[完結]ドジな魔女っ娘に間違って異世界召喚されました。

深山ナオ

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第五話 ミルファの任務

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 早朝、寝ぼけ眼をこすりながらローブに着替え、うつろな意識で荷物を持ってそとに出ました。
 そして、そとの少し冷たい空気を吸い込むと、眠気が一気に吹き飛びました。
 
「大切な仕事を任されたんだから、しっかりやらなくちゃ!」

 そう、大切な仕事。ツバサさんを助けるための、大切な仕事。

 事の始まりは昨日のこと。
 わたしは召喚魔法を失敗して手足が不自由な細身の男性―ツバサさん―を召喚してしまいました。
 先生を連れてきて話をした結果、誤って召喚してしまったせめてものお詫びとして、ツバサさんを家に連れて帰りることになりました。
 ツバサさんを部屋まで運んだ後、先生に夕飯の支度を頼まれました。
 そして、作ったスープとパンをツバサさんのところへ運んでいったときのことです。
 ドアを開けると、凍えるような冷気が押し寄せてきました。部屋の中には、ベッドごと氷漬けになっているツバサさんと、そのツバサさんの四肢をじっくり凝視している先生の姿がありました。

「あの、えっと……」

 いったい、これはどういう状況でしょうか……。なぜ、ツバサさんが氷漬けに……。

「ん? ミルファか。ちょうどいい。少し話があるんだ」

 こちらを向いた先生は、険しい表情をしていました。

「……、その前に……、この状況を説明していただけませんでしょうか」

 少し震えた声になってしまいました。それでも、先生の鋭い目をしっかり見つめて問いかけました。

「そうだな。まずはそこから話さねばならないか」
「見ての通り、ツバサは氷漬けになっている。そして、彼を氷漬けにしたのは私だ」

 やっぱり、この状況を作り出したのは先生でした。先生の魔法をもってすれば、人ひとり氷漬けにするなど、容易い事なのです。しかし……。

「どうして……こんなことを……」
「呪いの進行を止めるためさ」
「呪い……ですか?」
「そう、呪い。彼の四肢が動かないのは、呪いをかけられたせいなんだ。そうだな……、ミルファ、よく見てろ」

 先生は杖を構え、呪文を唱え始めました。杖が赤い光を放ち、ツバサさんを照らします。すると、ツバサさんの腕に複雑な黒い紋様が浮かんできました。

「先生、これは……?」
「これが彼にかけられた呪いだ。上着やズボンで隠れて見えない場所にもこれがある。しかも、それだけじゃない。彼にはもう一つ別の呪いがかけられている。その呪いは、彼を死に至らしめるものだ。発動条件は分からないが、いつ発動してもおかしくない。発動を防ぐために、私は彼を凍らせ、仮死状態にした。そして、これから私は解呪のための準備に取り掛かる。それで、ミルファにも手伝いをお願いしたいのだが、やってくれるか?」
「もちろんです! お任せください!」

 わたしの力強い返事を聞いて、先生の表情が少し柔らかくなりました。
 それから先生は、解呪に必要な材料集めを私に指示すると、昨晩遅くに町へと出かけていきました。
 これが、昨日の出来事です。そして、今日からわたしは解呪に必要な材料集めに行ってきます。

「がんばるぞー!」

 抱いていたくまごろうを天に掲げます。
 ……くまごろう?
 両手には大好きなくまのぬいぐるみ。
 はわわ……リュックと間違えて、くまごろうを連れてきてしまいました……。
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