15 / 22
第15話 圭子の本気
しおりを挟む
春名と美智香の魔法訓練が一段落してふと何かを考えこむ仕草を見せるタクミ。その様子に春名が…
「タクミ君、何かありましたか?」
「いや、大したことじゃないんだけど、俺の勝手な思い込みかもしれないが賢者というのは森の奥深くの小屋に長い年月隠れ住んで自己研鑽を重ねてその果てに何かしらの自らの研究成果を得るみたいなイメージなんだ。それが春名の場合はあまりにも自由過ぎるというか… 誰もが想像する賢者像からほど遠いというか…」
「なんだかタクミ君にしては歯切れが悪いですねぇ~。結局のところなにが言いたいんですか?」
「要は春名はあまりにも感覚的過ぎて、自分の人生を懸けて理論や真理を探究しようという普通の賢者とは懸け離れているとタクミは言いたいんだと思う」
「美智香ちゃんもなんだか歯にモノが詰まった言い方でよくわからないですよ~」
「ぶっちゃけて言うと適当過ぎて賢者らしくないということ」
「誰が適当ですかぁぁぁぁ! こう見えてもちゃんとやっているつもりなんですから!」
「そもそも魔法は系統立てた理論に基づいて組み立てられている。そんな代物を感覚だけで取り扱っているといつか痛い目に遭う」
「まあ、その点に関しては美智香ちゃんの言う通りかもしれないですが、私の場合は理論は後からついてくるといいますか… 理論のほうが私に合わせてもらいたいというか…」
「そんなわけあるか! その性根こそが適当過ぎると言われる原因」
美智香にズバズバ指摘されて春名はこれ以上言い返すことが出来ないよう。このままではどうにもならないのでタクミが割って入る。
「この場はこのくらいにしておこう。春名の魔法スキルがどのように成長していくのかを論じるのは現時点では不確定要素が多すぎる」
「そうですよ! もっと広い心で私の成長を見守ってください」
タクミが味方に付いたとばかりに急に強気になる春名がいる。この時点で美智香は彼女の根本的な性格が何とかならない限りこの問題は解決しそうにないと悟っているよう。さらに話題を変えようとしてかタクミは…
「そろそろ腹が減ってくる頃だろう。それに魔力の残量も気になるから訓練はこの辺にしておこう」
「確かに魔力のゲージが半分以下になっている」
ステータス画面を開いた美智香が魔力の残量を確認した上でタクミの言葉を肯定している。
「今日はかなり訓練を頑張りましたからお腹がすきましたよ~」
春名は何も気にすることなく自分のお腹の減り具合を声にする。この反応だけでいかに両者の性格が正反対なのか想像がついてくる。
「せっかくギルドから依頼を受けているんだから、昼食はホーンラビットをメインにしよう。お~い、圭子!」
「急にどうしたのよ?」
やや離れた場所で素振りを終えて美咲に剣を振るう際の足捌きを教えていた圭子がこちらにやってくる。もちろん美咲も一緒に。
「そろそろ昼食の時間だから、すまないが圭子はホーンラビットを2羽ほど狩ってきてもらえるか」
「いいけど、私は捌けないわよ」
「解体は俺がやるから心配するな」
「だったら安心。それじゃあチャッチャッと捕まえてくるわね」
そう言い残して草原のもっと先のほうに向かって駆け出していく圭子。やがて彼女が戻ってくると、草むらに2羽のホーンラビットを置く。どちらも首の骨を一瞬で折られてほぼ即死状態。これから食材となってくれる命に対する圭子のせめてもの思い遣りなのだろう。
圭子が戻ってくるまでの間にタクミは少し離れた場所に生えている草をナイフで刈りとってから魔法で深さ50セントほどの穴を穿っている。その穴の前で獲れたてのホーンラビットの血抜きをしてから器用に毛皮を剥がして内臓を抜いて、仕上げに部位ごとに切り分けて食材にする部分をトレーに載せていく。2羽合わせて10分程で作業を終えると、トレーをテーブルに置いて美咲に向き直る。
「調理方法は美咲に任せるけど、レモンとバターを使用するのがホーンラビット料理の定番かな」
「わかりました。両方とも昨日市場で買ってありますから大丈夫です」
タクミからトレーを受け取った美咲はテーブルを調理台代わりにして包丁で手際よく肉を切り分けていく。その他にもニンジンやホウレン草とよく似た葉物野菜を水桶で洗って下処理したり、ひとりでテキパキと動いている。
