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第33話 大山ダンジョン4~5階層
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カンカンカンカン!
屋外にある第1訓練場には木と木がぶつかり合う乾いた音が響いている。現在ここでは明日香ちゃんとカレンによって手にする木槍と棒の打ち合いが行われている最中。二人とも真夏の日差しに汗びっしょりになりながら槍と棒を打ち付け合う。
「そろそろお昼ですから、今日はこの辺にしておきましょう!」
「やったあー! 訓練が終わりましたぁぁぁ!」
「午前中だけとはいえ、こうして体を動かしっぱなしというのは相当キツいですね」
カレンはタオルで汗をぬぐいながらやや疲れた表情で笑みを漏らす。実技実習の時間には救護所で待機しているケースが多かったので、フルにこうして体を動かす経験は聡史たちのパーティーに参加してから。とはいえそこそこレベルが上昇している分体力面でのキツさはずいぶん緩和されている。
それにしてもこうして実際に明日香ちゃんと打ち合ってみると、自身の体力がいかに不足しているかと気付かされているカレン。
同様にタオルで汗を拭いている明日香ちゃんはというと…
「はあ、それにしても疲れましたよ~。カレンさんとの打ち合いならまだマシですけど、桜ちゃんが相手だと本当に死にそうになります」
「明日香ちゃん、疲労回復にとっても効果がある飲み物がありますよ」
「ヒィィィ! 絶対に嫌ですぅぅ! カレンさん、どうかお願いします」
桜がポーションを取り出そうとする気配を察知した明日香ちゃんは鳥肌を立ててカレンにしがみついている。あんな苦くてトラウマを植え付けるような得体の知れない飲み物よりも、カレンの回復魔法のほうが断然いいに決まっている。苦くないだけでなくて心身ともに癒される心地よい感覚が体全体を包んでくれる。
「はいはい、わかりました」
桜の魔の手を逃れようと自分にしがみついている明日香ちゃんにカレンは笑いながら回復魔法を掛ける。怪我だけではなくて疲労までこうして回復してくれるから、明日香ちゃんとしては大変ありがたい話。もう二度とポーションは口にしないとオリハルコンよりも固く決心している。
昨日とは打って変わって魔法学院には生徒の姿が数えるほどしかない。ほとんどの生徒が入場再開となった大山ダンジョンに朝から向かっており、その姿がすっかり出払っている。
その分聡史たちは広い場所を生かして朝から訓練に励んでいる。土日に秩父に出掛けたので、こちらのダンジョンが再開したからといって早々にがっついてアタックする必要を感じていない。今日は午前中を訓練に充てて昼食を摂ってからゆっくりダンジョンへ向かう計画を立てており、昼食時間に食堂に集合となっている。三人が屋外の訓練場から食堂へと向かうと…
「おや? 美鈴ちゃんは顔が苦り切っていますが、どうしたんですか?」
「魔法の練習で半分以上魔力を消費したから聡史君から魔力回復の飲み物をもらったんだけど、これがまたとんでもない味で…」
「美鈴さん! 私の気持ちを分かってもらえましたか?」
カレンのおかげでポーションからグッバイした明日香ちゃんは、ちょっとだけ上から目線で美鈴に語り掛けている。美鈴が舌を出して苦さと戦っている姿がほんのちょっとだけ嬉しい明日香ちゃん。被害者は自分だけではないと溜飲が下がった心地のよう。
◇◇◇◇◇
こうして午後からパーティーは4日振りに大山ダンジョンへと入場していく。
「本当にゴブリンばっかりで、お金にならないダンジョンですよねぇ~」
秩父で味をしめた明日香ちゃんがぼやく声を聴きながら、一行は前回早々に切り上げざるを得なかった3階層に降りていく。
せっかく得た神聖魔法を封印されたカレンは世界樹の杖を握りながら歩いている。もしも機会があったらこの杖でゴブリンをブッ叩こうと秘かに考えているよう。アーティファクト級の神具を棒切れ代わりにしようとは恐れ多いにもほどがある。
こうして3階層で登場してくるゴブリンの上位種を倒していくが、明日香ちゃんが何かに気が付いたかのように口を開く。
「桜ちゃん、そういえばこのところ全然レベルが上がらなくなっていますよ~。一体どうなっているんでしょうか?」
「明日香ちゃんのレベルは、いくつになりましたか?」
「今はえーと、18ですね」
「おやおや、いつの間にかずいぶん上昇していたんですね。大体20近くまではレベルはグングン上昇しますが、そこから先になると必要経験値が爆上がりしますから、ゴブリン相手では中々上がらないんですよ」
「そうだったんですかぁぁ! 全然知らなかったですよ~」
明日香ちゃん、ダンジョンに関して本物の無知を露呈している。こういう重要な情報すら全く知らぬままにここまで来ているのがある意味スゴイ。もし桜と出会わなければ、おそらく落第は確実であっただろう。人間としては悪い子ではないのだが、冒険者としては色々と失格な点が多すぎる気がしてならない。
「聡史君、ということは、私たちはこのままゴブリンだけを相手にしていられないということかしら?」
「そうだなぁ… もう卒業でもいいかな」
「お兄様、そうと決まればこれから4階層に出向きましょう! 新たな種類の魔物と戦うのがいいと思います」
本当は単純に桜が早く下に降りたいだけに決まっている。戦闘狂の本能を満たすにはより強い魔物との対戦が必須らしい。
桜の意見はともかくとして、聡史は美鈴に念のために尋ねる。
「4階層はどんな魔物が出るんだ?」
「ゴブリンジェネラル、コボルト、グレーウルフ、それから極稀にオークね」
「ゴブリンの上位種に犬と狼と肉ですか…… はぁー、オークは上位種じゃないと大して美味しくないんですの」
桜は魔物のラインナップを聞いてガックリした様子。先日隠し部屋でゲットしたオークジェネラルの肉はすでに金曜日に自宅に持ち帰り、母親の手で極上のトンカツになって桜のお腹に収まっていた。美鈴とカレンもオークジェネラルの肉とは知らずにペロリと美味しくいただいたのは黙っておこう。
それにしても桜の魔物の呼び方は… 確かに言われてみれば、コボルト=犬、グレーウルフ=狼、オーク=肉… って、ちょっと待とうか! 肉ってなんだ? そこはせめてブタだろう! ブタをすっ飛ばして肉って… 完全に食材としか見ていないじゃないかぁぁ! はぁ、こっちがため息をつきたくなってくるが、まあ桜だから仕方がないと諦めよう。
なにはともあれ、こうして話がまとまったので、桜を先頭にしてパーティーは4階層へ降りていく。
「まさか1年生の身で4階層に来るとは思ってもみなかったわ」
「美鈴さん、私も同感です。このパーティーは、絶対に何かが違います」
美鈴とカレンが本音ぶっちゃけトークを交わしている。通常は2年生にならないとこの階層まで下りてくる能力と度胸が身に着かないものだが、平然と階段を下りる桜の後ろ姿を見ているとこれもアリなのかと思えてしまうから不思議。
階段を降りた直後…
「明日香ちゃん、グレーウルフです」
「大丈夫ですよ~」
秩父で散々相手にしてだけあって、明日香ちゃんは型通りにグレーウルフを横薙ぎで壁に叩き付けて動きを止めてからトドメを刺す。
「明日香ちゃん、コボルトです」
「楽勝ですよ~」
コボルトはドーベルマンを擬人化したような魔物。犬型の頭で獰猛な牙を剥き出しにして襲い掛かってくる。しかも右手には短剣を握っているから、油断のならない敵といえる。
カンカンカンカン
明日香ちゃんはコボルト相手にカレンと打ち合う程度の余裕の表情で槍を合わせていく。
「ここですよ~」
トライデントが相手の腕を払うように動いてコボルトが持っている短剣を弾き飛ばすと、あとはもうトドメを刺すだけの簡単なお仕事。
「明日香ちゃんは、腕を上げたなぁ」
「へへへ、お兄さん、コボルトなんて桜ちゃんの動きに比べたら止まって見えますよ~」
秩父ではグレーリザードやクレーウルフを相手にして見事な槍捌きを見せていたが、こうして武器を持つ魔物を相手にして圧倒するとは、聡史の目から見ても明日香ちゃんの成長は明らか。それだけ日ごろの桜との猛訓練が実を結んでいる証明でもあろう。
「明日香ちゃん、ゴブリンジェネラルです」
「はい、お任せください」
これもまた、コボルト同様に簡単にねじ伏せている。明日香ちゃんはどこまで行ってしまうのだろう?
