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第78話 師弟の再会です
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「陛下にお目通りしたいだぁ?ダメだダメだ」
「いや俺はマユミ・・・陛下とは旧知の仲で、伝言の一つも頼めればそれでいいんだが・・・」
「はいはい、最近そういうの多いんだよな~」
帝都ヴァレス・・・
英雄皇帝マユミが住まうという城の城門前で、吟遊詩人ヴィーゲルは門前払いを受けていた。
兵士達のこの対応も仕方ない。
今やマユミの人気は絶大で、陛下との面会を希望する者は後を絶たない。
マユミ本人は政務に係わる事もないので、面会の一つもやぶさかでもないのだが、いかんせん数が多い。
兵士達にはこの手の話は全面的に断るように指示が出ているのだ。
(ダメ元で来てはみたが、仕方ないか・・・)
ヴィーゲルは目の前にそびえ立つ巨大な城を見上げる・・・
今のマユミは一介の吟遊詩人風情が簡単に会える存在ではないようだ。
北方で例の作品群・・・英雄マユミの冒険譚と称された絵画を見た時は、いったい何の冗談かと思ったものだが、つい先日魔王の襲撃を撃退したという話も聞いたばかりだ。
(本当に、とんでもない存在に育ったものだな・・・)
師匠として弟子の成長は喜ぶべきものだが・・・彼も英雄を育てた覚えはない。
彼の知るマユミは非力な少女の吟遊詩人だ。
彼が旅立った後、あの少女にいったい何があったというのだろうか・・・
「いつまでそこに突っ立ってるんだ、帰れ帰れ」
「ああ、そうだな・・・」
頷くと彼は踵を返した・・・もうこの場所に来ることもないだろう。
どこか哀愁漂うその後ろ姿を、一人の少女が見つめていた。
「ねぇ、今のイケメン誰?」
「はい?」
その少女は彼の姿が見えなくなると兵士に尋ねた。
どこか見覚えのあるその少女・・・たしか最近マユミ陛下と一緒にいる事が多い・・・
たしかミズキといったか・・・兵士は彼女を要人と認識した。
「最近よくいるマユミ陛下の信奉者でしょう、吟遊詩人のヴィーゲルとか名乗っていましたが・・・」
「吟遊詩人のヴィーゲル・・・へぇ・・・」
(あんなイケメンのファンまでいるとか・・・侮れないわね)
自分もこの世界で作家として人気になれば、あんなイケメンのファンが出来たりするのだろうか・・・
彼女の頭の中でイケメンに言い寄られる妄想が展開される・・・
『あの作品を書いたのがこんなに美しい人だったなんて・・・』
『まぁ、世界一美しいだなんて・・・そんな・・・』
『先生、僕の為に書いていただけませんか?二人の愛の物語を』
『はい、喜んで!』
・・・・・・
(もう指が痛いとか言ってられないわ、どんどん書かないと・・・)
妙な所でやる気を出すミズキだった。
「あれ、ミズキちゃん、こんな所で何してるの?」
「マユミ陛下!ご苦労様です!」
現れたマユミ達に城門の兵士が道を開ける。
マユミは今日も練習の為に劇場へ向かう所のようだ。
「ああ、私はお城の見物を・・・ホントこのお城は広いわよね」
「・・・ミズキ、また迷子になるよ?」
「だだ大丈夫だし、迷ってないし!」
ジト目でミズキを見ながらミーアが警告する。
『懲りない奴だ』・・・顔にそう書いてあるようだった。
「でも気を付けてね、またあんな事になったら今度は助けてあげられるかどうか・・・」
「あはは・・・気を付けます・・・」
心配するマユミにミズキは苦笑いを返す。
マユミには迷子になって泣きじゃくるという恥ずかしいところを見られたばかりだ。
自分が大人だと知る人物に、もうあんな姿を見せたくはない。
「それで、マユミ様は今日もお芝居の練習?」
「うん、だいあ・・・じゃなくて、ミズキちゃんの書いてくれたやつもやるけど、見に来る?」
「うーん・・・いや、やめておくわ、私も新作書いてイケメンのファンをゲットしないとだしね」
「イケメンのファン?」
「いけめん?」
マユミとミーアが二人仲良く首を傾げた。
「うん、マユミ様に会いたいってイケメンがさっき来てたわよ、吟遊詩人のヴィー・・・なんだっけ」
「えっ・・・それって・・・」
ミズキの口から出かかったその名前に、マユミが目を丸くする。
「・・・ひょっとして、ヴィーゲル先生?」
「ああ、それだわ・・・あのイケメンと知り合いなの?まさか彼氏?」
「や、そんなんじゃないけど・・・それでその人は?」
「そこの兵士に帰れって言われて帰ってったわよ」
「!・・・も、申し訳ありません陛下、まさか本当にお知り合いの方とは・・・」
「知らなかったんだから仕方ないわ・・・もし次に来たら、通してあげてね」
