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第三章
苛烈な最期
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白椿の元へ歩を進める綾瀬の足取りに迷いはなかった。
一歩、また一歩と確実に近づいてくる綾瀬を前に白椿は喜びを噛み締めながら受入れる姿勢を見せる為に腕を精一杯に広げて見せた。
こんなに見つめているのに綾瀬は終始俯きがちで合わない視線をもどかしく感じていると、ふいに綾瀬が立ち止まる。
もっと近くに来てほしいと声をかけようとした直後、綾瀬は後ろに足を引いて無防備な胸元に狙いを定め大鎌を横薙ぎに振るった。
銀色の光の筋が白椿の目の前を掠め、風を斬る音と一緒に首を引っ張られる感じに違和感を覚えた時には後の祭りだ。
「あっ!!」
胸元から滑り落ちる金色の鎖と少しだけ軽くなった感覚。
無意識に首元に手を当てて、振るわれた鎌に赤い南京錠を絡め取られたのだと理解した時には綾瀬が手に持っていた鍵を使って南京錠を開けようとしてる所だった。
「だ、駄目!駄目よ!!駄目!やめて!!」
綾瀬と過ごした二年間。
自分だけを見て欲しい想ってほしいの一心で、彼を虜にする秘薬を作る為に貪り読んでいた薬学の知識を使い様々な調合薬を毎日毎日試していた。
次第に理想としていた人形と化していく綾瀬に満足しながらも、いつまでも手に入らない心にヤキモキする毎日。
次第に、心とは何か?とテーマが大きくなっていった。
人体的に何かある?と思い金を積んで闇医者に綾瀬を昏睡状態にして身体を開いた事もある。
その時に見つけたのが、あの赤い南京錠だ。
何の変哲もないけど何故か綾瀬の身体の中にあった物。
綾瀬の呪われた力に関係があるのだろうか?でも生憎、私は魔法とか未知な物に縁がなかった。
でも、身につけているだけでほのかに温かくて綾瀬を近くに感じられた。
あの南京錠が手元に残ったからこそ、突然終わってしまった綾瀬との生活にも耐えられた。
いつか、いつかまた結ばれる日を夢見ていたのに……
「やめてぇぇぇぇ!!!」
白椿の静止も虚しく、綾瀬は南京錠に黎明の鍵を差し込んで開けた。
カチャっと可愛らしい音を立てた後に光の粒子になって霧散していく赤い南京錠と何故か残った黎明の鍵を握り締めて、即座に姫椿の方を振り返るが姫椿はこっちを見てすらいなかった。
「姫椿」
呼び掛けてようやく、こっちを見た姫椿は“え?何?”という表情をしている。
そんなに興味ないの?と聞いてみたくもなったが、興味ないと答えられたら立ち直れないので黙ったまま黎明の鍵を掲げて見せた。
すると、ぱぁっと顔を輝かせ血だらけの身体に鞭打って起き上がると姫椿の手の中で光っていた物がカチャンと閉じる音と共に消えてしまった。
さっきと全く同じ現象を見ながら、俺も赤い南京錠開けたけど?と気持ちを込めて首を傾げると此方の意図を汲んでいないであろう姫椿も笑顔で小首を傾げ返してきた。
可愛い。
…………じゃなくて!!!!
自分で自分にツッコミを入れていると背後から緊迫した白馬の声が聞こえてきた。
◇
「やめろ……やめろ!!白椿っ!!!」
「ふふっ」
白馬の叫び声が必死過ぎてて可笑しい。
あの子が、あんなに大きな声で私を呼ぶなんて今まで一度もなかった。
変わったわね、白馬。
この学園に来てから真白ちゃんに出逢って、人間臭くなってしまった。
眉目秀麗なお人形だった私の綾瀬の代わりとして手元に置いていただけの紛い物。
白馬、見てなさい。
私は相手を慮る恋はしない。
私に相応しい人は綾瀬しかいないの。
彼には私を、ずっとずっと私だけを見て欲しい。
沢山の愛の言葉が砕け散って届きもしないなら私の命をもって彫みつけてみせる。
綾瀬を誰よりも愛してるのは私だって。
手に取った大鎌は予想よりも重く、持ち上げるのは無理そうだった。
それでも力を振り絞り、傘の中棒を肩に当てる様に大鎌を持つとザラついた感触も鼻をつく鉄の匂いも気持ち悪くて最悪。
首筋に当たる細い刃が熱く熱を帯びているのは錯覚でもなく大鎌の重さを支えきれず、首筋には既に刃が食い込んでいて痛みを感じている。
緊迫して張り詰めた空気なんて気にならない。
痛みからの涙なのか、死を直面にし生に対する惜別の涙か……視界が涙の膜で覆われて世界が見えないけど、感じる。
あぁ、やっと。私を見てくれたのね?
