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ハウスと呼ばれる大きな建物が2棟ある。
春馬の後についてその片方に入る。
高級マンションのような建物のエントランスを抜けるとラウンジと呼ばれるオープンスペースがあって、座り心地のよさそうなチェアやソファ、テレビやパソコンが置いてある。
奥には広い多目的ライブラリーがあって、そこで読書や自習、グループ学習が出来るらしい。
「なんかすげぇな」
「こっちだよ」
エレベーターホールで他の数人の生徒と一緒になった。
1人がこちらをチラと見たので目が合ったが興味無さそうにそらされた。
3階へ上がると右と左に廊下、廊下の両側にいくつも部屋があって、人の気配も多くする。なぜかドアが開けっ放しの部屋もある。
「右の突き当りが共用キッチンで左の突き当たりがランドリーだよ」
「ほー」
廊下を進んですぐのところに春馬と俺の部屋があった。
試しにさっき管理棟で渡された鍵を使って開けてみた。
部屋は20畳くらいの広さで縦に長く、左右対称にベッドや机、クローゼットが配置されている。
「ここがトイレでこっちがユニットバス、狭いけど何とか湯船にもつかれるよ。部屋は僕が左側を使ってるから夏生は右を使って」
春馬に手伝ってもらって荷ほどきをする。
だいたい終わって生活する体勢が整ったかな、というところで誰かが部屋をノックした。
「おじゃましまーす!森下ぁ~」
ひょこっと顔を出したのは春馬と似たようなメガネのもさい男子が二人。
「従兄弟くん来たのかー?」
「あ、入って入って。紹介するよ」
春馬は二人を招き入れ嬉々として夏生を紹介する。
「夏生、この二人は加藤と佐藤。1年の時同じクラスで仲良くなったんだ」
左が加藤で右が佐藤...
「あー、夏生です。よろしく」
挨拶すると佐藤が首をかしげる。
「森下と似て...る?」
「背格好は似てるかも」
「あ、確かに。二人とも手足が長い」
確かに春馬は猫背だが夏生と体型は似ている。身長も同じ位で172~3センチだ。
夏生は従兄弟らしいところを見つけて少し胸がくすぐったくなった。
3人はリラックスして和気あいあいと話をしている。仲が良さそうだ。
春馬を虐めているの一体誰なのだろう。
今日会ってからの春馬は夏生の心配をしてばかりで自分自身の事で悩んでいるようには見えなかった。
少なくともこの二人とは上手くいっている。
加藤と佐藤は「引っ越し祝い」と言って小さなサボテンの鉢植えをくれた。
「僕たちは4階なんだ。食事の時誘うから一緒に食堂に行こう」
そう言って戻っていった。
「お前の友達良い奴らじゃん」
「うん、ここの生徒は半分が社長とか政治家とか医者の子供で性格おかしいヤツとか癖強いヤツが多いけど、あとの半分は僕らみたいな一般家庭の子だから気の合う子もいる」
その一般家庭というのもズレている。
春馬も一年半の金持ち学校生活で感覚がおかしくなっているようだ。
十分恵まれた春馬や夏生が一般人というのならその上は一体どうなっているのだ。
「なぁ春馬」
「うん?」
「・・・聞きにくいんだけどさ...お前学校で虐められてるのか?」
「・・・え?」
春馬はポカンとして夏生を見る。
兄が言うには、春馬は虐められている事を知られなくないらしい。
ここでズバリ事実確認をして素直に答えてくれるのかどうか。
でも春馬を守るためにも本当のことを教えてほしい。
「兄ちゃんが言ってたんだよ。春馬がこの学校で虐められてるって...だから俺、春馬の側にいようと思ってここに転校するの決めたんだ」
言葉を選んでゆっくり話す。
春馬の表情を確認しながら。
「…春馬?」
まだポカンとしている。
「…夏生」
「ごめんな、俺何も気付いてやれなくて」
「夏生」
「おお、何だ?」
「それウソだ」
「...え?」
「冬哉くんのウソだと思う。僕虐められてないもん」
「そりゃ、見た目こんなで中身も地味だけど楽しくやってるよ」
夏生はあの時冬哉のメガネの奥の目がキラリと光ったのを思い出した。
「くっそ!...あの腹黒アニキ!!」
腹の底からつき上がる怒りに任せ大声で叫んだ。
人がどんな思いで馴染んだ学校を離れたと思っているのだ。
夏生を編入させるため簡単にウソをついて許せない。
弟を思う気持ちは無いのか。
夏生は拳を握って行き場の無い怒りを堪える。
「夏生、大丈夫…?」
春馬がおずおずと心配そうに顔を覗き込んでくる。
まぁ...春馬が虐められてないなら...良かったと思うしかない...
春馬に事情を話すと「冬哉くんひどい」と顔を歪めて共感してくれた。
「でも夏生が僕の為に来てくれたのは凄く嬉しいよ。部屋も一緒にして貰えたし、これから毎日楽しみだな」
人の良い春馬の笑顔にいくらか心が平らになった。
春馬の後についてその片方に入る。
高級マンションのような建物のエントランスを抜けるとラウンジと呼ばれるオープンスペースがあって、座り心地のよさそうなチェアやソファ、テレビやパソコンが置いてある。
奥には広い多目的ライブラリーがあって、そこで読書や自習、グループ学習が出来るらしい。
「なんかすげぇな」
「こっちだよ」
エレベーターホールで他の数人の生徒と一緒になった。
1人がこちらをチラと見たので目が合ったが興味無さそうにそらされた。
3階へ上がると右と左に廊下、廊下の両側にいくつも部屋があって、人の気配も多くする。なぜかドアが開けっ放しの部屋もある。
「右の突き当りが共用キッチンで左の突き当たりがランドリーだよ」
「ほー」
廊下を進んですぐのところに春馬と俺の部屋があった。
試しにさっき管理棟で渡された鍵を使って開けてみた。
部屋は20畳くらいの広さで縦に長く、左右対称にベッドや机、クローゼットが配置されている。
「ここがトイレでこっちがユニットバス、狭いけど何とか湯船にもつかれるよ。部屋は僕が左側を使ってるから夏生は右を使って」
春馬に手伝ってもらって荷ほどきをする。
だいたい終わって生活する体勢が整ったかな、というところで誰かが部屋をノックした。
「おじゃましまーす!森下ぁ~」
ひょこっと顔を出したのは春馬と似たようなメガネのもさい男子が二人。
「従兄弟くん来たのかー?」
「あ、入って入って。紹介するよ」
春馬は二人を招き入れ嬉々として夏生を紹介する。
「夏生、この二人は加藤と佐藤。1年の時同じクラスで仲良くなったんだ」
左が加藤で右が佐藤...
「あー、夏生です。よろしく」
挨拶すると佐藤が首をかしげる。
「森下と似て...る?」
「背格好は似てるかも」
「あ、確かに。二人とも手足が長い」
確かに春馬は猫背だが夏生と体型は似ている。身長も同じ位で172~3センチだ。
夏生は従兄弟らしいところを見つけて少し胸がくすぐったくなった。
3人はリラックスして和気あいあいと話をしている。仲が良さそうだ。
春馬を虐めているの一体誰なのだろう。
今日会ってからの春馬は夏生の心配をしてばかりで自分自身の事で悩んでいるようには見えなかった。
少なくともこの二人とは上手くいっている。
加藤と佐藤は「引っ越し祝い」と言って小さなサボテンの鉢植えをくれた。
「僕たちは4階なんだ。食事の時誘うから一緒に食堂に行こう」
そう言って戻っていった。
「お前の友達良い奴らじゃん」
「うん、ここの生徒は半分が社長とか政治家とか医者の子供で性格おかしいヤツとか癖強いヤツが多いけど、あとの半分は僕らみたいな一般家庭の子だから気の合う子もいる」
その一般家庭というのもズレている。
春馬も一年半の金持ち学校生活で感覚がおかしくなっているようだ。
十分恵まれた春馬や夏生が一般人というのならその上は一体どうなっているのだ。
「なぁ春馬」
「うん?」
「・・・聞きにくいんだけどさ...お前学校で虐められてるのか?」
「・・・え?」
春馬はポカンとして夏生を見る。
兄が言うには、春馬は虐められている事を知られなくないらしい。
ここでズバリ事実確認をして素直に答えてくれるのかどうか。
でも春馬を守るためにも本当のことを教えてほしい。
「兄ちゃんが言ってたんだよ。春馬がこの学校で虐められてるって...だから俺、春馬の側にいようと思ってここに転校するの決めたんだ」
言葉を選んでゆっくり話す。
春馬の表情を確認しながら。
「…春馬?」
まだポカンとしている。
「…夏生」
「ごめんな、俺何も気付いてやれなくて」
「夏生」
「おお、何だ?」
「それウソだ」
「...え?」
「冬哉くんのウソだと思う。僕虐められてないもん」
「そりゃ、見た目こんなで中身も地味だけど楽しくやってるよ」
夏生はあの時冬哉のメガネの奥の目がキラリと光ったのを思い出した。
「くっそ!...あの腹黒アニキ!!」
腹の底からつき上がる怒りに任せ大声で叫んだ。
人がどんな思いで馴染んだ学校を離れたと思っているのだ。
夏生を編入させるため簡単にウソをついて許せない。
弟を思う気持ちは無いのか。
夏生は拳を握って行き場の無い怒りを堪える。
「夏生、大丈夫…?」
春馬がおずおずと心配そうに顔を覗き込んでくる。
まぁ...春馬が虐められてないなら...良かったと思うしかない...
春馬に事情を話すと「冬哉くんひどい」と顔を歪めて共感してくれた。
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