「ところで誰も美咲を手伝わないのか?」
「私は食べる専門ですから」(春名)
「私が料理をするとなぜか黒焦げの異物が出来上がるのよね」(圭子)
「私が料理すると食材や調味料をグラム単位でキッチリ計るから時間がかかって仕方がない」
どうやら3名とも料理には不向きな性格らしい。ちなみに空は「全然聞こえません」という表情でガチホモ本の鑑賞に耽っている。ここで圭子が…
「そういうタクミの料理はどうなのよ?」
「俺はもっぱら男の手料理が専門だから見てくれや味付けは大雑把だな」
それでも抵抗なく口に入る品をまともに作れるだけ女子たちに比べてタクミのほうが何倍もマシだろう。
やがて出来上がった料理がテーブルに運ばれる。配膳だけは春名と美智香が手伝っているが、圭子についてはこの二人から「何もしないで椅子に座っているように」と厳命されて素直に従っている。どうやら想像以上に圭子と料理というのは相性が悪いらしい。
「スゴイな! まるでレストランで出てくる料理みたいだ」
「短い時間で仕上げたので味のほうはあまり自信ありませんが、皆さんどうぞ召し上がれ」
各自の目の前に並べられているのは野菜のスープにお馴染みの堅焼きの黒パン、それからメインのホーンラビットのソテー、レモンバターとハーブ風味となっている。付け合わせのニンジンのグラッセとホウレン草も色鮮やかでなんとも食欲を掻き立てる。
肝心のお味のほうは、もちろん全員が何もしゃべらずに夢中になってナイフとフォークを動かすレベル。あっさりとしたホーンラビットの肉に絡むレモンバターのソースが絶妙で、少量加えてあるハーブがいいアクセントになっている。
「ふぅ~、とっても美味しかったです。タレちゃん、ごちそうさまでした」
「想像以上に旨かった。なんだかすっかり胃袋を掴まれた気分だな」
春名の感想にはニッコリと微笑んだだけの美咲であったが、タクミの言葉を聞いて頬を赤らめている。何ともわかりやすい反応だが、やはりタクミには美咲の気持ちはまったく伝わっていないよう。しかし彼女は上機嫌で…
「今日は急ぎだったのお料理だけでしたが、次の機会にはもうちょっと時間に余裕を持ったうえでデザートもご用意したいと思います」
「タレちゃん、愛してます! 今からデザートが楽しみで仕方がないですよ~」
美咲に告っているのは残念ながらタクミではなくて春名。しかもその心の内を正確に分析すると「美咲が創るデザートを愛している」という意味に他ならない。
しばし休憩を取ってお茶を飲んでいると、食べて間もないというのに圭子がウズウズしだす。
「なんだ、圭子はもう動き出したくなってきたのか?」
「けっこうホーンラビット狩りが面白かったから早くいきたいのよ」
「依頼は5羽以上となっているぞ。ひとりで大丈夫か?」
「もちろんよ、それじゃあ、いってきま~す!」
そう言い残して一目散に草原の向こう側に駆け出していく。圭子を見送ってから分担して食器を片付けたりテーブルを拭いたりしていると、地面に大きな影を落としながらタクミたちの頭上を巨大な物体が通り過ぎていく。タクミが上空を見上げると翼を広げた巨大な物体が彼らの頭上を悠々と旋回している。
「ワイバーンだ! 圭子、早くこっちに戻ってこい!」
「了解。すぐに戻るわ」
王都から歩いて高々1時間少々の距離の草原にワイバーンが出没するとは、さすがは異世界というべきだろう。それはともかく、タクミの声を聞いて状況を理解した圭子がこちらに向かって駆け出してくる。その間にタクミは自動小銃を取り出す。
(術式は結界構築、威力は最大、照準はマニュアル)
魔法陣を確認すると躊躇わずに女子たちが立っている地面に向けて引き金を引く。すると彼女たちを包み込むように防御用の結界が出来上がる。
「そこから出るんじゃないぞ! この場は俺と圭子が何とかする」
「わかりました。どうかご武運を」
女子たちの中で辛うじて美咲だけが返事をする。他の面々はワイバーンが頭上から襲い掛かってくる恐怖に体が竦んでいるよう。特に一番ビビりの春名に至ってはしゃがみこんで両手で頭を隠している。