「明日香ちゃん、オークです」
「はい、お任せ… ちょっと待ってくださいぃぃぃ!」
さすがにオークの体格を見たら明日香ちゃんにもストップが掛かった模様。危ない危ない!
オークは聡史よりも上背があって横幅は2倍では利かない。体重はおよそ200キロ、大型力士同様の体格でパワーが並大抵ではない。目の前に現れた巨漢ともいうべきその体格を見て明日香ちゃんは涙目になっている。
「美鈴! 魔法だ」
「はい、聡史君。ファイアーボール」
美鈴の魔法はオークの足元を狙っている。床で爆発させて下半身にダメージを与えればオークの動きを止められると彼女自身が判断したよう。秩父ダンジョンでの経験が生かされいる。
ドカーン!
ブモォォォォ!
狙い通りにオークの足元で爆発したファイアーボールは片足を吹き飛ばす。オークはその巨体を支えられずに床に膝をついて行動不能に。
「明日香ちゃん」
「弱った相手には強気で攻撃ですよ~」
急に勢いを取り戻した明日香ちゃんがトライデントを構えて突進する。首元に槍を突き立てるとバチバチと電流が流れてさしものオークも絶命。
「やりましたぁぁぁ!ついにオークを倒しましたぁぁぁ!」
天井に向けてトライデントを突き上げる明日香ちゃん。その歓声が通路にこだまする。
「美鈴さん、ありがとうございました」
「私はちょっと手伝っただけよ。明日香ちゃんはスゴイわ」
「えへへ、そ、そうですかぁ?」
褒められると舞い上がってしまう明日香ちゃんはここでも健在。このお調子者め!
こうしてオークを仕留めて喜びに沸く明日香ちゃんたちを横目に桜はドロップアイテムに向かっている。
「はぁー、やっぱり肉でしたか… お母様に頼んで柔らかく煮込んだ角煮でも作ってもらいましょうか」
ちょうどその声を美鈴が聞きつける。
「桜ちゃん、本当にオークの肉なんて食べられるの?」
「おや? 美鈴ちゃんやカレンさんも土曜日の晩ご飯で美味しそうに食べていたじゃないですか。トンカツ美味しかったでしょう?」
「ま、まさか…」
「さ、桜ちゃん、あのトンカツの正体っていうのは???」
「この前隠し部屋で討伐したオークジェネラルに決まっているじゃないですか」
「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!」」
今度は美鈴とカレンの悲鳴に似た叫びが通路に響きわたるのは仕方なし。
◇◇◇◇◇
「えぇぇ! またオークですかぁぁ。 面倒だから、桜ちゃんがチャッチャと片付けてくださいよ~」
もう3体もオークを倒している明日香ちゃんは、いい加減うんざりした表情。最初の1体を倒したあの時の歓声などとっくに忘れ去っている。
「しょうがないですねぇ。手早く片付けますか」
オリハルコンの籠手を装着した桜の一撃が炸裂する。その拳がオークの胴体に食い込むと200キロを超える巨体が軽々と吹っ飛ぶ。軽く放っただけの一撃でオークの心臓が破裂してとうの昔に絶命している模様。床に吸収されるオークの姿を確認してから桜はドロップアイテムである肉を拾ってアイテムボックスに収納していく。
ここはダンジョンの4階層。美鈴の話では「曲稀にオークが出現する」ということであったが、どういうわけだかさっきからオークばかりが出現してくる。実は桜がオークの気配を察知してその場所にパーティーを誘導してるなんてことは他のメンバーは知らないまま。
その理由は……
(どうしましょうかねぇ? ゴブリンやコボルトなんて面白くないですし、かといって普通のオークでは味はブタ肉と大差ないし… そもそもオーク肉は生ものですから、管理事務所では買い取ってもらえないんですよねぇ。自分で食べるには限界があるし… ピコーン! いい考えが浮かびましたわ。肉を大量に引き取ってくれる場所があるじゃないですか)
何やら企む桜の表情がさながら悪代官のよう。越後屋と悪巧みをするシーンがこれほどピッタリと当て嵌まる存在はないかもしれない。
この日は結局、カレンが2段階、美鈴と明日香ちゃんが1段階レベルを上げて、夕方早目にダンジョンを引き上げていく。
本日の収穫は魔石数個で終わってしまい特に金額的に得るものは少ないので、明日香ちゃんは肩を落としてガッカリした様子。せっかく強敵のオークを3体も倒したにも拘らず、実入りには全く繋がっていないのが残念で仕方がない。
その理由はというと、明日香ちゃん的にいつかは必ずと心に秘めている学生食堂のデザート界の最高峰であるバケツプリンに中々手が届かないせいらしい。あの予約が必要なバケツいっぱになみなみと湛えられるプリンを一度でいいから独り占めして食べてみたいのが現在の明日香ちゃんの最大の願望。実は手がとどかないのはお財布の問題だけではない。せっかく少しずつ減っている体重を今ここで急激に増やすわけにはいかないという、もう一つの隠れた事情も絡んでいる。
ジュース代程度の本日の収入にガッカリしている明日香ちゃんを尻目に、桜はさっそく行動を開始。学院に戻って真っ先に明日香ちゃんを引き連れて顔を出したのは、他ならぬ学生食堂。
「オバ様、ブタ肉は必要ありませんか? 20キロほどすぐに用意できますが」
「アラ、そうなの? 厨房に聞いてみるわ」
1~3年生合計600人が毎日3食食事をする学生食堂は日々大量の食材を消費する。肉や野菜を納入する業者のトラックが毎日何台も貨物を運んでくる様子からもわかる通り、生徒たちの胃袋を満たすには相当量の食材が必要。オバちゃんに案内されて桜たちは食堂の裏側にある業者出入り口に移動する。
「実は、ダンジョンでこんな肉が手に入るんです。オークの肉なんですが、食感はまるっきりブタ肉なんです。毎日お世話になっている学生食堂なのでお安くしますわ」
桜の腹黒いセールストークが炸裂する。この娘は学生食堂に定期的にオーク肉を納入しようと企んでいる。何しろ元手はタダ同然なのでブタ肉の市場価格の3割引きを提示している。多くの冒険者もこのようにオーク肉の納入先のレストランを確保しており、近頃ではブタ肉よりも脂肪が少なくてヘルシーと一部健康食品好きな界隈で人気が出てきているという話も聞こえてくる。
結局この日はサンプルにオーク肉を5キロほど学生食堂側に寄贈して、安全検査や試食などを経てから1週間後に正式に納入の運びとなる。
実際に学生に提供される限定メニューは〔オークカツ〕となっており、殊に2、3年生の間では「オークに勝つ!」というゲン担ぎで後々非常に好評を博すこととなる。それよりも、こんなところでダジャレかぁぁ! むしろそっちを気にしてもらいたい!
