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第21話 武器選び
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翌日は学科の授業だったため特筆する出来事は起こらず迎えた放課後、第3訓練場では暑さにも負けずにEクラスの生徒が自主練を行っている。
「聡史に稽古をつけてもらうようになってからなんだか腕が上がったような気がするんだよ」
「それはいいことだな。俺ももっとスピードを上げていいか?」
「いや、待て待て待て! そ、そ、そんな急に鋭い攻撃をしてくるなぁぁぁ! 痛たたたたたぁぁぁ!」
剣を合わせる頼朝の肩口を袈裟斬りに聡史の木刀が完ぺきな一本を決める。プロテクター越しでもその衝撃は相当なもので頼朝は顔をしかめて蹲る。聡史が稽古のレベルを上げても大丈夫と判断する程度に頼朝をはじめとしたEクラスの生徒たちは剣の腕を上げているのはどうやら事実らしい。
「ふひぃぃ… 効いたぁぁ~」
現在頼朝は芝生の上に大の字になって痛みと戦っている真っ最中。青痣は確定だが、骨には異状ない程度に聡史は加減している。さもなかったら今頃病院に直行する羽目に陥っていただろう。
そこに…
「お兄様、どうもごちそうさまでした。とっても美味しい3時のオヤツでしたわ」
「桜ちゃんは食べすぎです。お兄さんのお財布があっという間にカラになっちゃいますよ~」
ホームルームを終えると脱兎のごとく食堂に急行した桜と明日香ちゃんのコンビが初めて自主練に顔を出している。その話し振りからすると、聡史の財布から相当な金額が翼を生やして空へ飛び立ったよう。血も涙もない仕打ちを平然と仕出かす妹に聡史は悄然として佇んでいる。
すると桜が何かに気づく。
「おや? 義経はそんな日向でのんびりと昼寝ですか?」
「桜、惜しいぞ、それは弟のほうだ」
「間違いましたか? ああ、正解は弁慶ですね!」
「それは家来だろうがぁぁぁ! いい加減覚えろ、こいつは頼朝だぁ~!」
「まあ、興味ありませんから、どうでもいいでしょう」
この時、頼朝の頬を一筋の涙が伝ったのは誰にも内緒。唯一の目撃者である聡史も武士の情けで見ないフリをしている。
「ところで桜たちは何の用だ?」
「お兄様、そうでしたわ。これから明日香ちゃんの精神鍛錬と武器を決めようと思いまして。あちらの隅をお借りしますね」
「ああ、わかった。あまり人騒がせな真似をするんじゃないぞ」
聡史は桜に一声掛けると、ようやく涙を拭って立ち上がった頼朝を相手に立ち合いを再開する。頼朝よ、桜のオモチャにされながらもどうか強い男を目指して頑張ってもらいたい。
そんな兄たちは放置して、桜と明日香ちゃんは訓練場の片隅にやってきている。
「桜ちゃん、武器を決めるなんて、なんだかワクワクしてきますよ~」
「お言葉ですが、明日香ちゃん。今まで何の武器も持とうとしなかったあなたのその態度こそが大問題だと自覚してもらいたいですわ」
「実は、桜ちゃん。私には秘かに心に決めている武器があるんですよ~。桜ちゃんは色々と武器を用意してくれると言ってくれましたから、私が希望する一品があるかどうかとっても楽しみなんです」
明日香ちゃんはなんだかいつもにも増して良い表情。3時のオヤツを食べてさらに武器まで決まるとなったら、それは上機嫌になるのも無理はなかろうというもの。この笑顔がいつまで続くのかは保証の限りは全くないのだが…
「明日香ちゃん、一応聞いておきますけど、その心に決めている武器とは?」
「はい、マジカルステッキですよ~」
「はっ? もう一度聞いてよろしいでしょうか?」
「もう、桜ちゃんったら。いいですか、よく聞いてくださいね。私の第1希望はマジカルステッキなんですよ~」
「すぐにおもちゃ屋さんに行ってこい! 本当に… 私が誠心誠意突っ込むのは明日香ちゃんだけですわ」
「ええぇぇ、桜ちゃんは用意してくれなかったんですか? 親友だから私の気持ちを分かってくれていると思ったのに…」
「そもそも明日香ちゃんには魔法系のスキルがないですわ。当面は物理で頑張るしかないんですの」
「なんだか急にテンションが下がりました。もうヤル気がないですよ~」
こんな明日香ちゃんをよくも桜は気長に面倒を見ているものだ。だが桜も伊達に長い付き合いではない。気を取り直して明日香ちゃんを正面から見る。
「まあ、いいでしょう。一旦武器の件は横に置いて、まずは精神鍛錬から開始しましょう」
「桜ちゃん、何をするんですか?」
「そうですねぇ… 明日香ちゃんは芝生の上に座ってください。危険なので(ボソッ)」
「わかりました」
何も知らずに明日香ちゃんは芝生の上に座る。これからどんな目に遭うかなど想像もしていない表情で無邪気な目で桜を見ている。
「それでは参りますよわ。ハッ!」
「ヒィィィィィ!」
桜が明日香ちゃんに向かって放ったのは純度100パーセント混じりっけなしの殺気。レベル600オーバーの生の殺気をモロに体に浴びた明日香ちゃんは白目を剥いて芝生の上に倒れている。突っ立ったままでは頭を打ち付ける可能性を考えて、桜は明日香ちゃんを座らせていたよう。そして気絶している明日香ちゃんの耳元で桜は猫撫で声でそっと囁く。この娘、やはり人の皮を被った悪魔に違いない。
「明日香ちゃん、いいんでしょうか? そのまま寝ているとまた苦い薬を流し込んじゃいますよ~」
「ハッ、何が起きたんでしょうか? とっても恐ろしい何かが襲ってきたような…」
明日香ちゃんは「苦い薬」に反応して条件反射で飛び起きている。あの味がよほどのトラウマになっているのだろう。
「それでは、もう一度行きますよ~。ハッ!」
「ヒィィィィィ!」
このような人権を丸っと無視した過酷な訓練を繰り返すこと10回、桜は明日香ちゃんのステータスを確認する。
「やはり私の予想通りでした。明日香ちゃん! ほらここに〔精神耐性レベル1〕のスキルが加わっていますわ」
「予想通りじゃないですよ~。目の前に大きな川が滔々と流れていたんです」
「ああ、それは間違いなく三途の川ですわ。明日香ちゃんは、実に逞しいです。よく生きて戻ってきました」
「死にますぅぅぅ! 今度こそ絶対に死にますぅぅぅ! もう終わりにしましょうよ~」
明日香ちゃんの口から悲痛な叫びが零れ落ちるが、そんな儚い願いを叶える桜ではない。断じてない。
「それじゃあ、このスキルがレベル2になるまで頑張りましょう」
「ヒィィィィィ!」
桜の地獄のような精神鍛錬は続いていくのだった。
ようやく桜の鍛錬が終了すると、今度は明日香ちゃんの武器を決める番がやってくる。桜は芝生の上にアイテムボックスから取り出した目ぼしい武器を次々と並べていく。
その種類は、ナイフ、短剣、ロングソード、スタッフ、ロッド、斧、槍、とまあ、このように各種に渡る。
気絶を繰り返して顔面の表情が完全に抜け落ちていた明日香ちゃんもこの光景に何やら興味を示している。立ち直りが早いのがこの女子の最大の特徴といえる。
「ふむふむ、マジカルステッキがないのは残念ですが、桜ちゃんは色んな武器を持っているんですね~」
「これは趣味で集めたようなものですから、明日香ちゃんが気に入ったものを手に取っていいですわ。ひとつだけ注意してもらいたいのは、剣や槍は全部本物ですから取り回しには注意してください」
「ええ、本物なんですか。全部斬れたりするんですか?」
「ええ、斬れます」
さすがに明日香ちゃんの表情が引き締まる。聡史がゴブリンやオークジェネラルの首チョンパしたシーンが蘇って迂闊に並んでいる武器に触れようとはしない。しげしげと並んでいる武器を見て回るだけの明日香ちゃんにシビレを切らした桜が声を掛ける。
「何か気になる物はありましたか?」
「そうですねぇ… この槍は先がフォークみたいで可愛いですよ~」
明日香ちゃんの言葉にその槍は青く光り出す。あたかも手に取ってもらいたいとアピールするかのごとくに。
「ほほう、明日香ちゃんはその槍を選びましたか」
桜はひとりで訳知り顔で頷いている。実はこの槍は桜が異世界のとあるダンジョンのラスボスを倒した折に宝箱から出てきた品で、その銘は〔トライデント〕と打たれている。
ギリシャ神話で知られているポセイドンが手にする三叉槍、異世界においてもそのポセイドンに相当する神が手にしたという伝説が残されている神話級の槍がその正体。仮にどこかの王国に献上されたならば宝物庫の最奥に厳重に保管されるような品を明日香ちゃんは「フォークみたいで可愛い!」と言ってのけちゃっている。この娘はなんてことを口にするんだろう。罰当たりにもほどがある!
さて話は逸れるが、このような神話にまつわる武器には魂が宿ると言われている。ただの物でしか有り得ない槍が何らかの意思を持ち始めるというのは結構よくある話。
実はこのトライデント、ダンジョンの最下層で数千年の長きに渡って人の手に触れられずに息をひそめて過ごしていた。
一度は桜の手に握られてようやく活躍の機会が訪れたかと期待したのも束の間、再びアイテムボックスに収納されてしまい放置が続いた。
槍は飢えていた。人の手に渡って活躍の場を得ることをその意志として願っていた。仕舞いにはもうこの際だからイヌでもネコでもいいから誰か使って… という具合に、絶賛槍自身のバーゲンセールを展開中な模様。
そして、久しぶりにトライデントを手に取ったのは、よりにもよって明日香ちゃん。なんという運命の巡り合わせ! 普段ならば絶対に明日香ちゃん如きを主人とは認めない神槍が「お願いだから私のご主人様になって」状態。
「桜ちゃん、手に持ってみると、ずいぶん軽い槍ですよ~」
「そうでしたっけ? かなりズッシリしていたような気がしますが…」
トライデントにとっては二度とないかもしれない就活の機会。この機を絶対に逃すものかと必死の様相。槍自らが重力を操って明日香ちゃんが手にした感触を軽くしている。これだけ必死な神槍は見ていて結構気の毒だったりする。
「それから、先っぽがバチバチ火花を散らしているみたいですよ~」
「ああ、その槍は雷雲を引き起こして嵐を呼び起こすと言われていますから」
「そうなんですか。ちょっと試してみましょうか。えいっ!」
明日香ちゃんは、ふざけて東の空に向かって槍を突き上げる。「すわ出番が来たか」とトライデントは俄然張り切ってしまう。槍の内部から溜めに溜め込んだ力を東の空へ思いっきり放出開始。
「桜ちゃん、なんだかあっちの空が急に暗くなりましたよ~。まあ、偶然でしょうけど」
「あんまり空に向けないほうがいいですわ」
何事にも動じない桜の額から、あろうことか一筋の汗が流れている。次第に雷雲は発達して真っ黒に染め上げた東の空に雷鳴が轟く。
その間にもいよいよトライデントにとって運命のジャッジが下されようとしている。
「明日香ちゃん、その槍でいいですか?」
「そうですねぇ… 軽いし、なんだか私に使ってくれって言っているような気もしますからこの槍を武器にしましょうか」
キターーーーーー! そんな声がどこからか聞こえたような気がするが、明日香ちゃんは知らんぷりのまま。「もう、このご主人様はツンデレなんだから」槍が小声で呟くような気がしなくもない。
兎にも角にも、こうして明日香ちゃんの武器が決定。本人は知らないが、本物の神話級の槍で本当に大丈夫なのだろうか。果たしてこの先明日香ちゃんとトライデントはどのような運命を辿るのかは誰にも知る由はない。
そして本日の自主練を終えた明日香ちゃんは自室に戻りテレビのスイッチを入れる。ちょうどニュースの時間で、アナウンサーが原稿を読み上げる。
「本日の午後4時頃に、神奈川県北部と多摩南西部に記録的なゲリラ豪雨が発生しました」
「ふーん、そうなんだ」
明日香ちゃんは、何事もなかったように着替えを始めるのだった。
◇◇◇◇◇
この日の夜、兄妹は豪華な学生寮で二人っきりの静かなひと時を過ごしている。
ソファーに腰掛けて寝る前の時間を冷たい麦茶を片手に、日本に戻ってきてからの慌ただしい日々を振り返っているよう。聡史はジャージにTシャツのラフな姿、桜は子熊の柄が細かくプリントされたパジャマ姿で、兄妹二人だけで会話を交わしている。
「お兄様、こうして二人っきりだととても静かですわ」
桜は昼間の顔とは打って変わって穏やかな微笑みを湛えている。こうしていると、まるで別人のようなおしとやかな美少女に見えてくるから不思議なもの。
「そうだなぁ。なんだか静かすぎて物足りないくらいだ。学院に入学してみたら結構忙しかったからかな? それにしても、美鈴と明日香ちゃんに出会えて本当に良かった。運命の女神様の粋な計らいかもしれないぞ」
「お二人と一緒にいると、とても楽しいですよね」
桜の瞳には、めったに見せない優しげな光が浮かんでいる。まったく環境が違う学院に編入して不慣れな生活が始まった。いかな聡史や桜にとっても、殊に人間関係において一抹の不安を感じて当然といえるような周囲の変化があった。にも拘らず、たまたま偶然そこに気を許せる知り合いがいたというのは何よりも心強いはず。
「楽しいか。それは良かったな」
「お兄様、ずいぶん冷静な物の言い方ですね。楽しくないのですか?」
「いや、もちろん楽しいぞ」
「クールなフリなどお兄様には似合いませんわ。もっと素直に喜べばいいのに」
桜は聡史の痛いところを突く。本当は桜以上に喜んでいる自分の内面を努めて隠そうとしている聡史の態度は桜からすると挙動不審の一歩手前に映っている。双子ならではの互いの心情を理解する心の動きが働いているのかもしれない。一卵性双生児ではないが、この二人にもある程度の以心伝心が存在している。
「それよりも、桜はクラスには慣れたか?」
自分の話には触れたくない聡史は慌てて話題を逸らす。妹に自らの内面を見透かされているような気もしてくるが、照れと男のつまらない意地で可能な限り心の内を悟られないようにポーカーフェースを保っている。
もちろん桜にはそんな聡史のミエミエの薄っぺらい心情などすっかりお見通しなので、いまさら何を隠しているのかと突っ込まれるのがオチであろう。だが桜は兄の顔を立ててその件にはまだ触れないように言葉を選ぶ。
「女子の皆さんとは、何人かお話しできる方がいらっしゃいますわ。男子で名前を憶えているのは信長くらいでしょうか」
「頼朝だからな。桜が名前を間違えるせいで、あいつは涙目になっていたぞ」
「今度はしっかり覚えましたから、二度と間違えませんの」
桜は両コブシをギュッと握って力強く宣言する。ようやく頼朝も浮かばれる可能性が出てきたが、桜のことなのでまだまだ予断は許さない。
「それよりも、お兄様こそクラスには慣れましたか?」
「うーん、そうだな~… 男子とはよくしゃべるぞ。特に自主練仲間とはすっかり打ち解けているな」
「女子とはいかがなんですか?」
「明日香ちゃん以外はほとんどしゃべっていない」
「はあぁぁ… 相変わらずダメなお兄様です」
桜の指摘に聡史はグウの音も出ない。幼馴染の美鈴と顔見知りの明日香ちゃんがいてくれて一番助かっているのは他ならぬ聡史なのかもしれない。
「ところで桜。これから先も、明日香ちゃんを鍛えていくのか?」
「ええ、明日香ちゃんが音を上げるまでは頑張ってもらおうと思っておりますわ」
「一緒にダンジョンに入るためにか?」
「もちろんですわ。だって明日香ちゃんと一緒だと、とっても楽しいじゃないですか」
この夜一番のいい顔で桜が答える。口ではなんやかんや言ってはいるものの、桜は本当に明日香ちゃんが大好きで心から信頼している。もちろんこんなことを真顔で本人に伝えると調子に乗った明日香ちゃんがどこまで飛んで行ってしまうかわからないので、敢えて口に出すことはしないいままだろう。
「お兄様、お聞きしますが、ダンジョンに入る仲間として最も大切な条件は何ですか?」
「うーん… やっぱり信頼できる人間かどうかだな。自分の背中を預けるわけだし」
「その通りですわ。だからこそ私には明日香ちゃんが必要なんですの。見た目は頼りないんですが、ああ見えて明日香ちゃんはなかなかしぶとい子なんです。きっと私たちに最後までついてきてくれると信じています」
桜は、普段はあまり表に出さない内心の思いのたけをこうして聡史と二人っきりとなるとストレートにぶつけてくる。一番信頼している兄だからこそ素直に何もかも打ち明けている。
「そうか… 美鈴も俺たちについてきてくれるかなぁ~」
「美鈴ちゃんこそ、お兄様が信じないでどうするんですか。本当に何もわかっていないんですね。ほとほと呆れました」
桜に思いっきりダメ出しされて、聡史はズズーンと効果音が発生するレベルでへこんでいる。その額には3本の青い線が入っているかのよう。
桜としては兄に「俺についてこい!」といった具合でキリリとした態度を美鈴に示してもらいたいのに、肝心の聡史がこの体たらくでは発破を掛けたくなるのも無理はない。颯爽と女性をリードする凛々しい兄の姿を見たいのは、妹の心情としてはかなり妥当といえる。
「お兄様、私の勝手な思い込みで明日香ちゃんを巻き込んでいるのは重々承知です。でも、明日香ちゃんなら必ず応えてくれると信じています。それこそが本当の友達であり仲間なんです。だからこそお兄様も、もっと美鈴ちゃんを信じてください」
「今日はどうやら桜に一本取られたみたいだ。俺ももっと美鈴や明日香ちゃんを信じてもいいんだな」
「当たり前ですわ。お兄様は異世界で一緒に旅をした皆さんのことをもうお忘れですか?」
「いや、忘れてはいないぞ。本当にみんなには世話になったし勇気づけられた」
「美鈴ちゃんや明日香ちゃんも一緒ですの。私たちの大切な仲間です」
「うん、桜が言いたいことはわかった。俺ももっと周囲の人間を信じよう」
桜は一見傍若無人な性格のように見える。もちろんそのような言動がままあるのを否定できないが、それは彼女の一面に過ぎない。その裏側では本当に仲間を大切にするし、自分の命を懸けても仲間を守ろうとする。
そんな桜は美鈴と明日香ちゃんをすでにパーティーの仲間として見做しているよう。対して聡史はどうかというと、まだ守るべき対象として二人を見ている甘っちょろい事実に気が付いた模様。
二人っきりになるとこのような感じで聡史が桜にやり込められる場面がこの兄妹の間ではしばしばある。ひょっとするとこの兄よりも妹のほうが、魂の奥底の本質的な部分でしっかり者なのかもしれない。
「さて、ずいぶん遅くまで話し込んでしまいました。お兄様、そろそろ寝ましょう」
「そうだな、明日は実技実習の日だし、しっかり睡眠をとっておこう。明日も午後はダンジョンへ行くんだろう?」
「もちろんですわ。美鈴ちゃんと明日香ちゃんはお兄様にお任せいたしますので、よろしくお願いしますね」
「ああ、わかったぞ。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさいませ」
こうして兄妹は自分の寝室に入って、この夜は過ぎていく。
◇◇◇◇◇
翌日の午前中、美鈴は聡史とともに新たに獲得した魔法属性の練習を行う。だが火属性魔法とは違って無属性魔法や闇属性魔法は術式の定義自体が大変難しく、美鈴の術式解析のスキルをもってしてもそうそう簡単にはいかないようで今後とも難航が予想されている。
一方の明日香ちゃんは桜の指導の下で木槍を手にしての練習を積んでいる真っ最中。桜は普段拳で戦い武器を持つケースはほとんどないのだが、明日香ちゃんを指導する程度にはあらゆる武器の扱いに精通している。おかげで明日香ちゃんは〔槍術スキルレベル1〕を手にしている。だがその分訓練は厳しいもので、2回ほどポーションのお世話になって明日香ちゃんが抱えるトラウマがさらに悪化する副作用があった。
午後になって、四人は本日も大山ダンジョンへと向かう。
美鈴と明日香ちゃんは今日は学院支給のヘルメットとプロテクターを身に着けている。聡史と桜はアイテムボックスに必要物品が全て入っているので、相変わらずの手ぶらでダンジョン管理事務所へ入っていく。
「今日は2階層で、美鈴と明日香ちゃんに実戦を経験してもらうぞ。それから桜は一人で別行動になるから、実質的に3人で行動する件を承知してくれ」
「「はい!」」
実は、桜は一人で下層に向かってある程度値の張る魔物を仕留めてくる予定なとなっている。これは主に桜の食事やオヤツに関する浪費が原因となっており、このままでは兄妹揃って財布が非常に厳しくなる深刻な事情が絡んでいる。
この困難な経済事情解消のために桜はひとりで一攫千金狙いに出る。もっともレベル600オーバーの桜にとっては至極お手軽なミッションといえるであろう。
そのまま四人揃って2階層まで降りると、ここから先は桜とは別行動となる分かれ道に到着する。
「それでは、明日香ちゃんにはこの槍を渡しておきますね。どうか頑張ってください」
「桜ちゃん、任せてください。ゴブリンなんて一撃で倒しちゃいますよ~」
気軽に槍を手にする明日香ちゃんを見て聡史は一瞬我が目を疑う。聡史自身初めて目にする槍だが、どう見てもそれはアーティファクトレベルの武具にしか見えない。
「桜、念のために聞いておくが、この槍はお前が明日香ちゃんに渡したのか?」
「お兄様、なかなかお目が高いですわ。明日香ちゃんも手に馴染んでいい感じに扱えるようになりました」
「そ、そうなのか。いい槍だから明日香ちゃんも良かったな」
「はい、お兄さん。この槍でグングンレベルアップですよ~」
あまりに怖いので、聡史はこれ以上追及するのを断念する。まさかこの槍が伝説の武器〔トライデント〕であるとは彼自身もまだ知らない。本当に恐ろしい予感がして聞けなかった。
「それでは皆さん、行ってまいります。ご武運をお祈りしておりますわ」
「桜ちゃんも気を付けてくださいよ~」
「はい、わかりました!」
こうして桜は下層へ降りていく階段がある方向へと向かう。さて、ここからが美鈴と明日香ちゃんの出番がスタートとなる。
「それじゃあ、こっちの通路を進んでいこう。遠距離の敵は美鈴の魔法で20メートル以内に接近を許したら明日香ちゃんが槍で対処するんだ」
「「はい、わかりました」」
今日は本当に自分の力でゴブリンを倒すと決めてきただけに、二人とも日頃に増して引き締まった表情となっている。聡史の目から見ても、彼女たちの様子は中々頼もしいものとして映っている。
今日は桜がいないため、聡史がパーティーの先頭を務める。桜には及ばないまでも聡史ももちろん気配察知のスキル持ちであり、そのスキル自体ゴブリンの気配を掴むには十分な性能を秘めている。そして通路を歩くとすぐに聡史は何らかの気配を掴んでいる。
「この先に何かの気配があるな。美鈴は魔法の発動準備に取り掛かってくれ」
「聡史君、オーケーよ」
聡史の指示で美鈴がスタンバイしているのは、もちろん最も自信があるファイアーボール。今回はダンジョンの内部という環境を考慮して、演習場でぶっ放す時よりも注入する魔力を半分に減らしている。だがそれでもゴブリンを相手にするには十分以上の威力であろう。
ギギ、ギギャ!
枝道から出てきたのは予想通り単体のゴブリン。すでに美鈴は視線で照準をつけている。
「ファイアーボール」
彼女の右手からは聡史直伝のオレンジ色の炎の塊が飛び出していく。避けようがない速度で宙を飛んだファイアーボールは狙いを逸らさずにゴブリンに命中。
ドーン
威力抑えめの爆発ではあるが、それでもゴブリンの体がバラバラに吹き飛ぶには充分。だが美鈴は油断せずに次の魔法の準備に入っている。先日のオークを仕留めそこなった経験が生きているよう。
「美鈴、もう大丈夫だ。魔法を解除してくれ」
「ええ、1発で倒せてよかったわ」
「美鈴さんの魔法は凄いですよ~。私もいずれは覚えたいです」
「明日香ちゃんにも必ずできるようになるわよ。それまでは地道に訓練を続けていきましょう」
「はい、そうします! 目指せ、魔法少女ですよ~」
明日香ちゃんは、お得意のキラキラな瞳で美鈴に今後の努力を誓っている。桜が言う通り今のところ大した才能がない明日香ちゃんは、口ではサボりたがってはいるものの努力だけは出来る子のよう。
「さあ、今度は明日香ちゃんの番だぞ。ほら、次の角からすぐに出てくるからな」
「よーし、行きますよ~」
明日香ちゃんは手にする槍をしごきながら聡史が指さした曲がり角を見つめている。そしてその言葉通りに1体のゴブリンが姿を現してパーティーに向かって牙を剥き出しにして威嚇開始。その醜悪な表情に今までであれば明日香ちゃんは目を背けていたかもしれない。
だがこの場に立っているニュー明日香ちゃんは昨日までとは一味も二味も違う。
ギギギギャァァ!
棍棒を振り上げて襲い掛かるゴブリンの前に明日香ちゃんが立ちはだかる。その瞳に恐怖を宿していないのは、桜によって半ば強制的に精神耐性のスキルを身に着けていたおかげであろう。
「えいっ!」
桜から習ったとおりに、明日香ちゃんは手にする槍でゴブリンの棍棒を払う。ようやく活躍の場を見出したトライデントは喜びに打ち震えるかのように青い光を放ちながら、槍自体の能力を発揮して明日香ちゃんの攻撃を側面から支援する。具体的には攻撃の威力が2倍にアップという作用をもたらしている。これこそが異世界で神槍として伝説の中にだけ残されていたトライデントの秘められた能力の一部だが、まだまだ未知の能力が秘められているよう。
「これでトドメですよ~」
グサッと三叉槍がゴブリンの首元に突き刺さると、バチバチっという音を立てて槍自体がその穂先から強力な電流を流し込む。その威力はあまりに強烈で、ゴブリンの目玉が発生した熱で蒸発してしまう恐ろしい効果を発揮する。だが明日香ちゃん自身はこの隠れたトライデントの活躍にはまったく意識を向けていない。むしろゴブリンを単独で倒した手応えに浸っているかのよう。
体中から白い煙を立ち昇らせながら倒れ込むゴブリンが霞のように消え去ると、その場には魔石が落ちている。
「やりました。初めて自分の手でドロップアイテムを獲得しましたよ~」
明日香ちゃんはこれ以上ないキラキラ顔で魔石を拾うと、大事そうにポケットに仕舞い込む。
槍に対する十分な手応えを感じ取って、小さな自信とさらに膨らんだ魔法少女に対するより前向きな夢をその胸に抱く明日香ちゃんであった。
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「それはいいことだな。俺ももっとスピードを上げていいか?」
「いや、待て待て待て! そ、そ、そんな急に鋭い攻撃をしてくるなぁぁぁ! 痛たたたたたぁぁぁ!」
剣を合わせる頼朝の肩口を袈裟斬りに聡史の木刀が完ぺきな一本を決める。プロテクター越しでもその衝撃は相当なもので頼朝は顔をしかめて蹲る。聡史が稽古のレベルを上げても大丈夫と判断する程度に頼朝をはじめとしたEクラスの生徒たちは剣の腕を上げているのはどうやら事実らしい。
「ふひぃぃ… 効いたぁぁ~」
現在頼朝は芝生の上に大の字になって痛みと戦っている真っ最中。青痣は確定だが、骨には異状ない程度に聡史は加減している。さもなかったら今頃病院に直行する羽目に陥っていただろう。
そこに…
「お兄様、どうもごちそうさまでした。とっても美味しい3時のオヤツでしたわ」
「桜ちゃんは食べすぎです。お兄さんのお財布があっという間にカラになっちゃいますよ~」
ホームルームを終えると脱兎のごとく食堂に急行した桜と明日香ちゃんのコンビが初めて自主練に顔を出している。その話し振りからすると、聡史の財布から相当な金額が翼を生やして空へ飛び立ったよう。血も涙もない仕打ちを平然と仕出かす妹に聡史は悄然として佇んでいる。
すると桜が何かに気づく。
「おや? 義経はそんな日向でのんびりと昼寝ですか?」
「桜、惜しいぞ、それは弟のほうだ」
「間違いましたか? ああ、正解は弁慶ですね!」
「それは家来だろうがぁぁぁ! いい加減覚えろ、こいつは頼朝だぁ~!」
「まあ、興味ありませんから、どうでもいいでしょう」
この時、頼朝の頬を一筋の涙が伝ったのは誰にも内緒。唯一の目撃者である聡史も武士の情けで見ないフリをしている。
「ところで桜たちは何の用だ?」
「お兄様、そうでしたわ。これから明日香ちゃんの精神鍛錬と武器を決めようと思いまして。あちらの隅をお借りしますね」
「ああ、わかった。あまり人騒がせな真似をするんじゃないぞ」
聡史は桜に一声掛けると、ようやく涙を拭って立ち上がった頼朝を相手に立ち合いを再開する。頼朝よ、桜のオモチャにされながらもどうか強い男を目指して頑張ってもらいたい。
そんな兄たちは放置して、桜と明日香ちゃんは訓練場の片隅にやってきている。
「桜ちゃん、武器を決めるなんて、なんだかワクワクしてきますよ~」
「お言葉ですが、明日香ちゃん。今まで何の武器も持とうとしなかったあなたのその態度こそが大問題だと自覚してもらいたいですわ」
「実は、桜ちゃん。私には秘かに心に決めている武器があるんですよ~。桜ちゃんは色々と武器を用意してくれると言ってくれましたから、私が希望する一品があるかどうかとっても楽しみなんです」
明日香ちゃんはなんだかいつもにも増して良い表情。3時のオヤツを食べてさらに武器まで決まるとなったら、それは上機嫌になるのも無理はなかろうというもの。この笑顔がいつまで続くのかは保証の限りは全くないのだが…
「明日香ちゃん、一応聞いておきますけど、その心に決めている武器とは?」
「はい、マジカルステッキですよ~」
「はっ? もう一度聞いてよろしいでしょうか?」
「もう、桜ちゃんったら。いいですか、よく聞いてくださいね。私の第1希望はマジカルステッキなんですよ~」
「すぐにおもちゃ屋さんに行ってこい! 本当に… 私が誠心誠意突っ込むのは明日香ちゃんだけですわ」
「ええぇぇ、桜ちゃんは用意してくれなかったんですか? 親友だから私の気持ちを分かってくれていると思ったのに…」
「そもそも明日香ちゃんには魔法系のスキルがないですわ。当面は物理で頑張るしかないんですの」
「なんだか急にテンションが下がりました。もうヤル気がないですよ~」
こんな明日香ちゃんをよくも桜は気長に面倒を見ているものだ。だが桜も伊達に長い付き合いではない。気を取り直して明日香ちゃんを正面から見る。
「まあ、いいでしょう。一旦武器の件は横に置いて、まずは精神鍛錬から開始しましょう」
「桜ちゃん、何をするんですか?」
「そうですねぇ… 明日香ちゃんは芝生の上に座ってください。危険なので(ボソッ)」
「わかりました」
何も知らずに明日香ちゃんは芝生の上に座る。これからどんな目に遭うかなど想像もしていない表情で無邪気な目で桜を見ている。
「それでは参りますよわ。ハッ!」
「ヒィィィィィ!」
桜が明日香ちゃんに向かって放ったのは純度100パーセント混じりっけなしの殺気。レベル600オーバーの生の殺気をモロに体に浴びた明日香ちゃんは白目を剥いて芝生の上に倒れている。突っ立ったままでは頭を打ち付ける可能性を考えて、桜は明日香ちゃんを座らせていたよう。そして気絶している明日香ちゃんの耳元で桜は猫撫で声でそっと囁く。この娘、やはり人の皮を被った悪魔に違いない。
「明日香ちゃん、いいんでしょうか? そのまま寝ているとまた苦い薬を流し込んじゃいますよ~」
「ハッ、何が起きたんでしょうか? とっても恐ろしい何かが襲ってきたような…」
明日香ちゃんは「苦い薬」に反応して条件反射で飛び起きている。あの味がよほどのトラウマになっているのだろう。
「それでは、もう一度行きますよ~。ハッ!」
「ヒィィィィィ!」
このような人権を丸っと無視した過酷な訓練を繰り返すこと10回、桜は明日香ちゃんのステータスを確認する。
「やはり私の予想通りでした。明日香ちゃん! ほらここに〔精神耐性レベル1〕のスキルが加わっていますわ」
「予想通りじゃないですよ~。目の前に大きな川が滔々と流れていたんです」
「ああ、それは間違いなく三途の川ですわ。明日香ちゃんは、実に逞しいです。よく生きて戻ってきました」
「死にますぅぅぅ! 今度こそ絶対に死にますぅぅぅ! もう終わりにしましょうよ~」
明日香ちゃんの口から悲痛な叫びが零れ落ちるが、そんな儚い願いを叶える桜ではない。断じてない。
「それじゃあ、このスキルがレベル2になるまで頑張りましょう」
「ヒィィィィィ!」
桜の地獄のような精神鍛錬は続いていくのだった。
ようやく桜の鍛錬が終了すると、今度は明日香ちゃんの武器を決める番がやってくる。桜は芝生の上にアイテムボックスから取り出した目ぼしい武器を次々と並べていく。
その種類は、ナイフ、短剣、ロングソード、スタッフ、ロッド、斧、槍、とまあ、このように各種に渡る。
気絶を繰り返して顔面の表情が完全に抜け落ちていた明日香ちゃんもこの光景に何やら興味を示している。立ち直りが早いのがこの女子の最大の特徴といえる。
「ふむふむ、マジカルステッキがないのは残念ですが、桜ちゃんは色んな武器を持っているんですね~」
「これは趣味で集めたようなものですから、明日香ちゃんが気に入ったものを手に取っていいですわ。ひとつだけ注意してもらいたいのは、剣や槍は全部本物ですから取り回しには注意してください」
「ええ、本物なんですか。全部斬れたりするんですか?」
「ええ、斬れます」
さすがに明日香ちゃんの表情が引き締まる。聡史がゴブリンやオークジェネラルの首チョンパしたシーンが蘇って迂闊に並んでいる武器に触れようとはしない。しげしげと並んでいる武器を見て回るだけの明日香ちゃんにシビレを切らした桜が声を掛ける。
「何か気になる物はありましたか?」
「そうですねぇ… この槍は先がフォークみたいで可愛いですよ~」
明日香ちゃんの言葉にその槍は青く光り出す。あたかも手に取ってもらいたいとアピールするかのごとくに。
「ほほう、明日香ちゃんはその槍を選びましたか」
桜はひとりで訳知り顔で頷いている。実はこの槍は桜が異世界のとあるダンジョンのラスボスを倒した折に宝箱から出てきた品で、その銘は〔トライデント〕と打たれている。
ギリシャ神話で知られているポセイドンが手にする三叉槍、異世界においてもそのポセイドンに相当する神が手にしたという伝説が残されている神話級の槍がその正体。仮にどこかの王国に献上されたならば宝物庫の最奥に厳重に保管されるような品を明日香ちゃんは「フォークみたいで可愛い!」と言ってのけちゃっている。この娘はなんてことを口にするんだろう。罰当たりにもほどがある!
さて話は逸れるが、このような神話にまつわる武器には魂が宿ると言われている。ただの物でしか有り得ない槍が何らかの意思を持ち始めるというのは結構よくある話。
実はこのトライデント、ダンジョンの最下層で数千年の長きに渡って人の手に触れられずに息をひそめて過ごしていた。
一度は桜の手に握られてようやく活躍の機会が訪れたかと期待したのも束の間、再びアイテムボックスに収納されてしまい放置が続いた。
槍は飢えていた。人の手に渡って活躍の場を得ることをその意志として願っていた。仕舞いにはもうこの際だからイヌでもネコでもいいから誰か使って… という具合に、絶賛槍自身のバーゲンセールを展開中な模様。
そして、久しぶりにトライデントを手に取ったのは、よりにもよって明日香ちゃん。なんという運命の巡り合わせ! 普段ならば絶対に明日香ちゃん如きを主人とは認めない神槍が「お願いだから私のご主人様になって」状態。
「桜ちゃん、手に持ってみると、ずいぶん軽い槍ですよ~」
「そうでしたっけ? かなりズッシリしていたような気がしますが…」
トライデントにとっては二度とないかもしれない就活の機会。この機を絶対に逃すものかと必死の様相。槍自らが重力を操って明日香ちゃんが手にした感触を軽くしている。これだけ必死な神槍は見ていて結構気の毒だったりする。
「それから、先っぽがバチバチ火花を散らしているみたいですよ~」
「ああ、その槍は雷雲を引き起こして嵐を呼び起こすと言われていますから」
「そうなんですか。ちょっと試してみましょうか。えいっ!」
明日香ちゃんは、ふざけて東の空に向かって槍を突き上げる。「すわ出番が来たか」とトライデントは俄然張り切ってしまう。槍の内部から溜めに溜め込んだ力を東の空へ思いっきり放出開始。
「桜ちゃん、なんだかあっちの空が急に暗くなりましたよ~。まあ、偶然でしょうけど」
「あんまり空に向けないほうがいいですわ」
何事にも動じない桜の額から、あろうことか一筋の汗が流れている。次第に雷雲は発達して真っ黒に染め上げた東の空に雷鳴が轟く。
その間にもいよいよトライデントにとって運命のジャッジが下されようとしている。
「明日香ちゃん、その槍でいいですか?」
「そうですねぇ… 軽いし、なんだか私に使ってくれって言っているような気もしますからこの槍を武器にしましょうか」
キターーーーーー! そんな声がどこからか聞こえたような気がするが、明日香ちゃんは知らんぷりのまま。「もう、このご主人様はツンデレなんだから」槍が小声で呟くような気がしなくもない。
兎にも角にも、こうして明日香ちゃんの武器が決定。本人は知らないが、本物の神話級の槍で本当に大丈夫なのだろうか。果たしてこの先明日香ちゃんとトライデントはどのような運命を辿るのかは誰にも知る由はない。
そして本日の自主練を終えた明日香ちゃんは自室に戻りテレビのスイッチを入れる。ちょうどニュースの時間で、アナウンサーが原稿を読み上げる。
「本日の午後4時頃に、神奈川県北部と多摩南西部に記録的なゲリラ豪雨が発生しました」
「ふーん、そうなんだ」
明日香ちゃんは、何事もなかったように着替えを始めるのだった。
◇◇◇◇◇
この日の夜、兄妹は豪華な学生寮で二人っきりの静かなひと時を過ごしている。
ソファーに腰掛けて寝る前の時間を冷たい麦茶を片手に、日本に戻ってきてからの慌ただしい日々を振り返っているよう。聡史はジャージにTシャツのラフな姿、桜は子熊の柄が細かくプリントされたパジャマ姿で、兄妹二人だけで会話を交わしている。
「お兄様、こうして二人っきりだととても静かですわ」
桜は昼間の顔とは打って変わって穏やかな微笑みを湛えている。こうしていると、まるで別人のようなおしとやかな美少女に見えてくるから不思議なもの。
「そうだなぁ。なんだか静かすぎて物足りないくらいだ。学院に入学してみたら結構忙しかったからかな? それにしても、美鈴と明日香ちゃんに出会えて本当に良かった。運命の女神様の粋な計らいかもしれないぞ」
「お二人と一緒にいると、とても楽しいですよね」
桜の瞳には、めったに見せない優しげな光が浮かんでいる。まったく環境が違う学院に編入して不慣れな生活が始まった。いかな聡史や桜にとっても、殊に人間関係において一抹の不安を感じて当然といえるような周囲の変化があった。にも拘らず、たまたま偶然そこに気を許せる知り合いがいたというのは何よりも心強いはず。
「楽しいか。それは良かったな」
「お兄様、ずいぶん冷静な物の言い方ですね。楽しくないのですか?」
「いや、もちろん楽しいぞ」
「クールなフリなどお兄様には似合いませんわ。もっと素直に喜べばいいのに」
桜は聡史の痛いところを突く。本当は桜以上に喜んでいる自分の内面を努めて隠そうとしている聡史の態度は桜からすると挙動不審の一歩手前に映っている。双子ならではの互いの心情を理解する心の動きが働いているのかもしれない。一卵性双生児ではないが、この二人にもある程度の以心伝心が存在している。
「それよりも、桜はクラスには慣れたか?」
自分の話には触れたくない聡史は慌てて話題を逸らす。妹に自らの内面を見透かされているような気もしてくるが、照れと男のつまらない意地で可能な限り心の内を悟られないようにポーカーフェースを保っている。
もちろん桜にはそんな聡史のミエミエの薄っぺらい心情などすっかりお見通しなので、いまさら何を隠しているのかと突っ込まれるのがオチであろう。だが桜は兄の顔を立ててその件にはまだ触れないように言葉を選ぶ。
「女子の皆さんとは、何人かお話しできる方がいらっしゃいますわ。男子で名前を憶えているのは信長くらいでしょうか」
「頼朝だからな。桜が名前を間違えるせいで、あいつは涙目になっていたぞ」
「今度はしっかり覚えましたから、二度と間違えませんの」
桜は両コブシをギュッと握って力強く宣言する。ようやく頼朝も浮かばれる可能性が出てきたが、桜のことなのでまだまだ予断は許さない。
「それよりも、お兄様こそクラスには慣れましたか?」
「うーん、そうだな~… 男子とはよくしゃべるぞ。特に自主練仲間とはすっかり打ち解けているな」
「女子とはいかがなんですか?」
「明日香ちゃん以外はほとんどしゃべっていない」
「はあぁぁ… 相変わらずダメなお兄様です」
桜の指摘に聡史はグウの音も出ない。幼馴染の美鈴と顔見知りの明日香ちゃんがいてくれて一番助かっているのは他ならぬ聡史なのかもしれない。
「ところで桜。これから先も、明日香ちゃんを鍛えていくのか?」
「ええ、明日香ちゃんが音を上げるまでは頑張ってもらおうと思っておりますわ」
「一緒にダンジョンに入るためにか?」
「もちろんですわ。だって明日香ちゃんと一緒だと、とっても楽しいじゃないですか」
この夜一番のいい顔で桜が答える。口ではなんやかんや言ってはいるものの、桜は本当に明日香ちゃんが大好きで心から信頼している。もちろんこんなことを真顔で本人に伝えると調子に乗った明日香ちゃんがどこまで飛んで行ってしまうかわからないので、敢えて口に出すことはしないいままだろう。
「お兄様、お聞きしますが、ダンジョンに入る仲間として最も大切な条件は何ですか?」
「うーん… やっぱり信頼できる人間かどうかだな。自分の背中を預けるわけだし」
「その通りですわ。だからこそ私には明日香ちゃんが必要なんですの。見た目は頼りないんですが、ああ見えて明日香ちゃんはなかなかしぶとい子なんです。きっと私たちに最後までついてきてくれると信じています」
桜は、普段はあまり表に出さない内心の思いのたけをこうして聡史と二人っきりとなるとストレートにぶつけてくる。一番信頼している兄だからこそ素直に何もかも打ち明けている。
「そうか… 美鈴も俺たちについてきてくれるかなぁ~」
「美鈴ちゃんこそ、お兄様が信じないでどうするんですか。本当に何もわかっていないんですね。ほとほと呆れました」
桜に思いっきりダメ出しされて、聡史はズズーンと効果音が発生するレベルでへこんでいる。その額には3本の青い線が入っているかのよう。
桜としては兄に「俺についてこい!」といった具合でキリリとした態度を美鈴に示してもらいたいのに、肝心の聡史がこの体たらくでは発破を掛けたくなるのも無理はない。颯爽と女性をリードする凛々しい兄の姿を見たいのは、妹の心情としてはかなり妥当といえる。
「お兄様、私の勝手な思い込みで明日香ちゃんを巻き込んでいるのは重々承知です。でも、明日香ちゃんなら必ず応えてくれると信じています。それこそが本当の友達であり仲間なんです。だからこそお兄様も、もっと美鈴ちゃんを信じてください」
「今日はどうやら桜に一本取られたみたいだ。俺ももっと美鈴や明日香ちゃんを信じてもいいんだな」
「当たり前ですわ。お兄様は異世界で一緒に旅をした皆さんのことをもうお忘れですか?」
「いや、忘れてはいないぞ。本当にみんなには世話になったし勇気づけられた」
「美鈴ちゃんや明日香ちゃんも一緒ですの。私たちの大切な仲間です」
「うん、桜が言いたいことはわかった。俺ももっと周囲の人間を信じよう」
桜は一見傍若無人な性格のように見える。もちろんそのような言動がままあるのを否定できないが、それは彼女の一面に過ぎない。その裏側では本当に仲間を大切にするし、自分の命を懸けても仲間を守ろうとする。
そんな桜は美鈴と明日香ちゃんをすでにパーティーの仲間として見做しているよう。対して聡史はどうかというと、まだ守るべき対象として二人を見ている甘っちょろい事実に気が付いた模様。
二人っきりになるとこのような感じで聡史が桜にやり込められる場面がこの兄妹の間ではしばしばある。ひょっとするとこの兄よりも妹のほうが、魂の奥底の本質的な部分でしっかり者なのかもしれない。
「さて、ずいぶん遅くまで話し込んでしまいました。お兄様、そろそろ寝ましょう」
「そうだな、明日は実技実習の日だし、しっかり睡眠をとっておこう。明日も午後はダンジョンへ行くんだろう?」
「もちろんですわ。美鈴ちゃんと明日香ちゃんはお兄様にお任せいたしますので、よろしくお願いしますね」
「ああ、わかったぞ。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさいませ」
こうして兄妹は自分の寝室に入って、この夜は過ぎていく。
◇◇◇◇◇
翌日の午前中、美鈴は聡史とともに新たに獲得した魔法属性の練習を行う。だが火属性魔法とは違って無属性魔法や闇属性魔法は術式の定義自体が大変難しく、美鈴の術式解析のスキルをもってしてもそうそう簡単にはいかないようで今後とも難航が予想されている。
一方の明日香ちゃんは桜の指導の下で木槍を手にしての練習を積んでいる真っ最中。桜は普段拳で戦い武器を持つケースはほとんどないのだが、明日香ちゃんを指導する程度にはあらゆる武器の扱いに精通している。おかげで明日香ちゃんは〔槍術スキルレベル1〕を手にしている。だがその分訓練は厳しいもので、2回ほどポーションのお世話になって明日香ちゃんが抱えるトラウマがさらに悪化する副作用があった。
午後になって、四人は本日も大山ダンジョンへと向かう。
美鈴と明日香ちゃんは今日は学院支給のヘルメットとプロテクターを身に着けている。聡史と桜はアイテムボックスに必要物品が全て入っているので、相変わらずの手ぶらでダンジョン管理事務所へ入っていく。
「今日は2階層で、美鈴と明日香ちゃんに実戦を経験してもらうぞ。それから桜は一人で別行動になるから、実質的に3人で行動する件を承知してくれ」
「「はい!」」
実は、桜は一人で下層に向かってある程度値の張る魔物を仕留めてくる予定なとなっている。これは主に桜の食事やオヤツに関する浪費が原因となっており、このままでは兄妹揃って財布が非常に厳しくなる深刻な事情が絡んでいる。
この困難な経済事情解消のために桜はひとりで一攫千金狙いに出る。もっともレベル600オーバーの桜にとっては至極お手軽なミッションといえるであろう。
そのまま四人揃って2階層まで降りると、ここから先は桜とは別行動となる分かれ道に到着する。
「それでは、明日香ちゃんにはこの槍を渡しておきますね。どうか頑張ってください」
「桜ちゃん、任せてください。ゴブリンなんて一撃で倒しちゃいますよ~」
気軽に槍を手にする明日香ちゃんを見て聡史は一瞬我が目を疑う。聡史自身初めて目にする槍だが、どう見てもそれはアーティファクトレベルの武具にしか見えない。
「桜、念のために聞いておくが、この槍はお前が明日香ちゃんに渡したのか?」
「お兄様、なかなかお目が高いですわ。明日香ちゃんも手に馴染んでいい感じに扱えるようになりました」
「そ、そうなのか。いい槍だから明日香ちゃんも良かったな」
「はい、お兄さん。この槍でグングンレベルアップですよ~」
あまりに怖いので、聡史はこれ以上追及するのを断念する。まさかこの槍が伝説の武器〔トライデント〕であるとは彼自身もまだ知らない。本当に恐ろしい予感がして聞けなかった。
「それでは皆さん、行ってまいります。ご武運をお祈りしておりますわ」
「桜ちゃんも気を付けてくださいよ~」
「はい、わかりました!」
こうして桜は下層へ降りていく階段がある方向へと向かう。さて、ここからが美鈴と明日香ちゃんの出番がスタートとなる。
「それじゃあ、こっちの通路を進んでいこう。遠距離の敵は美鈴の魔法で20メートル以内に接近を許したら明日香ちゃんが槍で対処するんだ」
「「はい、わかりました」」
今日は本当に自分の力でゴブリンを倒すと決めてきただけに、二人とも日頃に増して引き締まった表情となっている。聡史の目から見ても、彼女たちの様子は中々頼もしいものとして映っている。
今日は桜がいないため、聡史がパーティーの先頭を務める。桜には及ばないまでも聡史ももちろん気配察知のスキル持ちであり、そのスキル自体ゴブリンの気配を掴むには十分な性能を秘めている。そして通路を歩くとすぐに聡史は何らかの気配を掴んでいる。
「この先に何かの気配があるな。美鈴は魔法の発動準備に取り掛かってくれ」
「聡史君、オーケーよ」
聡史の指示で美鈴がスタンバイしているのは、もちろん最も自信があるファイアーボール。今回はダンジョンの内部という環境を考慮して、演習場でぶっ放す時よりも注入する魔力を半分に減らしている。だがそれでもゴブリンを相手にするには十分以上の威力であろう。
ギギ、ギギャ!
枝道から出てきたのは予想通り単体のゴブリン。すでに美鈴は視線で照準をつけている。
「ファイアーボール」
彼女の右手からは聡史直伝のオレンジ色の炎の塊が飛び出していく。避けようがない速度で宙を飛んだファイアーボールは狙いを逸らさずにゴブリンに命中。
ドーン
威力抑えめの爆発ではあるが、それでもゴブリンの体がバラバラに吹き飛ぶには充分。だが美鈴は油断せずに次の魔法の準備に入っている。先日のオークを仕留めそこなった経験が生きているよう。
「美鈴、もう大丈夫だ。魔法を解除してくれ」
「ええ、1発で倒せてよかったわ」
「美鈴さんの魔法は凄いですよ~。私もいずれは覚えたいです」
「明日香ちゃんにも必ずできるようになるわよ。それまでは地道に訓練を続けていきましょう」
「はい、そうします! 目指せ、魔法少女ですよ~」
明日香ちゃんは、お得意のキラキラな瞳で美鈴に今後の努力を誓っている。桜が言う通り今のところ大した才能がない明日香ちゃんは、口ではサボりたがってはいるものの努力だけは出来る子のよう。
「さあ、今度は明日香ちゃんの番だぞ。ほら、次の角からすぐに出てくるからな」
「よーし、行きますよ~」
明日香ちゃんは手にする槍をしごきながら聡史が指さした曲がり角を見つめている。そしてその言葉通りに1体のゴブリンが姿を現してパーティーに向かって牙を剥き出しにして威嚇開始。その醜悪な表情に今までであれば明日香ちゃんは目を背けていたかもしれない。
だがこの場に立っているニュー明日香ちゃんは昨日までとは一味も二味も違う。
ギギギギャァァ!
棍棒を振り上げて襲い掛かるゴブリンの前に明日香ちゃんが立ちはだかる。その瞳に恐怖を宿していないのは、桜によって半ば強制的に精神耐性のスキルを身に着けていたおかげであろう。
「えいっ!」
桜から習ったとおりに、明日香ちゃんは手にする槍でゴブリンの棍棒を払う。ようやく活躍の場を見出したトライデントは喜びに打ち震えるかのように青い光を放ちながら、槍自体の能力を発揮して明日香ちゃんの攻撃を側面から支援する。具体的には攻撃の威力が2倍にアップという作用をもたらしている。これこそが異世界で神槍として伝説の中にだけ残されていたトライデントの秘められた能力の一部だが、まだまだ未知の能力が秘められているよう。
「これでトドメですよ~」
グサッと三叉槍がゴブリンの首元に突き刺さると、バチバチっという音を立てて槍自体がその穂先から強力な電流を流し込む。その威力はあまりに強烈で、ゴブリンの目玉が発生した熱で蒸発してしまう恐ろしい効果を発揮する。だが明日香ちゃん自身はこの隠れたトライデントの活躍にはまったく意識を向けていない。むしろゴブリンを単独で倒した手応えに浸っているかのよう。
体中から白い煙を立ち昇らせながら倒れ込むゴブリンが霞のように消え去ると、その場には魔石が落ちている。
「やりました。初めて自分の手でドロップアイテムを獲得しましたよ~」
明日香ちゃんはこれ以上ないキラキラ顔で魔石を拾うと、大事そうにポケットに仕舞い込む。
槍に対する十分な手応えを感じ取って、小さな自信とさらに膨らんだ魔法少女に対するより前向きな夢をその胸に抱く明日香ちゃんであった。
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