美咲の励ましに見送られて、タクミは圭子と合流すべく草原に駆け出していく。ワイバーンの気配を察知したのか、先程まであれだけ付近を跳ね回っていたホーンラビットは巣穴に隠れて1羽も見当たらない。両者の中間地点で合流を果たしたタクミと圭子は…
「タクミ、春名たちは大丈夫なの?」
「心配いらない。結界で覆ってある」
「良かった、それじゃあ私たちは心置きなく討伐に専念していいのね」
「その通りで構わないんだが、圭子は空を飛んでいる相手に対抗する手段はあるのか?」
タクミとしては大空をはばたくワイバーンを撃ち落とすのは自分の役目だと考えているが、どうやら圭子には何か秘策があるような雰囲気を感じ取っている。
「当たり前じゃない! 私だってワイバーンの討伐くらいやったことあるわよ」
「そうだったか。それは頼もしいな」
「それでね、あいつはさっき明らかにひとりでいる私を狙っている節があったのよ。だからタクミはちょっと離れた場所から私がしくじった時に備えて援護してもらいたいんだけど、いいかな?」
「いいぞ。ひとつだけ考慮に入れてもらいたい件があるんだが」
「何よ?」
「ワイバーンの飛膜は防水効果が高くて雨除けのマントを誂えるのに最高の素材なんだ。可能な限り飛膜に傷をつけないように討伐できそうか?」
「ふ~ん、そうだったんだ。何度か討伐したけど、そんな細かいこと考えてもいなかったわ」
「冒険者を続ける限りこれから先旅をする機会もあるだろう。雨風を防ぐ装備も用意しておかないと痛い目を見るからな」
「わかったわ。可能な限り傷をつけないようにするわね」
打ち合わせが済んだところでタクミはチラリと上空を見上げる。相変わらずワイバーンはこちらの様子を窺いながら旋回中。タクミは圭子が立っている場所から50メートル後退して肩に掛けていた自動小銃を手にする。
(弾種は散弾、属性はナシ、威力は最大、照準はマニュアル)
万が一圭子に危険が迫った際には有無を言わせずに飛竜を地面に叩き落とすつもりで広範囲に魔力弾をバラ撒ける散弾をセレクトしている。迎え撃つ準備が整ったので圭子のほうに目を遣ると、彼女は軽く足を前後に開いてやや腰だめの姿勢で上空を見つめている。
そしてついにその時がやってくる。タクミが離れて圭子がひとりになったのを目にしたワイバーンは、徐々に高度を落としたかと思ったら突然急降下を開始。そんな敵の様子を捉えた圭子の目はわずかに細められてこちらも迎撃のタイミングを計っているよう。
双方の距離が急激に縮まって残り500メートルを切ったとき、圭子が宙に向けて両腕をとんでもない勢いで交互に突き始める。繰り返し突き出される両手の動きはさながら某拳王様が放つ百裂拳のごとし。ともかく腕の動きが早すぎてその残像のみが辛うじて視認可能なレベル。
それだけならまだしも、以前彼女が口にした通りその拳の動きは音速をはるかに超えている。物体が移動する際にその速度が音速を上回ると、高速で押し出された空気が物体の前方で渦を巻き始めてさらに反転、音の波が繰り返し合成していく結果より大きな波動を形成して物理的なエネルギーが生じる。これが衝撃波が生み出されるメカニズム。
こんな強烈なエネルギーを持つ波動が直撃すると飛行する物体は当然危険に晒される。ただでさえ絶妙はバランスを保ちながら飛行しているところに、胴体だの翼だのところ構わず物理的な高エネルギーの空気の波紋が何十発もまとめて襲い掛かってくる。当たり前のことだがワイバーンは空中で大きくバランスを崩す。ガクンと高度を落としたワイバーンは懸命に翼を動かして浮力を得ようとするが、元々急降下している最中にバランスを崩してしまっては、それはもはや虚しい努力に過ぎない。
ほぼ墜落同然で地面の草を薙ぎ倒しながら着地したワイバーンは片方の翼は根元から折れてもう二度と空には戻れなくなっている。しかも体全体を強く地面に打ち付けたことによる深刻なダメージもあるよう。
わずかに首を持ち上げて威嚇のための咆哮をあげようと試みるが、力ない唸り声が出るだけ。もちろんこんなチャンスを圭子が逃すはずもない。全力ダッシュでワイバーンの元に駆け込むと、勢いに任せて首元に飛び蹴りを食らわせる。
バキッ!
