箱庭少女～山奥の屋敷で傷付いた少女たちと一緒に暮らすラブコメ～

第二章 その一歩は何をもたらす

管理人としての生活

　豪奢ごうしゃな屋敷に住んでいる。

　そういう表現をすれば、多数の人々からは憧憬しょうけいの眼差しを向けられるだろう。

　けれど、実際に住んでみるとなると、これがなかなかに大変だ。

　この数日間、管理人の仕事をして、その大変さの一端を身をもって実感した。

　玄関、廊下、キッチン、浴場など。

　その全てが広々とした作りであるため、掃除するだけでも一苦労だ。

　現在もせっせと手を動かし、風呂場をピカピカにしている。

　まあ、僕はこういう作業は向いているほうなのだろう。相応の疲労は感じるが、嫌ではない。
　
　それに、今日は一人でやっているわけではないからな――

「五十嵐いがらしさん、廊下の方、終わりました」

　浴場の扉が開き、声を掛けられる。
　その声の主は、黒髪ロングの優等生、希ノ崎星寧きのさきあかね。

　星寧は掃除を手伝ってくれていたのだ。
　しかも自分から率先して。

　本当によくできた娘だ。

「お疲れ様。助かったよ」
「それは良かったです。お風呂、手伝いますか？」
「ううん、星寧は先に上がって。こっちももう終わるところだから」
「わかりました。それでは、お先に失礼させていただきます。お疲れ様でした」
「手伝ってくれてありがとう」

　僕のお礼に女神のような微笑みを返して、星寧は立ち去った。

「さて、もうひと頑張りだ」

　彼女の微笑みに力を貰い、僕は最後の仕上げに勤しんだ。