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僕は変わり者なβ
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この世界は男女の他にそれぞれにα、β、Ωと6種類の性が存在していた。
αは全てにおいて他性よりもずば抜けて優秀で、人類の頂点に立ち、全てを導き守る者だった。
αは頂点に立つ者として常に緊張状態であったし色々な事を一人で抱え込む癖があり、疲弊する心に自分だけのΩを求めた。
Ωは男性であっても妊娠が可能であり、その他の能力においてはαやβよりも劣るとされていた。だからといって決して貶められる存在などではなく、Ωは男女ともに美しく、Ωフェロモンに唯一影響を受けるαであっても発情期に誘発され襲うなんて事はない。通常時より大分幸せな気分になるだけだ。
Ωにとってもαは癒しで、強く一人のαを求めた。
βは人口の大半を占めるが全てにおいて平均的。可もなく不可もなく。
βは能天気な人間が多く、αに任せておけばオールオッケーそう考える者が殆どだった。
それと合わせてβは自分たちには大したことなんてできないけれど、せめてαの大事な癒しであるΩの事を守り二人が幸せでいられるよう手助けしよう、そう思っていた。
βは義理堅く、αとΩの事が大好きだった。
αも口には出さないがそんな能天気で頑張り屋なβの事を認めていた。
支配する側とされる側、というわけではなく両者の間には確かな信頼関係があった。
αとΩは互いに強く惹かれ合う物語の主人公的存在で、βには絶対に入り込めないし入り込もうとも思わない。
この世界においてもβは『その他大勢』の決してスポットライトが当たる事がない縁の下の力持ちであり観客のようなものだった。
*****
図書室にあの子が来なくなってもうすぐひと月になろうとしていた。
聞こえて来た噂ではあの子は無事にあのαと番になって幸せでいるらしい。
ツンとした雰囲気が柔らかくなって今更ながら逃した魚は大きかったとでもいうようにあちこちで溜め息を吐くαが多いとか。
あの子は元からツンとなんかしていなかった。
頭を撫でると仔猫のように目を細め、お菓子をあげると幼子のような笑顔でふにゃりと笑う。
そんな事にも気づけなかったαたちが今更何を言っているんだ、と思う。
まぁそれに気づいていたとしてもあのα以外は誰も受け入れてはもらえなかったんだろうけど。
心の痛みはもうないけれど、少しの寂しさは残る。
ふぅ、と小さく溜め息を吐いた。
「委員長、また難しい顔してる。ほらスマイル、スマイル。委員長は笑ってる方が絶対可愛いって」
そう言って緩くウェーブのかかった金色に光る髪を風になびかせながら現れたのは、αのチャラ男である。
この男はあの子がここに来なくなってから入れ替わるように毎日ここを訪れている。
この男がαだからといって別に悪意も敵意もないけど、何かとちょっかいをかけてくるのは止めて欲しい。βの僕に可愛いってなんだ。
もうαにもΩにも関わり合いになりたくない…。
僕はβだから、βと生きていく。僕の人生にαもΩもいらないんだ。
「何度も言うけど僕は委員長じゃないです」
「だってあんたいつもここで勉強してるだろ。βでそんなに真面目ってさ、もう委員長しかないって」
そう言って笑った。
何を言っているのか分からない。
確かにβで勉強を必死に頑張る人は殆どいない。
だからといって委員長だと言い切るのはどうかと思うが。
「ああ、でももっと委員長らしくメガネかけるとかどう?」
「はぁ…どうと言われても僕は視力はいい方だし、委員長でもない。メガネをかける必要性を感じません」
「いや、だからさ、イメージだって。ガリ勉メガネで委員長!」
「ガリ―――キミにそんな事言われる筋合いはない!僕は勉強が好きでやってるんだ!放っておいてくれ!」
腹がたった。
いつものように聞き流せなかった。
βはやっぱりどこまでいってもβで、普通にがんばったくらいでは成績は上がらない。
誰もβの僕に優秀さなんて求めていないし、誰かの為に頑張ってるわけでもない。
ただ自分が頑張りたかったから頑張っているだけだ。
僕はαでもΩでもβでもなく、何者かになりたかった。
そんな僕の願いをβのくせに何無駄な事をしてるんだって否定されたみたいだった。
「ご…ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。委員長の事バカにして言ったんじゃない。俺は―――」
「もういいからっ。勉強の邪魔だからどこかへ行ってもらえませんか?」
僕の言葉にひどく傷ついた顔をした。それを見て少しだけ胸が痛んだ。
こんな言い方するほどの事じゃなかった。
このチャラ男だって悪気があったわけじゃないって分かってる。
だいたいこの男の事を心の中で『チャラ男』だなんて呼んでる僕が『委員長』って呼ばれたからって怒れるはずもなかった。
この男は毎日ここを訪れては軽口をたたく。
だけどそれは決して誰かをけなしたり傷つけるものじゃなかった。
だから僕も口では色々言いながらもこの男が来ることを本気で嫌がってるわけじゃなかった。
それでも僕はα相手には優しくなれない。
αはいつも僕から大切な物を奪っていく。
完全な八つ当たりだった。
αは全てにおいて他性よりもずば抜けて優秀で、人類の頂点に立ち、全てを導き守る者だった。
αは頂点に立つ者として常に緊張状態であったし色々な事を一人で抱え込む癖があり、疲弊する心に自分だけのΩを求めた。
Ωは男性であっても妊娠が可能であり、その他の能力においてはαやβよりも劣るとされていた。だからといって決して貶められる存在などではなく、Ωは男女ともに美しく、Ωフェロモンに唯一影響を受けるαであっても発情期に誘発され襲うなんて事はない。通常時より大分幸せな気分になるだけだ。
Ωにとってもαは癒しで、強く一人のαを求めた。
βは人口の大半を占めるが全てにおいて平均的。可もなく不可もなく。
βは能天気な人間が多く、αに任せておけばオールオッケーそう考える者が殆どだった。
それと合わせてβは自分たちには大したことなんてできないけれど、せめてαの大事な癒しであるΩの事を守り二人が幸せでいられるよう手助けしよう、そう思っていた。
βは義理堅く、αとΩの事が大好きだった。
αも口には出さないがそんな能天気で頑張り屋なβの事を認めていた。
支配する側とされる側、というわけではなく両者の間には確かな信頼関係があった。
αとΩは互いに強く惹かれ合う物語の主人公的存在で、βには絶対に入り込めないし入り込もうとも思わない。
この世界においてもβは『その他大勢』の決してスポットライトが当たる事がない縁の下の力持ちであり観客のようなものだった。
*****
図書室にあの子が来なくなってもうすぐひと月になろうとしていた。
聞こえて来た噂ではあの子は無事にあのαと番になって幸せでいるらしい。
ツンとした雰囲気が柔らかくなって今更ながら逃した魚は大きかったとでもいうようにあちこちで溜め息を吐くαが多いとか。
あの子は元からツンとなんかしていなかった。
頭を撫でると仔猫のように目を細め、お菓子をあげると幼子のような笑顔でふにゃりと笑う。
そんな事にも気づけなかったαたちが今更何を言っているんだ、と思う。
まぁそれに気づいていたとしてもあのα以外は誰も受け入れてはもらえなかったんだろうけど。
心の痛みはもうないけれど、少しの寂しさは残る。
ふぅ、と小さく溜め息を吐いた。
「委員長、また難しい顔してる。ほらスマイル、スマイル。委員長は笑ってる方が絶対可愛いって」
そう言って緩くウェーブのかかった金色に光る髪を風になびかせながら現れたのは、αのチャラ男である。
この男はあの子がここに来なくなってから入れ替わるように毎日ここを訪れている。
この男がαだからといって別に悪意も敵意もないけど、何かとちょっかいをかけてくるのは止めて欲しい。βの僕に可愛いってなんだ。
もうαにもΩにも関わり合いになりたくない…。
僕はβだから、βと生きていく。僕の人生にαもΩもいらないんだ。
「何度も言うけど僕は委員長じゃないです」
「だってあんたいつもここで勉強してるだろ。βでそんなに真面目ってさ、もう委員長しかないって」
そう言って笑った。
何を言っているのか分からない。
確かにβで勉強を必死に頑張る人は殆どいない。
だからといって委員長だと言い切るのはどうかと思うが。
「ああ、でももっと委員長らしくメガネかけるとかどう?」
「はぁ…どうと言われても僕は視力はいい方だし、委員長でもない。メガネをかける必要性を感じません」
「いや、だからさ、イメージだって。ガリ勉メガネで委員長!」
「ガリ―――キミにそんな事言われる筋合いはない!僕は勉強が好きでやってるんだ!放っておいてくれ!」
腹がたった。
いつものように聞き流せなかった。
βはやっぱりどこまでいってもβで、普通にがんばったくらいでは成績は上がらない。
誰もβの僕に優秀さなんて求めていないし、誰かの為に頑張ってるわけでもない。
ただ自分が頑張りたかったから頑張っているだけだ。
僕はαでもΩでもβでもなく、何者かになりたかった。
そんな僕の願いをβのくせに何無駄な事をしてるんだって否定されたみたいだった。
「ご…ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。委員長の事バカにして言ったんじゃない。俺は―――」
「もういいからっ。勉強の邪魔だからどこかへ行ってもらえませんか?」
僕の言葉にひどく傷ついた顔をした。それを見て少しだけ胸が痛んだ。
こんな言い方するほどの事じゃなかった。
このチャラ男だって悪気があったわけじゃないって分かってる。
だいたいこの男の事を心の中で『チャラ男』だなんて呼んでる僕が『委員長』って呼ばれたからって怒れるはずもなかった。
この男は毎日ここを訪れては軽口をたたく。
だけどそれは決して誰かをけなしたり傷つけるものじゃなかった。
だから僕も口では色々言いながらもこの男が来ることを本気で嫌がってるわけじゃなかった。
それでも僕はα相手には優しくなれない。
αはいつも僕から大切な物を奪っていく。
完全な八つ当たりだった。
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