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第八話 雷花
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風が木々を揺らす音と、降り始めた雨が葉っぱに当たる音の中。
黒い雨雲と木々に光が遮られ、夜のように暗い道を、白い雨具を着たわたしはゆっくりと進んでいました。
目的地は森の中心にある池。そこで雷の時にだけ咲く花、雷花を摘むのが目的です。花が咲いている状態で摘むようにと指示されたので、苦手な雷の中、摘みに行かなければなりません。先生は町へと出かけて、まだ帰ってきてませんし……。
家を出る前、くまごろうが、
「俺が代わりに取ってきてやる」
と、ありがたい申し出をしてくれたのですが、雨の中、傘もささずに外へ飛び出していったくまごろうの人形の体は水を吸って重くなり、くまごろうは動けなくなってしまいました。今は家で体を乾かしながら、お留守番をしています。
雷鳴はまだ遠く、暗いとはいえ、慣れた森の道なので、わたしは順調に池へと辿り着くことができました。
池の表面には雨粒の波紋が無数に広がっています。
そのほとりの一角には、黄色い蕾の群生。わたしの腰ぐらいの背丈のしっかりとした茎に、握りこぶしくらいの黄色い蕾がついています。
しばらくすると、雷鳴はかなり近くなり、雷花の蕾は徐々にゆっくりと花を開いていきます。その様子は、朝起こしに来たお母さんに、あと五分と言ってなかなか起きない子どものようでした。そう想像すると、雷もあまり怖くなくなってきましっ!?
白い光が一瞬わたしの視界を満たした直後、爆音の雷鳴が森に轟き、それがわたしの想像を停止させました。
気付くととわたしは地面に座り込んでいて、目の前には雷花がその黄色い花をめいっぱい開いていました。
「……」
雷が怖くなくなってきたというのは勘違いでした。
それからわたしは急いで雷花を摘んで、先生から受け取った容器に入れました。そして、力の入らない足でなんとか立ち上がり、帰ろうとしたときのことです。もう一度閃光と雷鳴が森を満たしました。すると、雷花から一斉に光の粒子が放出され、水面やほとりに広がっていきました。
その幻想的な光景は一瞬のもので、光の粒子は一瞬のうちにどこへともなく消えてしまいました。そして、先程まで咲き誇っていた雷花はあっというまに散ってしまいました。容器の中の雷花だけは、散らずにその姿を保っていました。
雨が弱まり、雷鳴も遠くに去っていった森を抜け、家に帰りました。
これで先生に支持されたものは全部集め終わりました。あとは先生の帰りを待つだけです。
黒い雨雲と木々に光が遮られ、夜のように暗い道を、白い雨具を着たわたしはゆっくりと進んでいました。
目的地は森の中心にある池。そこで雷の時にだけ咲く花、雷花を摘むのが目的です。花が咲いている状態で摘むようにと指示されたので、苦手な雷の中、摘みに行かなければなりません。先生は町へと出かけて、まだ帰ってきてませんし……。
家を出る前、くまごろうが、
「俺が代わりに取ってきてやる」
と、ありがたい申し出をしてくれたのですが、雨の中、傘もささずに外へ飛び出していったくまごろうの人形の体は水を吸って重くなり、くまごろうは動けなくなってしまいました。今は家で体を乾かしながら、お留守番をしています。
雷鳴はまだ遠く、暗いとはいえ、慣れた森の道なので、わたしは順調に池へと辿り着くことができました。
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しばらくすると、雷鳴はかなり近くなり、雷花の蕾は徐々にゆっくりと花を開いていきます。その様子は、朝起こしに来たお母さんに、あと五分と言ってなかなか起きない子どものようでした。そう想像すると、雷もあまり怖くなくなってきましっ!?
白い光が一瞬わたしの視界を満たした直後、爆音の雷鳴が森に轟き、それがわたしの想像を停止させました。
気付くととわたしは地面に座り込んでいて、目の前には雷花がその黄色い花をめいっぱい開いていました。
「……」
雷が怖くなくなってきたというのは勘違いでした。
それからわたしは急いで雷花を摘んで、先生から受け取った容器に入れました。そして、力の入らない足でなんとか立ち上がり、帰ろうとしたときのことです。もう一度閃光と雷鳴が森を満たしました。すると、雷花から一斉に光の粒子が放出され、水面やほとりに広がっていきました。
その幻想的な光景は一瞬のもので、光の粒子は一瞬のうちにどこへともなく消えてしまいました。そして、先程まで咲き誇っていた雷花はあっというまに散ってしまいました。容器の中の雷花だけは、散らずにその姿を保っていました。
雨が弱まり、雷鳴も遠くに去っていった森を抜け、家に帰りました。
これで先生に支持されたものは全部集め終わりました。あとは先生の帰りを待つだけです。
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