7 / 22
第7話 黒精霊との戦い
しおりを挟む
訓練場で睨み合うタクミと黒精霊。両者の間には一発触発の空気が流れる。
このような状況で先に仕掛けたのはタクミ。右手に持っているハンドガンに術式を構築する。
(属性はナシ、威力は通常、照準はマニュアル)
ボシュっという気が抜けた音と共にハンドガンから通常の魔力弾が黒精霊に向けて撃ち出されていく。だが黒精霊もこれまで難なく騎士たちを蹂躙してきたタクミの攻撃を直接目にしているだけに、危険と判断したのか背中にある翼を広げて大空へと飛び上がって回避。
(やっぱり飛べるのか。面倒くさい相手だな)
苦虫を噛み潰した表情のタクミに対して、悠々と空を飛翔する黒精霊から多分に嘲りの混ざった声が…
「まこと愚かにして地を這いずるしか能のない人間よ! 下賤の者がいい気になるのはこれで最後にしてくれるわ」
不敵な笑い声が混ざった大きな声が一帯に響いたかと思ったら、黒精霊の両手から夥しい数の火球が生み出されてタクミがいる地面目掛けて殺到してくる。直後には大量の氷の礫と強力な電流を帯びた稲妻のシャワーも追加されて、一帯は猛烈な爆発音と煙と雷鳴に包まれる。
「愚かな虫ケラは妾がほんの少しの力を振るっただけで踏み潰されていくのが定め。何とも儚いものよ」
往々にして神の使いを自認する存在はこのように人間を明らかに見下す態度をとる。もちろんそれは当たり前といえば当たり前の話なので、人間が天使や悪魔に真っ向からぶつかっても潜在的なポテンシャルの違いによって敗れ去るだけ。
だが忘れてはならないことが1点だけある。それはタクミのステータスにある〔神殺し〕という称号。そこに記載されている通り、タクミは天使や悪魔を遣わす神そのものをすでに滅ぼしているという驚くべき真実が存在する。
余裕の表情で上空から地表を見下ろしている黒精霊だが、その後頭部から首筋に掛けて髪の毛が逆立つようなチリチリと焼け付く感覚を覚える。これは本能的に危険を知らせるサイン。ハッとして周囲を見渡すと、地面から自分に向かって途轍もない魔力を内包する危険な塊が一直線に上昇してくるのが目に飛び込んでくる。
本能的に翼をはためかせて自分に襲い掛かる魔力の塊を回避しつつそれが飛んできた方向に目を遣ると、タクミが金属製の筒のような物体を肩に担いでこちらに狙いを定めている。その現在位置は黒精霊が魔法攻撃を放った場所から相当に離れており、攻撃を察知したタクミは瞬時に自分の立ち位置を変えていたよう。
そんなタクミといえば…
「チッ、1発で仕留めるつもりだったが、上手いこと躱されたな」
口惜しそうなセリフを吐いてはいるが、どうやら想定の範囲内だったようでその表情は冷静なまま。それだけに留まらずにさらに追加で2発目、3発目を黒精霊がホバリングしている上空に向けて投射していく。ちなみに彼が担いでいるのはロケットランチャー。といっても実際にロケット弾を発射する仕様ではなくて、魔力によって作成した砲弾を撃ち出す仕組み。しかもハンドガンやマシンガンとは比較にならない大容量の魔力砲弾を撃ち出せるので、その破壊力はひと口に言ってもとんでもないヤバいレベル。
黒精霊は続けざまに放たれた砲弾を何とか回避して上空から忌々し気にタクミを見下ろす。
「この世のすべてを支配する我が神より直々に力を授かった妾の攻撃を避けるとは… そこなる人間よ、そなたは一体何者か?」
「これから消滅していくクソヤローに名乗るっつもりはない」
両者が問答している間にタクミがロケットランチャーから撃ち出した魔力砲弾が黒精霊の頭上で爆発して真っ黒な雲を生み出している。爆発の衝撃で周囲の空気をイオンに分解しているのだろうか、雨が降る前のような独特の匂いが周辺に充満する。
上空を見上げるタクミはロケットランチャーを仕舞うと今度はその手に自動小銃を構えて黒精霊に狙いをつける。
(属性はナシ、弾種は散弾、威力は最大、照準はマニュアル)
小銃の内部で術式が構築されていく。タクミが引き金を引くとこれまたヤバい威力の魔力弾が上空に向けて飛び出す。