今、この瞬間、綾瀬を支配しているのは私。
私よ。
「愛してる」
美しい微笑みを記憶に焼き付けて欲しいと思い最期に笑顔を向けた時だった。
眼尻から溢れ落ちた涙によって視界が鮮明になった事により自分の勘違いに気づいた白椿はみるみる顔を青ざめ、絶望に染まる。
声にならない絶叫が全身を巡り、身体を震わせた時に手元が滑って誤って長い柄を手前に引いてしまった。
赤い鮮血が飛沫の雨を撒き散らし倒れても向けられた視線は揺らがずに真っ直ぐに注がれているが、白椿にとっては屈辱でしかなかった。
「どうして」
白椿が見ていたのは、姫椿だった。
自身と綾瀬に“変幻”を掛けて姿を交換させた姫椿は、背後からそっと自分の両手で本物の綾瀬の視線を遮っていた。
もうこれ以上、綾瀬を傷つけさせたりしない。
「綾瀬は、私だけ見てればいいのよ」
姫椿の声が最後、白椿に届いたのかはわからない。
床に倒れた白椿を見届けた後、急拵えの“変幻”を解きながら綾瀬の視界を塞いでいた手を離すと穴が開く程、真っ直ぐに見つめられている事に気がついて、気恥ずかしさから逃げる様に顔を逸らして、はい、終わり!とマジックの種明かしをするみたいに両手を広げて見せた拍子に軽い眩暈で倒れそうになった身体を綾瀬に抱き止められた。
ぎゅっとしがみついてくる綾瀬に、これは暫く離れてくれないなと覚悟しながら後頭部を撫でていると聞こえてきた綾瀬の搾り出す声に苦笑する。
今ここで綾瀬と同じ事を答えたら、この人は泣いてしまうんじゃないかと思いながら、いじめたくなる気持ちを抑えて静かに綾瀬からの想いを受け取った。
「うん、ありがとう」
◇
小さな血溜まりに膝をつき、動かない白椿の目の当たりにした白馬の感情はぐちゃぐちゃだった。
怒り、悲しみ、絶望……どれもこれも負の感情が多過ぎて今の心境を言葉にするのは難しいのに口をついて出た言葉はとても簡素だ。
「お前は、馬鹿だ」
そう、こんな馬鹿な奴は見たことがない。
どうすんだよ、これから。
憤慨する気持ちとは裏腹に状況を冷静に分析して考えている自分もいる。
そう、別に一人になった所でどうという事はない。
ビジネスパートナーだと割り切っている自分と綾瀬の代わりとして俺を囲っていた白椿は何ら変わらないじゃないか。
なのに、この虚無感はどういう感情なんだ?
割り切れない何かが燻ってモヤモヤしている白馬に声が掛けられたのは、そんな時だった。
「あぁぁ、良かった。やっと、見つけたよ」
気さくに話しかけてくる声に聞き覚えは無かった。
誰だ?という顔で相手を見ても、さして気にした風もなく独り言みたいに話を続けてくる黒髪ボサボサ頭の瓶底眼鏡、返り血なのか血で薄汚れている白衣を身に纏った怪しい男。
「落札メーターが止まらなくてね。僕は幾らでも払えるのだけど、手持ちで足りるか不安になってしまって。“朱の大会”はカード支払い出来るだろうか?」
気恥ずかしそうに頭を掻く姿を見ながら、白馬は対顧客用の笑みを浮かべたまま内心では驚きを隠せなかった。
嘘だろう?