「桜ちゃんに商売の才能があるとは思いませんでしたよ~」
「明日香ちゃん、世の中は生き馬の目を抜いてこそ儲かるのですわ。これでしばらくの間は安定的な収入が得られます」
明日香ちゃんは桜の目の付け所に感心した表情を向けている。彼女は知らないが、これぞ異世界で鍛え上げた逞しい生き方の片鱗であろう。
この日はこれで終わって、翌日……
この日パーティーは朝一で大山ダンジョンへとやってきている。本日は丸一日ダンジョンに入って、可能であれば5階層まで足を運ぼうという予定が組まれている。
いつものように桜を先頭にして、ひとまずは4階層まで降りていく。するとここでカレンが聡史に対して急におねだりを始める。
「聡史さん、この杖は魔法を発動する時にはとっても役立つんですが、魔物から身を守る時にはちょっと心許ない気がするんです」
「うん、確かにそうかもしれないなぁ」
聡史はカレンとは違う意味でこの話を聞いている。さすがに世界樹の杖で魔物を殴り付けるのは聡史自身も気が引けようというもの。ということで彼はアイテムボックスを探って一振りのメイスを取り出す。
「これは結構丈夫なメイスだから、身を守るにはいいんじゃないのかな」
メイスとは丈夫な金属の棒で、金属鎧をブッ叩いてへこますことを目的とした武具。現代で例えるなら、安価で取り回しが楽、素人でも振り回せばそこそこの威力がある鉄パイプに相当するかもしれない。
聡史がカレンに手渡したのは、軽量で女性でも扱いやすいミスリル製のメイス。軽量とはいっても当たり方によってはゴブリンの頭を叩き割ることも可能。
「ありがとうございます。それではこの杖は一旦仕舞っておいてもらえますか」
聡史に手渡されようとする世界樹の杖は「ちょ、ちょっと待ってぇぇ!」と杖のくせに顔面蒼白になっている。せっかくカレンの手に渡って活躍の場を得られたにも拘らず、またまたアイテムボックスに仕舞われる運命に何とか抗おうとしているよう。
だが神話級の杖であってもダンジョンでの実用性においてはミスリル製のメイスに軍配が上がるのは致し方ない。こうして世界樹の杖は次の出番がやってくるまで再びアイテムボックスに収納される。
「カレン、せっかくだからゴブリンを相手にしてみるか?」
「はい、聡史さん、ぜひお願いします」
カレンは明日香ちゃんとの訓練で〔棒術レベル1〕のスキルを身に着けている。先輩格である明日香ちゃんに技術的には敵わないが、ゴブリンを相手にするのであれば十分。
しかしながらここは4階層。登場してくるのは剣を手にしたゴブリンジェネラルが大半で、いきなりカレンが1対1で相手にするのは少々厳しい。だがここで明日香ちゃんが手を挙げる。
「カレンさん、私が剣を弾き飛ばしますから、そこから先はカレンさんが頑張ってくださいよ~」
「よろしくお願いします」
明日香ちゃんは桜の指導を受ける先輩格として堂々と名乗りを上げる。その表情は戦う冒険者の顔に成りつつある。桜もこの新しいコンビの活躍に期待する表情。
「それじゃあ先に明日香ちゃんが適当に相手をしたところで、カレンとバトンタッチをしてくれ」
「お兄さん、了解ですよ~」
もっぱらオークの居場所を探っていた桜だが、今度は標的をゴブリンに変えて索敵開始。どうやらすぐに気配を察知したらしい。
「明日香ちゃん、この先の横道にゴブリンの気配ですわ」
「行きますよ~」
明日香ちゃんが周囲を警戒しながら前進して、その直後にカレンと桜がついていく。初めて魔物との対戦を迎えたカレンはやや緊張した表情で手にするメイスを握り締めている。
曲がり角の先には、桜の気配察知通りにゴブリンジェネラルの姿が。接近する明日香ちゃんに向かって手にする剣を振り上げて牙を剥き出しにして威嚇を開始。
カンカンカンカン
ゴブリンの剣と明日香ちゃんのトライデントが交錯するが、攻撃力アップのスキルのおかげで明日香ちゃんが一方的に押しまくる展開。そして…
カラン
ゴブリンが手にする剣を明日香ちゃんが床に叩き落す。
「カレンさん、今ですよ~」
「は、はい!」
明日香ちゃんはゴブリンジェネラルから幾分距離をとると、代わってカレンがメイスを手にして迫っていく。ゴブリンジェネラルが床に落とした剣を拾おうとして身を屈めている絶妙なタイミングでカレンがメイスを振り被る。
「えいっ!」
バキッ!
ギギャァァ!