黒精霊はタクミの様子を見て今度も楽々回避が出来ると高を括りながら翼をはためかせる。だが1発だと思っていた魔力の銃弾は飛翔する最中に数十に分裂して黒精霊が回避しようとする方向を覆い尽くすように広がって向かってくる。しかもタクミは連続で数十発の弾丸を発射してくるので、周辺一帯には逃げ場がない。
「シマッタ、なんとかもっと高度をとって逃げるしかない」
予想外のタクミの攻撃に黒精霊の額に薄っすらを汗が滲むも、懸命に翼を動かして高度を上げていく。だが黒精霊の行く手にはいまだにロケットランチャーから撃ち出された魔力弾の爆発で生じた真っ黒な雲が横たわっており、どうにもこの雲の内部に突っ込んでいくのは気が進まない。仕方なしに水平飛行に切り替えて散弾が覆い尽くす範囲の外へ逃げようと試みる。
だが空中での方向転換の際にちょっとした焦りが生じたのか、黒精霊の翼の先が横たわる真っ黒な雲に触れる。
「ギャァァァァァ!」
突然翼から生じた激痛によって上空で絶叫する黒精霊。その原因は雲に触れた翼の先端部分が分解されて消え去っていくせい。それだけならまだしも翼に生じる異変は1秒ごとに広がっていき、このままでは飛翔する自らの体を支えられなくなるのは必定。
実はタクミの真の狙いはこれにある。ロケットランチャーから撃ち出された膨大な魔力の塊は暴走魔力で練り上げられており、雲のように広がるこの区域に黒精霊を追い込むことがタクミの最初からの目的。空を飛んでいる厄介な敵を地上に強制的に降ろすためにこのような手の込んだ罠を仕掛けていたよう。
黒精霊の片翼は半ば分解されて浮力を得るには不十分な状況。残ったもう1枚の翼を懸命に動かしてギリギリ地上に戻ってくると、黒精霊は死に物狂いで翼を元に戻そうと魔力を流し込む。元来精霊種には自らの体が損傷した際にこれを復元する手段が備わっている。だが現在翼を侵食しているのは万物を分解する暴走魔力。精霊の復元力をもってしてもその分解作用を食い止めるのが精一杯な模様。
「無様だな。地面を這いずり回る気分はどうだ?」
「に、人間風情が妾にこのような仕打ちを… 絶対に許さぬぞ!」
口だけはずいぶんと元気そうだが、体内の魔力のほぼすべてを翼の復元に回しているので、すでにこの時点でタクミを攻撃する余裕などどこにもない。
「そうか、まだ生意気な口を利ける余裕が残っているんだな。それじゃあこちらも遠慮しないぜ」
一瞬で黒精霊との距離を詰めるタクミ。その勢いのままに胴体に渾身のヤクザキックをお見舞いする。
「ギャァァァァァ!」
攻撃力999999を誇るタクミのキックをまともに受けた黒精霊の体は水平方向に吹っ飛んで訓練場の壁に高速で衝突する。その勢いによって体が壁にめり込んで身動きが取れなくなる。
タクミは黒精霊の体が埋まっている壁のほうへとゆっくりと歩を進めていく。
「口だけで全然大したことないな」
「な、なぜだ! そなたは妾の姿を見た瞬間その顔に緊張が走ったはず。あれは明らかに妾に対して強い警戒感を感じ取っていた。なのになぜこれほどまでに妾とそなたでは力の差があるのか?」
「つまらないことを気にするヤツだな。まあいい、教えてやるよ。確かにお前からは俺が過去に相手をした敵と同等の強さを感じた。だがな、その時はお前と同じような翼をもった邪神の配下がまとめて500体襲ってきたんだよ。それに比べて今回は高々1体が相手。難易度のレベルが違いすぎるだろう」
「まさかな… 妾自らが召喚した者たちの中にこれほどの強者が紛れ込んでおったとは…」
「遺言は終わったか? それじゃあ、これで最後にしよう」
タクミは手にしていた小銃を仕舞い込んで、今度はアイテムボックスから取り出した一振りの槍を手にしている。
「この槍はロンギヌスという銘でな、俺たちの世界でとある神の申し子が磔刑になった際にその心臓を貫いて命を奪ったという伝説と同じ名を持っている。聖属性のアーティファクトでトドメを刺されるんだから、薄汚い悪魔風情にはこの上ない喜びだろう」
タクミの言葉にこれ以上ないほど黒精霊の目が見開かれている。タクミが手にする神槍があまりにも恐ろしすぎて目が離せないよう。
だがそんな黒精霊の恐怖の感情など素知らぬフリで、タクミはロンギヌスを思いっきり振り被るとキッチリ最後のスナップまで効かせて投擲する。
