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第一話 夢見がちの来訪者
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「母さん、ただいま。」
12月の終わり頃、俺は実家に帰省していた。
雪も降り積もっており外は肺まで凍りそうなほど冷たく寒かった。
母「あらアマネ、もう帰ってたのね。」
俺の母さんは多分俺のことをあんまり好きじゃない。
家業の神道と祠のお守りを受け継がずに東京に行き好き勝手に生きてきたからだ。
好き勝手とは言ったが一応、理工学系で電子工学を学びそれを生業としたいという夢があったが、両親は俺の夢を何度話しても納得してくれなかった。
今はFランの適当な大学で適当に生きている。
アマネ「親父は?祠の掃除?」
母「あの人なら町内会の集まりで出かけてるわ。私も今出かけるところだから留守番頼むわね。」
アマネ「うん、わかった。」
俺は両親、周囲の友達と今まで”味のない会話”しかしてこなかった。
2年ぶりに実家に帰ったというのに表情ひとつ変えることなく淡々と日常をこなしていく両親や町の人があまり好きじゃなかった。
それから数時間後ーーー
アマネ「ふぅー漫画も読み飽きたな・・・未だにWi-Fiがないってどうなってるんだよこの家・・・」
俺の家は山の奥の方にあるのでとにかく現代における娯楽がない。
スマホもテレビもゲームも何もない。
一応、90年代の古い漫画は父の趣味で大量に置いてあったが2年前家を出るまでに全部読み尽くした。
アマネ「・・・そういえばあの祠ってそもそも何があるんだ?」
今まで普通に生きてきたが、冷静に考えて俺は”神道系”と”祠のお守り”を代々任されている家系ということしか聞かされてなかったということに気がついた。
気になった俺はとりあえず祠にいく前に祖父が残した資料が詰まっている家の隣にある蔵へと足を運んだ。
アマネ「平安時代・・・精神のそ・・クッソ、管理体制杜撰すぎだろ。なんて書いてあるかようわからん。」
俺がとりあえず現時点でわかったことは
1.平安時代からこの地を守り続けている。
2.当時、都から追放されてここに行きついたのが俺の先祖。
3.精神と夢に重きを置く独特な思想が我が家で受け継がれている。
4.地下は____に繋がっている。
まぁ本当に精神と夢に重きを置いているなら今日まで生きてきて両親が俺にとってきた態度を見るに教えなんざ全く守ってないんだなと思った。
アマネ「直接見に行った方が早いか。大体隠し事が多すぎんだよウチは。」
アマネは祠まで足を運んだ。
祠は禍々しいオーラを放っており、天気も相まってあまり入りたくないような雰囲気だったがそんなことは気にしなかった。
正直、こんな罰当たりかもしれないことをして俺の身に何が起ころうともう全部どうでもよかった。
アマネ「ここ入ったらまたほのかに会えんのかな・・・なんてな。」
小さい頃好きだった女の子がいた。
その子はとても明るくて正義感に満ち溢れ、俺が困ったときにいつでも手を伸ばし助けてくれた。
その子は病気で死んだ。
後天性のウイルス感染症だそうだ。
俺はその子がベッドの上でもがき苦しむ様子見たときから何かが壊れていたのかもしれない。
俺が助けを求めたとき、何度も助けてくれたのに俺は何もしてあげられない、自分は無力な存在なんだと幼くして現実を思い知らされた。
アマネ「暗いこと考えててもしゃーないな!ほな入ってみるか。」
アマネは祠の中にズカズカと入っていった。
神様に対する敬意とか、申し訳なさとかは特に感じていはいなかった。
アマネ「暗くてよく見えねぇな。」
そういうとアマネはバッグからスマホを取り出し、ライトをつけた。
壁にはあちこちに謎の古代文字のようなものが書かれており、不気味な壁画がいくつもあった。
アマネ「なんだこりゃ・・・ウチは一体何を守ってきたんだ?」
周囲をよく見ながら奥へ奥へと進んでいくと、だんだん下に下がっていってることに気がついた。
アマネは資料で読んだことを思い出し、息を呑んだ。
しかし好奇心は抑えられない。
アマネ「もっと奥まで行ってみるか・・・うおッ!?!??」
足を滑らしてしまった。
ドガッ ボコッ バキッ
体のあちこちを周囲の壁や地面に叩きつけられながらアマネは転がり落ちていった。
アマネ「うおおおッッッ痛ってえええええ」
叫びながらアマネは広い湖の中に落ちた。
冷たく、暗かったが何故か周囲には光が満ちていた。
アマネ(あっ、俺死ぬのか・・・最期までしょうもない人生だったな。ほのかと同じとこに行けそうにねえ….や…。)
アマネはそのまま意識を失った。
意識を失う直前、アマネは不思議な夢を見た。
ーーーお前 は結 何もで き し ない。ここ ら去ーー
ーーーずっ 見 る らねーーー
・・・すか・・・dすか!!!