何かが折れる音が周辺に響くと、ワイバーンは力なくその首を地面に降ろしていく。つい先程までは大地を爛々と見下ろしながら獲物を探していたその目は今では徐々に光を失っていき、最期にはゆっくりと両目が閉じられてワイバーンは息を引き取っていく。
全長15メートルにも及ぶ巨体の脇でドヤ顔をして立っている圭子。タクミは足早に彼女の側に駆け寄っていく。
「翼は折れちゃっているけど、たぶん飛膜は無事だと思うわ」
「見事としか言いようがない討伐ぶりだったな」
「そりゃぁどうも。まあちょっとだけ本気を出したみただけよ」
「そうだな、圭子の真の力の一端を垣間見させてもらったよ」
この日は美咲の剛力で驚かされ、春名のよくわからない魔法スキルに唖然としたが、やはり何といっても圭子の本気というのが一番タクミをビックリさせている。それからタクミがワイバーンを、圭子が離れた場所に放置してある20体ちかくのホーンラビットをアイテムボックスに収納して、この日は予定よりも早めに王都への帰路に就くのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
と感じていただいた方は是非とも【お気に入り登録】やすぐ下にあるハート型のアイコンの【いいねボタン】などをポチッとしていただくと作者のモチベーションに繋がります! もちろん連打も大歓迎です。皆様の応援を心よりお待ちしております。
なおこちらの小説と同時に連載しております【異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!】もどうぞよろしくお願いいたします。こちらは現代ファンタジーの作品になりますが、この作品と同等のクオリティーで楽しめる内容となっています。目次のページの左下にジャンプできるアイコンがありますので、お暇な時間にお読みいただけたら幸いです。
「タクミ君、何かありましたか?」
「いや、大したことじゃないんだけど、俺の勝手な思い込みかもしれないが賢者というのは森の奥深くの小屋に長い年月隠れ住んで自己研鑽を重ねてその果てに何かしらの自らの研究成果を得るみたいなイメージなんだ。それが春名の場合はあまりにも自由過ぎるというか… 誰もが想像する賢者像からほど遠いというか…」
「なんだかタクミ君にしては歯切れが悪いですねぇ~。結局のところなにが言いたいんですか?」
「要は春名はあまりにも感覚的過ぎて、自分の人生を懸けて理論や真理を探究しようという普通の賢者とは懸け離れているとタクミは言いたいんだと思う」
「美智香ちゃんもなんだか歯にモノが詰まった言い方でよくわからないですよ~」
「ぶっちゃけて言うと適当過ぎて賢者らしくないということ」
「誰が適当ですかぁぁぁぁ! こう見えてもちゃんとやっているつもりなんですから!」
「そもそも魔法は系統立てた理論に基づいて組み立てられている。そんな代物を感覚だけで取り扱っているといつか痛い目に遭う」
「まあ、その点に関しては美智香ちゃんの言う通りかもしれないですが、私の場合は理論は後からついてくるといいますか… 理論のほうが私に合わせてもらいたいというか…」
「そんなわけあるか! その性根こそが適当過ぎると言われる原因」
美智香にズバズバ指摘されて春名はこれ以上言い返すことが出来ないよう。このままではどうにもならないのでタクミが割って入る。
「この場はこのくらいにしておこう。春名の魔法スキルがどのように成長していくのかを論じるのは現時点では不確定要素が多すぎる」
「そうですよ! もっと広い心で私の成長を見守ってください」
タクミが味方に付いたとばかりに急に強気になる春名がいる。この時点で美智香は彼女の根本的な性格が何とかならない限りこの問題は解決しそうにないと悟っているよう。さらに話題を変えようとしてかタクミは…
「そろそろ腹が減ってくる頃だろう。それに魔力の残量も気になるから訓練はこの辺にしておこう」
「確かに魔力のゲージが半分以下になっている」
ステータス画面を開いた美智香が魔力の残量を確認した上でタクミの言葉を肯定している。
「今日はかなり訓練を頑張りましたからお腹がすきましたよ~」
春名は何も気にすることなく自分のお腹の減り具合を声にする。この反応だけでいかに両者の性格が正反対なのか想像がついてくる。
「せっかくギルドから依頼を受けているんだから、昼食はホーンラビットをメインにしよう。お~い、圭子!」