「ギャァァァァァ!」
黒精霊の断末魔の叫び声が訓練場に響く。タクミの視線の先には両手を広げて壁にめり込んで、ちょうど心臓の部分をロンギヌスによって刺し貫かれた黒精霊の姿。偶然にも十字架に掛けられて亡くなった有名な宗教の開祖と同じような姿勢ですでに叫び声も聞こえない。
最後に恨めしそうにタクミを見返すその瞳の光が徐々に弱くなって、ついにはハイライトが消え去って虚ろなままに虚空を見つめる。
「まあ、こんなもんか」
ひと仕事終えたとばかりにタクミが振り返ると、そこにはいつの間に集まったのか大勢のギャラリーが遠巻きに黒精霊の最期を見届けているのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
と感じていただいた方は是非とも【お気に入り登録】や【いいねボタン】などをポチッとしていただくと作者のモチベーションに繋がります! 皆様の応援を心よりお待ちしております。
このような状況で先に仕掛けたのはタクミ。右手に持っているハンドガンに術式を構築する。
(属性はナシ、威力は通常、照準はマニュアル)
ボシュっという気が抜けた音と共にハンドガンから通常の魔力弾が黒精霊に向けて撃ち出されていく。だが黒精霊もこれまで難なく騎士たちを蹂躙してきたタクミの攻撃を直接目にしているだけに、危険と判断したのか背中にある翼を広げて大空へと飛び上がって回避。
(やっぱり飛べるのか。面倒くさい相手だな)
苦虫を噛み潰した表情のタクミに対して、悠々と空を飛翔する黒精霊から多分に嘲りの混ざった声が…
「まこと愚かにして地を這いずるしか能のない人間よ! 下賤の者がいい気になるのはこれで最後にしてくれるわ」
不敵な笑い声が混ざった大きな声が一帯に響いたかと思ったら、黒精霊の両手から夥しい数の火球が生み出されてタクミがいる地面目掛けて殺到してくる。直後には大量の氷の礫と強力な電流を帯びた稲妻のシャワーも追加されて、一帯は猛烈な爆発音と煙と雷鳴に包まれる。
「愚かな虫ケラは妾がほんの少しの力を振るっただけで踏み潰されていくのが定め。何とも儚いものよ」
往々にして神の使いを自認する存在はこのように人間を明らかに見下す態度をとる。もちろんそれは当たり前といえば当たり前の話なので、人間が天使や悪魔に真っ向からぶつかっても潜在的なポテンシャルの違いによって敗れ去るだけ。
だが忘れてはならないことが1点だけある。それはタクミのステータスにある〔神殺し〕という称号。そこに記載されている通り、タクミは天使や悪魔を遣わす神そのものをすでに滅ぼしているという驚くべき真実が存在する。
余裕の表情で上空から地表を見下ろしている黒精霊だが、その後頭部から首筋に掛けて髪の毛が逆立つようなチリチリと焼け付く感覚を覚える。これは本能的に危険を知らせるサイン。ハッとして周囲を見渡すと、地面から自分に向かって途轍もない魔力を内包する危険な塊が一直線に上昇してくるのが目に飛び込んでくる。
本能的に翼をはためかせて自分に襲い掛かる魔力の塊を回避しつつそれが飛んできた方向に目を遣ると、タクミが金属製の筒のような物体を肩に担いでこちらに狙いを定めている。その現在位置は黒精霊が魔法攻撃を放った場所から相当に離れており、攻撃を察知したタクミは瞬時に自分の立ち位置を変えていたよう。
そんなタクミといえば…
「チッ、1発で仕留めるつもりだったが、上手いこと躱されたな」
口惜しそうなセリフを吐いてはいるが、どうやら想定の範囲内だったようでその表情は冷静なまま。それだけに留まらずにさらに追加で2発目、3発目を黒精霊がホバリングしている上空に向けて投射していく。ちなみに彼が担いでいるのはロケットランチャー。といっても実際にロケット弾を発射する仕様ではなくて、魔力によって作成した砲弾を撃ち出す仕組み。しかもハンドガンやマシンガンとは比較にならない大容量の魔力砲弾を撃ち出せるので、その破壊力はひと口に言ってもとんでもないヤバいレベル。
黒精霊は続けざまに放たれた砲弾を何とか回避して上空から忌々し気にタクミを見下ろす。