アマネ「う、うぅ….」
「「大丈夫ですかっ!!!」」
アマネ「!?!?!?」
気がついたらそこは不思議な雰囲気を漂わせる森の中だった。
日本には存在しないような動植物やキノコが周りに大量にあった。
???「よかった・・・!目が覚めたんですね!」
アマネ「あれ…俺死んだはずじゃ…っ痛」
???「ああ、まだあまり動かないでください!止血したばっかりなんですから。」
目を覚ました俺はとりあえず周囲の状況をできる範囲で確認した。
見たことない動植物、謎のホワホワした光の玉、そしてデカすぎる樹木。
そして見知らぬ美少女の膝枕
アマネ「あんた名前は・・ってか日本語上手いっすね・・・」
???「ニ、ホン?どこの国の言葉かしら?あなたどこから来たの?」
質問を質問で返すなァーッと言いたいところだったがそんな気力はアマネにはなかった。
というか太ももの感触が気持ち良すぎて怪我が全部治りそうだった。
「ああごめんね!!私のはフィリン。フィリン・グロースって言うの。」
フィリン「森で薬草の調達をしてたらボロボロのあなたがここに転がってたってわけ。」
アマネ「自分は立川アマネって言います。21っす」
フィリンの心の声(同い年・・!)
アマネ「とりあえずここがどこだか聞きたいんですけど・・・」
フィリン「ここは昼子の森って言ってね、精霊とか小さめの魔物が彷徨いてて私の村の人たちはよくここで薬草や山菜を調達してるの。」
アマネは軽く頷きながらフィリンの説明をよく聞いたが、ある異変に気がついた。
さっきまでボロボロだった身体の調子がすこぶる良いなと感じた。
アマネ「ってか怪我治ってませんか!?これ!!」
フィリン「…?ああ!私が治癒魔法であなたの怪我をほとんど治療したわ。私のコレはちょっと特殊で私と密着すればするほど早く傷が治るのよ!」
アマネの心の声(恥ずかしげも無くすごいこと言ってんなこの人・・・)
アマネ「でもガチすごいっすねそれ!ほんまにありがとうございます。」
フィリン「とりあえず私の村まで移動しましょっか。あなたのことも色々聞きたいし!」
二人は森の中を歩きながら色々なことを話した。
アマネは自分の出生や何故ここに居たのか、どういう経緯があったのかをとりあえず全部話したが、フィリンは不思議そうな目をして首を傾げた。
フィリン「えっと…あなたはとりあえず別の世界から来たってこと?異邦人なの?」
アマネ「多分そうなりますね。」
フィリン「異邦人はこの世界じゃかなり珍しいわよ。私見るの初めてかも!」
この世界はどうやら人里の外はほとんど魔物が闊歩しており、ダンジョンや使われなくなった古城があちこちにあるらしい。
そしてこの世界の人たちはよくあるRPGゲームなんかで出てくる魔法を使えるらしく、人々は魔法を発展させることで今日まで文明を築き上げてきたらしい。
色々話を聞く中で要所要所でちょっと表情が曇っていると感じたのでアマネは思い切って少し聞きにくいかもしれない聞いてみた。
アマネ「えっなんか差別というか異邦人は排除しろー!みたいなのってあったりするんすか・・・?」
フィリン「・・・」
フィリンの顔色が一気に曇った。
フィリン「…実はね、うちの村はそこまで気にしないんだけどこの国の中央都市は異邦人は徹底的に排除する政策を取ってるの。」
アマネ「俺やばくないすか・・・?」
フィリン「だいぶやばいわね。」
二人は立ち止まった。
数秒間沈黙が続いたが、とりあえず再び歩いて村まで向かうことにした。
アマネ「何かいい方法ありませんかね?」
フィリン「特にその黒髪は1発で異邦人だってバレるわね。とりあえず村に戻ったら髪を染めてあげるわ。」
アマネ「俺髪質弱いんで・・・優しめのやつでお願いします。」
フィリン「わかった!あと敬語じゃなくていいわよ。」
二人でしばらく歩いていると村が見えてきた。
雰囲気としては昔の中国にありそうな雰囲気だったが、建築物は西洋風なので違和感がかなりあった。
でもなんとなく、平和な村だということは感じた。
フィリン「早く行きましょ!」
そういうとフィリンは早歩きで進んで行った。
しかし、そこで異変は起きた。
ガサガサ ゴソッ
アマネ「・・・?」
フィリン「アマネー?どうしたの早く行きましょーよ。」
アマネ「危ないッ!!」
アマネは咄嗟に走り出しフィリンを庇った。
なんと上から巨大な蜘蛛の魔物が現れたのだ。
フィリン「ジャイアントスパイダー!?なんで、、普段はもっと森の奥にいるはずなのに!!」
アマネ「多分俺たちが第一発見者だよな。ここでなんとかしないと村で被害が出る。」
フィリン「そんな…いや…イヤッ!」
フィリンは錯乱していた。
普段、フィリンの村ではスライムやゴブリンなど弱めの魔物しか出現しなかった。
しかし今目の前にいるのはギルドの凄腕冒険者でも手を焼くような恐ろしい巨大な蜘蛛の魔物、ジャイアントスパイダーだ。
アマネ「フィリン落ち着いて!いい作戦があるんだ。」
フィリン「さ、作戦・・?何するの・・?」
アマネ「さっき歩きながら教えてくれた”体内の魔力を具現化して道具を作るヤツ”あれでなんとかできないか?」
フィリン「無理よ!!魔導士レベルの魔力があるならまだしも、一般人が1日で使える魔力量はせいぜい12時間持つ魔力一本分だわ!」
アマネ「そこまで口回るならなんとかなるよ、とりあえずついてきて!」
ジャイアントスパイダーは威嚇しながらこちらに突っ込んできた。
フィリンとアマネはジャイアントスパイダーの攻撃を掻い潜りながら周囲の草木に飛び込み身を潜めた。
ジャイアントスパイダー「ッシャアアアア!!」
アマネ「相当怒ってるみたいだな・・・でもとりあえずわかったことがある」
フィリン「な、何…?」
アマネ「全長は大体7~9m、海外のセレブが乗ってそうな自家用ジェットと同じくらいの大きさだ。そして移動速度はあまり速くない。蜘蛛にしちゃ珍しいな。んで・・・」
フィリン「アマネ!!上!上!!!」
上からジャイアントスパイダーが急襲を仕掛けてきた。
かなりギリギリだったがなんとか即座にその場を離れて回避した。
アマネ「攻撃手段は前足のゴツい腕2本だけ!!糸飛ばす遠距離が無いのは非常に嬉しいことだ。」
フィリン「え、ええ。系を出せるジャイアントスパイダーはメスだけよ。オスはあの体格と両腕があればわざわざ糸で巣を作らなくても大型の魔物を狩れるもの。」
アマネ「なるほど、てなわけでさっき伝えた作戦行くぞっ!」
二人は来た道を全力ダッシュし最初に倒れていた位置まで戻った。
その際にアマネとフィリンは周囲にある草木や石や岩、を集めて散らし、遮蔽物を作りながら移動した。
~アマネのトラップ大作戦 ジャイアントスパイダー編~
1.俺が最初に倒れていた位置のすぐ近くに底なし沼があった。この時点でもうどうにかできる可能性アリ。
2.うまい具合に逃げながらジャイアントスパイダーを誘導
3.ジャイアントスパイダーの自分の進行方向に障害物や遮蔽物があった場合に飛びかかり上から攻撃を仕掛ける習性を利用し木にぶら下がってるツルやツタに絡ませる
4.どうせすぐツルを切り裂いて降りてくるので、下に着地するタイミングで二人同時に沼に飛び込み沼まで誘い込む