毒の調合者である白椿や学園育ちじゃない者なら致死量になる毒を浴びて生存している人間がいるなんて。
男の話通りに、まだ動き続ける落札メーターを見ながら生唾を飲み下す。
この金額を本当に払うというのなら、こんな大口顧客を逃す手はない。
白馬は返答を待っている男に向き直った。
「御心労をお掛けしてしまい、大変申し訳ございませんでした。ご安心ください。支払い方法は適宜対応しています」
「本当かい?実はもう買うからってボスに連絡しちゃったんだ、良かったぁ」
「……ボス?」
「カフマだよ。“天狼”のボス」
唖然とする白馬を他所に、転がる死体を踏み分けながらレージは手を叩いた。
「さてさて。久しぶりに外出してみたら面白いものを沢山見せて貰って僕は大満足だよ!そのお礼に、ここにある物全て買い取る事を宣言しよう!綺羅、綺羅はいるかい?」
隅の方で床に大の字になってぶっ倒れていた綺羅は、レージの呼び掛けに弱々しく返事をしてから、ゆっくり身体を起こす。
酸素不足で頭痛がする頭を押さえながらも自分を呼ぶレージをちゃんと確認した途端、みるみる青ざめていった。
「れ、レージ先生!?」
「やぁ、早速で申し訳ないのだけどミューに連絡しておくれ」
「み、み、みゅー先輩に!?あっ!まさか内緒で来たとかじゃないでしょ……って!!図星!!」
ミューことイミューノディフィシェンシーはレージの助手を務めている。
長ったらしい名前はレージから適当に医学関連の本から抜粋された物だが、呼ぶ時に不便なので省略されて呼ばれていた。
“天狼”で任務中、不慮の事故に遭い身体の半分が自動機械となった切れ長の目が印象的な中性的男子なのだが、いつもレージに振り回されているので微笑みから滲み出る殺意を惜しみなく振り撒くドス黒いイミューノディフィシェンシーを安易に想像した綺羅は身震いした。
「だって僕が来ないと綾くんが貴重なサンプルを殺してしまいかねなくてさ?ねぇ、綾くん?」
呼び掛けに姫椿を抱きしめた状態のまま綾瀬が顔を上げ、レージを見るなり心底嫌そうな顔を見せた。
「……あ?」
「ソレ。僕にちょーだい?」
白馬の背後で事切れている白椿を指差すレージに綾瀬は悪趣味とだけ吐き捨ててから好きにしろと答えた後、もう体力ないですと姫椿に泣き言を言いに寄ってきた綺羅を足蹴にし始めた。
それを諫める力も既になく、ぐったりしている姫椿に寄り添う真白を見つけたレージは、白馬から目標を変えて歩み寄る。
「こんにちは。君が真白ちゃん?僕はレージ。怪我したところを見せてごらん?」
「えっ、あっ、えっ!?」
ふわっと香る薬品の匂いに包まれながら手際の良い触診で頭からつま先まで診察されて呆気に取られている真白の頭を撫でながらレージは微笑んだ。
「うん。問題ないね。ここで培われてきた毒素を抜いてしまえば日常生活を送るに不都合は起きないよ。そうだね、ざっと156時間あれば自然体になるかな」
「ひゃく……」
「さてさて。ねぇ、綾くん?いい加減、姫ちゃん離してよ」
「嫌」
「君は治癒力、皆無でしょ?攻撃全フリでしょ?」
「無理」
「……この拗らせ男子め」
「レージ医師」
真白の診察を終えた途端、すぐに次の患者へ向かうレージを飛び止めたのは白馬だった。
「レージ医師。俺を、治してくれませんか?」
えっ、と小さな声を出したのは真白だった。
病気なの?と問いたげな視線とレージの瓶底眼鏡の奥の瞳が真っ直ぐ自分を見ている。
全員が注目する中で白馬はそれ以上何も言わず、レージからの返答を待った。何を告げられても受け入れる覚悟は昔から出来ている。
少しの沈黙の後、レージの口元が動いた。
「君は治療する所がないよ」
安堵する周囲の優しい空気の中で白馬だけ表情を変えずに立ち尽くしているのを見たレージは、言い方を変えた。
「健康体だよ?」
何を不思議がっているんだい?と首を傾げるレージに、白馬は失意の眼差しを白椿に向けたが白椿から反応が返ってくる事はない。
心を失望が染め上げていくのを感じ、渇いた笑い声しか出せなかった。
“私達は、ずっと一緒。共犯よ?”
悪戯っぽく笑う白椿を思い出して、あんな女に執着されていた綾瀬を見る。
粘着質な暗い闇に囚われ続ける自分と、そこから抜け出せた男の違いはどこにあるのか……見つめ過ぎたせいで白馬の視線に気づいた綾瀬は、渋々レージに姫椿を託すと白馬の横に並んで立った。
王李の時は白馬の方が背が高かったのに、本来の姿に戻った綾瀬は一回りも大きい。
でも、話しかけてくる口調は王李の時のまま親しみ易さが残っていた。
「気絶してるだけだよ。今はね」
「……殺したい位、憎かったんじゃないのか?」
「殺せるならそうしてたさ」
一瞬だけ、ゾワッと背筋が凍った気がした。
これが殺気というやつなのだろうか?と綾瀬を見ても、もう何も感じない。
「許すのか?」
「それはないね」
「なら、どうして……」
どうしてこんな奴を生かしておくのだろう?
人生を狂わされた筈だ。自分も似た様な境遇に今陥っているのに、何でそんな吹っ切れた表情が出来るのかが分からない。
苦悶する白馬に気づいた綾瀬は、小さく笑った。
「俺には姫椿がいるから。これから全力で口説かないといけないんだ。俺よりかっこいい人だから、過去をいちいち気にしてられない」
「……惚気?」
「白馬の近くにも居るだろ?」
「はぁ?」
「そのうち分かるよ」
そう言って離れていった綾瀬の後ろ姿を見ながら白馬は溜息をついた。
でも白椿が生きていると聞いて、少しだけ気持ちが楽になった気がする。
全てを背負うには、まだ覚悟が決められないでいたから。
今は、前を見よう。
“暗夜”として、まだやる事が残っている。
「あ、君!カフマから連絡があってね。この国ごと買うってさ」
飄々と答えるレージに、白馬は微笑んだ。
予想していた通りの“天狼”の主人からの返答だった。
急がないと“暗夜”が解体、もしくは買収されてしまうだろう。
行動するなら、今だ。
そう決意した白馬の袖口を、後ろから真白が掴んだ。
「は……」
声を掛けようとして躊躇った。
ちゃんと話すのは随分と久しぶりな気がして、変に緊張してしまう。
一瞬、白馬が遠くへ行ってしまう気がして怖くなった。
掴んでいる今ですら、まだ不安が拭えず行ってほしくなくて袖を掴む手に力を込める。
白馬は振り向きこそしなかったが、袖を掴む真白の手を静かに振り解いた。
「ごめん」
解かれた手が、スローモーションの様に落ちてゆく。
一歩、また一歩と遠ざかって行く白馬の背中に耐えきれず、真白は後ろから抱きついた。
「行かないで、はく……っ!?」
言いかけたまま、視界が暗転する。
白馬を抱き締める腕に力を込めた筈だった。
なのにいとも簡単に振り解かれ気がつけば白馬の腕の中、きつく抱き締められていた。
「ごめん」
どうしてよ、何でよ。
声の代わりに涙が溢れる。
涙で視界がボヤけて、白馬の顔がちゃんと見えない。
頬を触る白馬の冷たい手の感触だけが、熱を帯びた様に熱かった。
息が、掛かるほど近く顔を寄せられる。
おでこに、白馬の白い髪が当たってくすぐったい。
口づけをされるのかと、思った。
そのまま時が止まってしまったかの様に動けない。
しかし白馬はまっすぐ真白の瞳を見つめたまま物悲しい表情で笑っただけだった。
「元気で」
そう、口の形から読み取れた。
溢れた涙と共に真白は突き飛ばされる。
顔を上げようとした時に白馬を囲う程度の小さな魔法陣が青い光を放ちながら機械的にクルクル回って発動の時を待っていた。
「白馬……本気?」
魔法を使えた事にも驚いてる真白を見て白馬は小さく微笑んだ後、一瞬にして姿を消した。
「白馬!」
青い光が仕事を終えて粒子となり霧散するまで、白馬の名前を呼ぶ真白の声だけが切なく会場に響いては静かに消えていった。
一歩、また一歩と確実に近づいてくる綾瀬を前に白椿は喜びを噛み締めながら受入れる姿勢を見せる為に腕を精一杯に広げて見せた。
こんなに見つめているのに綾瀬は終始俯きがちで合わない視線をもどかしく感じていると、ふいに綾瀬が立ち止まる。
もっと近くに来てほしいと声をかけようとした直後、綾瀬は後ろに足を引いて無防備な胸元に狙いを定め大鎌を横薙ぎに振るった。
銀色の光の筋が白椿の目の前を掠め、風を斬る音と一緒に首を引っ張られる感じに違和感を覚えた時には後の祭りだ。
「あっ!!」
胸元から滑り落ちる金色の鎖と少しだけ軽くなった感覚。
無意識に首元に手を当てて、振るわれた鎌に赤い南京錠を絡め取られたのだと理解した時には綾瀬が手に持っていた鍵を使って南京錠を開けようとしてる所だった。
「だ、駄目!駄目よ!!駄目!やめて!!」
綾瀬と過ごした二年間。
自分だけを見て欲しい想ってほしいの一心で、彼を虜にする秘薬を作る為に貪り読んでいた薬学の知識を使い様々な調合薬を毎日毎日試していた。
次第に理想としていた人形と化していく綾瀬に満足しながらも、いつまでも手に入らない心にヤキモキする毎日。
次第に、心とは何か?とテーマが大きくなっていった。
人体的に何かある?と思い金を積んで闇医者に綾瀬を昏睡状態にして身体を開いた事もある。
その時に見つけたのが、あの赤い南京錠だ。
何の変哲もないけど何故か綾瀬の身体の中にあった物。
綾瀬の呪われた力に関係があるのだろうか?でも生憎、私は魔法とか未知な物に縁がなかった。
でも、身につけているだけでほのかに温かくて綾瀬を近くに感じられた。
あの南京錠が手元に残ったからこそ、突然終わってしまった綾瀬との生活にも耐えられた。
いつか、いつかまた結ばれる日を夢見ていたのに……
「やめてぇぇぇぇ!!!」
白椿の静止も虚しく、綾瀬は南京錠に黎明の鍵を差し込んで開けた。
カチャっと可愛らしい音を立てた後に光の粒子になって霧散していく赤い南京錠と何故か残った黎明の鍵を握り締めて、即座に姫椿の方を振り返るが姫椿はこっちを見てすらいなかった。
「姫椿」
呼び掛けてようやく、こっちを見た姫椿は“え?何?”という表情をしている。
そんなに興味ないの?と聞いてみたくもなったが、興味ないと答えられたら立ち直れないので黙ったまま黎明の鍵を掲げて見せた。
すると、ぱぁっと顔を輝かせ血だらけの身体に鞭打って起き上がると姫椿の手の中で光っていた物がカチャンと閉じる音と共に消えてしまった。
さっきと全く同じ現象を見ながら、俺も赤い南京錠開けたけど?と気持ちを込めて首を傾げると此方の意図を汲んでいないであろう姫椿も笑顔で小首を傾げ返してきた。
可愛い。
…………じゃなくて!!!!
自分で自分にツッコミを入れていると背後から緊迫した白馬の声が聞こえてきた。
◇
「やめろ……やめろ!!白椿っ!!!」
「ふふっ」
白馬の叫び声が必死過ぎてて可笑しい。
あの子が、あんなに大きな声で私を呼ぶなんて今まで一度もなかった。
変わったわね、白馬。
この学園に来てから真白ちゃんに出逢って、人間臭くなってしまった。
眉目秀麗なお人形だった私の綾瀬の代わりとして手元に置いていただけの紛い物。
白馬、見てなさい。
私は相手を慮る恋はしない。
私に相応しい人は綾瀬しかいないの。
彼には私を、ずっとずっと私だけを見て欲しい。
沢山の愛の言葉が砕け散って届きもしないなら私の命をもって彫みつけてみせる。
綾瀬を誰よりも愛してるのは私だって。
手に取った大鎌は予想よりも重く、持ち上げるのは無理そうだった。
それでも力を振り絞り、傘の中棒を肩に当てる様に大鎌を持つとザラついた感触も鼻をつく鉄の匂いも気持ち悪くて最悪。
首筋に当たる細い刃が熱く熱を帯びているのは錯覚でもなく大鎌の重さを支えきれず、首筋には既に刃が食い込んでいて痛みを感じている。
緊迫して張り詰めた空気なんて気にならない。
痛みからの涙なのか、死を直面にし生に対する惜別の涙か……視界が涙の膜で覆われて世界が見えないけど、感じる。
あぁ、やっと。私を見てくれたのね?
今、この瞬間、綾瀬を支配しているのは私。
私よ。
「愛してる」
美しい微笑みを記憶に焼き付けて欲しいと思い最期に笑顔を向けた時だった。
眼尻から溢れ落ちた涙によって視界が鮮明になった事により自分の勘違いに気づいた白椿はみるみる顔を青ざめ、絶望に染まる。
声にならない絶叫が全身を巡り、身体を震わせた時に手元が滑って誤って長い柄を手前に引いてしまった。
赤い鮮血が飛沫の雨を撒き散らし倒れても向けられた視線は揺らがずに真っ直ぐに注がれているが、白椿にとっては屈辱でしかなかった。
「どうして」
白椿が見ていたのは、姫椿だった。
自身と綾瀬に“変幻”を掛けて姿を交換させた姫椿は、背後からそっと自分の両手で本物の綾瀬の視線を遮っていた。
もうこれ以上、綾瀬を傷つけさせたりしない。
「綾瀬は、私だけ見てればいいのよ」
姫椿の声が最後、白椿に届いたのかはわからない。
床に倒れた白椿を見届けた後、急拵えの“変幻”を解きながら綾瀬の視界を塞いでいた手を離すと穴が開く程、真っ直ぐに見つめられている事に気がついて、気恥ずかしさから逃げる様に顔を逸らして、はい、終わり!とマジックの種明かしをするみたいに両手を広げて見せた拍子に軽い眩暈で倒れそうになった身体を綾瀬に抱き止められた。
ぎゅっとしがみついてくる綾瀬に、これは暫く離れてくれないなと覚悟しながら後頭部を撫でていると聞こえてきた綾瀬の搾り出す声に苦笑する。
今ここで綾瀬と同じ事を答えたら、この人は泣いてしまうんじゃないかと思いながら、いじめたくなる気持ちを抑えて静かに綾瀬からの想いを受け取った。
「うん、ありがとう」
◇
小さな血溜まりに膝をつき、動かない白椿の目の当たりにした白馬の感情はぐちゃぐちゃだった。
怒り、悲しみ、絶望……どれもこれも負の感情が多過ぎて今の心境を言葉にするのは難しいのに口をついて出た言葉はとても簡素だ。
「お前は、馬鹿だ」
そう、こんな馬鹿な奴は見たことがない。
どうすんだよ、これから。
憤慨する気持ちとは裏腹に状況を冷静に分析して考えている自分もいる。
そう、別に一人になった所でどうという事はない。
ビジネスパートナーだと割り切っている自分と綾瀬の代わりとして俺を囲っていた白椿は何ら変わらないじゃないか。
なのに、この虚無感はどういう感情なんだ?
割り切れない何かが燻ってモヤモヤしている白馬に声が掛けられたのは、そんな時だった。
「あぁぁ、良かった。やっと、見つけたよ」
気さくに話しかけてくる声に聞き覚えは無かった。
誰だ?という顔で相手を見ても、さして気にした風もなく独り言みたいに話を続けてくる黒髪ボサボサ頭の瓶底眼鏡、返り血なのか血で薄汚れている白衣を身に纏った怪しい男。
「落札メーターが止まらなくてね。僕は幾らでも払えるのだけど、手持ちで足りるか不安になってしまって。“朱の大会”はカード支払い出来るだろうか?」
気恥ずかしそうに頭を掻く姿を見ながら、白馬は対顧客用の笑みを浮かべたまま内心では驚きを隠せなかった。
嘘だろう?
毒の調合者である白椿や学園育ちじゃない者なら致死量になる毒を浴びて生存している人間がいるなんて。
男の話通りに、まだ動き続ける落札メーターを見ながら生唾を飲み下す。
この金額を本当に払うというのなら、こんな大口顧客を逃す手はない。
白馬は返答を待っている男に向き直った。
「御心労をお掛けしてしまい、大変申し訳ございませんでした。ご安心ください。支払い方法は適宜対応しています」
「本当かい?実はもう買うからってボスに連絡しちゃったんだ、良かったぁ」
「……ボス?」
「カフマだよ。“天狼”のボス」
唖然とする白馬を他所に、転がる死体を踏み分けながらレージは手を叩いた。
「さてさて。久しぶりに外出してみたら面白いものを沢山見せて貰って僕は大満足だよ!そのお礼に、ここにある物全て買い取る事を宣言しよう!綺羅、綺羅はいるかい?」
隅の方で床に大の字になってぶっ倒れていた綺羅は、レージの呼び掛けに弱々しく返事をしてから、ゆっくり身体を起こす。
酸素不足で頭痛がする頭を押さえながらも自分を呼ぶレージをちゃんと確認した途端、みるみる青ざめていった。
「れ、レージ先生!?」
「やぁ、早速で申し訳ないのだけどミューに連絡しておくれ」
「み、み、みゅー先輩に!?あっ!まさか内緒で来たとかじゃないでしょ……って!!図星!!」
ミューことイミューノディフィシェンシーはレージの助手を務めている。
長ったらしい名前はレージから適当に医学関連の本から抜粋された物だが、呼ぶ時に不便なので省略されて呼ばれていた。
“天狼”で任務中、不慮の事故に遭い身体の半分が自動機械となった切れ長の目が印象的な中性的男子なのだが、いつもレージに振り回されているので微笑みから滲み出る殺意を惜しみなく振り撒くドス黒いイミューノディフィシェンシーを安易に想像した綺羅は身震いした。
「だって僕が来ないと綾くんが貴重なサンプルを殺してしまいかねなくてさ?ねぇ、綾くん?」
呼び掛けに姫椿を抱きしめた状態のまま綾瀬が顔を上げ、レージを見るなり心底嫌そうな顔を見せた。
「……あ?」
「ソレ。僕にちょーだい?」
白馬の背後で事切れている白椿を指差すレージに綾瀬は悪趣味とだけ吐き捨ててから好きにしろと答えた後、もう体力ないですと姫椿に泣き言を言いに寄ってきた綺羅を足蹴にし始めた。
それを諫める力も既になく、ぐったりしている姫椿に寄り添う真白を見つけたレージは、白馬から目標を変えて歩み寄る。
「こんにちは。君が真白ちゃん?僕はレージ。怪我したところを見せてごらん?」
「えっ、あっ、えっ!?」
ふわっと香る薬品の匂いに包まれながら手際の良い触診で頭からつま先まで診察されて呆気に取られている真白の頭を撫でながらレージは微笑んだ。
「うん。問題ないね。ここで培われてきた毒素を抜いてしまえば日常生活を送るに不都合は起きないよ。そうだね、ざっと156時間あれば自然体になるかな」
「ひゃく……」
「さてさて。ねぇ、綾くん?いい加減、姫ちゃん離してよ」
「嫌」
「君は治癒力、皆無でしょ?攻撃全フリでしょ?」
「無理」
「……この拗らせ男子め」
「レージ医師」
真白の診察を終えた途端、すぐに次の患者へ向かうレージを飛び止めたのは白馬だった。
「レージ医師。俺を、治してくれませんか?」
えっ、と小さな声を出したのは真白だった。
病気なの?と問いたげな視線とレージの瓶底眼鏡の奥の瞳が真っ直ぐ自分を見ている。
全員が注目する中で白馬はそれ以上何も言わず、レージからの返答を待った。何を告げられても受け入れる覚悟は昔から出来ている。
少しの沈黙の後、レージの口元が動いた。
「君は治療する所がないよ」
安堵する周囲の優しい空気の中で白馬だけ表情を変えずに立ち尽くしているのを見たレージは、言い方を変えた。
「健康体だよ?」
何を不思議がっているんだい?と首を傾げるレージに、白馬は失意の眼差しを白椿に向けたが白椿から反応が返ってくる事はない。
心を失望が染め上げていくのを感じ、渇いた笑い声しか出せなかった。
“私達は、ずっと一緒。共犯よ?”