「この世のすべてを支配する我が神より直々に力を授かった妾の攻撃を避けるとは… そこなる人間よ、そなたは一体何者か?」
「これから消滅していくクソヤローに名乗るっつもりはない」
両者が問答している間にタクミがロケットランチャーから撃ち出した魔力砲弾が黒精霊の頭上で爆発して真っ黒な雲を生み出している。爆発の衝撃で周囲の空気をイオンに分解しているのだろうか、雨が降る前のような独特の匂いが周辺に充満する。
上空を見上げるタクミはロケットランチャーを仕舞うと今度はその手に自動小銃を構えて黒精霊に狙いをつける。
(属性はナシ、弾種は散弾、威力は最大、照準はマニュアル)
小銃の内部で術式が構築されていく。タクミが引き金を引くとこれまたヤバい威力の魔力弾が上空に向けて飛び出す。
黒精霊はタクミの様子を見て今度も楽々回避が出来ると高を括りながら翼をはためかせる。だが1発だと思っていた魔力の銃弾は飛翔する最中に数十に分裂して黒精霊が回避しようとする方向を覆い尽くすように広がって向かってくる。しかもタクミは連続で数十発の弾丸を発射してくるので、周辺一帯には逃げ場がない。
「シマッタ、なんとかもっと高度をとって逃げるしかない」
予想外のタクミの攻撃に黒精霊の額に薄っすらを汗が滲むも、懸命に翼を動かして高度を上げていく。だが黒精霊の行く手にはいまだにロケットランチャーから撃ち出された魔力弾の爆発で生じた真っ黒な雲が横たわっており、どうにもこの雲の内部に突っ込んでいくのは気が進まない。仕方なしに水平飛行に切り替えて散弾が覆い尽くす範囲の外へ逃げようと試みる。
だが空中での方向転換の際にちょっとした焦りが生じたのか、黒精霊の翼の先が横たわる真っ黒な雲に触れる。
「ギャァァァァァ!」
突然翼から生じた激痛によって上空で絶叫する黒精霊。その原因は雲に触れた翼の先端部分が分解されて消え去っていくせい。それだけならまだしも翼に生じる異変は1秒ごとに広がっていき、このままでは飛翔する自らの体を支えられなくなるのは必定。
実はタクミの真の狙いはこれにある。ロケットランチャーから撃ち出された膨大な魔力の塊は暴走魔力で練り上げられており、雲のように広がるこの区域に黒精霊を追い込むことがタクミの最初からの目的。空を飛んでいる厄介な敵を地上に強制的に降ろすためにこのような手の込んだ罠を仕掛けていたよう。
黒精霊の片翼は半ば分解されて浮力を得るには不十分な状況。残ったもう1枚の翼を懸命に動かしてギリギリ地上に戻ってくると、黒精霊は死に物狂いで翼を元に戻そうと魔力を流し込む。元来精霊種には自らの体が損傷した際にこれを復元する手段が備わっている。だが現在翼を侵食しているのは万物を分解する暴走魔力。精霊の復元力をもってしてもその分解作用を食い止めるのが精一杯な模様。
「無様だな。地面を這いずり回る気分はどうだ?」
「に、人間風情が妾にこのような仕打ちを… 絶対に許さぬぞ!」
口だけはずいぶんと元気そうだが、体内の魔力のほぼすべてを翼の復元に回しているので、すでにこの時点でタクミを攻撃する余裕などどこにもない。
「そうか、まだ生意気な口を利ける余裕が残っているんだな。それじゃあこちらも遠慮しないぜ」
一瞬で黒精霊との距離を詰めるタクミ。その勢いのままに胴体に渾身のヤクザキックをお見舞いする。
「ギャァァァァァ!」
攻撃力999999を誇るタクミのキックをまともに受けた黒精霊の体は水平方向に吹っ飛んで訓練場の壁に高速で衝突する。その勢いによって体が壁にめり込んで身動きが取れなくなる。
タクミは黒精霊の体が埋まっている壁のほうへとゆっくりと歩を進めていく。
「口だけで全然大したことないな」
「な、なぜだ! そなたは妾の姿を見た瞬間その顔に緊張が走ったはず。あれは明らかに妾に対して強い警戒感を感じ取っていた。なのになぜこれほどまでに妾とそなたでは力の差があるのか?」
「つまらないことを気にするヤツだな。まあいい、教えてやるよ。確かにお前からは俺が過去に相手をした敵と同等の強さを感じた。だがな、その時はお前と同じような翼をもった邪神の配下がまとめて500体襲ってきたんだよ。それに比べて今回は高々1体が相手。難易度のレベルが違いすぎるだろう」