5.事前に作っておいた魔力の命綱で脱出がその際にもう一つの応用術である魔力を思いっきり縮小する技術を使う。
フィリン「そんな都合よく行くの!?ていうかこんな縄だけじゃどう考えても脱出は無理よ!!」
フィリンは走りながら大体7mくらいの縄を作り出した。
この世界における魔力で具現化させた道具は白く光り輝いており、一定時間が経つと消滅するらしい。
アマネ「それだけじゃない、コイツも使う。」
フィリン「何?それ…」
アマネ「鉤縄。俺の故郷に伝わる道具の一つだ。」
そう、アマネが作り出したのは鉤縄。
この世界では鉄製の道具は主に武器としか使われてないので農作業や小道具は全て魔力で作り出し補っていた。
しかしこういった直接人を倒すための武器でも作業に役立つ小道具でも無いようなものはそもそも必要がなかったので生まれなかった。
アマネ「コイツを縄の先に付けてその辺の木の根っこにひっかける。」
フィリン「すごいわね…初めて見る道具だわ…」
アマネ「来るぞ!!」
前方には最初にフィリンが採取してたい薬草などが入っている荷物や道具、そして先ほど集めて散らした石や岩、動植物などを積み重ねておいた。
ジャイアントスパイダー「ッシャアアアアアアアアアア!!!!」
ドォン
ジャイアントスパイダーは空高く飛び上がった。
その際にやはりツルや草木に絡まってしまい、空中で動きが止まった。
ジャイアントスパイダー「ッシャ!ギギッ!?」
アマネ「5…4…3…2…1..今ッ!!!」
スパアン
ツルや草木を前足で思いっきり切り裂いたジャイアントスパイダーはそこから二人めがけて落下した。
二人はうまい具合に位置を調節し二人と一匹で仲良く沼に飛び込んだ。
アマネ「フィリン!!今だ!!」
フィリン「うううううんんんんん!!!!」
フィリンは人生で発揮した中で最も大きい最大の魔力を振り絞って縄を縮めた。
沼の中でジャイアントスパイダーに襲われる直前になんとか脱出できた。
二人は勢いよく木にぶつかったが無事助かることができた。
ジャイアントスパイダーはなんとか這いあがろうと手足をバシャバシャしているが、それがかえって沼に沈む速度を加速させていた。
フィリン「や…やった…わ…ね…」
バタン
フィリンはその場に倒れた。
魔力の急激な消費に身体が耐えきれなかったのだろう。
アマネ「おつかれ、フィリン…」
アマネはそういうと沈みゆくジャイアントスパイダーを横目にアマネをおんぶしてそのまま村へ向かった。
12月の終わり頃、俺は実家に帰省していた。
雪も降り積もっており外は肺まで凍りそうなほど冷たく寒かった。
母「あらアマネ、もう帰ってたのね。」
俺の母さんは多分俺のことをあんまり好きじゃない。
家業の神道と祠のお守りを受け継がずに東京に行き好き勝手に生きてきたからだ。
好き勝手とは言ったが一応、理工学系で電子工学を学びそれを生業としたいという夢があったが、両親は俺の夢を何度話しても納得してくれなかった。
今はFランの適当な大学で適当に生きている。
アマネ「親父は?祠の掃除?」
母「あの人なら町内会の集まりで出かけてるわ。私も今出かけるところだから留守番頼むわね。」
アマネ「うん、わかった。」
俺は両親、周囲の友達と今まで”味のない会話”しかしてこなかった。
2年ぶりに実家に帰ったというのに表情ひとつ変えることなく淡々と日常をこなしていく両親や町の人があまり好きじゃなかった。
それから数時間後ーーー
アマネ「ふぅー漫画も読み飽きたな・・・未だにWi-Fiがないってどうなってるんだよこの家・・・」