屈んでいる態勢で頭をメイスでブッ叩かれたゴブリンジェネラルは悲鳴を上げて床に崩れていく。トドメにもう1発カレンがメイスを振り下ろすと、頭がかち割られたゴブリンジェネラルは息絶える。相当量の血が流れてメイスにもゴブリンの緑色の血と体液が混ざった物がこびりついてかなりスプラッターな光景が展開中。
「何とか仕留めました。明日香ちゃん、ありがとうございます」
「カレンさん、グッドジョブですよ~。この調子で頑張ってください」
グッと親指を突き出してサムアップする明日香ちゃん。カレンとのコンビネーションもいい感じに決まっている。このところ毎日のように二人で打ち合っているので、お互いに攻勢に移るタイミングがわかっているよう。これもパーティーにとっては大きな進歩といえよう。
この日は、明日香ちゃんとカレンのコンビネーションを確認する点を重視して、二人はゴブリンとコボルトを専門に相手をしていく。オークが出現した際は桜が仕留めて相次いで肉をゲットするという流れで順調に進んでいく。
いい調子のまま4階層を攻略していくと、5階層に降りていく階段が現れる。もちろんパーティー一行は躊躇せずに階段を降りていく。
5階層に登場する魔物は基本的に4階層と変わらない。だがこの階層ではオーク以外は複数で登場するのが大きな違いかもしれない。そしてもうひとつ5階層の特徴としては、ここには階層ボスがいる。
「お兄様、せっかくですから階層ボスの顔でも見ていきますか?」
「何が出てくるんだ?」
「事務所からもらった案内マップによりますと、ゴブリンキングと数体の配下のゴブリンたちのようですわ」
「そうか、大した相手ではないな。経験値稼ぎにはちょうどいいかもしれない」
兄妹はあたかも世間話をするような気軽さで階層ボスについて話し合っているが、他のメンバーはそういうわけにはいかない。
「ちょ、ちょっと聡史君と桜ちゃん。階層ボスを相手にするっていうの?」
「さすがに階層ボスは厳しいんじゃないでしょうか」
美鈴とカレンが口を揃える。そして最後に明日香ちゃんが…
「桜ちゃん、階層ボスっていったい何ですか?」
ズデーン! と音を立てて四人がコケる。新喜劇も真っ青になる息がピタリと合ったコケ芸が炸裂。芸術点では満点の評価であろう。
それにしてもさすがは明日香ちゃん。ここまでダンジョンに関する知識が乏しいとは予想外にもほどがある。「何それ、美味しいの?」状態の無敵の明日香ちゃんがここにいる。
明日香ちゃんが完全に破壊したシリアスな流れを何とか取り戻そうとして桜が復活する。
「明日香ちゃんにいちいち説明するのは面倒なので、実際にボス部屋に行ってみましょう」
ということで、パーティーは適当に魔物を蹴散らしながら階層ボスが待ち受ける部屋の前へとやってくる。兄妹は全くの平常運転だが、美鈴とカレンは緊張の面持ちを隠しきれない。そして…
「ボスっていうからには、葉巻を咥えてシルクハットを被った強面の人でもいるんでしょうか?」
「明日香ちゃん、そんなコテコテのボケは必要ないですから」
緊張感の欠片もない明日香ちゃん。この娘は絶対に将来大物になる! この場で断言しておく! さすがは桜の親友を長年務めただけある!
知らないとは本当に恐ろしいが、ここまで無知でよくぞ魔法学院の生徒としてこれまでやってきたものだと、メンバーたちは逆に感心するしかない。
「あー、ゴホン、桜、最初だからお前から行ってみるか?」
「はい、お兄様、どうかお任せを。1秒あれば十分ですわ」
兄から指名された桜は余裕の表情。だがそこに待ったを掛ける人物が出現する。
「聡史君、最初の1発を私にやらせてもらえないかしら? 自分の力を試してみたいのよ」
「わかった。美鈴は俺の合図を待ってくれ。桜は美鈴が仕留め損なった場合に備えて用意だけしておくように」
「承知しましたわ」
つい今の今まで緊張した表情だったが、覚悟を決めた美鈴は気合が入った表情を浮かべる。そしてもうひとり、ここにも変に気合が入っている人物がいる。
「お兄さん、私も参加していいですか?」
「そうだなぁ… 魔物が動けなくなってトドメを刺せるようになったら俺の指示で動いてくれるか」
「わかりました。美鈴さん、最後のトドメは任せくださいよ~」
「明日香ちゃん、よろしくね」
いつになくヤル気を見せている明日香ちゃん。トライデントを握りしめて万全の態勢。頑張れ、明日香ちゃん!
こうして打ち合わせを終えると、桜が重々しい扉を開く。そこには威風堂々とした鎧に身を包むゴブリンキングと、その両翼にはゴブリンジェネラルに率いられた5体ずつのゴブリンソルジャーが獲物が入ってくるのを手ぐすね引いて待ち受けている。
無防備な様子で部屋に入ってきた聡史たちをその目にしたゴブリンキングがニヤリとした笑みを漏らす姿は通常の冒険者であれば相当な威圧感を感じるであろう。それだけの迫力を醸し出す魔物たちの顔ぶれがこの場に揃っている。
「美鈴、いつでもいいぞ」
「行きます! ファイアーボール」
美鈴は右手から発動した炎を右翼側へと放つ。そしてもう1発左手からも…
「ファイアーボール」
ゴォォォ! ドッパァァァァン!
普段に比べて2倍の魔力を込めたファイアーボールが次々に着弾して爆発。ゴブリンキングの両側にいる配下たちを吹き飛ばしていく。中央に立っているゴブリンキングにもその激しい爆発の余波が波及して相当なダメージを負っているよう。
剣を取り落として額からダラダラと血を流すゴブリンキングは、それでも闘志を失わずにパーティーを睨み付ける。だがさらに美鈴が追い打ちをかけていく。
「ファイアーボール」
ドッパーーン!
さらに倍プッシュで魔力特盛のファイアーボールがゴブリンキングを直撃する。
ウガァァァァァ!
