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街に戻って来るころには夕方になっていて、ハティが「歩きつかれた。ねむい」というので――といってもずっとシャルがおんぶしていたから歩いてないのに――わたしたちは一度宿屋に戻ってきている。

「おい、ニンゲン。ハティはお腹が空いたのだぞ」
「こらハティ。あまりワガママを言うんじゃない。眠いんだろう?食べる前に」

ハティをベッドに下ろして、一定のリズムを刻みながら撫でる手はまるで子供を寝かし付ける父親みたい。
瞼がくっついちゃいそうなハティの額に口付ける仕草を見て、本当に癖だったんだなあ……と思うのと同時に昨晩のことが蘇ってきて恥ずかしくなる。

「ニア、クエストの報告というのがあるんだろう。一緒に行けなくてすまないが、ハティのことは俺に任せて行ってきて構わない……顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「えっ!? あ、いや、なんでもないよ、あはは……それじゃあ、ギルドに行ってくるね!」

不意にシャルがわたしを見れば、何だか自分一人で意識しちゃっているのも恥ずかしくて慌てて否定をして部屋を出る。
――犬に舐められたものだと何度も言い聞かせるけど、わたしの心臓はばくばくとうるさく響くだけだった。

――――

さて、わたしの心臓が落ち着くまで……ギルドに着くまで、改めてギルドやランクについて話をしよう。

この国の人間の大半は、冒険者といっても過言じゃない。
どうしてこんなに冒険者が多くなっているかと言うと、王様が魔王を討伐した冒険者には報奨金と王位の継承権を与えると言い出したから。
一生暮らして遊べるお金と、王様になれる。
この二つに釣られて、若い人たちはみんな冒険者に夢見て、憧れて、冒険者になっていく。
……かくいうアホ野郎もそれに釣られた一人で、そんなアホ野郎に釣られてわたしも冒険者になったんだけど。

そしてその冒険者と取り纏めているのが、王国が運営するギルドだ。
クエストと呼ばれる冒険者へのお仕事の依頼募集や応募、冒険者やパーティーの登録、ランクの審査や管理が主に業務らしい。

ランクというのは一番下がDから始まって、C、B、A、S、SS、最高位がSSS、と7段階に分けられている。
その中でも、Aランク以上は十五パーセントくらいだとニーナが言っていた。
わたしがSSSランクになった時は、たった三年で到達したのは三人目だとニーナがすごく喜んでいたっけな……。

ちなみに、冒険者は必ず魔石が嵌められたチョーカーをすることが義務付けられていて、ランクの判別はそれぞれの色になっている。
チョーカーが個人、魔石がパーティーと色によって見分けできるようになっていて、買い物のときなんかはチョーカーを見せるだけでランクによって割引されたりするし、別の街のギルドに行けば魔石に情報が埋められているから手続きも簡単に済む。
わたしには個人のSSSランクとして金のチョーカーに、Dランクパーティーの真っ赤な魔石がはめ込まれているものだ。

そして、個人ランクを上げるにはクエストを沢山受けて、自分自身の経験値や魔法やスキルを上げて、ギルドの偉い人に見てもらって認められれば到達できるシステムになっている。
元々わたしの適正職業は剣士、拳闘士、魔術師、錬金術士となんでかわからないけれどいっぱいあった。そのせいか、スキルや魔法は普通の踊り子じゃあ習得できないようなものが習得できたのと、早いスピードで熟練度が上がったからSSSランクになれたんだと思う。

――幼馴染で、ちょっとだけ好きだったからとはいえ、アホ野郎の為に随分と無理をして頑張っていたなあ……。

パーティーランクには審査というものは必要ない。
上がるためには、パーティーメンバーの誰かが今のパーティーランクよりも上のランクになるだけだ。
ただし、パーティーランクよりも上のランクの誰かが新規加入すれば、その時点でパーティーも個人のランクも上がることはない。
ランク自体が凍結してしまうのだ。

昔に上位ランクの人が色んなパーティーに入ってランクを上げて、抜けてっていうのを繰り返すような不正があったからこんなシステムにしたらしいけれど、今では上位ランクの人にとって非常にパーティーが組みづらいシステムになっていると思う。
……そもそも、パーティーというのは家族みたいなもので、簡単に離散したり、抜けたり追い出されるっていうのが滅多にないことなんだけれど……。
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