悪戯っぽく笑う白椿を思い出して、あんな女に執着されていた綾瀬を見る。
粘着質な暗い闇に囚われ続ける自分と、そこから抜け出せた男の違いはどこにあるのか……見つめ過ぎたせいで白馬の視線に気づいた綾瀬は、渋々レージに姫椿を託すと白馬の横に並んで立った。
王李の時は白馬の方が背が高かったのに、本来の姿に戻った綾瀬は一回りも大きい。
でも、話しかけてくる口調は王李の時のまま親しみ易さが残っていた。
「気絶してるだけだよ。今はね」
「……殺したい位、憎かったんじゃないのか?」
「殺せるならそうしてたさ」
一瞬だけ、ゾワッと背筋が凍った気がした。
これが殺気というやつなのだろうか?と綾瀬を見ても、もう何も感じない。
「許すのか?」
「それはないね」
「なら、どうして……」
どうしてこんな奴を生かしておくのだろう?
人生を狂わされた筈だ。自分も似た様な境遇に今陥っているのに、何でそんな吹っ切れた表情が出来るのかが分からない。
苦悶する白馬に気づいた綾瀬は、小さく笑った。
「俺には姫椿がいるから。これから全力で口説かないといけないんだ。俺よりかっこいい人だから、過去をいちいち気にしてられない」
「……惚気?」
「白馬の近くにも居るだろ?」
「はぁ?」
「そのうち分かるよ」
そう言って離れていった綾瀬の後ろ姿を見ながら白馬は溜息をついた。
でも白椿が生きていると聞いて、少しだけ気持ちが楽になった気がする。
全てを背負うには、まだ覚悟が決められないでいたから。
今は、前を見よう。
“暗夜”として、まだやる事が残っている。
「あ、君!カフマから連絡があってね。この国ごと買うってさ」
飄々と答えるレージに、白馬は微笑んだ。
予想していた通りの“天狼”の主人からの返答だった。
急がないと“暗夜”が解体、もしくは買収されてしまうだろう。
行動するなら、今だ。
そう決意した白馬の袖口を、後ろから真白が掴んだ。
「は……」
声を掛けようとして躊躇った。
ちゃんと話すのは随分と久しぶりな気がして、変に緊張してしまう。
一瞬、白馬が遠くへ行ってしまう気がして怖くなった。
掴んでいる今ですら、まだ不安が拭えず行ってほしくなくて袖を掴む手に力を込める。
白馬は振り向きこそしなかったが、袖を掴む真白の手を静かに振り解いた。
「ごめん」
解かれた手が、スローモーションの様に落ちてゆく。
一歩、また一歩と遠ざかって行く白馬の背中に耐えきれず、真白は後ろから抱きついた。
「行かないで、はく……っ!?」
言いかけたまま、視界が暗転する。
白馬を抱き締める腕に力を込めた筈だった。
なのにいとも簡単に振り解かれ気がつけば白馬の腕の中、きつく抱き締められていた。
「ごめん」
どうしてよ、何でよ。
声の代わりに涙が溢れる。
涙で視界がボヤけて、白馬の顔がちゃんと見えない。
頬を触る白馬の冷たい手の感触だけが、熱を帯びた様に熱かった。
息が、掛かるほど近く顔を寄せられる。
おでこに、白馬の白い髪が当たってくすぐったい。
口づけをされるのかと、思った。
そのまま時が止まってしまったかの様に動けない。
しかし白馬はまっすぐ真白の瞳を見つめたまま物悲しい表情で笑っただけだった。
「元気で」
そう、口の形から読み取れた。
溢れた涙と共に真白は突き飛ばされる。
顔を上げようとした時に白馬を囲う程度の小さな魔法陣が青い光を放ちながら機械的にクルクル回って発動の時を待っていた。
「白馬……本気?」
魔法を使えた事にも驚いてる真白を見て白馬は小さく微笑んだ後、一瞬にして姿を消した。
「白馬!」
青い光が仕事を終えて粒子となり霧散するまで、白馬の名前を呼ぶ真白の声だけが切なく会場に響いては静かに消えていった。
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