ホールには大絶叫が響き渡る。そして炎は立ち消えると右腕右足が千切れ掛けて瀕死の状態のゴブリンキングが床に倒れこんでいる。何とか無事な左手で身を起そうと足掻くゴブリンキングだが、聡史の冷酷な指示が下る。
「明日香ちゃん、今だ!」
「行きますよ~!」
トライデントを構えた明日香ちゃんがゴブリンキングに接近する。歯を剥き出しにして威嚇するが、明日香ちゃんは全く動じない。真正面ではなくて腕が千切れ掛けて動かせない右側にポジションをとると、肩口にトライデントを突き刺していく。
バチバチバチ
トドメの電流が流れるとゴブリンキングの巨体は痙攣した直後に動かなくなって、最後にその姿が床に吸収されていく。
「やりましたぁぁぁ!」
トライデントを掲げて顔中に喜びの笑顔を浮かべる明日香ちゃん。1年生最弱の存在からよくぞここまで成長したものだと、その努力に敬意を表したい。
「美鈴、ファイアーボール3連発なんて技をよく自分のモノにしたな」
「まだこれだけしか出来ないから必死で発射速度を早めたのよ」
「よくやったぞ」
「ええ、聡史君、ありがとう」
こうして初の5階層ボス部屋の攻略を終えたパーティーはドロップアイテムを回収してから部屋を後にする。
時間の都合もあってこの日は6階層に降りるのは断念して、少しだけ5階層の他の箇所を巡ってから出口を目指して階段を昇っていくのだった。
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屋外にある第1訓練場には木と木がぶつかり合う乾いた音が響いている。現在ここでは明日香ちゃんとカレンによって手にする木槍と棒の打ち合いが行われている最中。二人とも真夏の日差しに汗びっしょりになりながら槍と棒を打ち付け合う。
「そろそろお昼ですから、今日はこの辺にしておきましょう!」
「やったあー! 訓練が終わりましたぁぁぁ!」
「午前中だけとはいえ、こうして体を動かしっぱなしというのは相当キツいですね」
カレンはタオルで汗をぬぐいながらやや疲れた表情で笑みを漏らす。実技実習の時間には救護所で待機しているケースが多かったので、フルにこうして体を動かす経験は聡史たちのパーティーに参加してから。とはいえそこそこレベルが上昇している分体力面でのキツさはずいぶん緩和されている。
それにしてもこうして実際に明日香ちゃんと打ち合ってみると、自身の体力がいかに不足しているかと気付かされているカレン。
同様にタオルで汗を拭いている明日香ちゃんはというと…
「はあ、それにしても疲れましたよ~。カレンさんとの打ち合いならまだマシですけど、桜ちゃんが相手だと本当に死にそうになります」
「明日香ちゃん、疲労回復にとっても効果がある飲み物がありますよ」
「ヒィィィ! 絶対に嫌ですぅぅ! カレンさん、どうかお願いします」
桜がポーションを取り出そうとする気配を察知した明日香ちゃんは鳥肌を立ててカレンにしがみついている。あんな苦くてトラウマを植え付けるような得体の知れない飲み物よりも、カレンの回復魔法のほうが断然いいに決まっている。苦くないだけでなくて心身ともに癒される心地よい感覚が体全体を包んでくれる。
「はいはい、わかりました」
桜の魔の手を逃れようと自分にしがみついている明日香ちゃんにカレンは笑いながら回復魔法を掛ける。怪我だけではなくて疲労までこうして回復してくれるから、明日香ちゃんとしては大変ありがたい話。もう二度とポーションは口にしないとオリハルコンよりも固く決心している。
昨日とは打って変わって魔法学院には生徒の姿が数えるほどしかない。ほとんどの生徒が入場再開となった大山ダンジョンに朝から向かっており、その姿がすっかり出払っている。
その分聡史たちは広い場所を生かして朝から訓練に励んでいる。土日に秩父に出掛けたので、こちらのダンジョンが再開したからといって早々にがっついてアタックする必要を感じていない。今日は午前中を訓練に充てて昼食を摂ってからゆっくりダンジョンへ向かう計画を立てており、昼食時間に食堂に集合となっている。三人が屋外の訓練場から食堂へと向かうと…
「おや? 美鈴ちゃんは顔が苦り切っていますが、どうしたんですか?」
「魔法の練習で半分以上魔力を消費したから聡史君から魔力回復の飲み物をもらったんだけど、これがまたとんでもない味で…」
「美鈴さん! 私の気持ちを分かってもらえましたか?」
カレンのおかげでポーションからグッバイした明日香ちゃんは、ちょっとだけ上から目線で美鈴に語り掛けている。美鈴が舌を出して苦さと戦っている姿がほんのちょっとだけ嬉しい明日香ちゃん。被害者は自分だけではないと溜飲が下がった心地のよう。
◇◇◇◇◇
こうして午後からパーティーは4日振りに大山ダンジョンへと入場していく。
「本当にゴブリンばっかりで、お金にならないダンジョンですよねぇ~」
秩父で味をしめた明日香ちゃんがぼやく声を聴きながら、一行は前回早々に切り上げざるを得なかった3階層に降りていく。
せっかく得た神聖魔法を封印されたカレンは世界樹の杖を握りながら歩いている。もしも機会があったらこの杖でゴブリンをブッ叩こうと秘かに考えているよう。アーティファクト級の神具を棒切れ代わりにしようとは恐れ多いにもほどがある。
こうして3階層で登場してくるゴブリンの上位種を倒していくが、明日香ちゃんが何かに気が付いたかのように口を開く。
「桜ちゃん、そういえばこのところ全然レベルが上がらなくなっていますよ~。一体どうなっているんでしょうか?」
「明日香ちゃんのレベルは、いくつになりましたか?」
「今はえーと、18ですね」
「おやおや、いつの間にかずいぶん上昇していたんですね。大体20近くまではレベルはグングン上昇しますが、そこから先になると必要経験値が爆上がりしますから、ゴブリン相手では中々上がらないんですよ」
「そうだったんですかぁぁ! 全然知らなかったですよ~」
明日香ちゃん、ダンジョンに関して本物の無知を露呈している。こういう重要な情報すら全く知らぬままにここまで来ているのがある意味スゴイ。もし桜と出会わなければ、おそらく落第は確実であっただろう。人間としては悪い子ではないのだが、冒険者としては色々と失格な点が多すぎる気がしてならない。
「聡史君、ということは、私たちはこのままゴブリンだけを相手にしていられないということかしら?」
「そうだなぁ… もう卒業でもいいかな」
「お兄様、そうと決まればこれから4階層に出向きましょう! 新たな種類の魔物と戦うのがいいと思います」
本当は単純に桜が早く下に降りたいだけに決まっている。戦闘狂の本能を満たすにはより強い魔物との対戦が必須らしい。
桜の意見はともかくとして、聡史は美鈴に念のために尋ねる。
「4階層はどんな魔物が出るんだ?」
「ゴブリンジェネラル、コボルト、グレーウルフ、それから極稀にオークね」
「ゴブリンの上位種に犬と狼と肉ですか…… はぁー、オークは上位種じゃないと大して美味しくないんですの」
桜は魔物のラインナップを聞いてガックリした様子。先日隠し部屋でゲットしたオークジェネラルの肉はすでに金曜日に自宅に持ち帰り、母親の手で極上のトンカツになって桜のお腹に収まっていた。美鈴とカレンもオークジェネラルの肉とは知らずにペロリと美味しくいただいたのは黙っておこう。
それにしても桜の魔物の呼び方は… 確かに言われてみれば、コボルト=犬、グレーウルフ=狼、オーク=肉… って、ちょっと待とうか! 肉ってなんだ? そこはせめてブタだろう! ブタをすっ飛ばして肉って… 完全に食材としか見ていないじゃないかぁぁ! はぁ、こっちがため息をつきたくなってくるが、まあ桜だから仕方がないと諦めよう。
なにはともあれ、こうして話がまとまったので、桜を先頭にしてパーティーは4階層へ降りていく。
「まさか1年生の身で4階層に来るとは思ってもみなかったわ」
「美鈴さん、私も同感です。このパーティーは、絶対に何かが違います」
美鈴とカレンが本音ぶっちゃけトークを交わしている。通常は2年生にならないとこの階層まで下りてくる能力と度胸が身に着かないものだが、平然と階段を下りる桜の後ろ姿を見ているとこれもアリなのかと思えてしまうから不思議。
階段を降りた直後…
「明日香ちゃん、グレーウルフです」
「大丈夫ですよ~」
秩父で散々相手にしてだけあって、明日香ちゃんは型通りにグレーウルフを横薙ぎで壁に叩き付けて動きを止めてからトドメを刺す。
「明日香ちゃん、コボルトです」
「楽勝ですよ~」
コボルトはドーベルマンを擬人化したような魔物。犬型の頭で獰猛な牙を剥き出しにして襲い掛かってくる。しかも右手には短剣を握っているから、油断のならない敵といえる。
カンカンカンカン
明日香ちゃんはコボルト相手にカレンと打ち合う程度の余裕の表情で槍を合わせていく。
「ここですよ~」
トライデントが相手の腕を払うように動いてコボルトが持っている短剣を弾き飛ばすと、あとはもうトドメを刺すだけの簡単なお仕事。
「明日香ちゃんは、腕を上げたなぁ」
「へへへ、お兄さん、コボルトなんて桜ちゃんの動きに比べたら止まって見えますよ~」
秩父ではグレーリザードやクレーウルフを相手にして見事な槍捌きを見せていたが、こうして武器を持つ魔物を相手にして圧倒するとは、聡史の目から見ても明日香ちゃんの成長は明らか。それだけ日ごろの桜との猛訓練が実を結んでいる証明でもあろう。
「明日香ちゃん、ゴブリンジェネラルです」
「はい、お任せください」
これもまた、コボルト同様に簡単にねじ伏せている。明日香ちゃんはどこまで行ってしまうのだろう?