俺の家は山の奥の方にあるのでとにかく現代における娯楽がない。
スマホもテレビもゲームも何もない。
一応、90年代の古い漫画は父の趣味で大量に置いてあったが2年前家を出るまでに全部読み尽くした。
アマネ「・・・そういえばあの祠ってそもそも何があるんだ?」
今まで普通に生きてきたが、冷静に考えて俺は”神道系”と”祠のお守り”を代々任されている家系ということしか聞かされてなかったということに気がついた。
気になった俺はとりあえず祠にいく前に祖父が残した資料が詰まっている家の隣にある蔵へと足を運んだ。
アマネ「平安時代・・・精神のそ・・クッソ、管理体制杜撰すぎだろ。なんて書いてあるかようわからん。」
俺がとりあえず現時点でわかったことは
1.平安時代からこの地を守り続けている。
2.当時、都から追放されてここに行きついたのが俺の先祖。
3.精神と夢に重きを置く独特な思想が我が家で受け継がれている。
4.地下は____に繋がっている。
まぁ本当に精神と夢に重きを置いているなら今日まで生きてきて両親が俺にとってきた態度を見るに教えなんざ全く守ってないんだなと思った。
アマネ「直接見に行った方が早いか。大体隠し事が多すぎんだよウチは。」
アマネは祠まで足を運んだ。
祠は禍々しいオーラを放っており、天気も相まってあまり入りたくないような雰囲気だったがそんなことは気にしなかった。
正直、こんな罰当たりかもしれないことをして俺の身に何が起ころうともう全部どうでもよかった。
アマネ「ここ入ったらまたほのかに会えんのかな・・・なんてな。」
小さい頃好きだった女の子がいた。
その子はとても明るくて正義感に満ち溢れ、俺が困ったときにいつでも手を伸ばし助けてくれた。
その子は病気で死んだ。
後天性のウイルス感染症だそうだ。
俺はその子がベッドの上でもがき苦しむ様子見たときから何かが壊れていたのかもしれない。
俺が助けを求めたとき、何度も助けてくれたのに俺は何もしてあげられない、自分は無力な存在なんだと幼くして現実を思い知らされた。
アマネ「暗いこと考えててもしゃーないな!ほな入ってみるか。」
アマネは祠の中にズカズカと入っていった。
神様に対する敬意とか、申し訳なさとかは特に感じていはいなかった。
アマネ「暗くてよく見えねぇな。」
そういうとアマネはバッグからスマホを取り出し、ライトをつけた。
壁にはあちこちに謎の古代文字のようなものが書かれており、不気味な壁画がいくつもあった。
アマネ「なんだこりゃ・・・ウチは一体何を守ってきたんだ?」
周囲をよく見ながら奥へ奥へと進んでいくと、だんだん下に下がっていってることに気がついた。
アマネは資料で読んだことを思い出し、息を呑んだ。
しかし好奇心は抑えられない。
アマネ「もっと奥まで行ってみるか・・・うおッ!?!??」
足を滑らしてしまった。
ドガッ ボコッ バキッ
体のあちこちを周囲の壁や地面に叩きつけられながらアマネは転がり落ちていった。
アマネ「うおおおッッッ痛ってえええええ」
叫びながらアマネは広い湖の中に落ちた。
冷たく、暗かったが何故か周囲には光が満ちていた。
アマネ(あっ、俺死ぬのか・・・最期までしょうもない人生だったな。ほのかと同じとこに行けそうにねえ….や…。)
アマネはそのまま意識を失った。
意識を失う直前、アマネは不思議な夢を見た。
ーーーお前 は結 何もで き し ない。ここ ら去ーー
ーーーずっ 見 る らねーーー
・・・すか・・・dすか!!!
アマネ「う、うぅ….」
「「大丈夫ですかっ!!!」」
アマネ「!?!?!?」
気がついたらそこは不思議な雰囲気を漂わせる森の中だった。
日本には存在しないような動植物やキノコが周りに大量にあった。
???「よかった・・・!目が覚めたんですね!」
アマネ「あれ…俺死んだはずじゃ…っ痛」
???「ああ、まだあまり動かないでください!止血したばっかりなんですから。」
目を覚ました俺はとりあえず周囲の状況をできる範囲で確認した。
見たことない動植物、謎のホワホワした光の玉、そしてデカすぎる樹木。
そして見知らぬ美少女の膝枕
アマネ「あんた名前は・・ってか日本語上手いっすね・・・」
???「ニ、ホン?どこの国の言葉かしら?あなたどこから来たの?」
質問を質問で返すなァーッと言いたいところだったがそんな気力はアマネにはなかった。
というか太ももの感触が気持ち良すぎて怪我が全部治りそうだった。
「ああごめんね!!私のはフィリン。フィリン・グロースって言うの。」
フィリン「森で薬草の調達をしてたらボロボロのあなたがここに転がってたってわけ。」
アマネ「自分は立川アマネって言います。21っす」
フィリンの心の声(同い年・・!)
アマネ「とりあえずここがどこだか聞きたいんですけど・・・」
フィリン「ここは昼子の森って言ってね、精霊とか小さめの魔物が彷徨いてて私の村の人たちはよくここで薬草や山菜を調達してるの。」
アマネは軽く頷きながらフィリンの説明をよく聞いたが、ある異変に気がついた。
さっきまでボロボロだった身体の調子がすこぶる良いなと感じた。
アマネ「ってか怪我治ってませんか!?これ!!」
フィリン「…?ああ!私が治癒魔法であなたの怪我をほとんど治療したわ。私のコレはちょっと特殊で私と密着すればするほど早く傷が治るのよ!」
アマネの心の声(恥ずかしげも無くすごいこと言ってんなこの人・・・)
アマネ「でもガチすごいっすねそれ!ほんまにありがとうございます。」
フィリン「とりあえず私の村まで移動しましょっか。あなたのことも色々聞きたいし!」
二人は森の中を歩きながら色々なことを話した。
アマネは自分の出生や何故ここに居たのか、どういう経緯があったのかをとりあえず全部話したが、フィリンは不思議そうな目をして首を傾げた。
フィリン「えっと…あなたはとりあえず別の世界から来たってこと?異邦人なの?」
アマネ「多分そうなりますね。」
フィリン「異邦人はこの世界じゃかなり珍しいわよ。私見るの初めてかも!」
この世界はどうやら人里の外はほとんど魔物が闊歩しており、ダンジョンや使われなくなった古城があちこちにあるらしい。
そしてこの世界の人たちはよくあるRPGゲームなんかで出てくる魔法を使えるらしく、人々は魔法を発展させることで今日まで文明を築き上げてきたらしい。
色々話を聞く中で要所要所でちょっと表情が曇っていると感じたのでアマネは思い切って少し聞きにくいかもしれない聞いてみた。
アマネ「えっなんか差別というか異邦人は排除しろー!みたいなのってあったりするんすか・・・?」
フィリン「・・・」
フィリンの顔色が一気に曇った。
フィリン「…実はね、うちの村はそこまで気にしないんだけどこの国の中央都市は異邦人は徹底的に排除する政策を取ってるの。」
アマネ「俺やばくないすか・・・?」
フィリン「だいぶやばいわね。」
二人は立ち止まった。
数秒間沈黙が続いたが、とりあえず再び歩いて村まで向かうことにした。
アマネ「何かいい方法ありませんかね?」
フィリン「特にその黒髪は1発で異邦人だってバレるわね。とりあえず村に戻ったら髪を染めてあげるわ。」
アマネ「俺髪質弱いんで・・・優しめのやつでお願いします。」
フィリン「わかった!あと敬語じゃなくていいわよ。」
二人でしばらく歩いていると村が見えてきた。
雰囲気としては昔の中国にありそうな雰囲気だったが、建築物は西洋風なので違和感がかなりあった。
でもなんとなく、平和な村だということは感じた。