「まさかな… 妾自らが召喚した者たちの中にこれほどの強者が紛れ込んでおったとは…」
「遺言は終わったか? それじゃあ、これで最後にしよう」
タクミは手にしていた小銃を仕舞い込んで、今度はアイテムボックスから取り出した一振りの槍を手にしている。
「この槍はロンギヌスという銘でな、俺たちの世界でとある神の申し子が磔刑になった際にその心臓を貫いて命を奪ったという伝説と同じ名を持っている。聖属性のアーティファクトでトドメを刺されるんだから、薄汚い悪魔風情にはこの上ない喜びだろう」
タクミの言葉にこれ以上ないほど黒精霊の目が見開かれている。タクミが手にする神槍があまりにも恐ろしすぎて目が離せないよう。
だがそんな黒精霊の恐怖の感情など素知らぬフリで、タクミはロンギヌスを思いっきり振り被るとキッチリ最後のスナップまで効かせて投擲する。
「ギャァァァァァ!」
黒精霊の断末魔の叫び声が訓練場に響く。タクミの視線の先には両手を広げて壁にめり込んで、ちょうど心臓の部分をロンギヌスによって刺し貫かれた黒精霊の姿。偶然にも十字架に掛けられて亡くなった有名な宗教の開祖と同じような姿勢ですでに叫び声も聞こえない。
最後に恨めしそうにタクミを見返すその瞳の光が徐々に弱くなって、ついにはハイライトが消え去って虚ろなままに虚空を見つめる。
「まあ、こんなもんか」
ひと仕事終えたとばかりにタクミが振り返ると、そこにはいつの間に集まったのか大勢のギャラリーが遠巻きに黒精霊の最期を見届けているのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「面白かった」
「続きが気になる」
「早く投稿して!」
と感じていただいた方は是非とも【お気に入り登録】や【いいねボタン】などをポチッとしていただくと作者のモチベーションに繋がります! 皆様の応援を心よりお待ちしております。
160
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?
シトラス=ライス
ファンタジー
漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。
かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。
結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。
途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。
すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」
特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。
さすがは元勇者というべきか。
助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?
一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった……
*本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
スキルガチャで異世界を冒険しよう
つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。
それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。
しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。
お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。
そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。
少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる