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「あらいらっしゃいニア! 聞いたわよ~アルバートくんに振られたんだって?」
ギルドが開くと同時に中に入り、受付に向かう。
わたしを見てにやにや笑っている目の前のピンク色の髪をした女の子はニーナ。
名前が似ていることと、同じ17歳ということで意気投合し、仲良くなった一人だ。
「振られてませんー! わたしこそ願い下げだったのよ、あんな奴!」
「はいはい、強がっちゃって……。さ、今日はどんなクエストを受ける? 彼と同じクエストならまだ一枠空いてるわよ」
わたしの前に差し出したのは討伐クエストの受注用紙。
Sランクだから、高難易度のクエストのようね。
わたしがSSSランクなので、パーティーランクが足りなくても受けれないことはないけれど……シャルの実力がわかってないのにこんなレベルの高いクエストを受けて、怪我でもさせてしまったらと考えたら気安く受けるわけには……。
「ダイアウルフはこの辺りにも出るのか?」
ギルドの中を少し見たいと離れていたシャルがわたしの背後から現れた。
ニーナは「きゃっ」と喜んだような驚いたような声を上げて、にやにやと緩んだ口元でわたしとシャルを交互に見る。
「ははーん。彼が噂のニアとパーティーを組んだっていう珍しい彼ね~? ふぅん、結構イケてるじゃない! 早速新しい恋なんてやるわね!」
「違うってば! もう、ニーナったらすぐそういう風に捉えるんだから!」
「ごまかさなくってもいいのよぅ? アタシは、アイツよりも彼の方があんたに合ってると思うしね!」
「だーかーらー!」
すぐに恋愛に繋げたがるニーナに困ったように反論していれば、後ろから咳払いが聞こえて慌ててシャルを見る。
「と、ごめんシャル! えぇと、ダイアウルフだけど、最近見掛けるようになったのよ」
「出産の時期は終えてるはずだからそろそろ大人しくなっても良いのにねぇ。それで、これ受けるの? 簡単な採取クエストにしておく?」
「うーん、アイツらが受けてるなら受けたいけど……」
アイツらが、わたしが居なくなってどんな大変な状況になったんだろうっていう様を見たいのと、獲物の横取りをしたい。
……誰かが嫌がることをしたい、なんて、わたしは嫌な女だなあ……。
「いや、やっぱり採取クエストを何か――」
「受けよう」
紙を戻そうとすれば、シャルの手がわたしの手の上に重なって。
どきっと心臓が跳ねて、思わず声が裏返ってしまう。
「こっこれ、Sランクのクエストだよ?! わたし一人でも戦えるかもしれないけど」
「大丈夫だ、俺は君が思っている以上に弱くはない」
シャルの瞳は真っ直ぐにわたしを映している。
強い意志の感じる青い瞳に、わたしは頭に熱が昇っていくのを感じてしまって。
「おーい、お二人さん。見詰めあってないで、クエストは受理したから早く行きなさいよー? 昨日の内に引き受けたパーティーはもう向かってるんだろうからさー」
ニーナの声でハッと我に返れば、わたしの手から素早く紙を引き抜いて大きなハンコをポンと押している。
今この瞬間からクエストが始まったのだ。
「えぇとニーナ、だったか? ありがとう。受付業務は大変だろうが、頑張ってくれ」
「ありがとう、シャルさん。ニアも、気を付けていってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
元気よく頷いて、ニーナに手を振りながらシャルと一緒にその場を後にし、街の出入り口へと向かう。
シャルはいるけれど、シャルが言っていた言葉を信じて絶対にアイツらよりも先にクエストを完了させる。
絶対に絶対にぎゃふんと言わせてあげるんだからね!!
覚悟してなさいよ、勇者一行!
ギルドが開くと同時に中に入り、受付に向かう。
わたしを見てにやにや笑っている目の前のピンク色の髪をした女の子はニーナ。
名前が似ていることと、同じ17歳ということで意気投合し、仲良くなった一人だ。
「振られてませんー! わたしこそ願い下げだったのよ、あんな奴!」
「はいはい、強がっちゃって……。さ、今日はどんなクエストを受ける? 彼と同じクエストならまだ一枠空いてるわよ」
わたしの前に差し出したのは討伐クエストの受注用紙。
Sランクだから、高難易度のクエストのようね。
わたしがSSSランクなので、パーティーランクが足りなくても受けれないことはないけれど……シャルの実力がわかってないのにこんなレベルの高いクエストを受けて、怪我でもさせてしまったらと考えたら気安く受けるわけには……。
「ダイアウルフはこの辺りにも出るのか?」
ギルドの中を少し見たいと離れていたシャルがわたしの背後から現れた。
ニーナは「きゃっ」と喜んだような驚いたような声を上げて、にやにやと緩んだ口元でわたしとシャルを交互に見る。
「ははーん。彼が噂のニアとパーティーを組んだっていう珍しい彼ね~? ふぅん、結構イケてるじゃない! 早速新しい恋なんてやるわね!」
「違うってば! もう、ニーナったらすぐそういう風に捉えるんだから!」
「ごまかさなくってもいいのよぅ? アタシは、アイツよりも彼の方があんたに合ってると思うしね!」
「だーかーらー!」
すぐに恋愛に繋げたがるニーナに困ったように反論していれば、後ろから咳払いが聞こえて慌ててシャルを見る。
「と、ごめんシャル! えぇと、ダイアウルフだけど、最近見掛けるようになったのよ」
「出産の時期は終えてるはずだからそろそろ大人しくなっても良いのにねぇ。それで、これ受けるの? 簡単な採取クエストにしておく?」
「うーん、アイツらが受けてるなら受けたいけど……」
アイツらが、わたしが居なくなってどんな大変な状況になったんだろうっていう様を見たいのと、獲物の横取りをしたい。
……誰かが嫌がることをしたい、なんて、わたしは嫌な女だなあ……。
「いや、やっぱり採取クエストを何か――」
「受けよう」
紙を戻そうとすれば、シャルの手がわたしの手の上に重なって。
どきっと心臓が跳ねて、思わず声が裏返ってしまう。
「こっこれ、Sランクのクエストだよ?! わたし一人でも戦えるかもしれないけど」
「大丈夫だ、俺は君が思っている以上に弱くはない」
シャルの瞳は真っ直ぐにわたしを映している。
強い意志の感じる青い瞳に、わたしは頭に熱が昇っていくのを感じてしまって。
「おーい、お二人さん。見詰めあってないで、クエストは受理したから早く行きなさいよー? 昨日の内に引き受けたパーティーはもう向かってるんだろうからさー」
ニーナの声でハッと我に返れば、わたしの手から素早く紙を引き抜いて大きなハンコをポンと押している。
今この瞬間からクエストが始まったのだ。
「えぇとニーナ、だったか? ありがとう。受付業務は大変だろうが、頑張ってくれ」
「ありがとう、シャルさん。ニアも、気を付けていってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
元気よく頷いて、ニーナに手を振りながらシャルと一緒にその場を後にし、街の出入り口へと向かう。
シャルはいるけれど、シャルが言っていた言葉を信じて絶対にアイツらよりも先にクエストを完了させる。
絶対に絶対にぎゃふんと言わせてあげるんだからね!!
覚悟してなさいよ、勇者一行!
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