「明日香ちゃん、オークです」
「はい、お任せ… ちょっと待ってくださいぃぃぃ!」
さすがにオークの体格を見たら明日香ちゃんにもストップが掛かった模様。危ない危ない!
オークは聡史よりも上背があって横幅は2倍では利かない。体重はおよそ200キロ、大型力士同様の体格でパワーが並大抵ではない。目の前に現れた巨漢ともいうべきその体格を見て明日香ちゃんは涙目になっている。
「美鈴! 魔法だ」
「はい、聡史君。ファイアーボール」
美鈴の魔法はオークの足元を狙っている。床で爆発させて下半身にダメージを与えればオークの動きを止められると彼女自身が判断したよう。秩父ダンジョンでの経験が生かされいる。
ドカーン!
ブモォォォォ!
狙い通りにオークの足元で爆発したファイアーボールは片足を吹き飛ばす。オークはその巨体を支えられずに床に膝をついて行動不能に。
「明日香ちゃん」
「弱った相手には強気で攻撃ですよ~」
急に勢いを取り戻した明日香ちゃんがトライデントを構えて突進する。首元に槍を突き立てるとバチバチと電流が流れてさしものオークも絶命。
「やりましたぁぁぁ!ついにオークを倒しましたぁぁぁ!」
天井に向けてトライデントを突き上げる明日香ちゃん。その歓声が通路にこだまする。
「美鈴さん、ありがとうございました」
「私はちょっと手伝っただけよ。明日香ちゃんはスゴイわ」
「えへへ、そ、そうですかぁ?」
褒められると舞い上がってしまう明日香ちゃんはここでも健在。このお調子者め!
こうしてオークを仕留めて喜びに沸く明日香ちゃんたちを横目に桜はドロップアイテムに向かっている。
「はぁー、やっぱり肉でしたか… お母様に頼んで柔らかく煮込んだ角煮でも作ってもらいましょうか」
ちょうどその声を美鈴が聞きつける。
「桜ちゃん、本当にオークの肉なんて食べられるの?」
「おや? 美鈴ちゃんやカレンさんも土曜日の晩ご飯で美味しそうに食べていたじゃないですか。トンカツ美味しかったでしょう?」
「ま、まさか…」
「さ、桜ちゃん、あのトンカツの正体っていうのは???」
「この前隠し部屋で討伐したオークジェネラルに決まっているじゃないですか」
「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!」」
今度は美鈴とカレンの悲鳴に似た叫びが通路に響きわたるのは仕方なし。
◇◇◇◇◇
「えぇぇ! またオークですかぁぁ。 面倒だから、桜ちゃんがチャッチャと片付けてくださいよ~」
もう3体もオークを倒している明日香ちゃんは、いい加減うんざりした表情。最初の1体を倒したあの時の歓声などとっくに忘れ去っている。
「しょうがないですねぇ。手早く片付けますか」
オリハルコンの籠手を装着した桜の一撃が炸裂する。その拳がオークの胴体に食い込むと200キロを超える巨体が軽々と吹っ飛ぶ。軽く放っただけの一撃でオークの心臓が破裂してとうの昔に絶命している模様。床に吸収されるオークの姿を確認してから桜はドロップアイテムである肉を拾ってアイテムボックスに収納していく。
ここはダンジョンの4階層。美鈴の話では「曲稀にオークが出現する」ということであったが、どういうわけだかさっきからオークばかりが出現してくる。実は桜がオークの気配を察知してその場所にパーティーを誘導してるなんてことは他のメンバーは知らないまま。
その理由は……
(どうしましょうかねぇ? ゴブリンやコボルトなんて面白くないですし、かといって普通のオークでは味はブタ肉と大差ないし… そもそもオーク肉は生ものですから、管理事務所では買い取ってもらえないんですよねぇ。自分で食べるには限界があるし… ピコーン! いい考えが浮かびましたわ。肉を大量に引き取ってくれる場所があるじゃないですか)
何やら企む桜の表情がさながら悪代官のよう。越後屋と悪巧みをするシーンがこれほどピッタリと当て嵌まる存在はないかもしれない。
この日は結局、カレンが2段階、美鈴と明日香ちゃんが1段階レベルを上げて、夕方早目にダンジョンを引き上げていく。
本日の収穫は魔石数個で終わってしまい特に金額的に得るものは少ないので、明日香ちゃんは肩を落としてガッカリした様子。せっかく強敵のオークを3体も倒したにも拘らず、実入りには全く繋がっていないのが残念で仕方がない。
その理由はというと、明日香ちゃん的にいつかは必ずと心に秘めている学生食堂のデザート界の最高峰であるバケツプリンに中々手が届かないせいらしい。あの予約が必要なバケツいっぱになみなみと湛えられるプリンを一度でいいから独り占めして食べてみたいのが現在の明日香ちゃんの最大の願望。実は手がとどかないのはお財布の問題だけではない。せっかく少しずつ減っている体重を今ここで急激に増やすわけにはいかないという、もう一つの隠れた事情も絡んでいる。
ジュース代程度の本日の収入にガッカリしている明日香ちゃんを尻目に、桜はさっそく行動を開始。学院に戻って真っ先に明日香ちゃんを引き連れて顔を出したのは、他ならぬ学生食堂。
「オバ様、ブタ肉は必要ありませんか? 20キロほどすぐに用意できますが」
「アラ、そうなの? 厨房に聞いてみるわ」
1~3年生合計600人が毎日3食食事をする学生食堂は日々大量の食材を消費する。肉や野菜を納入する業者のトラックが毎日何台も貨物を運んでくる様子からもわかる通り、生徒たちの胃袋を満たすには相当量の食材が必要。オバちゃんに案内されて桜たちは食堂の裏側にある業者出入り口に移動する。
「実は、ダンジョンでこんな肉が手に入るんです。オークの肉なんですが、食感はまるっきりブタ肉なんです。毎日お世話になっている学生食堂なのでお安くしますわ」
桜の腹黒いセールストークが炸裂する。この娘は学生食堂に定期的にオーク肉を納入しようと企んでいる。何しろ元手はタダ同然なのでブタ肉の市場価格の3割引きを提示している。多くの冒険者もこのようにオーク肉の納入先のレストランを確保しており、近頃ではブタ肉よりも脂肪が少なくてヘルシーと一部健康食品好きな界隈で人気が出てきているという話も聞こえてくる。
結局この日はサンプルにオーク肉を5キロほど学生食堂側に寄贈して、安全検査や試食などを経てから1週間後に正式に納入の運びとなる。
実際に学生に提供される限定メニューは〔オークカツ〕となっており、殊に2、3年生の間では「オークに勝つ!」というゲン担ぎで後々非常に好評を博すこととなる。それよりも、こんなところでダジャレかぁぁ! むしろそっちを気にしてもらいたい!
