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「ニンゲンというのはウザったい布を被らなければいけないのか……」

ハティはシャルの来ていた黒いフードのローブを着ている。
小柄だからか、膝近くまですっぽりと被ってワンピースみたいだ。
着ている本人は今にも脱ぎだしそうだけれどシャルが上手く言いくるめたので全裸になることはないので安心する。

「ハティ、一人で来たのか?」
「ああ、そうだぞ。ハティ、ウルフたちが困る言ってた。だから助けてやろうとシャルさまの代わりにきたんだぞ!」

褒めてと言わんばかりにシャルに抱き着いてちっちゃな頭をぐりぐり押し付けている。

「……はあ。ダメだろ、勝手に来ちゃ。お前の母さんは知ってるのか? どうせ黙って出てきたんだろ?」
「う……」

小さな子供に言い聞かせるように優しい声で言うシャル。
ハティはじわじわと大きなまん丸の目に涙を浮かべて、見ているわたしの方が罪悪感を感じてしまう。

「ごめんなさい、シャルさま……」
「ちゃんと謝れるならよし」

わしゃわしゃと銀色の髪を乱して撫でてる姿はまるで兄弟……というよりも親子みたいにも見える。

「ダイアウルフは結局、この子のことだったのかな?」
「……いや、ウルフは居たんだと思う。人間たちが森に来たのに気付いて奥に逃げたみたいだな」
「ハティが時間稼ぎしたんだぞ! 平和に暮らしてたウルフたちを殺そうとするニンゲンたちからな!」

殺そうだなんて――と、言いかけて口を噤む。
何にも思ったことなくクエストを受けていたけれど、魔物にも魔物の生活があるんじゃないか。
そんなこと一度も考えたことなかった。

「とりあえず、街に戻ろう。奥に行ったなら当分は出てこないだろうから」

普通の冒険者たちは遭難を恐れて今のところよりも奥に入ろうとしないから、生きたくて奥に行ったなら正解だろう。
わたしみたいに転移魔法が使えるなら関係なく進んじゃうんだけど。
差し出されたシャルの手を取って来た道を振り返る。
転移魔法で帰ってもいいけれど、転移の瞬間の、あの感覚が苦手だから出来るだけ徒歩で帰りたい。

「ハティはニンゲンと一緒はやだなんだぞ!」
「いったあ!?」

繋がれた手を思い切り叩かれて、思わず睨み付けてしまう。
わたしとハティの間にシャルが入って、交互に宥めながら先頭を歩き出す。

こ、こんなムカつくガキと数時間でも一緒にいないといけないなんて!

アホ野郎たちとはまた違う苛立ちを感じながら街に向かって歩き出した。
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