噂は届いていた。けれどメイドを怯えさせたくなくて、わざと違う言葉に言い換える。
「クリューガー陛下とは私がお話をしてみますから、あなたは待っていて」
「……でも、給仕が必要なのでは」
職務を全うしようという気持ちが捨てきれないのだろう、手先を震わせながらも追いすがろうとするメイドに向かって首を振ってみせる。
「応接室には従僕が控えているし、どちらにせよ話が始まればみんな出てもらうわ。私一人で臨むことになります」
そう伝えると、ようやく彼女は納得したようだった。深々としたお辞儀と共に見送られ、ベアトリーチェはエントランスホールへと足を急がせた。
ホールに下りる階段の踊り場にたどり着くと、ちょうど衛兵によって扉が左右に開かれるところだった。
重厚な扉の隙間から淡い朝の光が入ってくる。その向こうに人影が見え、緊張で手すりに置いた手に力がこもる。
じっと視線を向けていると、扉が開いた直後よりも強い光がベアトリーチェの瞳に射し込んだ。まぶしさに思わず目を閉じる。
次に瞼を開けると、ホールにはすでに幾人かの男たちが立っていた。揃いの軍服に身を包んだ彼らの中、ひときわ目を引く人物がいる。
鍛えられた体躯の兵士たちの中、周囲より頭半分ほど背が高い。兵士たちに何事か指示をしているところを見て、最初は彼らを束ねる士官なのだと思った。
しかし、その肩を覆う丈の短いマント飾りに特徴的な紋章を見つけ、彼こそがローゼンハイト帝国の若き王、レオンハルト・クリューガーその人だと理解する。
ベアトリーチェが立ち尽くしている間、彼はマントを脱ぎ、腰に下げたサーベルを取って部下に手渡した。
――こうしてはいられない。
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