フィリン「早く行きましょ!」
そういうとフィリンは早歩きで進んで行った。
しかし、そこで異変は起きた。
ガサガサ ゴソッ
アマネ「・・・?」
フィリン「アマネー?どうしたの早く行きましょーよ。」
アマネ「危ないッ!!」
アマネは咄嗟に走り出しフィリンを庇った。
なんと上から巨大な蜘蛛の魔物が現れたのだ。
フィリン「ジャイアントスパイダー!?なんで、、普段はもっと森の奥にいるはずなのに!!」
アマネ「多分俺たちが第一発見者だよな。ここでなんとかしないと村で被害が出る。」
フィリン「そんな…いや…イヤッ!」
フィリンは錯乱していた。
普段、フィリンの村ではスライムやゴブリンなど弱めの魔物しか出現しなかった。
しかし今目の前にいるのはギルドの凄腕冒険者でも手を焼くような恐ろしい巨大な蜘蛛の魔物、ジャイアントスパイダーだ。
アマネ「フィリン落ち着いて!いい作戦があるんだ。」
フィリン「さ、作戦・・?何するの・・?」
アマネ「さっき歩きながら教えてくれた”体内の魔力を具現化して道具を作るヤツ”あれでなんとかできないか?」
フィリン「無理よ!!魔導士レベルの魔力があるならまだしも、一般人が1日で使える魔力量はせいぜい12時間持つ魔力一本分だわ!」
アマネ「そこまで口回るならなんとかなるよ、とりあえずついてきて!」
ジャイアントスパイダーは威嚇しながらこちらに突っ込んできた。
フィリンとアマネはジャイアントスパイダーの攻撃を掻い潜りながら周囲の草木に飛び込み身を潜めた。
ジャイアントスパイダー「ッシャアアアア!!」
アマネ「相当怒ってるみたいだな・・・でもとりあえずわかったことがある」
フィリン「な、何…?」
アマネ「全長は大体7~9m、海外のセレブが乗ってそうな自家用ジェットと同じくらいの大きさだ。そして移動速度はあまり速くない。蜘蛛にしちゃ珍しいな。んで・・・」
フィリン「アマネ!!上!上!!!」
上からジャイアントスパイダーが急襲を仕掛けてきた。
かなりギリギリだったがなんとか即座にその場を離れて回避した。
アマネ「攻撃手段は前足のゴツい腕2本だけ!!糸飛ばす遠距離が無いのは非常に嬉しいことだ。」
フィリン「え、ええ。系を出せるジャイアントスパイダーはメスだけよ。オスはあの体格と両腕があればわざわざ糸で巣を作らなくても大型の魔物を狩れるもの。」
アマネ「なるほど、てなわけでさっき伝えた作戦行くぞっ!」
二人は来た道を全力ダッシュし最初に倒れていた位置まで戻った。
その際にアマネとフィリンは周囲にある草木や石や岩、を集めて散らし、遮蔽物を作りながら移動した。
~アマネのトラップ大作戦 ジャイアントスパイダー編~
1.俺が最初に倒れていた位置のすぐ近くに底なし沼があった。この時点でもうどうにかできる可能性アリ。
2.うまい具合に逃げながらジャイアントスパイダーを誘導
3.ジャイアントスパイダーの自分の進行方向に障害物や遮蔽物があった場合に飛びかかり上から攻撃を仕掛ける習性を利用し木にぶら下がってるツルやツタに絡ませる
4.どうせすぐツルを切り裂いて降りてくるので、下に着地するタイミングで二人同時に沼に飛び込み沼まで誘い込む
5.事前に作っておいた魔力の命綱で脱出がその際にもう一つの応用術である魔力を思いっきり縮小する技術を使う。
フィリン「そんな都合よく行くの!?ていうかこんな縄だけじゃどう考えても脱出は無理よ!!」
フィリンは走りながら大体7mくらいの縄を作り出した。
この世界における魔力で具現化させた道具は白く光り輝いており、一定時間が経つと消滅するらしい。
アマネ「それだけじゃない、コイツも使う。」
フィリン「何?それ…」
アマネ「鉤縄。俺の故郷に伝わる道具の一つだ。」
そう、アマネが作り出したのは鉤縄。
この世界では鉄製の道具は主に武器としか使われてないので農作業や小道具は全て魔力で作り出し補っていた。
しかしこういった直接人を倒すための武器でも作業に役立つ小道具でも無いようなものはそもそも必要がなかったので生まれなかった。