「急にどうしたのよ?」
やや離れた場所で素振りを終えて美咲に剣を振るう際の足捌きを教えていた圭子がこちらにやってくる。もちろん美咲も一緒に。
「そろそろ昼食の時間だから、すまないが圭子はホーンラビットを2羽ほど狩ってきてもらえるか」
「いいけど、私は捌けないわよ」
「解体は俺がやるから心配するな」
「だったら安心。それじゃあチャッチャッと捕まえてくるわね」
そう言い残して草原のもっと先のほうに向かって駆け出していく圭子。やがて彼女が戻ってくると、草むらに2羽のホーンラビットを置く。どちらも首の骨を一瞬で折られてほぼ即死状態。これから食材となってくれる命に対する圭子のせめてもの思い遣りなのだろう。
圭子が戻ってくるまでの間にタクミは少し離れた場所に生えている草をナイフで刈りとってから魔法で深さ50セントほどの穴を穿っている。その穴の前で獲れたてのホーンラビットの血抜きをしてから器用に毛皮を剥がして内臓を抜いて、仕上げに部位ごとに切り分けて食材にする部分をトレーに載せていく。2羽合わせて10分程で作業を終えると、トレーをテーブルに置いて美咲に向き直る。
「調理方法は美咲に任せるけど、レモンとバターを使用するのがホーンラビット料理の定番かな」
「わかりました。両方とも昨日市場で買ってありますから大丈夫です」
タクミからトレーを受け取った美咲はテーブルを調理台代わりにして包丁で手際よく肉を切り分けていく。その他にもニンジンやホウレン草とよく似た葉物野菜を水桶で洗って下処理したり、ひとりでテキパキと動いている。
「ところで誰も美咲を手伝わないのか?」
「私は食べる専門ですから」(春名)
「私が料理をするとなぜか黒焦げの異物が出来上がるのよね」(圭子)
「私が料理すると食材や調味料をグラム単位でキッチリ計るから時間がかかって仕方がない」
どうやら3名とも料理には不向きな性格らしい。ちなみに空は「全然聞こえません」という表情でガチホモ本の鑑賞に耽っている。ここで圭子が…
「そういうタクミの料理はどうなのよ?」
「俺はもっぱら男の手料理が専門だから見てくれや味付けは大雑把だな」
それでも抵抗なく口に入る品をまともに作れるだけ女子たちに比べてタクミのほうが何倍もマシだろう。
やがて出来上がった料理がテーブルに運ばれる。配膳だけは春名と美智香が手伝っているが、圭子についてはこの二人から「何もしないで椅子に座っているように」と厳命されて素直に従っている。どうやら想像以上に圭子と料理というのは相性が悪いらしい。
「スゴイな! まるでレストランで出てくる料理みたいだ」
「短い時間で仕上げたので味のほうはあまり自信ありませんが、皆さんどうぞ召し上がれ」
各自の目の前に並べられているのは野菜のスープにお馴染みの堅焼きの黒パン、それからメインのホーンラビットのソテー、レモンバターとハーブ風味となっている。付け合わせのニンジンのグラッセとホウレン草も色鮮やかでなんとも食欲を掻き立てる。
肝心のお味のほうは、もちろん全員が何もしゃべらずに夢中になってナイフとフォークを動かすレベル。あっさりとしたホーンラビットの肉に絡むレモンバターのソースが絶妙で、少量加えてあるハーブがいいアクセントになっている。
「ふぅ~、とっても美味しかったです。タレちゃん、ごちそうさまでした」
「想像以上に旨かった。なんだかすっかり胃袋を掴まれた気分だな」
春名の感想にはニッコリと微笑んだだけの美咲であったが、タクミの言葉を聞いて頬を赤らめている。何ともわかりやすい反応だが、やはりタクミには美咲の気持ちはまったく伝わっていないよう。しかし彼女は上機嫌で…
「今日は急ぎだったのお料理だけでしたが、次の機会にはもうちょっと時間に余裕を持ったうえでデザートもご用意したいと思います」
「タレちゃん、愛してます! 今からデザートが楽しみで仕方がないですよ~」
美咲に告っているのは残念ながらタクミではなくて春名。しかもその心の内を正確に分析すると「美咲が創るデザートを愛している」という意味に他ならない。
しばし休憩を取ってお茶を飲んでいると、食べて間もないというのに圭子がウズウズしだす。
「なんだ、圭子はもう動き出したくなってきたのか?」
「けっこうホーンラビット狩りが面白かったから早くいきたいのよ」
「依頼は5羽以上となっているぞ。ひとりで大丈夫か?」
「もちろんよ、それじゃあ、いってきま~す!」