「桜ちゃんに商売の才能があるとは思いませんでしたよ~」
「明日香ちゃん、世の中は生き馬の目を抜いてこそ儲かるのですわ。これでしばらくの間は安定的な収入が得られます」
明日香ちゃんは桜の目の付け所に感心した表情を向けている。彼女は知らないが、これぞ異世界で鍛え上げた逞しい生き方の片鱗であろう。
この日はこれで終わって、翌日……
この日パーティーは朝一で大山ダンジョンへとやってきている。本日は丸一日ダンジョンに入って、可能であれば5階層まで足を運ぼうという予定が組まれている。
いつものように桜を先頭にして、ひとまずは4階層まで降りていく。するとここでカレンが聡史に対して急におねだりを始める。
「聡史さん、この杖は魔法を発動する時にはとっても役立つんですが、魔物から身を守る時にはちょっと心許ない気がするんです」
「うん、確かにそうかもしれないなぁ」
聡史はカレンとは違う意味でこの話を聞いている。さすがに世界樹の杖で魔物を殴り付けるのは聡史自身も気が引けようというもの。ということで彼はアイテムボックスを探って一振りのメイスを取り出す。
「これは結構丈夫なメイスだから、身を守るにはいいんじゃないのかな」
メイスとは丈夫な金属の棒で、金属鎧をブッ叩いてへこますことを目的とした武具。現代で例えるなら、安価で取り回しが楽、素人でも振り回せばそこそこの威力がある鉄パイプに相当するかもしれない。
聡史がカレンに手渡したのは、軽量で女性でも扱いやすいミスリル製のメイス。軽量とはいっても当たり方によってはゴブリンの頭を叩き割ることも可能。
「ありがとうございます。それではこの杖は一旦仕舞っておいてもらえますか」
聡史に手渡されようとする世界樹の杖は「ちょ、ちょっと待ってぇぇ!」と杖のくせに顔面蒼白になっている。せっかくカレンの手に渡って活躍の場を得られたにも拘らず、またまたアイテムボックスに仕舞われる運命に何とか抗おうとしているよう。
だが神話級の杖であってもダンジョンでの実用性においてはミスリル製のメイスに軍配が上がるのは致し方ない。こうして世界樹の杖は次の出番がやってくるまで再びアイテムボックスに収納される。
「カレン、せっかくだからゴブリンを相手にしてみるか?」
「はい、聡史さん、ぜひお願いします」
カレンは明日香ちゃんとの訓練で〔棒術レベル1〕のスキルを身に着けている。先輩格である明日香ちゃんに技術的には敵わないが、ゴブリンを相手にするのであれば十分。
しかしながらここは4階層。登場してくるのは剣を手にしたゴブリンジェネラルが大半で、いきなりカレンが1対1で相手にするのは少々厳しい。だがここで明日香ちゃんが手を挙げる。
「カレンさん、私が剣を弾き飛ばしますから、そこから先はカレンさんが頑張ってくださいよ~」
「よろしくお願いします」
明日香ちゃんは桜の指導を受ける先輩格として堂々と名乗りを上げる。その表情は戦う冒険者の顔に成りつつある。桜もこの新しいコンビの活躍に期待する表情。
「それじゃあ先に明日香ちゃんが適当に相手をしたところで、カレンとバトンタッチをしてくれ」
「お兄さん、了解ですよ~」
もっぱらオークの居場所を探っていた桜だが、今度は標的をゴブリンに変えて索敵開始。どうやらすぐに気配を察知したらしい。
「明日香ちゃん、この先の横道にゴブリンの気配ですわ」
「行きますよ~」
明日香ちゃんが周囲を警戒しながら前進して、その直後にカレンと桜がついていく。初めて魔物との対戦を迎えたカレンはやや緊張した表情で手にするメイスを握り締めている。
曲がり角の先には、桜の気配察知通りにゴブリンジェネラルの姿が。接近する明日香ちゃんに向かって手にする剣を振り上げて牙を剥き出しにして威嚇を開始。
カンカンカンカン
ゴブリンの剣と明日香ちゃんのトライデントが交錯するが、攻撃力アップのスキルのおかげで明日香ちゃんが一方的に押しまくる展開。そして…
カラン
ゴブリンが手にする剣を明日香ちゃんが床に叩き落す。
「カレンさん、今ですよ~」
「は、はい!」
明日香ちゃんはゴブリンジェネラルから幾分距離をとると、代わってカレンがメイスを手にして迫っていく。ゴブリンジェネラルが床に落とした剣を拾おうとして身を屈めている絶妙なタイミングでカレンがメイスを振り被る。
「えいっ!」
バキッ!
ギギャァァ!
