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3 なんでも一番! 有明小糸

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 綾香を中央にして、右側に小糸、左側に祐一の順に並び、通学路を三人で歩いていく。
 小糸と綾香が並ぶと、小糸の頭の位置が綾香の肩くらいの位置にくる。綾香は女子の平均、祐一は男子の平均の背丈で、二人並んだときの身長差は、男女のそれとしてはちょうどいい感じだ。

 少し歩いたところで、綾香がポンと手を打った。
 
「そうだ! 祐一、女の子を紹介するね」
「はあ?」

 祐一が眉をひそめるが、綾香はそのまま言葉を続ける。

「こちら、一年一組のいとちゃんです」
「いや、知ってるし。同じクラスだし」
「はい、いとちゃん自己紹介! どうぞ!!」

 祐一の言葉には耳を貸さず、綾香は小糸に振った。

有明小糸ありあけこいとです! 昇陽しょうよう高校一年一組出席番号一番! 一番! ここ、ちょー重要ですよっ!! 学年で一番成績が良くて、女子の中では一番足が速い!!! え、一番背が小さい?」
「言ってないし……。それに全部知ってる情報なんだけど」
「え、クラスで一番バストが小さいって!?」
「言ってないんだけど! 自虐しすぎでしょ!!」
「いやいや、自虐じゃないのですよ! 一番背がちっちゃいのにも、一番バストがちっちゃいのにも、利点はいっぱいあるのです!! 短所は長所! 欠点利点裏表!! 
需要と供給、利害の一致!! 祐一くんのエッチ!!!」
「なんでそうなる! 最後の方適当だろ」
「祐一のエッチ!」
「綾香まで便乗すんな!」
「てへっ」

 はにかみながら、あざとく舌を出す綾香。
 そんな綾香に祐一はデコピンをお見舞いした。

「いたっ……!」
「で、何ですかこれ?」
 素に戻った小糸がおでこをさすっている綾香に訊ねる。
「いや、祐一に素敵な出会いを、と思って」
「飢えてるんですか?」
「飢えてねえよ」
「そうですか。だったら……」

 小糸が穏やかな笑顔を浮かべたまま綾香に視線を向ける――その眼差まなざしには、さとすような色が込められている。

「あんまり余計なことはしないほうがいいと思うよ、あやかぽん」
 それだけ言うと、すぐに明るい表情に戻る。
「すべては神のお導きのままに。アーメン」

 わざとらしい口調で言って、小糸は十字を切った。
 どうやらシリアスな空気を嫌ったようだ。

「有明さんは一体何者なんだ……?」 
「んー……シスター?」
「二人の未来に、光あれ!」
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