そう言い残して一目散に草原の向こう側に駆け出していく。圭子を見送ってから分担して食器を片付けたりテーブルを拭いたりしていると、地面に大きな影を落としながらタクミたちの頭上を巨大な物体が通り過ぎていく。タクミが上空を見上げると翼を広げた巨大な物体が彼らの頭上を悠々と旋回している。
「ワイバーンだ! 圭子、早くこっちに戻ってこい!」
「了解。すぐに戻るわ」
王都から歩いて高々1時間少々の距離の草原にワイバーンが出没するとは、さすがは異世界というべきだろう。それはともかく、タクミの声を聞いて状況を理解した圭子がこちらに向かって駆け出してくる。その間にタクミは自動小銃を取り出す。
(術式は結界構築、威力は最大、照準はマニュアル)
魔法陣を確認すると躊躇わずに女子たちが立っている地面に向けて引き金を引く。すると彼女たちを包み込むように防御用の結界が出来上がる。
「そこから出るんじゃないぞ! この場は俺と圭子が何とかする」
「わかりました。どうかご武運を」
女子たちの中で辛うじて美咲だけが返事をする。他の面々はワイバーンが頭上から襲い掛かってくる恐怖に体が竦んでいるよう。特に一番ビビりの春名に至ってはしゃがみこんで両手で頭を隠している。
美咲の励ましに見送られて、タクミは圭子と合流すべく草原に駆け出していく。ワイバーンの気配を察知したのか、先程まであれだけ付近を跳ね回っていたホーンラビットは巣穴に隠れて1羽も見当たらない。両者の中間地点で合流を果たしたタクミと圭子は…
「タクミ、春名たちは大丈夫なの?」
「心配いらない。結界で覆ってある」
「良かった、それじゃあ私たちは心置きなく討伐に専念していいのね」
「その通りで構わないんだが、圭子は空を飛んでいる相手に対抗する手段はあるのか?」
タクミとしては大空をはばたくワイバーンを撃ち落とすのは自分の役目だと考えているが、どうやら圭子には何か秘策があるような雰囲気を感じ取っている。
「当たり前じゃない! 私だってワイバーンの討伐くらいやったことあるわよ」
「そうだったか。それは頼もしいな」
「それでね、あいつはさっき明らかにひとりでいる私を狙っている節があったのよ。だからタクミはちょっと離れた場所から私がしくじった時に備えて援護してもらいたいんだけど、いいかな?」
「いいぞ。ひとつだけ考慮に入れてもらいたい件があるんだが」
「何よ?」
「ワイバーンの飛膜は防水効果が高くて雨除けのマントを誂えるのに最高の素材なんだ。可能な限り飛膜に傷をつけないように討伐できそうか?」
「ふ~ん、そうだったんだ。何度か討伐したけど、そんな細かいこと考えてもいなかったわ」
「冒険者を続ける限りこれから先旅をする機会もあるだろう。雨風を防ぐ装備も用意しておかないと痛い目を見るからな」
「わかったわ。可能な限り傷をつけないようにするわね」
打ち合わせが済んだところでタクミはチラリと上空を見上げる。相変わらずワイバーンはこちらの様子を窺いながら旋回中。タクミは圭子が立っている場所から50メートル後退して肩に掛けていた自動小銃を手にする。
(弾種は散弾、属性はナシ、威力は最大、照準はマニュアル)
万が一圭子に危険が迫った際には有無を言わせずに飛竜を地面に叩き落とすつもりで広範囲に魔力弾をバラ撒ける散弾をセレクトしている。迎え撃つ準備が整ったので圭子のほうに目を遣ると、彼女は軽く足を前後に開いてやや腰だめの姿勢で上空を見つめている。
そしてついにその時がやってくる。タクミが離れて圭子がひとりになったのを目にしたワイバーンは、徐々に高度を落としたかと思ったら突然急降下を開始。そんな敵の様子を捉えた圭子の目はわずかに細められてこちらも迎撃のタイミングを計っているよう。
双方の距離が急激に縮まって残り500メートルを切ったとき、圭子が宙に向けて両腕をとんでもない勢いで交互に突き始める。繰り返し突き出される両手の動きはさながら某拳王様が放つ百裂拳のごとし。ともかく腕の動きが早すぎてその残像のみが辛うじて視認可能なレベル。
それだけならまだしも、以前彼女が口にした通りその拳の動きは音速をはるかに超えている。物体が移動する際にその速度が音速を上回ると、高速で押し出された空気が物体の前方で渦を巻き始めてさらに反転、音の波が繰り返し合成していく結果より大きな波動を形成して物理的なエネルギーが生じる。これが衝撃波が生み出されるメカニズム。