顔を真っ青にした兵士にそう答えると、マユミは駆けだした。
「マユミ様?!お待ちください!」
護衛のセルビウスが慌てて追いかける。
「マユミ・・・」
「ちょっと待った、ミーアちゃんはそのヴィーゲルって人を知ってるの?」
「知らない」
「じゃあ行く事ないわ、私がお芝居見てあげるから、練習に行きましょ」
「でも・・・」
「知ってる人探すだけだし、すぐ帰ってくるわよ」
「・・・そうかな」
「うんうん、あとせっかくだから私もお芝居教えてもらおっかな」
「え・・・ミズキが?」
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない・・・ほら行きましょ」
嫌そうな表情を浮かべたミーアを連れてミズキは劇場へ向かった。
(・・・彼氏じゃないにしても、それなりの関係みたいじゃない)
後でしっかり話は聞かせてもらおう・・・出来れば紹介もしてもらおう。
そんな事を考えるミズキだった。
・・・街の方ではちょっとした騒ぎになっていた。
「へ、陛下?!」
「すいません、ここにヴィーゲルって人はいますか?」
酒場や宿屋、食堂といった建物を見つける度に遠慮なく突入するマユミ。
この件のせいで後日『マユミ陛下も訪れた店』という売り文句を掲げる店が大量に現れる事になる。
マユミもヴィーゲルからこの王都・・・現帝都でのいきつけの店の話など聞いていない。
目についた店を片っ端から当たる他になかった。
その周囲にはセルビウスを始め護衛の兵士達・・・それに加えて、野次馬が次々と加わっている。
だがそんなものは目に入ってない様子でマユミは走り続けた。
・・・そして数十店巡った後に、マユミはその姿を発見する事になる。
「先生!ヴィーゲル先生!」
「マユミ?!」
ヴィーゲルを驚かせたのは以前と変わらぬ姿のマユミ、ではなく・・・
「マユミ陛下に男?!」
「我らのマユミ姫に彼氏が?!」
「そ、そんな・・・俺達はどうしたら・・・」
「あいつか?!あいつなのか?!」
マユミの後ろについてきた大量のファン達の、絶望と嫉妬に満ちた視線だった。
「おいマユミ・・・そいつらは・・・」
「先生・・・私・・・ってあれ・・・」
ヴィーゲルのその様子に、マユミは振り返り・・・そして遅ればせながら状況を理解する。
「ち、違うから!そんなのじゃないから!」
「お前・・・本当にすごくなったんだな・・・」
それから小一時間かけて、嫉妬と絶望に捕らわれた彼らを説得したマユミだった。
「いや俺はマユミ・・・陛下とは旧知の仲で、伝言の一つも頼めればそれでいいんだが・・・」
「はいはい、最近そういうの多いんだよな~」
帝都ヴァレス・・・
英雄皇帝マユミが住まうという城の城門前で、吟遊詩人ヴィーゲルは門前払いを受けていた。
兵士達のこの対応も仕方ない。
今やマユミの人気は絶大で、陛下との面会を希望する者は後を絶たない。
マユミ本人は政務に係わる事もないので、面会の一つもやぶさかでもないのだが、いかんせん数が多い。
兵士達にはこの手の話は全面的に断るように指示が出ているのだ。
(ダメ元で来てはみたが、仕方ないか・・・)
ヴィーゲルは目の前にそびえ立つ巨大な城を見上げる・・・
今のマユミは一介の吟遊詩人風情が簡単に会える存在ではないようだ。
北方で例の作品群・・・英雄マユミの冒険譚と称された絵画を見た時は、いったい何の冗談かと思ったものだが、つい先日魔王の襲撃を撃退したという話も聞いたばかりだ。
(本当に、とんでもない存在に育ったものだな・・・)
師匠として弟子の成長は喜ぶべきものだが・・・彼も英雄を育てた覚えはない。
彼の知るマユミは非力な少女の吟遊詩人だ。
彼が旅立った後、あの少女にいったい何があったというのだろうか・・・
「いつまでそこに突っ立ってるんだ、帰れ帰れ」
「ああ、そうだな・・・」
頷くと彼は踵を返した・・・もうこの場所に来ることもないだろう。
どこか哀愁漂うその後ろ姿を、一人の少女が見つめていた。
「ねぇ、今のイケメン誰?」
「はい?」
その少女は彼の姿が見えなくなると兵士に尋ねた。
どこか見覚えのあるその少女・・・たしか最近マユミ陛下と一緒にいる事が多い・・・
たしかミズキといったか・・・兵士は彼女を要人と認識した。
「最近よくいるマユミ陛下の信奉者でしょう、吟遊詩人のヴィーゲルとか名乗っていましたが・・・」
「吟遊詩人のヴィーゲル・・・へぇ・・・」
(あんなイケメンのファンまでいるとか・・・侮れないわね)
自分もこの世界で作家として人気になれば、あんなイケメンのファンが出来たりするのだろうか・・・
彼女の頭の中でイケメンに言い寄られる妄想が展開される・・・
『あの作品を書いたのがこんなに美しい人だったなんて・・・』
