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第十一話 ミルファとリース①
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「ところで、汗をかいて気持ち悪くはないかい?お姉さんが体を拭いてあげようか?」
僕の涙が止まった頃、穏やかな笑みを浮かべたリースさんがそう言ってきた。確かに体が汗ばんで、少し気持ち悪い。かと言って、リースさんみたいな美人さんに体を拭いてもらうのは年頃の男子にとっては気恥ずかしい。
「大丈夫です、自分でやります。せっかく動けるようになったんだし……」
「そうは言ったって長年動かしてなかったんだから、筋肉も衰えてるし、色々と不自由だろう?いいから、お姉さんに任せ給え」
「わたしも手伝います!」
ミルファが元気に手伝いを申し出た。
「ミルファにはまだ早いよ。それより、夕食の支度をお願いできるかい?」
「はい、分かりました!」
まだ早いって何だ……。
ミルファが部屋から出ていった後、あれよあれよという間に、リースさんに身ぐるみを剥がされてしまった。僕の間近でリースさんの雪のような白髪が揺れるたびに、僕の心音が少しづつ加速していったが、僕の服を脱がせるリースさんの穏やかな表情は少しも変わらなかった。僕だけ緊張していると思うと、なんだか余計に恥ずかしい。
僕の服を脱がせ終わると、リースさんは手のひらを天井に向けて右手を前に伸ばした。そして、小さな声で何か呟くと、右手の上には一枚の蒸しタオルが、いつの間にか乗っていた。
リースさんはそれを使って僕の背中を丁寧に拭き始めた。
背中に触れる蒸しタオルは心地よいけれど、ドキドキしすぎて心臓が爆発しそうだ。
元の世界の病院にいた頃にも体を拭いてもらうことはあったけれど、あの頃は全てに絶望していて、抜け殻のような状態だったから、ドキドキなんてしなかった。
だけど、今は違う。
この世界に来て、ミルファやリースさんの優しさに触れて、体も動くようになって……。
それは僕にとって、奇跡のようなものだった。
……。こんなことを考えていると、ますますドキドキしてしまう。
そうだ、会話をして気を紛らわそう。
会話……、話題、話題……。
と、そこで一つ気になることを思い出した。夢の中のことだ。それをリースさんに話してみることにした。
僕の涙が止まった頃、穏やかな笑みを浮かべたリースさんがそう言ってきた。確かに体が汗ばんで、少し気持ち悪い。かと言って、リースさんみたいな美人さんに体を拭いてもらうのは年頃の男子にとっては気恥ずかしい。
「大丈夫です、自分でやります。せっかく動けるようになったんだし……」
「そうは言ったって長年動かしてなかったんだから、筋肉も衰えてるし、色々と不自由だろう?いいから、お姉さんに任せ給え」
「わたしも手伝います!」
ミルファが元気に手伝いを申し出た。
「ミルファにはまだ早いよ。それより、夕食の支度をお願いできるかい?」
「はい、分かりました!」
まだ早いって何だ……。
ミルファが部屋から出ていった後、あれよあれよという間に、リースさんに身ぐるみを剥がされてしまった。僕の間近でリースさんの雪のような白髪が揺れるたびに、僕の心音が少しづつ加速していったが、僕の服を脱がせるリースさんの穏やかな表情は少しも変わらなかった。僕だけ緊張していると思うと、なんだか余計に恥ずかしい。
僕の服を脱がせ終わると、リースさんは手のひらを天井に向けて右手を前に伸ばした。そして、小さな声で何か呟くと、右手の上には一枚の蒸しタオルが、いつの間にか乗っていた。
リースさんはそれを使って僕の背中を丁寧に拭き始めた。
背中に触れる蒸しタオルは心地よいけれど、ドキドキしすぎて心臓が爆発しそうだ。
元の世界の病院にいた頃にも体を拭いてもらうことはあったけれど、あの頃は全てに絶望していて、抜け殻のような状態だったから、ドキドキなんてしなかった。
だけど、今は違う。
この世界に来て、ミルファやリースさんの優しさに触れて、体も動くようになって……。
それは僕にとって、奇跡のようなものだった。
……。こんなことを考えていると、ますますドキドキしてしまう。
そうだ、会話をして気を紛らわそう。
会話……、話題、話題……。
と、そこで一つ気になることを思い出した。夢の中のことだ。それをリースさんに話してみることにした。
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