屈んでいる態勢で頭をメイスでブッ叩かれたゴブリンジェネラルは悲鳴を上げて床に崩れていく。トドメにもう1発カレンがメイスを振り下ろすと、頭がかち割られたゴブリンジェネラルは息絶える。相当量の血が流れてメイスにもゴブリンの緑色の血と体液が混ざった物がこびりついてかなりスプラッターな光景が展開中。
「何とか仕留めました。明日香ちゃん、ありがとうございます」
「カレンさん、グッドジョブですよ~。この調子で頑張ってください」
グッと親指を突き出してサムアップする明日香ちゃん。カレンとのコンビネーションもいい感じに決まっている。このところ毎日のように二人で打ち合っているので、お互いに攻勢に移るタイミングがわかっているよう。これもパーティーにとっては大きな進歩といえよう。
この日は、明日香ちゃんとカレンのコンビネーションを確認する点を重視して、二人はゴブリンとコボルトを専門に相手をしていく。オークが出現した際は桜が仕留めて相次いで肉をゲットするという流れで順調に進んでいく。
いい調子のまま4階層を攻略していくと、5階層に降りていく階段が現れる。もちろんパーティー一行は躊躇せずに階段を降りていく。
5階層に登場する魔物は基本的に4階層と変わらない。だがこの階層ではオーク以外は複数で登場するのが大きな違いかもしれない。そしてもうひとつ5階層の特徴としては、ここには階層ボスがいる。
「お兄様、せっかくですから階層ボスの顔でも見ていきますか?」
「何が出てくるんだ?」
「事務所からもらった案内マップによりますと、ゴブリンキングと数体の配下のゴブリンたちのようですわ」
「そうか、大した相手ではないな。経験値稼ぎにはちょうどいいかもしれない」
兄妹はあたかも世間話をするような気軽さで階層ボスについて話し合っているが、他のメンバーはそういうわけにはいかない。
「ちょ、ちょっと聡史君と桜ちゃん。階層ボスを相手にするっていうの?」
「さすがに階層ボスは厳しいんじゃないでしょうか」
美鈴とカレンが口を揃える。そして最後に明日香ちゃんが…
「桜ちゃん、階層ボスっていったい何ですか?」
ズデーン! と音を立てて四人がコケる。新喜劇も真っ青になる息がピタリと合ったコケ芸が炸裂。芸術点では満点の評価であろう。
それにしてもさすがは明日香ちゃん。ここまでダンジョンに関する知識が乏しいとは予想外にもほどがある。「何それ、美味しいの?」状態の無敵の明日香ちゃんがここにいる。
明日香ちゃんが完全に破壊したシリアスな流れを何とか取り戻そうとして桜が復活する。
「明日香ちゃんにいちいち説明するのは面倒なので、実際にボス部屋に行ってみましょう」
ということで、パーティーは適当に魔物を蹴散らしながら階層ボスが待ち受ける部屋の前へとやってくる。兄妹は全くの平常運転だが、美鈴とカレンは緊張の面持ちを隠しきれない。そして…
「ボスっていうからには、葉巻を咥えてシルクハットを被った強面の人でもいるんでしょうか?」
「明日香ちゃん、そんなコテコテのボケは必要ないですから」
緊張感の欠片もない明日香ちゃん。この娘は絶対に将来大物になる! この場で断言しておく! さすがは桜の親友を長年務めただけある!
知らないとは本当に恐ろしいが、ここまで無知でよくぞ魔法学院の生徒としてこれまでやってきたものだと、メンバーたちは逆に感心するしかない。
「あー、ゴホン、桜、最初だからお前から行ってみるか?」
「はい、お兄様、どうかお任せを。1秒あれば十分ですわ」
兄から指名された桜は余裕の表情。だがそこに待ったを掛ける人物が出現する。
「聡史君、最初の1発を私にやらせてもらえないかしら? 自分の力を試してみたいのよ」
「わかった。美鈴は俺の合図を待ってくれ。桜は美鈴が仕留め損なった場合に備えて用意だけしておくように」
「承知しましたわ」
つい今の今まで緊張した表情だったが、覚悟を決めた美鈴は気合が入った表情を浮かべる。そしてもうひとり、ここにも変に気合が入っている人物がいる。
「お兄さん、私も参加していいですか?」
「そうだなぁ… 魔物が動けなくなってトドメを刺せるようになったら俺の指示で動いてくれるか」
「わかりました。美鈴さん、最後のトドメは任せくださいよ~」
「明日香ちゃん、よろしくね」
いつになくヤル気を見せている明日香ちゃん。トライデントを握りしめて万全の態勢。頑張れ、明日香ちゃん!
こうして打ち合わせを終えると、桜が重々しい扉を開く。そこには威風堂々とした鎧に身を包むゴブリンキングと、その両翼にはゴブリンジェネラルに率いられた5体ずつのゴブリンソルジャーが獲物が入ってくるのを手ぐすね引いて待ち受けている。
無防備な様子で部屋に入ってきた聡史たちをその目にしたゴブリンキングがニヤリとした笑みを漏らす姿は通常の冒険者であれば相当な威圧感を感じるであろう。それだけの迫力を醸し出す魔物たちの顔ぶれがこの場に揃っている。
「美鈴、いつでもいいぞ」
「行きます! ファイアーボール」
美鈴は右手から発動した炎を右翼側へと放つ。そしてもう1発左手からも…
「ファイアーボール」
ゴォォォ! ドッパァァァァン!
普段に比べて2倍の魔力を込めたファイアーボールが次々に着弾して爆発。ゴブリンキングの両側にいる配下たちを吹き飛ばしていく。中央に立っているゴブリンキングにもその激しい爆発の余波が波及して相当なダメージを負っているよう。
剣を取り落として額からダラダラと血を流すゴブリンキングは、それでも闘志を失わずにパーティーを睨み付ける。だがさらに美鈴が追い打ちをかけていく。
「ファイアーボール」
ドッパーーン!
さらに倍プッシュで魔力特盛のファイアーボールがゴブリンキングを直撃する。
ウガァァァァァ!
ホールには大絶叫が響き渡る。そして炎は立ち消えると右腕右足が千切れ掛けて瀕死の状態のゴブリンキングが床に倒れこんでいる。何とか無事な左手で身を起そうと足掻くゴブリンキングだが、聡史の冷酷な指示が下る。
「明日香ちゃん、今だ!」
「行きますよ~!」
トライデントを構えた明日香ちゃんがゴブリンキングに接近する。歯を剥き出しにして威嚇するが、明日香ちゃんは全く動じない。真正面ではなくて腕が千切れ掛けて動かせない右側にポジションをとると、肩口にトライデントを突き刺していく。
バチバチバチ
トドメの電流が流れるとゴブリンキングの巨体は痙攣した直後に動かなくなって、最後にその姿が床に吸収されていく。
「やりましたぁぁぁ!」
トライデントを掲げて顔中に喜びの笑顔を浮かべる明日香ちゃん。1年生最弱の存在からよくぞここまで成長したものだと、その努力に敬意を表したい。
「美鈴、ファイアーボール3連発なんて技をよく自分のモノにしたな」
「まだこれだけしか出来ないから必死で発射速度を早めたのよ」
「よくやったぞ」
「ええ、聡史君、ありがとう」
こうして初の5階層ボス部屋の攻略を終えたパーティーはドロップアイテムを回収してから部屋を後にする。
時間の都合もあってこの日は6階層に降りるのは断念して、少しだけ5階層の他の箇所を巡ってから出口を目指して階段を昇っていくのだった。
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