アマネ「コイツを縄の先に付けてその辺の木の根っこにひっかける。」
フィリン「すごいわね…初めて見る道具だわ…」
アマネ「来るぞ!!」
前方には最初にフィリンが採取してたい薬草などが入っている荷物や道具、そして先ほど集めて散らした石や岩、動植物などを積み重ねておいた。
ジャイアントスパイダー「ッシャアアアアアアアアアア!!!!」
ドォン
ジャイアントスパイダーは空高く飛び上がった。
その際にやはりツルや草木に絡まってしまい、空中で動きが止まった。
ジャイアントスパイダー「ッシャ!ギギッ!?」
アマネ「5…4…3…2…1..今ッ!!!」
スパアン
ツルや草木を前足で思いっきり切り裂いたジャイアントスパイダーはそこから二人めがけて落下した。
二人はうまい具合に位置を調節し二人と一匹で仲良く沼に飛び込んだ。
アマネ「フィリン!!今だ!!」
フィリン「うううううんんんんん!!!!」
フィリンは人生で発揮した中で最も大きい最大の魔力を振り絞って縄を縮めた。
沼の中でジャイアントスパイダーに襲われる直前になんとか脱出できた。
二人は勢いよく木にぶつかったが無事助かることができた。
ジャイアントスパイダーはなんとか這いあがろうと手足をバシャバシャしているが、それがかえって沼に沈む速度を加速させていた。
フィリン「や…やった…わ…ね…」
バタン
フィリンはその場に倒れた。
魔力の急激な消費に身体が耐えきれなかったのだろう。
アマネ「おつかれ、フィリン…」
アマネはそういうと沈みゆくジャイアントスパイダーを横目にアマネをおんぶしてそのまま村へ向かった。
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20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
セクスカリバーをヌキました!
桂
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とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
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せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
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享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
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そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
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性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
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先日まで最強の聖剣使いでしたが、 今日から治癒術師(Lv1)としてがんばりますっ!
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毎日スキルが増えるのって最強じゃね?
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※ストーリー等見切り発車な点御容赦ください。
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