こんな強烈なエネルギーを持つ波動が直撃すると飛行する物体は当然危険に晒される。ただでさえ絶妙はバランスを保ちながら飛行しているところに、胴体だの翼だのところ構わず物理的な高エネルギーの空気の波紋が何十発もまとめて襲い掛かってくる。当たり前のことだがワイバーンは空中で大きくバランスを崩す。ガクンと高度を落としたワイバーンは懸命に翼を動かして浮力を得ようとするが、元々急降下している最中にバランスを崩してしまっては、それはもはや虚しい努力に過ぎない。
ほぼ墜落同然で地面の草を薙ぎ倒しながら着地したワイバーンは片方の翼は根元から折れてもう二度と空には戻れなくなっている。しかも体全体を強く地面に打ち付けたことによる深刻なダメージもあるよう。
わずかに首を持ち上げて威嚇のための咆哮をあげようと試みるが、力ない唸り声が出るだけ。もちろんこんなチャンスを圭子が逃すはずもない。全力ダッシュでワイバーンの元に駆け込むと、勢いに任せて首元に飛び蹴りを食らわせる。
バキッ!
何かが折れる音が周辺に響くと、ワイバーンは力なくその首を地面に降ろしていく。つい先程までは大地を爛々と見下ろしながら獲物を探していたその目は今では徐々に光を失っていき、最期にはゆっくりと両目が閉じられてワイバーンは息を引き取っていく。
全長15メートルにも及ぶ巨体の脇でドヤ顔をして立っている圭子。タクミは足早に彼女の側に駆け寄っていく。
「翼は折れちゃっているけど、たぶん飛膜は無事だと思うわ」
「見事としか言いようがない討伐ぶりだったな」
「そりゃぁどうも。まあちょっとだけ本気を出したみただけよ」
「そうだな、圭子の真の力の一端を垣間見させてもらったよ」
この日は美咲の剛力で驚かされ、春名のよくわからない魔法スキルに唖然としたが、やはり何といっても圭子の本気というのが一番タクミをビックリさせている。それからタクミがワイバーンを、圭子が離れた場所に放置してある20体ちかくのホーンラビットをアイテムボックスに収納して、この日は予定よりも早めに王都への帰路に就くのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
と感じていただいた方は是非とも【お気に入り登録】やすぐ下にあるハート型のアイコンの【いいねボタン】などをポチッとしていただくと作者のモチベーションに繋がります! もちろん連打も大歓迎です。皆様の応援を心よりお待ちしております。
なおこちらの小説と同時に連載しております【異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!】もどうぞよろしくお願いいたします。こちらは現代ファンタジーの作品になりますが、この作品と同等のクオリティーで楽しめる内容となっています。目次のページの左下にジャンプできるアイコンがありますので、お暇な時間にお読みいただけたら幸いです。
96
お気に入りに追加
435
あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね
カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。
本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。
俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。
どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。
だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。
ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。
かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。
当然のようにパーティは壊滅状態。
戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。
俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ!
===
【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる