学園の王の愛はいらない

starry sky

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プロローグ

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「あっ...こらっ!」

 夏生なつきがドアを開けた途端、長い腕が伸びてきて手首を掴まれた。そのまま強く引っ張られて部屋に引き込まれる。

 おそらく寮棟の中で一番広い部屋。
 入るとすぐにドアが閉められ、夏生の背中はそこへ押し付けられる。
 いつもは10センチ以上にある顔が、夏生に被さるように屈むから息がかかる程近い。

 カチ、

 施錠音がやけに大きく響いた。
 夏生は美しい顔を少し横に背けて目だけで相手を非難する。
 そして呆れたように言う。

「…妬くなって言っただろ」

「妬かせるなって言った。いい加減に覚えろ、バカ」

「バカは余計だろ!」

「俺は心広くない」
 
 腹まで響く低い声。
 言ったところで聞いてはくれない。
 いったい何度、このやり取りをしただろう。
 嫉妬深い男を納得させる言葉は無い。
 代わりにあるとしたら行為だけ。

 黒い瞳は怒りをたたえて黙って見つめてくる。この無言の圧力に誰もが屈する。

 夏生は諦めた。
 低くうなって男の首に片腕を回す。
 途端に手首は開放され逞しい胸の中に閉じ込められた。
 強く抱きしめられて、心地よい圧迫感に包まれる。

 長い抱擁に息が苦しくなった頃、夏生が顔を上げると、シャープな鼻筋と形の良い切れ長な造形が視界に入った。
 密集するまつ毛に囲まれた黒い瞳が今は熱をたたえている。
 夏生の事をどこにも逃さないとする様に一瞬たりとも視線を外さない。
 
「早く」
 
 低く重たい声音。
 やっと口を開いたかと思えば催促の言葉。
 ぴったりとくっつているから分かる、押し付けられた下半身の熱さと硬さ。

 ああ…喰われる…

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