『まぁ、世界一美しいだなんて・・・そんな・・・』
『先生、僕の為に書いていただけませんか?二人の愛の物語を』
『はい、喜んで!』
・・・・・・
(もう指が痛いとか言ってられないわ、どんどん書かないと・・・)
妙な所でやる気を出すミズキだった。
「あれ、ミズキちゃん、こんな所で何してるの?」
「マユミ陛下!ご苦労様です!」
現れたマユミ達に城門の兵士が道を開ける。
マユミは今日も練習の為に劇場へ向かう所のようだ。
「ああ、私はお城の見物を・・・ホントこのお城は広いわよね」
「・・・ミズキ、また迷子になるよ?」
「だだ大丈夫だし、迷ってないし!」
ジト目でミズキを見ながらミーアが警告する。
『懲りない奴だ』・・・顔にそう書いてあるようだった。
「でも気を付けてね、またあんな事になったら今度は助けてあげられるかどうか・・・」
「あはは・・・気を付けます・・・」
心配するマユミにミズキは苦笑いを返す。
マユミには迷子になって泣きじゃくるという恥ずかしいところを見られたばかりだ。
自分が大人だと知る人物に、もうあんな姿を見せたくはない。
「それで、マユミ様は今日もお芝居の練習?」
「うん、だいあ・・・じゃなくて、ミズキちゃんの書いてくれたやつもやるけど、見に来る?」
「うーん・・・いや、やめておくわ、私も新作書いてイケメンのファンをゲットしないとだしね」
「イケメンのファン?」
「いけめん?」
マユミとミーアが二人仲良く首を傾げた。
「うん、マユミ様に会いたいってイケメンがさっき来てたわよ、吟遊詩人のヴィー・・・なんだっけ」
「えっ・・・それって・・・」
ミズキの口から出かかったその名前に、マユミが目を丸くする。
「・・・ひょっとして、ヴィーゲル先生?」
「ああ、それだわ・・・あのイケメンと知り合いなの?まさか彼氏?」
「や、そんなんじゃないけど・・・それでその人は?」
「そこの兵士に帰れって言われて帰ってったわよ」
「!・・・も、申し訳ありません陛下、まさか本当にお知り合いの方とは・・・」
「知らなかったんだから仕方ないわ・・・もし次に来たら、通してあげてね」
顔を真っ青にした兵士にそう答えると、マユミは駆けだした。
「マユミ様?!お待ちください!」
護衛のセルビウスが慌てて追いかける。
「マユミ・・・」
「ちょっと待った、ミーアちゃんはそのヴィーゲルって人を知ってるの?」
「知らない」
「じゃあ行く事ないわ、私がお芝居見てあげるから、練習に行きましょ」
「でも・・・」
「知ってる人探すだけだし、すぐ帰ってくるわよ」
「・・・そうかな」
「うんうん、あとせっかくだから私もお芝居教えてもらおっかな」
「え・・・ミズキが?」
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃない・・・ほら行きましょ」
嫌そうな表情を浮かべたミーアを連れてミズキは劇場へ向かった。
(・・・彼氏じゃないにしても、それなりの関係みたいじゃない)
後でしっかり話は聞かせてもらおう・・・出来れば紹介もしてもらおう。
そんな事を考えるミズキだった。
・・・街の方ではちょっとした騒ぎになっていた。
「へ、陛下?!」
「すいません、ここにヴィーゲルって人はいますか?」
酒場や宿屋、食堂といった建物を見つける度に遠慮なく突入するマユミ。
この件のせいで後日『マユミ陛下も訪れた店』という売り文句を掲げる店が大量に現れる事になる。
マユミもヴィーゲルからこの王都・・・現帝都でのいきつけの店の話など聞いていない。
目についた店を片っ端から当たる他になかった。
その周囲にはセルビウスを始め護衛の兵士達・・・それに加えて、野次馬が次々と加わっている。
だがそんなものは目に入ってない様子でマユミは走り続けた。
・・・そして数十店巡った後に、マユミはその姿を発見する事になる。
「先生!ヴィーゲル先生!」
「マユミ?!」
ヴィーゲルを驚かせたのは以前と変わらぬ姿のマユミ、ではなく・・・
「マユミ陛下に男?!」
「我らのマユミ姫に彼氏が?!」
「そ、そんな・・・俺達はどうしたら・・・」
「あいつか?!あいつなのか?!」
マユミの後ろについてきた大量のファン達の、絶望と嫉妬に満ちた視線だった。
「おいマユミ・・・そいつらは・・・」
「先生・・・私・・・ってあれ・・・」
ヴィーゲルのその様子に、マユミは振り返り・・・そして遅ればせながら状況を理解する。
「ち、違うから!そんなのじゃないから!」
「お前・・・本当にすごくなったんだな・・・」
それから小一時間かけて、嫉妬と絶望に捕らわれた彼らを説得したマユミだった。
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